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田名部匡代君 私は、民進党・新緑風会を代表し、
畜産経営の安定に関する
法律及び
独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を
改正する
法律案に対し、反対の立場から討論いたします。
政府が今国会に提出した農業競争力強化プログラムに基づく一連の
法案については、我が党が幾度も立案過程における客観性や透明性の欠如の問題を指摘してまいりましたが、本
法律案はまさにその典型であり、規制改革推進会議において限られた有識者と言われる人のみで議論し、骨格を取りまとめ、
法案化されたものです。バター不足問題の解決を
理由に議論を始めていますが、いつの間にか議論がすり替わり、バター不足と今回の
法案がどう関連するのか、
山本大臣からは納得できる答弁はありませんでした。
酪農家である参考人からは、
指定団体制度には何の問題もなく、近年
乳価も上昇しており、今は
酪農経営にとって大変良い状態にある、
改正の要望もしておらず、法
改正の必要性が理解できないとの意見もあったように、またしても
現場軽視の、意思決定が不要な政策を生もうとしています。
問題はそれだけではありません。
生乳は腐敗しやすく長期保存が困難であることから、取引においては売手である
生産者が不利です。このため、安定した
需給の下、計画的な
生産が行われることが
乳製品の供給や
酪農経営の安定には必要とされます。従来の
指定団体制度は、
地域内からあまねく
集乳し、
一元集荷多元販売により
需給を安定させ、
条件不利地域も含めた
酪農経営の安定に大きな
役割を果たしてきました。
ところが、本
法律案では、
補給金の
交付対象をいわゆる
アウトサイダーにも拡大することで、部分
委託やいいとこ取りの
委託を拡大させ、
指定団体が果たしている
需給調整や
集乳等の機能を弱めることが危惧されます。そうならないためには、いいとこ取りの防止や
条件不利地域の
集乳確保も重要ですが、肝腎の具体的仕組みは省令等で規定することとされていて、政府は何も明らかにしておらず、蚊帳の外に置かれている
酪農家は不安になるばかりです。
需給調整についても、国は責任を持って実行するとしていますが、具体的にどのように行うのかも明確ではありません。土屋参考人からも御提案があったように、旬別の計画及び実績を確認し、
需給に基づく安定取引への国の責任を明確にすべきであります。
我が国の
生乳の五割が
北海道で
生産されており、本
法律案の施策
対象である
加工原料乳は
北海道が主要供給地です。
北海道の
酪農家は、都府県と比較して経営規模は大きいものの、飼料高騰の経営
環境の悪化を受けて
生産をやめる
酪農家が相次ぎ、
生乳生産基盤は弱体化しています。本
法律案は、
指定団体の機能を弱め、ただでさえ弱っている
北海道の
酪農経営を更に追い込むことになります。バター不足の問題も基本的には
生産基盤の弱体化が原因ですから、バター不足解消を名目に検討が始められた本
法律案がバター不足問題を拡大させるという皮肉な結果を招くことになりかねません。
生乳の共販体制を解体する話は、我が国が最初ではありません。英国やオーストラリアでは、
生乳の一元集荷
販売の仕組みの解体など新自由主義的な改革を行った結果、
乳価が下落し、
酪農経営が不安定化し、
乳業メーカーや小売サイドの更なる値下げ圧力にさらされることになっています。この点について参考人から強く指摘されました。我が国は、これを反面教師として学ぶべきであって、同じ轍を踏むべきではありません。
問題点を申し上げてまいりましたが、そもそも本
法律案は
大臣が御説明されている提案
理由に応えるものになっていないのです。本
法律案が厳しい
酪農経営の改善や
所得向上につながる根拠は不明瞭であり、
畜産経営の安定を図るという畜安法の目的に逆行しかねません。小林参考人の御指摘にもあったように、この
法律は、
生産者団体の力を弱め、
所得の低下や変動を大きくし、結果的に
家族経営を中心とする
酪農経営を更に窮地に追い込むことになりかねない内容であり、本
法案の成立には断固反対であります。
最後に、改めて申し上げます。
現場無視で進める規制改革推進会議言いなりの農政は、更なる離農者の増加や自給率の低下を招きかねません。誰の立場に立ち、誰のために政治はあるのか。与野党を超えて、立法府に身を置く者の責任の重さをしっかりと受け止めるべきだということを申し添え、私の反対討論といたします。