○若田部
参考人 お答え申し上げます。
私、
日本銀行の副
総裁就任後の
記者会見でも述べさせていただきましたし、
国会での、衆議院、
参議院での所信表明でも述べさせていただきましたが、基本的には、
日本銀行が現在行っている政策というのは、方向として正しいし、成果を上げているというふうに
考えております。
二%の物価安定の目標の実現を目指して行っている現在の
金融政策によって、企業の収益が向上し、そして雇用
状況が大幅に改善している、総雇用者所得が非常にふえている、そのことによって貧困家計の数も減ってきているというふうなことは、非常によいことであるというふうに
考えております。
ただ、御指摘のとおり、やはり二%に達していないということは事実でございまして、このことにつきましては、
日本銀行も総括的検証という形で一六年の九月にレビューをしております。
そこでは、消費税増税後の需要の低迷であるとか、新興国経済の低迷であるとか、あるいは原油価格の下落といったいろいろなことが挙げられておりますが、しかし、物価を見ますと、基調的な物価の変動も、マイナス圏内のところからいよいよプラス圏内へと入りつつありますので、いよいよ、物価が継続的に下落するという
意味でのデフレとは言えない
状況になっているかというふうに思います。
私自身の抱負としましては、こういったこれまで成果を上げてきた二%の物価安定の目標を達成するというレジーム、スタンス、
金融政策の基本的な態度というのを堅持し、可能であるならばこれを強化するということによって、何としてでも二%を達成したいというふうに
考えております。
ただ、その
過程におきましては、これは淡々粛々と、
金融政策にかかわる経済、物価などなどのデータを虚心坦懐に見させていただいて、その都度、適切な政策を
判断してまいりたいと思います。
御
質問はあともう二つ、中央銀行の独立性の問題、それと日銀のBS、バランスシートの健全性の問題に及んでいるかと思います。
中央銀行の独立性というのは、私は、非常に重要な概念でありまして、基本的には、
民主主義の社会における
組織というのは民主的なコントロールがやはり及ぶべきものであるというふうに
考えておりますし、実際、日本でも、
日本銀行法が
国会の議決を経て制定されているというところから、中央銀行というのは、その
意味では、
民主主義の制度の一環として政府の中に位置づけられている、
政治の中に位置づけられているというふうには思います。
そのもとで、実際に、
日本銀行法では、目標とそれと手段に関しては
日本銀行が決めるという形になっているのは事実でございまして、
法律的にはそうなっていますし、二〇一三年一月の政府と
日本銀行の共同声明も、同月の、二〇一三年一月の政策決定会合において
日本銀行が採用するという形になっております。
ですので、中央銀行の独立性というのは、その
意味では担保されていて、そして、それが今は政府と、日銀法第四条的にいうと、政府の政策と連携を密にする形で行われているというのが現状で成果を生んでいる理由ではないかと思います。
もう一点、BS、バランスシートの健全性の問題がございます。
これは、簡単に申し上げますと、バランスシート、現在、確かに、
日本銀行が長期国債をたくさん買っている中で、買っている間は収益が出てきます。それが、今度、買うのをやめていくとだんだんと損失の方が出てくるということがいろいろと懸念もされてはいるわけですけれ
ども。
しかし、これは出口のやり方によりますけれ
ども、
日本銀行がこれまで持っていた保有国債を全て売却するようなことではなくて、ある程度、一部ずつかえていくというような形であるならば、金利が上がる中で、
日本銀行が保有している国債の金利も上がって、金利収入も入ってくるというようなことですので、バランスシートの健全性というのは私は余り懸念するには及ばないと
考えております。
一番大事な理由は、
日本銀行の場合は通貨発行益がございますので、長期的に見れば、通貨を発行することによる利益というのが
日本銀行の中には必ず入ってくるということです。ですので、短期的には多少そのバランスシートの、国債の含み損などによって損失が顕在化するかのような懸念もございますが、長期的には
日本銀行のバランスシートの健全性というのは維持されていくというふうに
考えております。