○吉良州司君 希望の党、吉良州司です。
ただいま
議題となりました本
法律案について、希望の党・無所属クラブを代表して
質問します。(
拍手)
インフラ海外展開は、もともと民主党政権の目玉政策であり、成長戦略の重要な柱であるという観点は、一〇〇%共有します。当該
法案もその延長線上にあり、より実効あらしめるため、マクロ的、ミクロ的観点から、また、私自身、議員になる前に勤めていた商社のニューヨーク店において、
インフラストラクチャー・プロジェクト・デパートメントの部長、ゼネラルマネジャーとして
インフラ案件に深くかかわった経験から、当該
法案と
インフラ海外展開全体について、
質問と、そして提案をいたします。
二〇一七年六月九日に閣議決定された、いわゆる骨太の方針二〇一七において、次のような記述があります。「「
インフラシステム輸出戦略」を推進し、アジア
地域を含む
世界全体の成長のための
インフラ整備を図る。」と。この大局的視点を共有します。
なぜなら、
世界経済と
日本経済の関係は、
世界がよければ
日本もよくなり、
世界が低迷すれば
日本も低迷する、極めて強い連動関係があるからです。このことはデータが証明しています。
世界経済の実質GDP成長率と
日本経済のそれとをグラフにしますと、ほぼ同じ形をしている、つまり極めて強く連動しているのです。
日本経済をよくするためには、
世界経済の成長に
日本自身が貢献すること、そして、
世界全体が成長するための
インフラ整備に貢献することが重要です。その意味でも、
インフラ海外展開は、成長戦略の最も重要な柱だと思います。
広く
インフラ海外展開と言われる
分野の中で、電力など一部の
分野では、輸出に加えて、
事業投資も積極的に行われています。しかし、当該
法案が
対象とする
鉄道、
水資源、
都市開発、下水道、
空港、道路、港湾などの
分野では、現時点では、
我が国民間企業が
事業投資に積極的ではありません。
当該
法案が
インフラ海外展開に一定程度資することには異論を挟みません。しかし、
内容的には、
鉄道・運輸機構の出資機能を除けば、
調査、
設計、
情報提供、
助言など、
インフラ海外展開の入り口をのぞいているだけで、ドアをノックすらもしていない、極めて消極的な中身となっています。これでは、二〇二〇年に三十兆円の受注を目指すという高い目標を掲げている
インフラ海外展開を実現する具体策としては、甚だ不十分だと断じざるを得ません。
そこで、なぜこれまで、民間企業による
事業投資、
事業参画が進んでこなかったのか、その理由について、また、今後積極化していくための具体的方策について、石井国交
大臣に伺います。
恐らく、その答えの一つは、各機構の人材の問題、
海外における経験、
ノウハウの問題だと思います。この点につき、例えば
水資源プロジェクトの今後の本格的な
海外展開を考えるとき、
水資源機構の
海外部門に
我が国の商社、メーカー、地方自治体で経験を積んだ人材を招き入れることや、フランス・ヴェオリア社やスエズ社など、水メジャーと言われる会社のトップクラスの人材を引き抜いて最前線で活躍してもらうなどの対策が必要だと考えますが、石井国交
大臣の所見を伺います。
次に、
インフラ海外展開全体の課題についてです。
電力など
事業投資型
案件を後押しする際の課題は、出資、融資などのリスクマネーをどう捻出するか、また、民間企業が投融資しやすくなるように、民間ではとれないリスクを官がどうカバーするかなどの具体策です。その意味において、一昨年、JBIC法が改正され、リスクマネーを供給拡充する特別
業務が追加されたこと、外国通貨の借り入れ、そして現地通貨建て融資が可能になったことを高く評価しています。
今、ベトナムなど途上国
政府の悩みは、経済
発展のために構想する
インフラ案件は山のようにあるけれども、
政府の対外債務が積み上がってしまい、外貨準備の問題等から、一定
限度以上の
政府返済保証や外貨兌換保証、それらが出せないことです。この課題を官民共同で克服していかなければなりません。
そこで、リスクマネー調達についての具体的提案です。
米国の証券市場、SECにおいて、ルール百四十四Aという特別な
制度があります。SECの社債発行に伴う情報開示義務は非常にハードルが高いのですが、途上国におけるプロジェクトの資金調達にも開放するため、社債の買い手を、一定の資産を持ったクオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーと呼ばれるプロの機関投資家に限る形で、情報開示基準のハードルを下げている
制度です。
途上国におけるプロジェクト資金調達の機会を
提供すると同時に、少々リスクはあっても高い利回りを欲する投資家にもその機会を与える仕組みです。プロジェクト遂行会社、SPCが社債を発行し、プロの適格機関投資家にそれを買ってもらうことで、一日にして多額のプロジェクト資金を手にできる手法です。
私自身、ニューヨーク勤務時代に、メキシコの三・三億ドルの電力
案件につき、スイスのABBという総合電機メーカーと一緒に
事業会社を設立し、このルールを使って社債を発行し、出資額一億ドル以外の必要資金二・三億ドルを一日で調達した経験があります。もちろん、格付会社であるムーディーズやS&Pニューヨーク本社に出向き、プレゼンを行い、投資適格の格付を取得した上でのことでありました。
JBIC法改正後、JBICは、この社債引受けができるようになりました。もちろん、一番いいのは、米国を始めとする
世界じゅうの投資家が、リスクをとって、社債を買ってくれることです。しかし、
日本の国益として、どうしてもこのマーケットに食い込み、このプロジェクトを実現したいと思うときに、JBICがこのルール百四十四A上の適格機関投資家として社債を引き受けることにより、呼び水効果も含めた資金調達ができるようになります。
また、
日本企業が投資する電力
案件など、現地通貨での収入しかないプロジェクトにおいて、JBICが実質的に外貨供給保証をすることにより、プロジェクトの実現可能性を高める提案をしたいと思います。
具体的には、プロジェクトの収入として得られる現地通貨を担保として、JBICが
相手国政府への外貨供与を保証するのです。このJBICの保証を裏づけとして、
相手国政府がプロジェクトに対して外貨兌換保証を出せるようになれば、社債発行時に投資適格の格付を得られる可能性が大きくなります。JBICが実質的に外貨供与保証をすることにより、社債購入者に
事業リスクをとってもらい、結果的に、
日本企業が
インフラ輸出や
事業参画の機会をふやすことができるようになります。
もちろん、JBICが外貨供給保証をすることには、為替リスクが生じる可能性があります。しかし、エクスポージャーと呼ばれるリスクにさらされる金額は、外貨供給保証額全額ではなく、為替リスク部分だけとなりますので、そこを
相手国政府に保証させるなどの対策も考えられると思います。
社債での資金調達は、通常の融資とは異なり、必ずしも定期的に元本返済をする必要がありません。定期的には金利だけを支払い、元本は十年後などの償還時に一括返済するという
設計も可能です。私がニューヨークで手がけたメキシコ
案件も、元本は償還時一括返済という
設計でありました。現時点での財務体質は弱いが、中長期的な成長が期待される国において、そして、成長に伴って収益の向上が見込まれるプロジェクトには、最適の資金調達手段です。
また、社債でありますから、流通市場、セカンダリーマーケットがあります。プロジェクトが順調に回り出せば、社債を売却して現金化し、新たなプロジェクトへの投融資に回すことも可能です。
そこで、JBICがSECのルール百四十四Aに基づいて社債を引き受けることについて、また、現地通貨での収入しかない途上国のプロジェクトにおいて、JBICが実質的に外貨保証を供与することについて、
財務大臣の所見を伺います。
最後に、本
質疑の中でも申し上げましたとおり、
インフラ海外展開は、
我が国成長戦略の重要な柱です。そして、
日本企業はこれまでも、国際競争が激しさを増す中で必死に取り組んできました。
政府もそれを後押ししていることを高く評価します。
なぜなら、化石燃料を始め、資源を持たない
我が国が、今後も現在の生活水準を維持向上させていくためには、
海外の人が買いたいと思う物やサービスを誰かが供給して外貨を稼ぎ、その外貨で、必要な資源、物資、食料を買わなければならない経済的宿命があるからです。
この宿命を考えるとき、
インフラ海外展開を始め、輸出関連企業を後押しすることは、
我が国が将来にわたり生き抜いていくためにどうしても必要なことです。
しかし、その後押しは、過度な円高是正については一定の評価をするものの、効果の割には弊害が大きい超金融緩和政策を継続することではありません。
個人的見解ながら、TPPなど質の高い面的、広域的経済
連携の推進など、企業が
世界じゅうで自由に活動できる環境を整えること、そして、激しい国際競争の中でイコールフッティングの環境を整えることこそが、輸出関連企業への真に有効な
支援だと思います。
GDPに占める個人消費の割合が六〇%、七〇%を超える先進国においては、生活者の暮らしがよくなり、個人消費がふえない限り、強い経済にはなりません。企業の内部留保の積み上がりや現在の株価水準など、一見好調に見える経済の姿は、実は、輸入物資の値上がり等による一般生活者の可処分
所得の減少分が企業へと移転した
所得移転の結果であります。
とっくに途上国を卒業して先進国となっている
我が国の、そして成熟社会になっている
我が国の
政治は、生活者、将来世代を最優先する
政治でなければなりません。生活者、将来世代を最優先する
政治の実現のため、再度、
政権交代をなし遂げたいという強い思いを表明して、
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣石井啓一君
登壇〕