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参考人(
荒木和博君) このような場を与えていただきまして、ありがとうございます。
先ほど永田町の駅を降りましたときに、ある
政府の高官の方とばったりお会いしまして、そのときに、今は何とか小康
状態ですというふうに言われました。確かに対処している方からすれば小康
状態かもしれませんけれども、
拉致されている
被害者にとっての小康
状態では決してございません。それどころか、私は、この
状況がもし、これを長引かせてしまって時間がたってしまったらば、もうこれであるいは
救出するチャンスが完全に失われるのではないかということすら心配をしているところでございます。
ということで、これから多少失礼なことを申し上げますが、それは現在の安倍政権ということだけではなく、前の民主党政権、そしてその前の自民党政権、遡りまして、歴代の
政府全体を含めてのことというふうに御理解をいただきたいと
思います。
まず、冒頭にお願いをしていきたいことが一つございます。これは、全ての
拉致被害者という
言葉の中に、未認定の
拉致被害者、私どもが特定失踪者のリストとして出しております。今日お手元に、配付
資料の中に入れていただきましたカラーのビラでございますが、この中に顔写真がある方、一番下の列は
政府認定者及びそれに準ずる
方々ですが、その上が特定失踪者の公開されている方でございます。これにまた非公開の方がおられる。さらに、その外に警察の
拉致の可能性のある失踪者という方がおられて、そして、警察のリストにも我々のリストにもない
拉致をされた
方々もいるはずでございます。ここまで含めて全て
救出する義務を
政府が負っているということを、機会がありましたら是非
委員会の場で確認をしていただきたいと
思います。
政府の対応を見ておりますと、それがどこかの時点で線引きをして、あとを見捨てるということではないかという懸念を我々常に持っているところでございます。
お配りしてある
資料の中に、とじたもので、特別検証第五回、新潟の報告というものがございます。これは、三月の二十四日に私ども新潟に参りまして、横田
めぐみさんの
拉致事件に関する検証を行ってまいりました、その報告でございます。
要点は二つございます。
一つは、通常言われてきた横田
めぐみさんの
拉致をされたという現場が、寄居中学校を出た営所通りから入るところの角ではなくて、御自宅に曲がるところの角、つまり、あと二軒で御自宅にたどり着くところでやられたのではないかということが一件。
そして、それ以上に重要な問題は、この事件が一九七七年、昭和五十二年十一月十五日に起きた直後に
政府、警察としては
北朝鮮による
拉致事件だと明らかに分かっていたにもかかわらず、これを隠蔽し続けてきたということでございます。当時の
状況等から考えまして、これは我々、絶対に間違いないと確信を持っております。
拉致問題の象徴である横田
めぐみさんの事件ですらこのように隠されてきた。そして、私はかつて衆議院の方の
拉致特の
参考人であったときに山本美保さんDNA偽装事件に関しての陳述も行いましたが、事件を隠そうというような動きをしてきた、
政府、警察がしてきたということについて非常に強い不信感を持っております。これを
本当の意味で解明しなければ、最終的に
拉致問題の解明はあり得ない。
横田
めぐみさんの事件ですらそうであれば、ほかの
政府認定の
拉致被害者の事件でも多くのことが隠されているのであろうと。恐らく
家族会の
方々にも、警察はそれぞれの
方々が一体どのように
拉致をされたのかということについて説明をしていないはずでございます。いわんや特定失踪者の御
家族にそのようなことを説明をしてはおりません。この点は是非ともこの
国会の中で明らかにしていただきたいというふうに
思います。
そして、これは今に始まったことではございませんが、
政府が常に言っている、
拉致問題は国政の最
優先課題、そして行動対行動、あるいは
圧力と対話と、この三つのフレーズは、大臣にしろ総理にしろ、必ず何かの折に言われているわけですけれども、これが本気で言われているのかということに対して私は非常に強い疑問を感じております。最
優先課題だと言うならば、担当大臣が幾つもの役職を兼職しているということ自体がおかしいことであって、現状が正しいのであれば最
優先とは私は言うべきではないだろうというふうに思っております。
現状、金正男が暗殺されて以降、非常に事態は流動的になっております。私ども
特定失踪者問題調査会では、四月のミサイル発射以降、私どものやっております短波、中波の対北放送「しおかぜ」を緊急体制で放送を実施をしております。今後、緊急事態、更に緊急な
状況における放送時間の延長、可能であれば二十四時間の延長、そして生放送の実施についても今検討しているところでございます。
ちなみに、緊急事態としては、そのレジュメにも書いてございますが、次のような
状況を想定しております。一つ、
北朝鮮軍の韓国への侵攻など
北朝鮮による武力挑発が行われた場合。二つ、米軍等による
北朝鮮への武力攻撃が行われた場合。三つ、
北朝鮮内部のクーデター、テロ、政変などにより体制に変化を来す可能性が想定される場合。四つ、上記の一から三に準じ、
北朝鮮にいる
日本人が脱出できる可能性、あるいは逆に危険な
状況に陥る可能性が生起するなど身辺に変化が起き得る
状況になった場合。これは、例えば中国が人民解放軍を
北朝鮮に入れるとか、そういうような
状況がなった場合も含めてでございますが、このような場合に、ともかく
北朝鮮にいる
方々に何とか危険を回避をしてもらう、そして、可能であればこちらから
救出に行き、その行く場所に集まってもらうというようなことをアナウンスをしてまいりたいというふうに思っております。
なお、私どもの放送で、中波放送は去年十月から十二月まで行いまして、その間は間欠的に、特に十一月頃を中心に
北朝鮮側は妨害電波を流しておりました。しかし、この四月から再開をいたしまして以来、全く妨害電波が今の現状では把握されておりません。ということは、
北朝鮮の
状況がやはりそれだけ深刻になっているということの証拠でございます。
短波放送の方の妨害電波は、かつて張成沢が処刑されたとき、約二週間の間、全く妨害電波が出なかったことがございまして、ある意味でいうと、
北朝鮮の妨害電波が
北朝鮮の内部を測る一つのバロメーターにもなるのではないかと思っております。これを我々としてはともかく更に進めてまいりたいというふうに
思います。
この一から四のケースというのは、「しおかぜ」の緊急体制のみならず、ほかのことに関しても該当し得るものであると
思います。このような
状況になった場合の対応を是非とも急速に、もうともかく急いで進めていただきたいと思う次第でございます。
そのための一つには、やはり
向こうの体制が崩壊したとか特別な
状況が起きた場合に、自衛隊による
救出ということがどうしても必要になるはずでございます。現在、
政府は、相手国の承認ということを理由にしてこれは不可能というふうに言っていますけれども、かつて
政府の方からイラク方式という
言葉が出たと言われますけれども、体制が崩壊した場合にそれが可能になる可能性もありますし、あるいは金正恩の暗殺とかそういう事態が起きた場合に、新しくできた
北朝鮮の権力機構が、自衛隊も含めて
日本からの
救出を認めるという可能性も全くゼロではない。
いずれにしても、そのようなときになったときにいきなり準備を始めても間に合うはずはないわけで、もうともかく一刻も早くそのための準備を進めていただきたいというふうに思う次第でございます。
最後に、もう一回確認を申し上げます。
救うべきは、これ、朝鮮半島有事になれば、もちろん韓国にいる邦人の保護ももちろんでございますけれども、
北朝鮮の中にいる全ての
日本国民を救わなければいけないということでございまして、これはもう明らかに
日本国政府の責任でございます。そして、もちろん
国会の責任でもあるというふうに思っております。是非ともその点、今後、
委員会の審議等を通じまして、実現に至るように御協力をお願いをいたします。
以上、陳述を終わります。ありがとうございました。