○山本香苗君 要するに、実態というのは全くと言っていいほど把握されていないわけなんです。
ただ、
文部科学省が二〇一二年に全国の小中学校に対して実施した
調査では、学習面に著しい困難を示す子供が全体の四・五%と、読むとかまた書くに著しい困難を示すが二・四%
程度在籍していることが推計されております。一生懸命やったとしてもみんなと同じように字が読めない、通常の教科書が読めない、でも授業はどんどんどんどん進んでいく、自分はみんなより劣っているということを感じて不登校につながるケースもあると伺っております。
しかし、こうした子供たちも、紙の教科書は読めなくても、教科書をデジタル化することによって読めるようになる場合がございます。現在、例えばパソコンだとかタブレット端末等を使うデジタル教材の中で最も多く利用されているのがマルチメディアDAISY教科書でございますが、二〇〇八年当初はたった八十名しか利用していなかったんです。ですが、
平成二十九年この一月末現在で六千名を超えました。
大阪市では、
平成二十八年度から全ての小中学校四百二十校でマルチメディアDAISY教科書を使用しております。ある小学校二年生のお子さんは、初めてこれで人の助けをなくして教科書が読めたと、物すごくうれしくなって校長室に、先生、聞いて聞いてというふうな形で駆け込んでいったと、それを聞いた教育
委員会の先生たちがもう泣いたというような話も伺いました。
要するに、読み書きが困難な子供たちにとって、このマルチメディアDAISY教科書は眼鏡みたいなもの、眼鏡と同じなんです。これがあれば人の助けがなくても読むことができるわけであります。しかし、現行
制度においては紙の教科書しか認められておりません。無償供与の
対象でもありません。学校によっては、教室に持ち込んで使いたいと言っても、先生がその存在自体を知らない、また、おたくのお子さんだけ特別扱いするわけにはいかないからということで断られているという話は多々あります。
マルチメディアDAISY教科書というのは、日本障害者リハビリテーション協会がボランティア団体の
方々等と協力して作成をして、必要とする子供たちに無料で提供してくださっているわけなんですが、ボランティアの
皆さん方ももう寝る間を惜しんで一生懸命作ってくださっているんですけれども、小中学校の主要な教科書をカバーするのでもう精いっぱい、高校のところまでもう手が回らないんですね。でも、ニーズは物すごくあるわけなんです。
ボランティアの
方々も、これは親御さんたちが多いわけで、高齢化してきているんですね。かつ、後継者の
確保ということも難しいと、今まで一生懸命頑張ってきたんだけどもう限界だと、そのような切実な声も全国のボランティア団体の
方々から寄せられております。
今国会、デジタル教科書を紙の教科書と同等とみなして使用可能とする学校教育法改正案、これが提出されておりますが、この法案によって
読み書き障害を持つ子供たちの学びはどう変わるんでしょう。