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参考人(
金子博君) まず、本日、
プラスチックごみによる海洋汚染問題についてお話をさせていただく
機会を設けていただいたこと、感謝いたします。
早速なんですが、私の方のプレゼンの資料を見ていただきたいと思っています。
一ページ目なんですが、これに関しては今事務局の方々からの回覧をちょっとお願いをしているものがあります。最近、マイクロプラスチックという
言葉がかなり新聞等でも出てきて、
世界的な問題になっているということで周知されてきていますが、その現物を今日お持ちをしました。(資料提示)
一つは、ここの写真にありますけれども、ハワイ島カミロポイントで採取したものが大きい瓶に入っているもの。それから、小さい瓶については、山形県に小さな島、飛島というのがあるんですが、そちらの海岸に漂着していた同じ小さいプラスチックの破片のごみということで、実際見ていただいた方がいいかなと思ってお持ちをしたところです。
マイクロプラスチックというのはある定義付けがされていまして、
世界の研究者が直径五ミリメートル以下の微細な
プラスチックごみのことを総称しようというふうに定義付けをしました。通常、マイクロというと目に見えないレベルのものを総称するんですけれども、この
プラスチックごみについては一般の方々が目に付くことが可能な定義付けをしようということで悩まれて、実際五ミリメートルですと目に見えるということがあって、それを総称しようということに決まった背景があります。
多くはプラスチック製品の破片が主たるものになっていますけれども、中には洗顔剤などに添加されているマイクロビーズや化学繊維の破片も含まれていますが、これらはごく一部であります。含有、吸着する有害化学物質が食物連鎖に取り込まれて
生態系に及ぼす影響が
世界的に懸念されているということが今日的な
課題になっているところです。
同じページの、コアホウドリという鳥の死骸写真をお持ちしたんですが、若干ちょっと訂正をさせていただきたくて、このコアホウドリはよく
プラスチックごみの
被害を受ける鳥ということで象徴的に扱われているんですけれども、その写真は何点かあって、この写真はちょっと別の方が撮ったもので、訂正させていただきます。北西ハワイ諸島のレイサン島でリチャード・ステイナー
教授が撮影したものですので、これはJEANの方が使用許可を得て掲載しているものですが、後でデータの方を事務局の方に訂正をさせていただきたいと思っています。
二ページ目、ちょっとめくっていただいて、二ページ目の
スライドの方を見ていただきたいと思っています。
それでは、マイクロプラスチックを含む
プラスチックごみそのものの特徴ということを共有させていただきたいと思っていますが、まず、ごみの発生原因や経路が複雑多岐にわたるということがあります。身近な
生活用品あるいは農業、漁業系の資材として使われていますし、工業製品でも多々使われていると。それらが陸域や海域で捨てられて、あるいは飛散して海の方に最終的に入ってきてしまっていると。基本的にはポイ捨て行為を含む不法投棄もあるんですけれども、意図なく、意識的でなく、風雨等によってまた拡散する部分もあると。
右の写真はこの近くの写真をあえて撮って
皆さんにお示ししたんですが、たばこのポイ捨てなり、あるいは皇居のお堀でもレジ袋なんかがたくさん漂流してしまっているという状態があります。写真の右の方に東京の荒川放水路の河口部の写真もありますけれども、ここにはペットボトルが大量に漂着しているということが明らかになっています。私が今暮らしている山形県の庄内地域でも、毎年冬を越して、これからの時期になりますが、大量の漂着物が流れ着いてしまうと。その件は沖縄県でも一緒であるということです。
ここで特徴の
二つ目にあるんですが、ごみの移動性、拡散性というところが特徴にあります。水の流れ、海流によって地域や海域を越えてほかの地域の沿岸へ漂流したり海岸へ漂着してしまうということがあります。ごみの性状によっては漂流したままのものもありますし、海底に堆積するものもあります。ほかの地域で海岸に漂着する場合も、やはりこれは気候条件といいますか地理的な条件によって、場所による偏りが大変大きい問題なんですということがあります。
冒頭に申し上げたとおり、微細化、破片化していくということによって回収がもう不可能になってしまうということが
二つ目の特徴の中に入っています。
今、海岸漂着ごみは回収活動をかなり行っているわけですけれども、もう多種多様なごみが入っているものですから、要するに単一の素材ではないものですから、リサイクルや処理が困難なものになっています。ですから、回収した場合に、そのまま最終処分場に持っていったり、最新の焼却炉があれば多少燃やせるということもあるんですけれども、そういったことで困難な問題になっています。
三つ目の
スライドを見ていただきたいんですが、これまでの
プラスチックごみによる海洋汚染問題については、
対応の基本的な
考え方というのを私たちNGO、NPOが示してきています。お手元の資料は、二〇〇七年に海洋基本法ができて、それから基本計画を作ろうということで、二〇〇七年、そのときに我々からの提案として、海洋基本計画の中にこういった問題を入れてほしいということで作ったペーパーに基づくものです。
三つの基本原則と十一の方策ということで提示をさせていただきました。その中の幾つかは、赤で書いてありますけれども、現行法、海岸漂着物処理推進法という法律の中に入れていただいた経緯があります。ただ、現行法にまだ組み込まれていない方策の項目もまだ残っているという理解を我々はしているところです。
四ページ目に、見ていただきたいんですが、現在、海岸漂着物処理推進法というのが我が国のこの問題の個別
対策法としてありますけれども、実はこの法律は略称でして、大変長い法律名称になっています。美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び
環境の保全に係る海岸漂着物等の処理の推進に関する法律ということで、二〇〇九年、平成二十一年に皆様方のお力も得て参議院本
会議で超党派の
議員立法として採決、成立をさせていただいたものになります。
目的は、ここに書いてあるとおり、海岸に着いたごみを何とか取りあえず回収したいということが、その当時のせっぱ詰まった状況もありました、そういった回収処理、それから元々のごみを出さないというところの取組を推進するということになります。
それの目的に基づいて六つの基本
理念というのを掲げていただいています。その中に、本日の
調査会のテーマでもありますけれども、国際協力の推進ということもきちっと入っています。この背景には、先ほど申し上げたとおり、ごみは移動する、他地域に移動してしまうという特徴の下によっているという理解をしていただければと思っています。
この法律の立て付けとしては、ここに掲げた責務、連携の強化から法制の整備ということで三十数条の法律になっていて、現在、八年目、九年目に法律ができてからなりますけれども、成果の出ている部分、あるいは取組が始まっている部分というところがあります。特に、回収処理については国の予算措置をしていただいていますので、かなり甚大な海岸については一定の成果が上がってきているというふうに私たちも評価をしているところです。
ただ一方、発生の抑制をするというところについては、大変難しいテーマでもあることもあって、実績、成果、特に
環境教育は今始まったばかりですし、地域ごとにその
対策の推進の状況も差が生じているというのが
現状になっています。
五ページ目の
スライドになりますけれども、
アジア太平洋地域における国際協力、連携の主な経緯について次お話をさせていただきたいと思っています。
JEANは、一九八六年のアメリカの
環境NGOが始めました国際海岸クリーンアップ、ICCと略していますが、現在百を超える国・地域で展開されている、調べてごみの問題を
対策に向けていこうという活動の事業に一九九〇年に参加した団体になります。
日本のICCのナショナルコーディネーターを担っております。
二〇〇二年からは、当時、特に
日本海側で海外からのごみの漂着が報道等でかなり強く出されて、海岸に着くごみ問題というのは国外起因のものだろう、中国、韓国からの大量の漂着じゃないかというふうに、ある意味事実なんですが、一部誤解をされて動かれていました。というのは、
日本国内からも相当なごみが出ているという実態が併せて報道されなかったがために偏りのある報道がされてきたということがあって、JEANでは、韓国のNGOと連携をして、長崎県の対馬市において日韓協働プロジェクトを開始したところがあります。
以降、様々な国際協力の枠組みに向けて努力を重ねてきているところですが、二〇〇六年には、日中韓ロの四か国での官民学関係者が集まって、山形県の庄内地域でのワークショップをさせていただいたところです。
二〇一二年、御承知のとおり、東
日本大震災が発災して大量の漂流物も出てカナダ、アメリカの海岸に漂着するという問題が発生したときには、私たちの方では、
日本政府の要請も受けて、対話と現地
調査を継続して二年半にわたって行っているところです。二〇一五年には、特にそういった関係からつながっている北太平洋のNGOの関係者と国際シンポジウムをハワイ島で開催したところになります。
二〇一六年、三重県において、JEANと主催で海ごみサミットという、この問題を関係者が集まって協議しよう、情報共有しようという主体的な場を開催をしたところです。この場においては、欧州も含めてNGO、研究者を十四名ほどお招きをして、国際的な基金の設置の提案とか
プラスチックごみの
削減に向けた鳥羽アピールというのを採択をさせていただいたところです。
めくっていただきまして、六ページ目になりますが、国際的な協力、連携による
対応の必要性と意義ということを改めて書き出したところです。
問題の特徴、冒頭に申し上げたとおり、ごみの移動性、拡散性にあります。結局、どこの国・地域から出てきたごみなのかを正確に明確にしても
対策には直結しないんだということがあります。それぞれの国・地域での回収処理と発生の抑制
対策が求められるという問題になります。しかも、という上で、有効かつ効果的な
対策の手法をお互いに共有していくことがベストなことだろうというふうに考えています。要は、他国、他地域における
現状とか
対策手法などについて学び合う国際協力というのがとても重要だと思っております。
例えで例一、二、三をちょっと挙げていますが、時間の関係でちょっと
一つだけになりますが、例えば、
日本で法律を作ったときには、韓国での法
制度が二〇〇〇年にかなり確立していたものですから、そういったことを学びに行ったりとか、あるいは、国土交通省とNPOが連携して開発しましたごみのモニタリングの手法、こういったものも韓国で使われたり、あるいは台湾のNGOがこれから使おうとしているとか、そういった
技術的な共有もしようとしてきているということ。それから、震災漂流物の
調査活動においては、NGOとの連携を背景に漂着物の一部返還にも至った経緯があります。
東
日本大震災起因の漂流物への
対応の成果として私たちが申し上げているところがあります。それは、今まで養ってきたICCのネットワークというのはとても有効に機能して、こういった大きな問題が起きて、それに対してお互い共有、対話していくという際について相互理解を深めることがとてもできたということがあります。
従前からこの
プラスチックごみの問題はあったわけですけれども、東
日本の漂流物の大量漂着ということが起きたことによって、改めて従前からの問題としてクローズアップされたということがあります。例えば、
日本の研究者による研究手法もアメリカの西海岸に
技術移転をしたという実績もこの中ではあります。
一方、協力、連携を進める上での
課題というのもあります。
今、現行法の法律の中では、政府は民間の団体等が果たす役割の重要性に鑑みてその活動の促進を図るために財政上の配慮を行うということも含めて、三条、四条ぐらい民間団体の重要性を書き込んでいただいていますけれども、そういった中でも、都道府県を経由して
日本ではこのごみ
対策というのは進めているんですね。
一方、国としてやる予算措置がないと。これは、
調査研究だけの予算はあるんですけれども、実際、広報なり
環境教育をしていこうとか全国的な規模で動いている団体と一緒にやっていこうといったときに財政上の支援ができるスキームが法律上ありません。地方分権の流れという背景があるということはお聞きしていますけれども、そんなことで、なかなか全国的な動きがうまく進展していくことが、ちょっと
心配しているというところがあります。
それから、事例の
二つ目に挙げたのは、中国でもこの問題はNGOが取り組んでいるテーマでもあるんですけれども、中国のNGOから
日本での取組を学びたいというオファーがあったときに、じゃ、それをどういった資金でやろうかといったときに、JICAの事務所と相談をして、提案はできるということで審査していただいたんですが、ただ、審査段階において、特に中国案件についてはいろんな配慮があって、
日本に返ってくるメリットがきちっと数値的に何かあるのかということがかなり
議論になってしまって、この問題、そういう成果がはっきりすぐに分かる問題ではないので、なかなかそういった予算措置を、支援措置を受けることができなかったというのもあります。
もちろん、ODAというところがありますけれども、
アジア太平洋地域でいえば対象国・地域が限定されています。
地球環境基金という国の関係のファンドもありますけれども、こちらには活動に携わる直接の団体職員等の人件費が計上できないという
制度上の難点があります。
めくって八ページ目になりますけれども、そういった状況の中で、提案ということをちょっと
最後述べさせていただきたいと思っていますが、中期的、長期的、短期的なことがあります。
中長期的には、結局この問題をどう捉えるかというときに一番大事な話として、人間
社会において、廃棄物管理、ごみの管理は徹底できないんだという前提に立てるかどうかだと私は思っています。これまで、町の美化の問題とかよく長くあったんですが、結局モラルに訴えて長く来たんですね、四十年、五十年ですね。そういったことで改善できる面ももちろんありましたけれども、やはりここはもう法
制度的にこの廃棄物管理が徹底できるような仕掛けをつくっていかなければいけないんだと、そういう
認識に立たない限りは
対応が進まないと思っています。プラスチック製品の大量生産・消費、大量廃棄
社会から減プラスチック
社会への変換を促しながら、
プラスチックごみによる海洋汚染防止に係る政策パッケージを
是非実行していくのが中長期的な方向性だと思っています。特に、海洋立国
日本と称していますので、先導的な役割を果たすことにもつながると思っています。
その上で、短期的な方策としては、上記に述べたようなパッケージ、政策パッケージを
議論していただいて取りまとめをしていただく、これは
地球温暖化防止
対策にも連動することになります。先ほどの
江守先生のお話にもありましたけれども、原油の生産量の八%がこのプラスチック関係に使われているということがあります。そこを一%でも二%でも減らすことは
温暖化対策にもつながっていく話ですので、この海ごみ
対策というだけではなくて、ほかのこととつなげながら連動させるということがとても大事だと思っています。
それから、現行法の改正というのがあります。
今都道府県で基本的な計画を作って進めていますが、国の行動計画ないし基本計画を作るということになっていません。国の基本方針は作るということになってできているんですけれども、やはり計画レベルに上げていただいて、そういった策定をすべきだろうと思っています。
関連法制の整備もそれ以降進んでいません。デポジット
制度の
導入等もいろいろと
課題があって、なかなか改正も進まなかったということを聞いておりますけれども、その上で、民間団体が果たす役割として重要性を踏まえて
アジア太平洋地域における国際的協力基金の創設を訴えているところです。
人材等の確保とか育成、私たちずっと関わってきたメンバーもかなり年齢を重ねて、次の若い
世代に動いてもらわないとなかなか大変だなと思っていますので、そういった人材の確保も含めてと思っています。定期的に、例えば二年に一回、
アジア太平洋地域で
プラスチックごみの管理フォーラムみたいなものを
日本が主導して開催していただくということも、とても大事なことではないかなと思っておりますので、
是非御検討をいただければと思っています。
最後の御提案ですけれども、この問題、政府の関係者と最初、十年ほど前に
議論を始めたときも、現場にまず来ていただいたんですね。現場を見ていただくと理解を、私たちが何をやっているかというののかなり理解進んだものですから、
是非、先生方にも
是非地元、あるいは
調査会としても、もし可能であればということなんですが、それぞれ
日本国内で、日帰りで行けるところもありますので、
是非この中で、どこでもよろしいので現場を見に来ていただければ、我々NPO、NGOが
是非御案内もさせていただきますし、地元の団体にも顔つなぎもいたしますので、
是非ここを御検討いただければと思っています。
どうも御清聴ありがとうございました。