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中谷(元)
委員 自由民主党の
中谷元でございます。
まず、イギリスを訪問しまして、昨年六月、
EU離脱是非の
国民投票を行いました
キャメロン前
首相に面会しました。
キャメロン前
首相は、
国民投票を
実施する場合は、
政府に対する
信任投票や他の
政策的な問題に対する
投票になってしまったりするのではなくて、
国民投票の
投票用紙に書かれた
質問文に対する
投票になるようにするために、どのようなテーマについて
国民が
判断を求められているのかということを
国民にしっかりと理解してもらった上で
投票してもらうことが大事だと述べました。
そうするためには、大事なことは、公平公正な
プロセスとは何かということであり、独立をした
機関である
選挙委員会、これが
国民投票の
質問文の文言を決めて、完全に公平公正な
選挙を
実施して、完全に
国民投票の
質問に対する
投票が行われたと言えるようにすることであるということを言われました。
また、
日本の
憲法改正については、自衛隊を
憲法に明記したいという気持ちは十分に理解できる。
日本は現代的で
責任感のある、そして強くて成功した
民主主義国家だと
認識をしている。現在、チュニジアやアフガニスタンでテロが、
日本人の
犠牲者が出るような事件も
認識をしているが、
日本も影響を受けているのに他国とともに対処できないという
状況がある。難しいと思うが、
憲法改正においては、論理的な側面と感情的な側面で
国民にその
必要性を訴えることが必要だ。その際には、
質問文の文言が非常に大切であり、九条
改正については、
改正反対に
投票すれば戦争にならないと思わせるような文言であれば負けるだろう。逆に、強い
日本は安全な
日本だと思わせるようなことができれば九条
改正を実現できるかもしれないと述べました。
自衛隊を
憲法で明記したいと思うのであれば、自衛隊違憲論は間違っているという理論的な
議論だけではなくて、今後
日本はどのような国になっていきたいのかという感情的な面での
議論にも勝たなければ
国民投票で勝つことはできない。
国民投票においては、人々に
国民投票を行うことのメリット、つまり、
憲法を
改正するかどうかはあなたが決めるのですということを訴えて、
国民に理解してもらうことが重要だ。
質問文の文言は強く印象に残るので非常に重要であると述べました。
最後に、
国民投票において一番大事なことは公平公正な
プロセスをとることであり、また、そのために、
賛成派、
反対派、この双方を適切にサポートすることが大事だと強い口調で言われました。
イギリスの
上院憲法委員会の初代
会長であった
ノートン上院議員からは、第一に、
憲法改正の
質問文について、
国民が誤解をして
投票することがないよう、
質問の文言は単にイエスかノーで答えるような
質問にしない方がよい。人々はネガティブな
回答よりもポジティブな
回答を好むために、
質問とは関係なくイエスに
投票するという傾向がある。
第二に、
国民投票において、両側が公平に同じようなことを言わなければなりませんが、資金や報道の規制、これは難しくて、EU
離脱の
国民投票では、ほとんどの
情報が
離脱派か
残留派のいずれかの陣営から出されたものであって、当然偏ったものになっており、公平な
立場での客観的な
情報が少なかった。
EUに
残留すれば不景気になる、こんな義務があるなど、実際とは異なるキャンペーンを行うことがあったが、有権者は他の問題と関連づけて
投票する傾向があり、これは規制ではどうしようもできない問題である。何を基準に
判断するかは、結局、有権者が決めることであるので、
国民投票において問題に焦点を当てるように強調していくしかない。有権者にそれに焦点を当てるように強制することは、これはできないことであるということを言われました。
また、ケンブリッジ
大学のコープ教授からは、EU
離脱に関して、EUから
英国が
離脱をすれば経済的に悪影響が及ぶであろうということは一般的に皆が認めているが、EU
離脱に
投票したロンドン以外の地域に住む人々は、実際は経済が悪くなるのではなくて移民に問題があるからであり、この点、ロンドンと他のイングランドの地域が政治的に異なるような要素もあったということを言われました。
また、
国民投票を与党の政治的人気と切り離す上で非常に重要な点を挙げると、やはり
質問の文言になる。
英国はEUに
残留すべきかという
質問に対してイエスかノーで答えるという方法と、
英国はEUを
離脱すべきかという
質問に対してイエスかノーかで答えるという方法が考えられるが、
残留と
離脱という言葉が人に与える印象というものはどういうものなのか。
例えば、
残留には受動的なイメージがある。それに対して、
離脱は能動的に行動を起こすという印象がある。重要なのは、その中で迷っている人々がおって、その人々に
質問文の文言が及ぼす影響、受動的か能動的か。
日本の場合であれば、
憲法を維持するというのは受動的であり、
憲法を
改正するというのは能動的なイメージを伴う。心理学としてどちらが人を引きつけるか留意するとよいのではないかということでありました。
その後、
イタリアに参りました。
イタリアでは、昨年十二月に
憲法改正のための
国民投票が行われましたが、これについて、これは否決をされたわけでございます。
まず、
賛成派、これを主導したフィノッキアーロ
議会関係大臣は、この原因を、支持率が低下した前
首相が求心力の回復を狙って強引に
憲法改正と
国民投票の
手続を進めたことが政治的な色合いを強めたと強調しました。
反対派だったブルネッタ
下院議員も、
憲法改正ができなかったのは、
レンツィ首相がみずからの多数を強引に利用しながら
憲法改正を進めてきたことであり、
憲法のように総合的なルールは与野党が共同して作成するものであって、
国家の基本的ルールである
憲法は極力幅広い多数によって
改正を行うものであり、その時々の政治的な多数だけに頼るような
憲法改正は不可能であり、多数派を得るには与野党を巻き込んだ幅広いコンセンサスが必要であると述べられました。
最後に、この視察を通じて、
イタリアの与野党の当事者がともに認めたことは、
国民投票が純粋に
憲法改正を問うものではなくて政治的駆け引きに利用されたことであり、政局的な
思惑を超えた
合意形成の
重要性でありました。
憲法改正、その本質を見失うことがなく、静かな環境で、公平公正な
手続を踏んで、何をしようとしているのか、それをうまく
国民に伝えないときちんとした結果が出ないということでありました。
どのような国を目指すのか、また、そのイメージとしてこの国のグランドデザインをつくって、そこから逆算して、この国の
憲法議論をしっかりとこの
憲法審査会で
議論しなければならないと痛感をいたした次第でございます。
以上、このたびの欧州視察を通じて、見聞をして、感じたことを述べさせていただきました。
御清聴どうもありがとうございました。