○
篠原(孝)
委員 働き方改革、働き方改革と言われています。働き方改革の延長線上に住まい方改革があるんだろうと思います。
都市部の皆さんにアンケート
調査すると、老後はこの大都会じゃなくて地方の田舎で住みたいということで、まあ、近いからでしょうけれども、そのときにどこの県に住みたいかというと、長野県がいつも一位にランクされているんですよ。
こういうのがあるんだから、何かインセンティブをつけると、そういうことが幾らでもできる。もちろん、移り住む人もあるんですが、それよりも、長野で生まれて育って、子供
たちが都会に行っちゃっている、ちょっと来れば帰ってこられる、子育てぐらいしてやると。それは、たまに夏休みだけ行って
がんがんひっかき回されたら疲れますけれども、ずっと恒常的に、今それは小学生ので言われましたけれども、小さい子供云々というのは、子育てをしたでしょうから、なれておられると思いますよ。
ちょっと、では、今
大臣がおっしゃったので、僕のアメリカの留学時代の
経験。
何か四十四、五歳の若い美人のおばさんが大学院生に来られたんです。大学院なんて、
社会人大学生というのはそんなに多くなかったので、何で来られたかといったら、子育てが終わったから来たといって、僕は自分の子育てが終わったから来たのかと思ったら、違うんです。
親しくなっていろいろ話をしたんですけれども、高校を卒業してすぐ結婚して、子供ができて、そしてずっと働いてきた。それで、娘が結婚して、孫ができた。娘は働いているので、孫の子育てを頼まれて、ずっとそれをやっていた。孫の子育てをやって、小学校へ行くようになったから、大学院に来たというんです。へえ、そういう人生設計もあるのかというふうに感心しました。
日本は、こんな狭い小さな国ですし、行ったり来たりできますし、僕は、これは本当に、デュアルライフを考えて、それを推奨するような形でやっていったらいいんじゃないかと思います。
それで、ちょっと時間がなくなりましたので、そもそも論で言わせていただきますと、今、働くのが大前提になっていて、
保育園、幼稚園に行くのが大前提になっている。僕は、
大臣よりもちょっと上の世代ですけれども、団塊の世代ですよ。僕は
保育園も幼稚園も行ったことがありません。僕の一つ下の弟が、公会堂で、季節
保育園に行きました、田植えのときと、稲刈りのときだけ。うらやましくてしようがなくて、学校から帰っては公会堂に行って、弟のおやつをとってしまってえらく怒られたことがあります。なかったものでして。
それで、
保育園や幼稚園へ行かなくても、まあ、これだけ立派に育っているわけですからね、そんなにあれしなくてもいいと。だけれども、では、それはどうしてそうできたかというと、温かい地域
社会があったからですよ。僕なんかは、隣のおばあちゃん、とっくに亡くなりましたけれども、感謝しなくちゃいけないと思う。
畑へみんな、農家で、行ってしまう。柱に縛りつけられているわけです。わあわあ泣いていたからと、近所のばあさんが子守をしてくれるわけです。それで、来て、いない。いなくたって、何にも心配しないで、また畑へ行っちゃうんです。余りかわいそうで、泣いていたから一緒に子守をしてやった。そういう温かい地域
社会があったわけですね。
今、働き方改革で、女性も働かなくちゃならないと言っていますけれども、これはちょっと古い話ですけれども、皆さん、関心がありましたらぜひ読んでいただきたいと思います。古いので、今、こういうことを言ったり、本を読んだりしている人はいないのかもしれませんけれども、まあ、ちょっと左がかった学生
たちが読んだ本で、イバン・イリッチというのがあるんです。
「エネルギーと公正」という本は日本語にも訳されています。「シャドウ・ワーク」というのは、高木副
大臣なんか聞かれたことがあると思う。女性の働きを、影法師
労働というのをシャドーワークと。これも大事なんだ、つまり、子育てとか家事
労働、これを評価しないで男女が分断されているということを、オーストリアの哲学者、アメリカでも活躍した人が言ったんですね。
それから、みんな経済学者ばかりに、幅をきかせていると、この人
たちに任せておくと、世の中狂っていっちゃうんじゃないかと僕は思いますね。人間を見て、文化人類学的な
観点から、エマニュエル・トッドというフランスの人口学者がそうですけれどもね。
そういうのでいうと、マービン・ハリスというアメリカの文化人類学者、学会の会長もやっているんですが、ただただ露骨なことを書くのでひんしゅくを買っていました。フェミニスト
たちからは特にひんしゅくを買いました。
どういうことを言ったかというと、日本の今の姿がアメリカの昔を追っている形で、同じなんだろうと。彼はどういう
指摘をしたのかというと、「アメリカ・ナウ」というのは「アメリカは、なぜ」というのでサイマル出版から一九八四年に出版されています。
どういうことを書いたか。そのころ、日本がアメリカの一番敵対国になると言われていたときです、通商摩擦で。スーパー三〇一とか後から出てくる。
ところが、アメリカががたついてきている理由は何だといったら、これを言うとみんなにわあっと怒られるかもしれません。私が言っているんじゃないですよ。この文化人類学者が言っているのは、アメリカの女性がお金を目指して外に働きに出たことがアメリカの混乱の
原因だと言っている。ひび割れ
社会のアメリカという。
どうしてそう言ったかというと、これもまた、言うと失言になってしまうかもしれませんけれども、だめな男よりも立派な女性の方が立派に決まっている、そっちがやってよと。だから、失業率が高いのは、立派な女性が進出して、当然のことだと。
それから、女性が働くことに熱心になり過ぎちゃって、子育てとか、この次なんです、地域
社会の紐帯、地域
社会のいろいろな慈善活動の中心になっているのをやめてしまった、だから、ぎすぎすして犯罪率も高くなってしまっていると。やはり、女性が家庭に戻れとは彼は言っていませんけれども、このことを考えないとアメリカはがたがたになっていくと。
これは、今の日本の姿に引き写しなんじゃないかと思います。働くことばかりが能じゃない。もちろん、仕組みとしては、産休がちゃんととれるようになったりしています。だけれども、地域
社会の紐帯、隣近所が何かを話している、そうすると、隣の子供も面倒見ておいてやる、いなくなったって全然心配しなくたっていいというような、そういう
社会をちゃんと目指していかなくちゃいけないんじゃないかと僕は思います。
余りにもいろいろな政策が経済、経済、かつ、都市部の利便性を追求する
ところに偏り過ぎているんじゃないかと思います。こういう
ところに歯どめをかけるのは、やはり
厚生労働省とか農林水産省とか、そういう弱者の方に光を当てる役所しかないんじゃないかと思いますので、加藤
大臣、頑張って職責を全うされることをお願いいたしまして、質問を終わります。