○岸本
委員 希望の党の岸本周平でございます。
本日、
所得税法等の
改正法案の審議で
質問に立たせていただきます。ありがとうございます。
きょう午前中から、八時半からという、大変早い時間から充実した審議が行われていると思います。いろいろな論点が出てきたと思いますけれども、私は、この三十分をいただきまして、いわゆる
租税特別
措置について
質問をさせていただきたいと思います。
今も同僚議員からありましたけれども、例えば
所得拡大促進税制についてきょうは取り上げてみたいと思いますけれども。
実は、
租税特別
措置、これは
法人税の関係の
租税特別
措置をきょうはやらせていただきたいと思いますが、
租税特別
措置というのは非常にトリッキーな
制度でありまして、いいところも悪いところもあるんですが、ほとんど悪いところしかないんですね。
いろいろな理由がありますけれども、いわゆる
課税ベースを広くして、できるだけ税率を下げていくというのが、まさに公平、
中立、簡素の
考え方からすると当然のことなんですけれども、
租税特別
措置がふえますと、
課税ベースが侵食されますので、
課税ベースが小さくなります。
課税ベースが小さくなりますと、その分税収を上げようと考えれば、税率を高くしなきゃいけない、そういうことになるわけですので。
これまでの世界的な
法人税制
改革の潮流というのは、
租税特別
措置はやめる、
租税特別
措置はできるだけやめて、
課税ベースを広げて、その分税率を下げていく。これは
日本でも行われようとしてきたわけであります。これは自民党政権であれ民主党政権であれ、
法人税改正というのはそういうことなのであります。
租税特別
措置ではない方がいいんですね。
ただし、その時々の
政府がどうしてもやりたい
政策がある。それをやるときに、これはあめとむち、北風と太陽なんですけれども、やれば税金が安くなりますよという形で後押しするというやり方、あるいは、やらなかったらこういう罰則がありますよ、罰金がありますよというのがもう
一つのやり方です。普通、
税制というのは罰金じゃありませんので、
税制を使ってネガティブな
政策をとるというのは、これは税の理論からするとおかしいんです。むしろ、こういういいことがありますよといって
政策誘導するというのが
一つの手法としてあり得るというのが
財政学の
基本なのでありますけれども。
問題は、
政策効果がはかりにくいんですね。午前中の議論でも
主税局長がおっしゃっていました。
政策効果が非常にはかりがたいんです。場合によっては、はかれないと言ってもいいかもしれません。
もともと、
日本では
租税特別
措置というのはやりっ放しでして、実績
調査もしていなかったんです。これが、民主党政権でようやく実績
調査をしましょうということで国会に報告をしていただくようになって、とても詳細な実績だけは出てくるようになりました。これは主税局の
皆さんもお手間はかかるんですけれども、係を
一つつくってまでやっていますので。だけれども、結果としては、データが出てきますので、
実態が大分わかるようになってきました。
だけれども、実際がわかるということと
政策効果があるということは全く別なんですね。ここが難しいんです。
例えばですけれども、例えば、子供のあれで、読書の時間の長いという、縦軸でとります、学校の成績というのを横軸でとりますと、これは、こういう統計がありますけれども、
調査がありますけれども、明らかに正の相関をするわけです。読書の量の多い子供ほど成績がいいというような正の相関のグラフができます。
だけれども、ここからは何も読み取れないんですね。これは単なる事実です。因果関係は全くわかりません。表を見たからといって、子供に読書をさせたって、成績が上がるかどうかわからないんです。読書の量の多い子供が成績がいいという、それは相関はしますけれども、じゃ、読書をしたら成績がよくなるかというと、全く関係のないことなんです。
つまり、学力の高い子がたくさん本を読んでいるだけかもしれないんですね。学力が先に来ているかもわからないんです。因果関係は証明できないんです。あるいは、それ以外の影響ですよね、御家庭の収入あるいは親の教育熱心さ、そこには出てこないいろいろなファクターがありますので、これはできないんですね。
ですから、この
所得拡大促進税制、今、副
大臣が実績があるとおっしゃっていました、十万件だと。十万件は実績じゃないです、利用した人の数なんです。だから賃金が上がるかどうかは全く証明できてないんです。多分、証明できないと思いますよ。
大体が、これは今、
青山先生、
企業経営されているとおっしゃったし、
麻生大臣も経営されていたし、
与党議員の方にもたくさんいらっしゃるでしょうけれども、
税制があるから給料を上げるという経営判断をする経営者はいないと思いますね。
設備投資の減税があるから
設備投資をするという判断をする経営者はいないと思います。
私は四十六歳で大蔵省が嫌になってトヨタ自動車に行ったわけですけれども、トヨタ自動車へ入ってびっくりしました。当たり前ですけれども、資本計画、いわゆる
設備投資をするところの
会議で、こんな
税制がありますから
設備投資しましょうという議論は
一つもありません。(発言する者あり)おたくはそうかもしれません。それはまだ統計学的に有意かどうかわかりませんので、統計学的に有意かどうか証明できませんので。少なくとも、多くの会社では、
税制があるから、減税
措置があるから、
租税特別
措置があるからということで、それを中心に経営判断することはないです。
私が一番ショックだったのは、土地の買いかえ特例というのがあるんですね、土地の買いかえ特例という
租税特別
措置があるんです。これは、いろいろな
政策的に、この土地を売ってこの土地を買えば税金がまかりますよというのがあるんですけれども、トヨタみたいな大
企業ですと、一年間に物すごい数の土地の売買をやるんです。全国でありますから、売ったり買ったり、売ったり買ったりするんですね。それを、決算する前に、経理部が大きな
会議室でそのデータを全部出して、売った土地と買った土地でかるた取りをするんですね、突き合わせするんですね、事後に。
ですから、
租税特別
措置というのは、経理部にとって、あるいは経理担当の重役にとってはとても大事なことなんです。事後にそれを使ってどれだけ
納税額を減らすかということですから、物すごい重要なんです。でも、それは
基本、事後なんですね。
ですから、
所得拡大促進税制、いろいろと工夫をされておられると思います。これは
平成二十五年
改正から創設をされまして、二十五、二十六、二十七、そして二年続いて二十九も
改正され、これもきょうの審議で明らかになっております。そして、今回また
改正をされる。
改正の中身について細かいことは、先ほども
質問に出ましたので重ねて聞くことはやめますけれども、この
税制が本当にその
効果があったのかどうか。
ただ、実績は、確かに、
うえの副
大臣おっしゃったように出ておられますし。これも主税局が優秀なんでしょうね、当初見積りがあるんですね。当初に、
税制をつくるときに、一年間でどれぐらい減収額が出るだろうかというのを見積もるんですけれども、なかなかすごくて、二十五年度につくったときには、見積りが四百二十億、四百二十億ぐらいは減税になるかなと思ったら、実績が千五十億だったんですね。済みません。見積りが千五十だったんです。実績が四百二十で少なかったものですから、これは利用者が少ない、だからもっと使い勝手をよくしようということで、二十六年
改正で使い勝手をよくされたんですね。
それはいいことかもしれません。使い勝手がよくなったので、見積り二千百十億円だったのが、二十六年度が約二千五百億円、上振れています。そして、二十七年度も、二千五百億円の大体の見積りで、二千七百七十四億円、約二千八百億円利用があって、二十八年度は、同じ二千五百億円の見積りで、三千二百億円という実績がまさにあったわけですね、今十万件とおっしゃったやつです。
使ったんですけれども、これはたまたま黒字
企業で、黒字しか使えませんからね、租特は。黒字の
企業で、たまたま調子がよくて給料を上げられた会社が事後に御褒美で減税
措置をいただいた、それが三千二百億円だったというのが二十八年度だと思うんですけれども、そこを
うえの副
大臣、どうお考えになりますか、御担当者として。