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西田実
仁君 話は変わりまして、経済の話をさせていただきたいと思います。
今回また連立政権合意というものが、三回目、第二次
安倍内閣で交わされました。一回目、二回目にあって今回の連立政権合意になかった言葉が、
一つはデフレという言葉でございました。一回目も二回目もデフレからの脱却ということが入っていましたけれ
ども、今回は力強い経済の再生という言葉になっている。しかし、デフレが終わったということはまだ言えないと。それはやはり、経済は明らかに好転はしているかもしれないけど、まだまだ賃金が良くない、個人消費も良くないと、こういうところが一番の問題になっているわけでございます。
そこで、今日は企業の労働分配率を取り上げたいと思います。
労働分配率というのは、分母に企業の利益とか減価償却費や支払利息の総額である付加価値額というのがありまして、分子の方には、ここで言う労働分配率は従業員、役員ではなくて従業員の人件費を取ってございます。これを長きにわたって見てみますと、赤の方が資本金十億円以上の大企業の労働分配率、これは全産業、全規模の青のラインに比べますとはるかに下がっていると、下回っているということが分かります。
もちろん、労働分配率というのは、先ほど申し上げたように、分母に付加価値、分子に人件費等ですから、景気が良くなりますと分母が大きくなって、しかし分子の人件費は急に増えませんから、景気が良くなると労働分配率というのはどうしても下がるという傾向があります。
しかし、私がここで問題にしておりますのは、その下がる幅が、あるバンドまでは、確かに過去もそうでした、しかし今回はそれを超えて下がってきているというところに着目しなければならないということであります。
こちらの表もまた見ていただきたいと思いますけれ
ども、この表は第二次
安倍内閣におけます二〇一二年度から一六年度の五年間で当期純利益がどう分配されているのかという利益分配を示したものであります。
財務省の法人企業統計から取ったものでありまして、合計の欄を見ていただきますと、この二〇一二年から一六年度、当期純利益は二十五兆九千億円増えております。その増えた分を従業員人件費には五兆三千億、配当に六兆一千億、設備投資二十五兆三千億というふうに分配をしております。この分配、どのぐらいしているかという分配率が一番下の行に書いてございまして、利益分配率、十億円以上の大企業は、賃金、従業員人件費にしても、あるいは配当、あるいは設備投資にしても、中堅・中小企業に比べると低いということもまたこれ見て取れるわけでございます。
ここで私が問題にしたいのは、過去の景気が良くなったときより労働分配率がなぜ落ち込んでいるのかというところであります。私の
一つの仮説ですけれ
ども、やはりこの時期というのは、いわゆる企業の稼ぐ力というコーポレートガバナンス・コード、あるいはスチュワードシップ・コードというものが導入されているということに着目をしなければならないと思います。片仮名で何か難しい、よく聞こえますけれ
ども、コーポレートガバナンスというのは、株主とかステークホルダーといういろんな
関係者、利害
関係者の責任を定めたもので、企業統治改革と言われている。対象は上場企業。スチュワードシップ・コードというのは、いわゆる生命保険会社とか信託銀行の機関投資家の行動原理、原則を定めたものと。こういうものでございます。
そこで、次のパネルを見ていただきたいんですけれ
ども、このコーポレートガバナンス・コードあるいはスチュワードシップ・コードということと労働分配率の低下というのは決して
日本だけではないということを示したものであります。
アメリカにおきまして、二〇〇一年にエンロン事件が起き、その翌年、企業改革法ができ、コーポレートガバナンスが導入されて以降の労働分配率の下がり方、あるいは、ドイツにおいてもイギリスにおいても、いずれにしてもこのコーポレートガバナンス・コード等が定められたときを起点として全体的に労働分配率の低下傾向というのが見られるわけでございます。
私は、
総理が賃金三%以上上げるようにということを財界に
協力を求めて、財界もそれに応えようと努力されていると思いますけれ
ども、実際にはしかし、このコーポレートガバナンス・コードあるいはスチュワードシップ・コードの制約と
政府による人件費引上げ要請のはざまで立ち往生しているんではないかという危惧を持っているわけでございます。
なぜならば、このコーポレートガバナンスとかスチュワードシップ・コードというのは、あくまでも株主の方から見た、投資家から見た企業のあるべき姿になりがちであります。本来は違いますけど、本来は違うんですけれ
ども、なりがちです。
経産省の方でレポートが出まして、ROE、株主資本利益率は八%以上が望ましいと、それにコミットすべきだというレポートが出たりすると、じゃ、その株主資本利益率を八パー以上にしないと機関投資家から株主総会でいろいろ責められてしまうということで、本来は中長期的な利益をしっかり
確保して、利益
関係者の株主だけではなくて、従業員とか取引先とかにも裨益をしていくということが基本的な考え方なはずなのにもかかわらず、やはり短期的な利益志向に走ってしまうということで、なかなか人件費に回らない、賃金に回らない、設備投資に回らない。むしろ、分母である株主資本を減らそうと自社株をどんどん消却をして、そしてROEを上げようという行動原理になりがちであるということが
日本のみならず諸外国においてもあるのではないかということで懸念をしているわけですね。
ここで、金融担当
大臣にお聞きしたいと思います。
金融庁では、内部留保を成長投資に回すように、企業に内部留保の水準の適切性や利用の在り方など説明責任を果たしてもらう指針作りに乗り出しているというふうにも聞いておりますが、是非その中に、役員ではなくて従業員の人件費による労働分配率は我が社はこのぐらいなんだということを示す、あるいは改善目標を示す、なぜそうなっているかの説明責任を果たしてもらうと。そういう大企業にいろんな法人税も減税してきているわけでありますから、それを還元するという話でやってきているわけですから、是非そういうことを盛り込むようにしていただけないかと思いますけれ
ども、いかがでしょうか。