○吉良よし子君 私は、
日本共産党を代表して、
独立行政法人日本学生支援機構法改正案、いわゆる
給付型奨学金法案について
質問します。
やりたいことがあって学んでいるのに、
卒業後も
返済のことが心配で、何のために
大学で学んでいるのか分からなくなりそう。
奨学金が将来の足かせになり、夢を絶たれてしまいます。これは、昨年十一月、本物の
奨学金を求める
国会前緊急アクションでスピーチした、
奨学金を借りながら都内の
大学に通っている女子
学生の言葉です。彼女は、毎月九万五千円の
有利子奨学金を借りていて、総額で四百五十六万円、
利子も入れれば二十年間で五百七十万円もの
返済をしなければならないそうです。
まさに
奨学金という名の借金が
若者の将来の足かせとなっている今の
日本で、今回ようやく
給付型奨学金が
創設されることになりました。しかし、本
法案は国民の期待に応えるものになっているでしょうか。
まず、
支給対象の問題です。
今や、全体の五三%、二人に一人の
学生が
奨学金を借りているのに、新たな
給付の
対象者は一
学年二万人、全体の二・五%です。
文科大臣、余りに少な過ぎると思いませんか。
本
法案で、
給付型奨学金の
支給対象は、特に優れた者であって
経済的理由により極めて
修学に困難があるものと限定されています。
総理は施政方針演説で、誰もが希望すれば
進学できる
環境を整えなければなりませんと述べました。この立場に立つならば、特に優れたや極めて困難などのような線引きはやめるべきではありませんか。
また、
高校での
推薦を決める際の
ガイドラインでは、
学力、
資質の目安として、高い
学習成績又は教科以外の
学校活動などで大変優れた
成果等を収めることなどを要件とするとしています。しかし、誰もが
進学できるための
支援というのであれば、こうした
成績要件もなくすべきではありませんか。不要な線引きをなくし、一刻も早く
給付対象を広げるように求めます。
次に、本
法案で、
学生等の学業が著しく不良となった等の場合には
学資支給金を
返還させることができるとしている点について
伺います。
この
学生等の学業が著しく不良となるというのは、標準的な修業期間での
卒業が困難となることが確定した場合や、当該年度における修得単位が著しく少ない場合と衆議院での
答弁がありました。しかし、今、
奨学金だけで高い
授業料は賄えません。また、生活費のためにアルバイトをせざるを得ない
学生も多くいます。そのアルバイトが無理なシフトを強いるようなブラックバイトで、授業や試験に出られずに留年となってしまう
学生だって少なくありません。そういう
学生への
奨学金の
支給を止め、さらに、今までもらったものを返せと、借金というペナルティーを背負わせるなんて余りにひどい。これでは
給付とは言えません。
返還できる規定はなくすべきではありませんか。
以上、
文科大臣、お答えください。
給付型奨学金の
創設のための
財源も問題です。
政府は、
大学院生の
奨学金返還免除
制度の見直しや無
利子奨学金の減額など、これまでの
教育予算の枠内での組替えによって
財源を捻出しようとしています。
政府を挙げて新しい
制度をつくろうというときに、なぜ新たな
予算を付けないのか。
給付型奨学金創設に合わせ、
教育予算そのものを増やすべきではありませんか。とりわけGDP比〇・五六%という世界の中でも低過ぎる
高等教育予算を抜本的に増額すべきです。財務大臣、お答えください。
私たち
日本共産党は、国民の望む本物の
奨学金の
実現を強く
政府に求めます。本物の
奨学金を
実現するためには、今ある
制度の見直しも必要です。何より問題なのは、
奨学金地獄とも言われる
返済苦の問題です。今、
奨学金を返したくても返せない
若者が増えています。二人に一人が非正規雇用、正社員でも長時間労働、低
賃金のブラック企業で働くならば、
奨学金を返そうと思っても返せません。
日本学生支援機構の
調査でも、
奨学金延滞者のうち八〇・二%が
年収三百万円未満といいます。たとえ返せていても、半数前後が
返済が苦しいと答えています。それなのに、他の金融ローンと同じかそれ以上の厳しい取立てがされている
奨学金。これが、ブラック企業を辞めたくても辞められない、又は結婚も
子育ても諦める
理由の
一つになっています。
奨学金という名の借金がここまで
若者の人生を追い詰めている事実を
文科大臣は認めますか。
奨学金返済に苦しむ一人一人の
生活実態に寄り添った柔軟な救済
制度へと見直すべきではありませんか。
現行
制度では、一旦
奨学金の回収が滞ると
延滞金が課されます。これは
返済促進のための
システムだといいますが、圧倒的多数の返したくても返せない滞納者にとっては、
延滞金は
返済を促すどころかペナルティーという
意味にしかなりません。生活苦で
奨学金も返せないほど困窮している人間に更なるペナルティーを科すような
延滞金、すぐにでも廃止すべきではありませんか。
文科大臣は衆議院本
会議で、
経済的理由等による
返還が困難な方に対しては
返還期限猶予制度や
減額返還制度を適用することにより
対応していると
答弁されました。しかし、これらの
制度は、
返済に困っている人々を救済するには不十分な
内容です。
例えば
返還猶予制度、これは
利用期間が十年と限られていますが、十年後、確実に
返済可能な
収入を得られる保証はどこにあるというのでしょう。十年を超えるとどんな
年収でも
返済が必要というのでは、救済にはなりません。この
利用期間制限を撤廃し、
本人が返せる
状況になるまで
猶予する
制度にすべきではありませんか。
また、
制度を
利用したくても、
機構側が様々な条件を付けてその
利用を実質的に認めない事態が横行していることは問題です。
機構側は、救済をするかしないかはあくまでも自分たちの裁量と言いますが、借り手のための救済
制度を貸し手側である
機構の裁量としていては、本当の救済にはつながりません。
返済猶予を求める全ての人の
制度利用を認めるべきではありませんか。
日本国憲法第二十六条は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく
教育を受ける権利を有する。」と、
教育の
機会均等をうたっています。その立場に立つならば、これまでの
日本の高
学費、低
給付の
高等教育の
在り方そのものを転換することが必要です。だからこそ、
奨学金は一刻も早く全て
給付に、少なくとも
有利子奨学金はもう廃止すべきではありませんか。何よりも高過ぎる
学費を下げて無償を目指す、そのために国立大の運営費交付金、そして私立大への私学助成、それぞれ増やすべきではないでしょうか。
以上、
文科大臣、お答えください。
最後に、今、
教育の
無償化のために憲
法改正が必要との
議論もありますが、とんでもありません。二〇一二年、現行憲法の下で
高等教育の漸進的
無償化を求める
国際人権規約の留保を撤回したことを
考えれば、必要なのは憲法を変えることではありません。憲法の理想を一向に
実現しようとしない政治の姿勢を変えることこそ、今必要なのではないでしょうか。
高い
学費や
奨学金ローンが
若者の将来の足かせとなるような
社会を変え、憲法の掲げる
教育の
機会均等を一刻も早く
実現するために、
日本共産党は全力を挙げる決意を申し上げて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣松野博一君
登壇、
拍手〕