○石川香織君 立憲民主党の石川香織です。
私は、立憲民主党・市民クラブを
代表いたしまして、ただいま
議題になりました
環太平洋パートナーシップ協定の
締結に伴う
関係法律の
整備に関する
法律の一部を改正する
法律案について、
反対の立場から討論をさせていただきます。(拍手)
私は北海道の十勝に住んでおります。北海道は言わずと知れた農業地帯であり、十勝は日本の食料供給基地であります。
TPPについては、苦い
思い出があります。
六年前、二〇一二年に行われた総選挙では、当時の北海道も含め、農村地帯を含む選挙区から立候補されていた自民党の議員の
方々が、TPP断固
反対と言って運動されていたのをよく覚えております。しかし、選挙が終われば、たった三カ月で態度を翻し、
総理はTPP交渉参加に突き進んでいきました。
私のTPPに対する
政府・
与党への不信感は、
国会議員になる前ですが、そこから始まっています。オール北海道でTPPに
反対していたのに、
うそをつかれた悔しさ、悲しさを、地元北海道で何度耳にしたでしょうか。
冒頭、TPPはそんな裏切りから始まっていることを触れざるを得ません。
TPP協定は、関税撤廃が
基本であり、さまざまな分野で影響が及ぶものであります。
政府は、TPP協定をアジア太平洋地域で自由で公正な共通
ルールとしてつくり上げていくと言ってきました。しかし、その交渉は一体どのようなものであったか、これまで
国民に丁寧に誠実に示してきたでしょうか。
一昨年の
国会審議では、TPP12の交渉経過などについて、
黒塗りの
資料が提示されました。秘密保持契約の問題があったにせよ、情報公開とはとても言えるものではありませんでした。
TPP12の合意後、三百回以上説明会を実施してきたということを本年四月に
政府は
答弁をされておりますが、
審議は深まったでしょうか、
国民の理解は深まったでしょうか。
政府が説明するように、TPP12とCPTPPが全く別物の協定であれば、この間の国際情勢の変化などについて説明した上で、方針について
議論をしていく必要が当然あります。
しかし、CPTPPについては、本
国会での
審議はわずか三日間、十数時間で終了してしまいました。私はむしろ、
国民の
皆さんがこの協定の中身について理解を深め、不安や疑問が出ることを、慌ててふたをしてやり過ごそうとする、そんな態度に見えてなりません。
国民が知りたいのは、TPPが与える影響です。例えば、どれくらいの価格下落が見込まれ、生産量の変化、所得はどうなるのか、そういったことが一番の関心事だと
思います。
政府の行った試算はどういったものかというと、国内対策により生産量は維持されるという前提のもと試算されるものであり、それは正しく試算されたものとは到底思えません。
例えば、
政府試算では、価格が一〇%下落して、生産コストが一〇%以上下がると仮定しており、GDPを増加させています。これは、価格の下落以上にコストが下がるという仮定だと読み取れますが、何をもとに導き出された数字なのかわかりません。
こういった価格の下落以上の生産性上昇などを見ても、
政府の試算は恣意的だと感じざるを得ません。最もマイナスの影響を受ける農業者の
皆さんにTPPに対する大きな不安があることを
考えたとき、生活への影響について、その予測を明示し、その上で必要な対策を講じるべきです。対策があるから影響はないという主張は、余りにも無
責任ではないでしょうか。
日本の農業を支えてきたのは
家族経営という形であります。しかし、昨今、効率化や競争力強化を追求する余り、農家は大規模化していく流れができています。しかし、それは同時に、農家戸数が減っていくことを示しています。
私は、先日、
家族で経営されている酪農家のおうちに研修に行かせていただきました。
家族三人で、六十五頭の子牛の世話のほか、八十頭の牛乳を搾っています。搾乳は、思った以上に過酷な作業で、搾乳機で本格的に乳搾りをする前の前搾りと言われる作業だけで腕が痛くなるほどでした。
毎日、酪農家の方が休みなく朝晩搾乳をしてくださっているおかげで、日本の安心、安全な牛乳を飲むことができるのです。そのありがたみを改めて感じました。こういった日本の農業を支えている
家族経営というものをなくしてはならないのです。
CPTPP協定では、バターなどの乳製品の見直しも行わないまま、協定に合意をしました。ニュージーランドやオーストラリアは、一層、日本市場に輸出しやすくなります。
TPPが国内の酪農や乳業に与える影響について
考えられることは、安価な輸入乳製品を
使用した加工乳、乳飲料などが国内で製造され、生乳一〇〇%
使用の牛乳、成分調整牛乳の市場の一部が、これらの製品に取ってかわる可能性です。
チーズについても、国産ナチュラルチーズのほとんどが輸入品に置きかわり、北海道の大規模チーズ工場が操業を停止するなど、国内乳生産の相当
部分が失われる可能性があります。
乳製品だけではありません。農産物、畜産など、日本が世界に誇れる農業を守り抜き、子供や孫
たちに残してほしいと、私は、
国会議員として、また一人の親として、強く心に感じました。
貿易自由化の全てを否定するわけではありません。ただ、TPPは、日本の農業を衰退させ、農村という地域社会を崩壊させかねません。それと同時に、食料自給率の低下など、食料安全保障の面でもリスクが大き過ぎるのです。
以上、一番負の影響を受けるとされる農業の分野のみならず、
国民に誠意のある説明もしないまま、
国会を軽視した本改正
法案に断固
反対することを申し上げます。
最後に、安倍政権の許しがたい政治
姿勢に触れないわけにはいきません。
きのう、財務省から三千ページに及ぶ
改ざん前の決裁
文書がようやく出されました。あれだけ、ないと言い張ってきた森友学園との
交渉記録も、この期に及んで出てきました。
そこには、
総理夫人付の職員から優遇を受けられないかと照会があったとして、財務省に問い合わせるなど、全くもって看過しがたい内容が既に出てきております。
財務省は、一年以上にわたって虚偽の
答弁を繰り返し続け、
資料も全く出そうとしなかったのです。さらに、
国会で
要求された
資料を次々に廃棄するという暴挙まで明らかになりました。これほど
国会が軽視されたことはありません。
さらには、加計問題でも看過しがたい事態が起こっております。
総理大臣や柳瀬元秘書官が
うそをついているのでしょうか。それとも、
加計学園が
うそをついているのでしょうか。はたまた
愛媛県なのでしょうか。誰がどう見ても、
愛媛県が
うそをつく
理由はありません。誰がこの問題で
うそをついているのか、明らかにする
責任は
政府・
与党にあります。
この問題に決着をつけるため、柳瀬元秘書官、
加計理事長の証人喚問、中村
愛媛県知事の参考人招致は必須です。堂々と真相解明に向けて動き出すときではありませんか。
与党の
皆さんに議会人としての猛省を促し、私の討論を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)