○浅野
委員 ありがとうございます。
私は、ここで重要なのは、やはり、
中国や
アメリカ、そのほか
外国と比べても、今、
日本の労働コストがもはや決して高くはない水準に達しているという、この事実が最も重要なんだと思っております。
これから第四次
産業革命の時代を迎えるに当たっては、これを更に生産性を向上させていくことで
海外に勝っていく、それが大きな方向性だと
理解をしておるんですけれ
ども、それによって企業の
収益力を高めて、それが最終的には、賃金の押し上げ圧力になり、国民の所得がふえて、
国内経済も好循環になる、こんなストーリーを描いているのではな
いかというふうに思っております。
ただ、しかし、きょう私が
指摘させていただきたいのは、最近では、生産性が高まれば企業は労働者の賃金をふやす、このロジックというのが必ずしも通用しなくなってきているんじゃな
いか、そういうお話をさせていただきたいと思います。
これは、イギリスの
経済誌の「エコノミスト」でも論じられていた内容ですので、それをちょっと紹介したいと思いますが、そもそも、グローバル
経済のもとでは、新興国や途上国も含めた熾烈な国際競争を繰り広げていることによる賃金の押し下げ圧力というのが
日本には当然ながらあるわけでありまして、こういった中で活動している
日本の企業というのは、やはりどうしてもその賃金を抑制しようという姿勢が出てきてしまいます。
こういう
状況で、何とか企業の生産性を高めて、賃金も上げられるような環境をつくっていこうということで、今取り組もうとしているわけでありますけれ
ども、こうした、テクノロジーが進化をして生産性が高まるほど、実際には、雇用する側は、利益をふやすために労働者を減らす、いわゆる省人化をするという選択肢も見えてくるわけであります。まして、経営
状況が苦しい事業者の場合は、その選択肢を選ぶ可能性はより高まるというふうに思っています。
一方で、労働者にも生活がありますから、失業すると、大抵別の仕事を探し始めます。求職者の数がふえれば賃金は停滞若しくは低下をする。これは
市場原理ですので、そうなると予想されています。
これを実際にちょっと調べてデータとしてお示ししたのが図の八になります。一番最後のものになるんですけれ
ども、これは、二〇一二年から一七年の間、有効求人数の増減とそれに伴う賃金の増減というのの相関をとったものであります。
これを見ると、有効求人数が二〇一二年の三月を一〇〇とした場合に、二〇一七年三月に、一四〇ですとか一六〇、二〇〇あたりまでいっている業態もありますけれ
ども、全体としては、有効求人数がふえればそれに応じて賃金も上がっているという傾向が見てとれると思います。
このように、はっきりと、雇用が賃金にどういう
影響を与えるかというのは、もう既にデータであらわれているわけであります。つまり、生産性の向上が雇用を生めばいいんですけれ
ども、それが
産業現場の省人化という方向に働いてしまいますと、
国内の賃金水準の低下要因となる場合があるということをここでは申し上げたいと思います。
つまり、
日本において、
国内経済の好循環を達成するためにはやはり生産性の向上が必要なんですけれ
ども、生産性の向上をすれば、すなわち賃金が必ず上がるわけではなくて、その生産性の向上と賃金の上昇の間には必ず雇用の創出というものがなければいけないということであります。間違っても、省人化という方にかじを切ってはいけない。これをきょうは申し上げたい。これが重要なポイントでございます。
そこで提案をさせていただきたいと思いますが、これから、第四次
産業革命時代におけるIT技術の利活用、そして人材や設備投資の促進を進めていく国の
方針でありますが、
産業現場の省人化ではなくて、
国内雇用の維持あるいは創出という方向に力が働くように、ぜひ、例えばコネクテッド・インダストリーズの重点五
分野、あると思いますけれ
ども、ああいう
分野で取り組まれる施策においては、雇用の創出数などといったものをKPIに置いて取り組んでいただきたいというふうに思っております。
これに関する政府の
考えをお聞かせいただきたいと思います。