○古賀之士君
民進党・新緑風会の古賀之士です。
私は、会派を代表いたしまして、
所得税法等の一部を改正する等の
法律案に
反対の
立場から
討論を行います。
税は
国家なりとの
言葉どおり、本来、税制は、国の在り方、社会の進むべき道を示すものではないでしょうか。しかし、この
平成二十九年度税制改正は、びほう策にとどまり、未来へのビジョンが残念ながら見えてきません。本法案に
反対する最大の
理由は、
国民の間に広がっている将来への不安を解消することができないからです。
今からおよそ百三十年前に起きた開拓使官有物払下げ事件、これは、北海道の官営事業を大幅に安い価格で関西の政商に払い下げようとしたものの、大きな批判が巻き起こり、結果として中止されました。この事件は、かねてより高まっていた民主主義の機運と併せ、その後の
国会の開設にもつながりました。言わば
日本の議会制度の一つの契機であり、税の使い方と民主主義とは密接な関係がある、その証拠でもあります。
歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇としてという有名な
言葉があります。今、目の前で百三十年前の事件と同じような光景が繰り返されているようにも見えます。言うまでもなく、
森友学園への
国有地払下げ問題です。豊中市にある
国有地の売却をめぐって
疑惑が生じており、多くの
国民が
解明を望んでいるにもかかわらず、
政府は真摯に
対応しませんでした。
我々が求めていた
参考人招致には極めて不誠実でしたが、渦中の人物が注目される
発言をすると、一転、
総理が侮辱されたとして
証人喚問に前向きになりました。我々は、当事者の接触記録を出してくださいと何度も求めました。記録が残っていないとなかなか応じてくれない一方で、その人物が物証に言及するや否や、
政府は
総理夫人のファクス記録をメディアに配付しました。問題の本質は、
総理への侮辱云々ではなく、
国民に向けての
政治や行政の説明
責任がきちんとなされているかどうかであります。その説明
責任がいまだに果たされておりません。その結果、
国民のおよそ八割以上が納得できないと答えているのが現状です。
開拓使官有物払下げ事件では、当時の大蔵省は払下げに強く
反対したと聞いております。それがどうしたことでしょう。今回は、事もあろうに財務省自らが事件隠しとも言える動きを見せております。これは百三十年前よりも後退しているのではないか、そう思わせる
状況です。今回の事件は、単なる
政治・行政スキャンダルではありません。税に対する
国民の
信頼を根底から失墜させかねない極めて重大な問題をはらんでいるのです。
この二か月間、
国会では
森友学園問題に多くの時間が費やされました。一日三億円とも言われる
国会の経費は、本来は、
国民の
生活を大きく左右する
予算や税を
議論するために使われるはずです。
政府がこの問題への説明
責任を十分に果たすことで、例えば、八億円の
疑惑ではなく、八百兆円の
国債について理財局長が
答弁できる
状況になるよう我々からも強く訴えます。
さて、その上で、本
法律案に
反対する具体的な
理由を申し述べます。
最大の問題は、税制の喫緊の
課題である
所得税の抜本
改革に手が着けられていないことです。今回の配偶者控除及び配偶者特別控除の手直しは、まさにその象徴と言えます。
政府は、いわゆる骨太の
方針二〇一六において、女性が働きやすい税制、社会保障制度、配偶者手当等の見直しを進めるとし、特に税制については幅広く丁寧な
国民的
議論を進めるとされました。しかし、現実はどうだったでしょうか。
本件については、
政府税制
調査会でも長期にわたる検討が重ねられ、新たに夫婦控除を導入する案の採用が有力と見られていました。ところが、まさに唐突に、配偶者特別控除の年収要件を百五十万円へと
拡大することが打ち出されました。現行制度の維持ならまだしも、百八十度真逆のコースをたどるとは誰しも予想できなかったでしょう。事実、税法を所管する麻生
財務大臣も、少なくとも今いきなり百三万円を百五十万円とか百六十万円にするつもりはありませんと
国会で
答弁されたほどです。果たしてこれが幅広く丁寧な
国民的
議論なのでしょうか。
百五十万円に引き上げることで就業調整にどのような効果があるのか
政府にお尋ねしましたが、最後までまともな答えは返ってきませんでした。科学的根拠に基づいた
政策立案、エビデンス・ベースド・ポリシーとは懸け離れた、与党間の密室協議で税の在り方が決まったことに深刻な危機感を覚えます。
現状の配偶者控除税制は、父親がメーンで働き、母親は専業主婦か補助的労働にとどまるという家庭を前提にしており、現実に追い付いていないことは明らかです。だからこそ、
政府においても抜本的な検討が進められてきたのではないでしょうか。税制以外でも、
働き方改革を標榜し、一億総
活躍社会を目指していることから、問題意識をお持ちだったはずです。ところが、
改革どころか、従来の税制を
拡大するという予想外の荒業に出ました。これでは、かえって働き方の選択に中立的どころか逆効果となるでしょう。
今求められているのは、
民進党の基本構想のように、配偶者控除や扶養控除を廃止して、新たに世帯控除の導入をするなど、
所得税の大胆な変革です。普通の人が豊かになる、そうした社会をつくるために抜本的な税制
改革を早急に行わなければなりません。まずは、
所得控除から税額控除へと転換し、さらには税額控除から給付付き税額控除へと税体系を大きく変えていく
日本型ベーシックインカム、基礎的
所得保障構想の
実現で、新たな
消費を生み出す中
所得者、低
所得者の底上げを行うべきではないでしょうか。
横綱稀勢の里の奇跡の優勝や高校球児たちの甲子園でのプレーは大きな感動を呼んでいます。その一方で、
日本は、未来を担う若い人にとって、働いても
暮らしが楽にならないなど、頑張っても報われることのない希望の失われた社会になりつつあります。年齢と経験を重ねた人にとって、
医療や
介護において年々削減に削減が重ねられる、そして不安を抱える社会になりつつあります。
我々にとって残された時間はそう多くはありません。税制によって未来の希望をつくり出していく。税制によって将来の不安を解消していく。
政治が、今を生きる我々だけでなく、これからを生きる
子供たちのためにもすぐにでも行わなければならないことだと思っております。ところが、この
所得税法改正案では、その道筋が全く見えてきません。だからこそ、この法案に
反対するのです。
この法案の
審議を始めようとする三月八日、私はこの場で代表の質問を行いました。その結びに、
総理に、
国民の
信頼なくして税の在り方を決めることはできません、まず、税金の無駄遣いは許さないと、行
政府の長として強いリーダーシップを発揮されることをお願いいたしますと申し上げました。しかし、この法案の
審議を通じてなお多くの
国民の願いがかなえられることはありませんでした。
そこで、くどいようですが、再び同じ
言葉を訴えまして、私の
反対討論といたします。
国民の
信頼なくして税の在り方を決めることはできません。まず、税金の無駄遣いは許されないと、行
政府の長として強いリーダーシップを発揮されることをお願いいたします。
御清聴ありがとうございました。(
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