○倉林明子君
日本共産党の倉林明子です。
私は、
日本共産党を代表し、
地域包括ケアシステムの
強化のための
介護保険法等の一部を
改正する
法律案に断固
反対の立場で
討論を行います。
本
法案は、
介護保険の三割
負担にとどまらず、
介護保険の
負担と給付、
地域福祉の
在り方を大きく変え、
高齢者、障害者、障害児、その家族など、
国民の
生活と権利に多大な
影響を与えるものとなっています。
こうした重大
法案を、
衆議院では二十二時間の
審議で地方公聴会も開かないまま強行
採決されたのです。本院での
審議時間はこれを下回る僅か十六時間足らずであり、
参考人質疑も一回のみとなっており、徹底した
審議が尽くされたとは到底言えないことを厳しく指摘するものです。
反対理由の第一は、
介護サービスの
利用者に重い
負担増を押し付けるものだからです。
一昨年八月の利用料二割
負担の
導入に続き、三割
負担を
導入する本
法案の
改正には、広範な
国民から不安と懸念の声が上がっています。
衆議院の議論を通じて、二割
負担の
影響調査の
必要性を
政府自身も認めていながら、その結果が出る前に三割
負担に踏み切るなど、論外だと言わなければなりません。要
介護一から三の平均的な居宅
サービスの
利用者で、一割
負担から三割
負担への
負担増額は年間二十から三十万円となるもので、僅か三年間の間に三倍化という
負担増が要
介護者や家族の
生活を圧迫し、
サービスの
利用抑制を引き起こすことは明らかです。
しかも、
委員会での
審議を通じ、今回の三割
負担の対象には、前年まで働いて給与収入があった人が、今は要
介護となって仕事を辞め、
所得も激減しているケースなど、高
所得とは到底言えない人が少なくなく含まれること、その一方で、株式配当で多額の収入を得ている人が、税の優遇
措置を活用することで
負担増とならないケースも出てくることなどが明らかとなりました。
負担増となるのは一部の高
所得者、収入に応じた
負担などという
政府の論拠は破綻しているのではないでしょうか。要
介護者や家族の苦しみに追い打ちを掛けるだけの根拠なき三割
負担は、断じて容認できません。
反対理由の第二は、喫緊の
課題となっている
介護職員の人材不足解消策が全く不十分だからです。
介護現場では職員の離職が後を絶たず、
事業所では人材確保に困難を極めています。このまま放置すれば、
事業所存続の危機にあると言っても過言ではありません。人材確保を困難にしている最大の要因は、
介護現場の低い職員配置基準を見直すことなく、
介護報酬の
評価も効果的にされてこなかったことにあり、
政府の責任は重大です。
この間、
政府は、一連の処遇改善策による職員の賃上げは月額四万三千円だと
説明してきました。しかし、基本給で見れば、その効果は僅か一万三千円にすぎず、この十年間、他産業との賃金格差は月額十万円、その格差を埋めるには至っていないのです。
本気で賃上げというのであれば、
事業所が安心して賃上げに踏み切れるよう配置基準を
見直し、それを保証するために思い切った国庫
負担の
引上げを行うこと、
介護報酬全体を引き上げる方向への転換が求められています。人材不足の悪循環を断ち切る改革こそ喫緊の
課題ではないでしょうか。
第三は、本
法案が
導入する
財政的インセンティブが
自治体による強引な
介護サービスの取上げを更に拡大する危険は極めて高く、
介護保険の本質をゆがめかねない重大な問題があるからです。
自治体の給付適正化の
取組を国が
評価し、
認定率の低下や給付費抑制で成果を上げる
自治体に予算を加算するこの
制度を既存の調整交付金の枠組みで
実施した場合、適正化が遅れている
自治体に対するペナルティーの仕組みとなることは
政府も認めています。
この間、厚労省が
自立支援の先行事例として推奨する
自治体では、
自立支援と卒業の名による
介護サービスの打切り、基本チェックリストを使った水際作戦、
地域ケア
会議を門番とする申請、更新のはねのけなどが横行していることが明らかになりました。
参考人質疑では、
自治体に公的
サービスを止められた要
介護者が状態悪化や重度化に至るケースや、自費
サービスの購入を余儀なくされている実態が生々しく紹介されました。要
介護度の低下と給付費の抑制を
自治体に競わせるインセンティブとペナルティーの
導入がこうした
介護切りの拡大と過熱化をもたらすことは、火を見るよりも明らかではありませんか。
年金天引きと過酷な滞納制裁で保険料を取り立てる一方、
制度を
改正するたびに給付が後退していく
介護保険の
現状には、有識者からも、このままでは
介護保険は国家的詐欺になるという批判の声が上がっているんです。本
法案による
負担増と給付の切捨ては、
介護が必要な人に対する
サービス利用を阻害するものにほかならず、公的
介護制度に対する
国民の信頼を土台から突き崩すことにつながることは明らかです。
第四は、我が事・丸ごと
地域共生社会の名の下に、高齢、障害、子供などの福祉に対する公的責任が大幅に後退しかねないことです。
法案は、改革の一環として、障害児者と
高齢者への
支援を同一
事業所で行う共生型
サービスを
創設するとしています。この新
サービスの施設・人員基準が低い方に合わせられ、
サービスの質が低下するのではないかという現場の懸念に対し、
政府からは、今後
審議会で検討するというのみで、具体的な答弁はありませんでした。
また、この
サービスの
導入が
介護保険と障害福祉の統合への突破口となるのではないかという多くの
当事者、
関係団体の危惧についても、統合しようとするものではないというだけで、不安を払拭するまともな
説明はありませんでした。
政府は
介護離職ゼロを掲げながら、本
法案の中身は更に
介護離職を拡大し、
介護難民を拡大する危険を増大するものとなっています。
今求められるのは、社会保障費の自然増削減という方針を転換し、
国民の生存権と社会保障増進に対する国の責務を定めた憲法二十五条に基づき、公的
制度を抜本的に拡充することであります。
日本共産党は、
介護、福祉の際限なき改悪路線と断固闘う決意を申し上げ、
反対討論といたします。(
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