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三村参考人 茨城
大学の
学長の
三村でございます。
本日は、大変貴重な
機会をいただきまして、ありがとうございました。
早速、現在
審議をされておられます
気候変動適応法に関して、私の
意見を申し上げたいと思います。
お
手元に
資料を配っておりますが、その前半の部分を使って
お話をさせていただきたいというふうに思います。
私の
意見陳述の要点は三点ございまして、
一つは、現在の
気候変動の
影響の
特徴、
特性はどういうものか、二番目は、
対策の考え方、三番目は、
適応策についてどのような点を考慮すべきか、そういう点でございます。
一枚めくっていただきまして、
右下にP二と
ページが振ってあります
ページですが、もう
皆さん御承知のとおり、
世界じゅうでさまざまな形で
気候変動の
影響があらわれている。これは二〇一四年に
IPCCの第五次
報告書でつくられた図で、この模様は、異なる
影響があらわれているということですけれども、
世界じゅう、どの
地域でも
影響があらわれているということを示しております。
それから、下段の図ですけれども、これは、ミュンヘン再
保険会社が毎年
災害事象について
報告を出しておりまして、下に説明が書いてありますが、赤い印が地震、それ以外は水害、
気象災害、
気候変動というふうになっておりまして、
高温、
洪水、渇水それから
山火事とか、もう
世界じゅうでそういうものが広がっているというようなことを
報告しております。米国でも、昨年の
被害が三千億ドルを超えたというような発表もことし一月にありました。
次の
ページをお開きいただければと思います。
気候変動の
影響ということですけれども、
気候変動自体は、
気温の
上昇や
降雨の
変化、
海面上昇、
気象の
極端化、それから原因になります
CO2の
濃度上昇。つまり、これらは
地球の物理的な
環境の根本が変わるということですので、その
影響は非常に広い
範囲に及ぶということをこの図は示しております。
これらに基づいて、三
ページ目の下でございますが、
影響の
特性を考えてみますと、先ほど言いましたように、非常に広い
範囲に及ぶ。
二番目は、実はその
影響の中には時間のスケールの異なるものがあるというのも
特徴の
一つです。短時間の間に極端な
影響があらわれる、時間とか月ぐらいのオーダーであらわれるもの、
異常高温とか
集中豪雨等であります。その次に、長期的に徐々に
平均状態が
変化する、数年から数十年かけて
平均気温や
降雨のパターン、
海面上昇、海洋の
酸性化、それらに伴う
生態系の
変化等が起きて、気がついてみたら
地球の
環境条件が大きく変わっていたというようなことになるというようなものもございます。さらに、超長期の
変化というようなものもございます。
三番目は、
適応に非常に強い
関係がございますが、
影響の
あらわれ方は
地域によって一様ではないということが重要な点であります。
それから、私の
認識としては、仮に
パリ協定の二度
C目標が達成されても、
今世紀中には更に
影響が激化するということが予想されておりますので、
適応が必要ということであります。
四
ページ目、次の
ページをごらんください。
これももう既によく知られていることでありますが、
気候変動の
対策には、
緩和策、
適応策という二つがございまして、
気候変動、
温暖化そのものの根本的な
対策をするというのが
CO2の削減をする
緩和策、一方、
影響があらわれてきているのでその
影響に備えるというのが
適応策ということですけれども、実は、その
緩和策も、きょう
対策をとったからすぐあしたから
効果があらわれるというわけではなくて、そのためには数十年
程度の時間がかかる。
今世紀末には二度Cが達成されたとしても、現在までの百五十年間で〇・八五度の
世界平均気温の
上昇があって、その結果これだけの
影響が出ているわけですから、今後の
上昇を考えれば、それへの
対策が必要ということであります。
次の
ページ、五
ページをお開きいただけますでしょうか。
本題でございます
気候変動適応策の
論点ですけれども、科学的な
観点からは
適応策はどういうふうにつくられるかということですけれども、将来の
影響に対する
対策ということですから、
予測をする必要があります。
最初に、全
球気候モデルという、スーパーコンピューターを使った
モデルで
地球全体の
予測をするんですけれども、その分解能は百キロから二十キロということで、とても細かくは見られない。
日本の上空とかあるいは
関東地方とか、そういうものを切り出してより細かく見るのをダウンスケーリングといいます。これらの
技術は非常に高度な
技術であります。その結果に基づいて、
地域ごとの
影響を
予測し、
計画を立案する。
そういうことで、
日本全体の
影響については、
平成二十七年の
中央環境審議会の
意見具申において、下のように、どの
分野のどの
影響が重大で
緊急性を持つかというような見取り図が描かれていますが、
適応策を実施するためには、これを
日本全体ではなくて、都道府県とか市町村とかそういう
レベルでこういうような
認識が得られなきゃいけないということであります。
さて、その
論点でございますが、次の
ページをごらんください。次の
ページの下のところに、
気候変動適応策の
論点というのをまとめてございます。
幾つかありますけれども、
一つは、現在顕在化している
影響と将来予想される
影響に対する
対応。そうすると、将来何が起こるかという科学的な
予測能力を高めるということが非常に重要になるというわけであります。
観測やあるいは
気候などに関する
研究が重要ということですけれども、このことは
法案の第一条にも示されているとおりでございます。
二番目は、不
確実性への
対応と書いてありますが、将来のことですので、確実にこれはこうなるとは言えない、それに対してどうするか。これは、実は、
自治体の方と話していると、将来がはっきりしないことに対して
政策はとれないというふうにいつも言われて、これまでは大変苦労してきたところであります。
それの
対応としては、
幾つか提案、代表的なものを三点書いておきましたが、
一つは、後悔の少ない
政策、ロー・リグレット・ポリシー。現在の
影響に対する
対策をとれば将来にも役に立つだろう、そういうようなもの。
二番目に、もう先を見越してやってしまう。これは、
世界の中で、例えば一メーターの
海面上昇を想定して橋の高さを一メーター上げるとか、そんなようなことをやるということであります。
三番目が非常に有効だと私は考えておりますが、五年
程度置きに
影響評価や
適応策の見直しを行う。これは、二〇〇八年の英国のクライメート・チェンジ・アクトの中でそのような方式が取り入れられており、それから、
パリ協定でも五年置きに
世界の
対策状況を評価するということになっております。
つまり、不
確実性がある将来に対して、
温暖化の
現象自体の
進展と、それから我々の
研究による
認識の
進展をあわせて見直して、よりいいものにしていく、そういう非常に知恵のある方法ではないかと思います。本
法案でもこれが取り入れられていることに対しては、非常に重要な点だというふうに考えております。
次の
ページをごらんください。
論点の二
ページ目ですけれども、
対策には
地域が主体ということです。
これは、
影響に非常に強い
地域性があるということなので、それぞれの
地域ごとにやらないと
意味がないということですが、それをやる上で、
政府は、全般的な
推進や
科学的情報の
提供、
政策メニューの
提供等、重要な
役割を持っておられるのではないかというふうに考えております。
現状の私の
認識では、
適応関連情報や科学的な
情報は必ずしも十分ではない。
法案にあります
全国情報センターやあるいは
地域気候センターでそれらを深めて、私自身は
地方大学の
学長をやっておりますけれども、その
地域のことをよく知る
大学や
研究機関の
知見も活用するというようなことでそこのところを分厚くすることが重要ではないかと思っております。
四番目に、他の
政策分野、多様な
関係者との
連携が重要ではないか。
これは、何度も指摘されていますように、
気候変動の
影響というのは非常に広い
分野に及ぶものですから、既にそれらの中ではいろいろな
対策が行われている、それを活用したり強化をするということが重要で、そのための
関連部局の間の
連携、
縦割りを排してそういう
連携をとるというような
仕組みが重要だと思います。
それから、
論点の三
ページ目ですけれども、
途上国支援や
国際協力であります。
これは、直接的な
対策への
支援ということがいつも焦点になりますけれども、私は、その前に、各
途上国が
自分たちの将来を
自分たちの力で考えることができるようになる科学的な力とか、あるいはそれをできる
人づくり、教育の
支援というのが重要なのではないかというふうに思っております。
最後でございますが、このように
適応策を考えていきますと、持続的な
地域社会の構築とか、あるいは
地方創生、そういう現在行われている大きな
政策とのつながり、連結の視点が非常に重要ではないか。
例えば、
地方創生でいいますと、人口の減少に伴って、
コンパクトシティーだとか、そういうような構想があります。そういうところに人が集まれば、防災の面でも人々の安全を守りやすくなるのは明らかでありますし、そういう
意味でのさまざまな
政策との間の
相乗効果がある。
気候変動適応を孤立した
取組にはしないで、そういう大きな
政策の中で位置づけていくという
観点がより明確になればすばらしいというふうに思います。
その中には、単に悪いことが起こるから受け身になるというだけではなくて、新しい
環境の
状況を活用した新産業や産品の
開発ということも考えるべきだと思っておりまして、
適応型農業というので、
九州の米は二〇〇〇年代の
最初に
高温障害を受けて相当
被害を受けたんですけれども、それを逆手にとって、今は銘柄米をつくり出して、
九州は非常に活発な新しい米の産地になっていたり、あるいは各地でワインに挑戦するというようなことが行われている、そういうことであります。
そのほか、
適応に向けた
企業の
取組、ビジネスというようなことも必要であろうと思います。
最後の
ページでございますが、以上申し上げたことを簡単にまとめさせていただきますと、最近の
気候変動の
影響というのは非常に顕在化してきている。
パリ協定の
目標を実現したとしても、
今世紀末までに
影響の一層の激化というのは避けられない。そのための備えをするという
意味では、この
法案は非常に重要な
役割を持っているというふうに
認識をしております。
二番目に、
法案の前に、既にさまざまな
自治体、
政府におかれても
取組を始めておられるわけですけれども、
影響が
地域ごとに異なるということなので、それぞれの
地域に即した実効的な
政策の策定が課題であろうと思います。そういうふうに考えると、各
地方、あわせて、
地方創生とか持続可能な
地域づくりというようなことを一生懸命やっておられるわけですから、それとどう組み合わせるかという
観点が非常に重要ではないかというふうに思っております。
それから、この
法案自体は、それらの
取組を
推進する上で法的な基礎を与えるものであって、非常に時宜にかなっているというふうに考えております。
四番目に、
最初に申し上げましたように、将来予想される
影響、
環境の
変化に備えるということですから、そういうような
研究開発も含めて、
自治体や
大学、
研究機関、
企業等を含めた
地域ごとの
推進母体を形成するというようなことが重要ではないかと思います。
途上国の
支援についても、
国際社会の中で我が国のリーダーシップを発揮する上で非常に重要だというふうに考えております。
以上、私の
意見であります。何か御質問がありましたら、後ほど答えさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)