○辰巳孝太郎君 私は、
日本共産党を代表して、
住宅宿泊事業法案について
質問をいたします。
民泊サービスとは、
住宅を
活用して人を
宿泊させる
事業のことです。
旅館業法の
許可を得て
宿泊業を営業している方もたくさんおられる一方、この間、
旅館業法の
許可を得ない違法
民泊は広がり続け、その数は五万件に上ると言われています。本
法案は、それら違法
民泊を解禁、合法化するものであります。
昨年末の
厚生労働省の
調査によると、対象とした一万五千件のうち、無
許可は四千六百二十四件に上り、物件の
特定ができないものは七千九百九十八件と、合わせて八三・五%に上り、
東京二十三区と政令指定都市に限ると九八・一%に達しますが、ほとんどが放置された状態です。
政府に
伺います。
この間、無
許可で指導、検挙された件数は一体幾つになるのですか。今
政府が取り組むべきは、これらの違法物件の取締りの徹底ではありませんか。結局、取り締まるべき違法
民泊を放置し続けた挙げ句に、本
法案の成立で、違法なものを合法化しようということではありませんか。
民泊の最大の問題は、安全の
確保です。
宿泊料を受け人を
宿泊させる営業は、全て
旅館業法の
規制を受けています。これら
施設には、保健所を始め、消防や警察、建築指導課などが定期的に立ち入り、安全、
衛生、
治安の維持のための指導が行われています。ところが、本
法案において、
民泊とされる
事業はそれらの
規制を受けず、
旅館業法における
営業許可のために必要な建築
確認検査済証や消防法適合通知書も必要ありません。
大臣、
旅館業法上の安全基準を果たさずに、届出だけで
民泊事業を認めるのはなぜですか。
許可制になぜしなかったのですか。
民泊事業者に対する指導監督は保健所や都道府県の職員が担うことになります。合法化されれば爆発的に増えると見込まれるのが
民泊です。今でも
自治体の職場は職員が減らされ多忙を極めています。安全や
衛生の
確保のため、どれほどの職員の増員が必要になることを
想定しているのですか。
民泊には、
ホテルや
旅館に課せられているフロント設置や二十四時間常駐
義務はありません。
家主不在型の場合、
民泊事業者の委託を受けた
管理業者はどのように
本人確認をするのですか。
管理業者とも
対面せずにチェックインすることも可能なのではありませんか。
衆議院での
参考人質疑で
参考人は、昨年
パリで起こったテロも匿名性の高い
民泊を
利用していたことを取り上げ、
懸念を示しました。
宿泊予定者以上の人数で
宿泊することや、
宿泊予定者以外の人が
宿泊することが容易になることは、
治安上の重大な問題が起こり得るという認識はありますか。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長の北原
理事長は、一日であってもお客様の命と財産を預かってお泊めするのが
宿泊サービス、だからこそ、消防法や
建築基準法、
衛生の
規制は当然、コストは掛かるが万が一の事故が起きないように
旅館業法を守ってきたと述べています。大臣はこの声にどう応えますか。
ホテル、
旅館は
住宅専用
地域には建てられませんが、本
法案では
民泊サービスの
実施が可能となります。
住居専用地域は、住居環境に悪
影響を与えるおそれのある用途の建物を
制限し、良好な住居環境を保護するために設けられています。
民泊が行われている
地域からは、
ごみ出しルールが守られない、夜間の
騒音がひどいなどと訴える人が後を絶たず、
地域社会とコミュニティーに深刻な
トラブルを招いています。
本
法案では、
住宅宿泊事業者や
管理業者が苦情等に
対応することを
義務付けていますが、そもそも、このような条文を法律で書き込まざるを得ないこと自体、
民泊事業が平穏な
日常生活を脅かすことを証明しているではありませんか。
本
法案では、
住宅専用
地域での
民泊サービスを可能にするため、
民泊を
旅館や
ホテルとは異なる
住宅として扱い得るよう、
事業者が行える
サービスは
年間提供日数上限を半年未満、百八十日以下とし、一泊二日での
利用の場合では一
宿泊日とカウントされます。しかし、日にちが重ならない場合百八十泊三百六十日となり、一年のほぼ全てを
民泊事業として営むことが可能となります。これでは
住宅として扱う合理性がないではありませんか。
住宅ではないものを
住宅専用
地域に認めることは、用途
地域指定を形骸化させるものではありませんか。
世界の主要都市は、
民泊から生じる様々な
トラブルを回避するため、
規制を強めています。
民泊発祥の地、サンフランシスコは、年間日数
制限を当初の九十日から六十日に
制限、ロンドンは九十日、アムステルダムは六十日までとし、ニューヨークは三十日未満の短期貸し、ベルリンは短期賃貸を全面的に禁止しています。
民泊の広がりにより賃貸物件が高騰し、
地域住民が追い出されているとの
報告もあります。各国の教訓に倣えば、本
法案のような全面解禁の
規制緩和を認めるわけには絶対にまいりません。
現在、
国家戦略特区によって、
大阪府や
東京都
大田区などでは
民泊が例外的に認められています。特区
制度は、特区
地域以外での
事業実現も視野に入れるもので、
事業の検証が不可欠です。
厚生労働大臣、これらの
地域で
民泊を認めたことで、違法
民泊の数は減少したのでしょうか。特区で
実施してもうまくいかないものを、どうして全国に広げることができるんでしょうか。
特区民泊認定に当たっては、事前に周辺
住民に適切な説明を行うことが
要件とされています。ところが、新法では、事前の説明は
要件とされていません。周辺
住民は、ある日突然、
民泊の標識が出て初めて、
近隣あるいは隣の部屋で
民泊事業が行われていることを知ることになるのではありませんか。大臣、
地域住民等の
トラブル防止のためには、事前に自治会や周辺
住民に説明を行い、同意を得ることを必要とするべきではありませんか。
政府は、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人という訪日
観光客数の目標を定めています。しかし、今、京都の
宿泊客は、二〇一五年、
外国人が百三十万人増加する一方、
日本人客は百十万人減少しました。京都
観光総合
調査によると、その一番の理由は、人が多く、ゆっくり見物できないでした。
経済のためだと
観光客の数だけを増やせばよいという政策の限界が来ているのです。長期的視点に立てば、
観光資源の保護や
文化財の保護のためにも、飽和状態にある都市部へのこれ以上の
観光客誘致を節度あるものにする必要があるのではないでしょうか。
観光立国推進基本法は、
地域の
住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた
地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの
観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな
国民生活の実現につながるとしています。
地域に混乱と困惑をもたらす
民泊を解禁、合法化しては、誇りと愛着を持つことはできません。
住んでよし、訪れてよし、そこに暮らしている
国民の
生活が豊かになってこそ、
観光地としての魅力も輝きます。これこそ
日本の
観光政策の目指すべき指針であるということを述べて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣石井啓一君
登壇、
拍手〕