○階
委員 私は、希望の党を代表し、
裁判所職員定員法の一部を改正する
法律案に対し、反対討論を行います。
平成二十七年の改正の際にもこの場で反対討論を行いました。当時も上川
法務大臣でしたが、そのときに
指摘した問題点の中には、いまだ解決されないどころか、かえって深刻になったものがあります。
以下、三点申し上げます。
第一に、
平成二十七年から昨年までの三年間で、
判事の定員は百十二名、実員は百二十三名も
増加しています。実員の
増加率は六・五%にも上ります。このような大幅な
増加は、過去に大量に採用した
判事補の方々が十年を経て
判事に昇格する時期を迎えたためであり、
裁判官の身分保障の
観点からやむを得ない面があります。しかしながら、
国民が納める貴重な税金を使って
増員する以上、
増員に見合った成果を上げる責任があります。
最高裁は、成果指標として、争いある対席判決の審理期間を十二カ月程度にすることを挙げていましたが、直近の
数字を見ると、目標からむしろ遠ざかっており、責任を果たしていません。
第二に、審理期間の短縮が困難な理由として、
最高裁は
民事訴訟事件の内容の複雑困難化と専門化を挙げています。しかし、その克服のための取組が不十分です。
私は、
民事訴訟の複雑困難化や専門化に対応しつつ審理期間を短縮するためには、ICTの素養を含めた、あるいは語学の素養を含めた多芸多才の有為な人材が数多く
裁判所に集まり、こうした人材が合議体を組んで
事件処理に当たる必要があると
考えます。
しかし、量的、質的に
充実した
法曹を輩出するはずだった法科大学院への入学者は年々減り続け、それに合わせて入学者の質的水準も低下しています。司法試験合格者は何とか千五百人を維持していますが、
裁判官にふさわしい人材は不足し、
裁判所側の採用努力の不十分さもあって採用数は減り続けています。
これを打開するには、高い授業料と長い時間をかけても教育効果が乏しい法科大学院の修了を司法試験の受験資格とする
制度を廃止すべきです。あわせて、予備試験も廃止して、司法試験を自由に受けられる仕組みに戻すべきです。
本日もそのような提案を行いましたが、来年三月で法科大学院の集中改革期間は終わろうとしているのに、いまだ政府は消極的です。これでは、審理期間の短縮目標はいつまでたっても達成できないことは明らかであります。下級
裁判所における
事件の適正かつ迅速な
処理を図るという法改正の目的は破綻していると言わざるを得ません。
第三に、
平成二十五年の本法改正以降、当
委員会では、
判事補の定員の充員に努めることという内容を含む附帯決議をたびたび可決してきました。にもかかわらず、その後、政府と
最高裁は、この決議を遵守するどころか、採用の減少と過剰定員の放置により欠員を増大させています。
検事並みあるいは十年前の
判事補並みの欠員数にとどめるためには、今回の
審議で明らかになったとおり、法改正で
判事補の定員を仮に二十五減らしたとしても、来年度は何と二百人程度採用しなければなりません。これは明らかに不可能です。予算の適正な管理という
観点からも、実情に見合った
判事補の定員数に改めるべく、もっと大幅な定員削減を行うべきです。
以上のとおり、成果指標が達成されないのに、目標未達の原因を真摯に分析せず、改善のための方策をおざなりにする
最高裁と
法務省のあり方は、KPIやPDCAサイクルを重視する与党議員の皆さんとしても看過できないはずです。
委員各位に対し、本法案への反対をお願い申し上げるとともに、三権分立を担う
裁判所の健全な発展のためにも、危機的
状況にある
法曹養成
制度の見直しに向け与野党で真剣に協議する場を設けることを御提案申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)