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参考人(
岩間剛一君) どうも
皆さん、こんにちは。よろしくお願いいたします。
本日は二十分という限られた時間なんですけれども、この三つの要旨については
先生方のお手元にございますでしょうか。一枚紙なんですけれども、ですから、「
米国を
震源地とする
シェール・ガス革命の
ポイント」と、「
米国の中東に対する関心の低下」、あと「日本の
エネルギー政策に対するインプリケーション」というこの三つの項目が書かれている紙なんです。お持ちいただいていますね。
でしたらば、
先生方のお手元にあります資料はこれ実は百五十三スライドありますので、とても二十分間という限られた時間では全部を説明することはできませんので、この要点について簡単にお話をさせていただこうと思っております。(
資料映写)
まず、
シェールガス革命というのは、これは、実際のところはもう八年ぐらい、
米国において顕在化している新しい
エネルギーの革命と言うことができます。私は、元々
東京銀行におりまして、
東京銀行から
石油公団、現在の
石油天然ガス・
金属鉱物資源機構の方に出向して、それから、
東京銀行に戻ってからも
エネルギーのずっと研究をしてちょうど二十九年になるんですけれども、二十九年の
エネルギーの研究の中で百年に一度というふうな非常に大きな革命というものが実際のところは
米国で起こっているというふうなことなんですね。
現在における実際のところの状況というのは、二〇一四年の十一月に
OPEC総会において、
OPECの盟主である
サウジアラビアが
原油生産量を削減しないという形で
米国の
シェールオイル企業に対して
消耗戦を挑んだわけですね。それが今回の
原油価格の下落のきっかけというふうなことが言えるわけなんです。そういう意味で、
サウジアラビアが元々
生産コストが安いという非常に実力を持った油田のその
生産を増やすことによって
シェールガスとか
シェールオイルとの競争を始めたわけなんです。
ところが、実際のところは、
米国の
シェールガスあるいは
シェールオイルというのは極めて底力があったんですね。そういう意味では、当初、二〇一四年の秋ぐらいに
サウジアラビアが
米国の
シェールオイルの
生産企業に挑戦を挑んだときには、
米国の
シェールオイルの
生産企業の
生産コストは一バレル大体六十ドルから八十ドルぐらいというふうに推定されていまして、実際に二〇一五年になってから
原油価格というのは一バレル五十ドルを割り込んだんですね。ところが、
原油価格が一バレル五十ドルを割り込んでも、
米国の
シェールオイルの
生産量がそれほど減らなかった、むしろ増えたということがありまして、その関係があって、逆に世界の
原油需給が緩和したんです。ですから、そういうことから
原油価格が暴落してしまったということがあるわけです。
シェールオイルの企業がなぜ強かったかということですけれども、一つは、やはり
フラクチャリングといって、高圧の水を固い岩盤にぶつけて
割れ目をつくって、
割れ目から
シェールガスや
シェールオイルを追い出すというふうな、そういった
水圧破砕、
フラクチャリングという技術、こういった技術の要するに
精緻化、
高度化というものを進めたということによる
生産性の向上ということと、それから、
原油の先物の売りのヘッジというのを行って、それによってある程度
原油の価格をヘッジしたんですね。その関係があって、
原油価格が下落しても実際のところは
競争力があったということがあります。
米国においては、
シェールガス、
シェールオイルの
生産企業というのは大体三千社から四千社あります。日本と違って、元々
米国は世界で一番歴史を持った
産油国ですので、
米国の国内にかなり多くの、つまり
エクソンモービルさんを始めとした巨大な
石油企業から
家族経営の小さな企業までを含めて大体三千社から四千社あるんですね。その企業のうち、実際にこの二年間で
経営破綻した企業というのは大体数十社程度です。
ですから、三千社から四千社の企業のうちで大体五十社から百社が
経営破綻したことを多いと見るか少ないと見るかというのはきっと
考え方によると思うんですけれども、そういう意味では、
シェールガスというのはやっぱり底力があって、
サウジアラビアが考えたほど簡単には実際のところは
経営破綻しなかったということなんですね。
むしろ、実際のところは、
原油価格というのは二〇一四年の六月に一バレル百七ドルしていたんです、
WTI原油価格が。それが二〇一六年の二月には一バレル二十六ドルまで暴落しました。これによって、さすがに
サウジアラビア自身ももたなくなってきたんですね。
サウジアラビア自身は、元々陸上の極めて
生産コストの安い油田なものですから、一バレル大体四ドルから五ドル程度の
生産コストです。それに対して、
米国の
シェールオイルの
生産コストというのは、以前は大体一バレル六十ドルから八十ドル、最近安くなったといっても、大体、一番条件のいいスイートスポットで二十ドルから三十ドル、高いところですとやっぱり五十ドルから六十ドルはするんですね。そうすると、
生産コスト的にはかなり実際のところは差があるわけです。
ですから、
生産コスト競争をすれば
サウジアラビアが勝つことは目に見えていたわけなんですけれども、しかし、
サウジアラビアの場合は、二〇一一年の
アラブの春以降、実際に
社会保障等をかなり手厚くしている関係があって、財政を均衡させる
原油価格の水準というのが一バレル六十ドルを超えているんですね。ですから、現在のように
WTIの
原油価格が五十ドルから五十五ドルの間であるというこの水準では、
サウジアラビアは財政の赤字に陥ってしまうわけです。ですから、
生産コスト的には利益が出たとしても、財政的にはもたないんです。
中東の
産油国というのは、財政の大体八割から九割というのは
石油収入に依存しています。ですから、そういう意味では、
原油価格の暴落というのはそのまま中東の
産油国の
財政赤字に直結してしまうということがあって、最初の
生産コストの競争という話から
財政赤字の問題に実はだんだんと話が広がっていったというふうなことがあるわけなんですね。そういったことから、
サウジアラビア自身が財政的にもたなくなってしまったために、
協調減産という形に大きくかじを切ったと。
実際、私は、かなり前、実を言いますと二〇一六年の夏ぐらいから、もう
サウジアラビアはそろそろ戦略の転換を図るのではないかというふうに私は考えていました。というのは、いつまでもこうした
財政赤字を続けていると、
サウジアラビアというのはもうかなり豊富な
準備金を持っていたわけです。実際、二〇一一年から二〇一四年にかけて、一バレル百ドルを超える水準という
原油価格が実際三年半にわたって続いたんですね。これは百五十年の
石油産業の歴史において初めてのことなんです。それによって相当に大きな
準備金を積み重ねていたんですけれども、ところが、実際のところは、このまま
財政赤字を続けているとあと五年で
サウジアラビアの
準備金は枯渇するということで、そういう意味では、ムハンマド副皇太子の言っているビジョン二〇三〇での
サウジアラビアの
産業構造の
高度化というのが難しくなってくるという状況になってきて、いつまでもそういった
原油価格の下落を放任するといったような形の戦略は取れなくなってきたというふうなことがあるわけです。
そこで、二〇一六年の十一月に、
OPEC総会において、実際のところは八年
半ぶりなんですけれども、
OPECが
協調減産をするということで、ここにありますように、ですから、
OPEC自身が
協調減産、実際のところは平均すると大体四・六%の減産をするということで、二〇一七年の一月の一日から減産を開始しています。
新聞等にも書かれていますけれども、今、大体、八十万バレル・パー・デーから百万バレル・パー・デー前後減産をしています。ですから、減産の目標の大体八割から九割はほぼ達成しているという状況なんですね。ですから、そういう意味では、
原油価格が暴落するというふうなことは今の段階では考えにくいという状況にあるわけです。
ただ、逆に、今、
OPECが実際のところは
協調減産をある程度実施しているにもかかわらず
原油価格がそれほど高騰しないというのは、やはり
米国の
シェールオイルの
生産がそろそろ増えているというふうなことがあるからなんですね。
この
シェールオイルの関係でいうと、
トランプ政権の影響というのは非常に大きいです。というのは、実際のところ、
トランプ大統領は、基本的には
環境規制というものを緩和して、
シェールガス開発、
シェールオイル開発というものの規制というものをもっと緩めていこうというふうな
考え方なんですね。
実際に、
オバマ政権時代は、
シェールガス、
シェールオイルというのは、高圧の水を岩盤にぶつけるという
フラクチャリングという方法を取っている関係があるので、地震の誘発あるいは
飲料水の汚染の問題というのが
環境保護団体から指摘されていたわけです。ですから、
米国の
連邦保有地に対しては、
シェールガスの
開発等については原則的には行われていなかったんですね。
ところが、
トランプ政権は、まず第一の
ポイントとしては、
地球温暖化に対しては、基本的に
地球温暖化はないという立場を取っています。それからもう一つは、
シェールガス、
シェールオイルの開発を行っても
環境破壊は起こらない、実際に
水圧破砕、高圧の水というものを岩盤にぶつけても地震の誘発を起こしたりとか
飲料水の汚濁を起こしたりすることはないという
考え方を基本的に取っています。ですから、そういう意味では、
米国においては
シェールガス開発、
シェールオイル開発というものが進むということで、
石油業界にとっては非常に好ましい、そういった政策に切り替わってきているということが言えるわけです。
実際に、
トランプ政権を見ていると、
皆さんも御存じのように、あえて私が言うほどのものではありませんけれども、
国務長官には
エクソンモービルさんのCEOのレックス・ティラーソンさんがなっていますし、
エネルギー省の長官には産油州であるテキサス州の
州知事のリック・ペリーさんがなっています。あと、
EPA長官、これ
環境保護庁ですが、この長官にはやはり同じく産油州のオクラホマ州の
司法長官のスコット・プルイットさんがなっています。いずれも基本的には
地球温暖化には反対です。それからあと、石油、
天然ガスの開発を行って、雇用の創出、
経済成長、そういったものを求める、そういう考えがこの
人たちの基本的な
考え方ということで、従来の
オバマ政権とは百八十度異なる、そういった閣僚というものを実際のところは指名しているということがあるわけです。
ですから、
皆さん御承知のように、上院の指名において、実際のところは、こういった極端な
考え方を持っている、百八十度切り替わっていますから、そういう意味ではなかなか承認が取れないというのが今現状ということが言えるわけなんですね。
ただ、こういった形で
シェールオイル革命というものが一段とですから
トランプ政権の下で進められるということは、中東の
産油国にとっては非常に大きな脅威ということが言えるわけなんです。
シェールオイル革命についての
ポイントとして、
皆さんのお手元にありますけれども、
シェールガス革命については
三つポイントがあります。
まず、
ポイントとしては何があるかといいますと、
原油価格が下落しても
シェールオイルの
生産量というのがそれほど大きく減少しなかったということです。これは、ですから
サウジアラビアにとっては大きな誤算と言うことができるわけなんですね。むしろ、二〇一四年の十一月に
サウジアラビアが
シェールオイルに宣戦というか、ある程度戦いを挑んでから、逆に
米国の
シェールオイルの
生産は増えたんですね。二〇一六年になってようやく減少を少ししているんですけれども、それほど大きな減少はしていないということがあります。
あと、二番目の
ポイントとしましては、実際のところは、今
シェールガス革命というのは
米国だけで起こっているんですね。二〇一七年時点においても、
シェールガス革命というのが顕著に実際のところは実現しているのは
米国だけです。ほかの国ではなかなかうまくいっていません。中国、
ポーランド等でも
シェールガスの開発を進めていますけれども、なかなか当初の
予定どおりには実際のところはうまくいっていないんです。ところが、
米国だけで起こっている。ですから、あくまでも
米国だけで起こっている革命なんです。
しかし、
米国は、
世界最大の
石油消費国、
天然ガス消費国なんですね。
米国は、世界の四分の一の石油を消費しています。それから、
世界最大の
天然ガスの
消費国なんですね。そういった
米国において、実際のところは、
米国は今、
天然ガスの自給を完全に達成しています。それから、
米国においての
原油の
輸入量というのが相当に減少しているんですね。その関係があって、
世界最大の
石油消費国、
天然ガス消費国である
米国における
需給緩和というのは、玉突き的に世界全体の石油と
天然ガスの
需給緩和を進めるということになってくるわけです。
というのは、なぜかというと、今まで
米国に輸出していた中東産の
原油というものが
行き場を失ってだぶついてしまうんですね。そうすると、世界全体において石油の
緩和感というものが実際のところは進んでしまって
原油価格の暴落を招くという、そういった状況になってくるということがあるわけです。
そして、実際に、今お話ししましたように、
米国の
シェールオイルの
生産企業というのは、それほど大きく実は
経営破綻していないんです。しかも、仮に
経営破綻をしたとしても、
連邦破産法第十一条、チャプターイレブンというものの適用によって
財務内容が清算されるだけ、きれいになるだけで、実際のところは
原油生産量というのはほとんど変わらないんですね。そうすると、
サウジアラビアは、当初考えていたように
米国の
シェールオイル生産企業潰しというふうな目標というのは達成できないというふうなことに実際のところはなってくるわけです。
実際に、
米国での
シェールガスというのは、このグラフにありますように、かなり実際のところは増加をしています。実際、二十一世紀に入ってから
米国においての
シェールガス、
シェールオイルの
生産量というのは実は相当に増加をしているんですね。しかも、
シェールガスの技術というのが最初は使われるようになったんですけれども、それが
シェールオイルの技術に使われるようになってきたわけです。そして、
米国の
シェールオイルの
生産量は、これを見ていただければ分かりますように、二十一世紀に入ってから急速に増加しています。
今、
米国とそれから
サウジアラビアとロシアというのは、実際に日量で一千万バレルを超える
原油生産量の、過去最高の水準と言えるような、要するに
生産競争を続けているんですね。この
生産競争というものが実際のところは
原油価格というものの低迷の大きな理由というふうに言うことができるわけです。
そして、これによって、
二つ目の
ポイントとして言えることは何かといいますと、
米国の今、ですから
原油生産量というのは歴史的な実は水準なんですね。今までの
石油工学の常識というのをかなり実は覆すような状況が起こっているわけです。
というのは、
米国は一九七〇年に
世界最大の
石油生産国だったんですね。それから
米国の
原油生産量は減退しまして、二〇〇五年には五百万バレル・パー・デーぐらいまで
原油の
生産量は落ち込んでいます。その関係があって、実は二〇〇八年ぐらいには、
ゴールドマン・サックスさんを始めとした
投資銀行というのは、実際に
オイルピーク論ということで、
原油の
生産量は減退の一途をたどって
原油価格は天文学的に高騰するという、そういった
資源枯渇論、
オイルピーク論というのが喧伝されて、二〇〇八年の七月の十一日に
WTI原油価格が一バレル百四十七ドル二十七セントという過去最高値を記録しているわけです。
そういった状況から実は百八十度変わったわけですね、
シェールガス革命によって。今、
米国の
原油生産量は一千万バレル・パー・デーを超えていまして、実際に一九七〇年の過去最高の水準に今達しているという状況になっているわけです。
ですから、そういう意味では、これまでの資源が枯渇するという
オイルピーク論というのは完全に消えてしまっていると。こういう議論というのは、今、ですから、
エネルギーの
専門家の間では完全に消えてしまっているという状況にあるということが言えるわけです。
そして、
先生方のお手元にありますように、二番目の
ポイントとして何があるかといいますと、それは
米国の中東に対する関心の低下ということがあります。
というのはどういうことかといいますと、
米国はこれまで、今お話ししましたように、
オイルピーク論が盛んに喧伝されていまして、もう
米国で
原油生産量が増えることはないとされていたんですね。ところが、逆に、
米国では
原油の
生産量が増加の一途をたどったわけです。それによって、
米国は二〇〇五年に石油の純
輸入量が千二百五十四万バレル・パー・デーありました。実際に
米国の石油の
消費量の六割は輸入されていたわけなんですね。
そういう意味で、二〇〇三年の
イラク戦争というのが、これは石油のための戦争であると。要するに、ウオー・フォー・オイルということで、実際に石油を求めて、中東の石油というものの安全のために行ったというふうによく言われていますけれども、確かにその時点においては、
米国においては中東の石油は極めて重要だったんです。
ところが、その後、
米国において
原油生産量というのが増加していったために、二〇一五年には石油の純
輸入量は四百七十一万バレル・パー・デーにまで減少しています。つまり、結局のところ、八百万バレル・パー・デーも減少しているんですね。ですから、そういう意味では、
OPECの
加盟国でいうと、
イランと
イラクを合わせた量、つまり
OPECの
加盟国二か国分の
原油の輸入が減ったということになってくるわけです。それが、さっきお話ししたように、中東産の、
産油国の、実際のところは
原油の輸出の
行き場がなくなってしまうという大きな理由になってきたということが言えるわけなんですね。
そして、もちろん、主に
シェールオイルというのは軽質の
原油ですから、そういう意味では、ナイジェリアとかリビアとか、そういった軽質の
原油の輸入が物すごく減っているんですけれども、中東全体としての
原油の
輸入量が減っています。中東の
原油の
輸入量が減るということは、当然のことながら中東に対する関心というものが低下してくるということになってくるわけですね。
ですから、
トランプ大統領が
米国第一とか
米国の
エネルギーの自立ということを言っているその一つの根拠というのは、
米国の
シェールガス革命、
シェールオイル革命というのが非常に大きいということがあるわけです。以前のように
米国が石油の
消費量の六割を海外からの石油に依存していれば、
米国の
エネルギーの自立あるいは
米国の内向きな姿勢というものは本来は起こり得なかったというふうなことが言えるということがあるわけなんですね。
そういう意味からいうと、実際のところは、日本にとってみると、
米国が中東に対する関心を低下させているということは非常に大きな脅威であるということが言えると思います。
具体的に私が思うには、実際のところ、
米国では、
シェールガス革命が起こって
原油の
生産量が増えてからは、
米国の
議会等において、巨額の
軍事費を払い、しかも
米国の
犠牲者を払って日本のために中東を守る必要はあるのかという議論というのは、実はもう三、四年前から展開されています。ですから、そういう意味では、その延長線上で
トランプ大統領の発言というのは捉えることができるわけですね。
しかも、そういう意味では、
イランに対しての
核合意の見直し、つまり、
イランにあえて要するに
緊張関係をつくって、
イランの
原油の
生産量が減ってもいいというふうな姿勢を取る、あるいは、親イスラエルということで中東の
アラブ諸国というか
イスラム諸国全体との
緊張関係を増してもいいという
考え方になっているというのは、やはりこれは中東の
原油に依存する必要性が低下しているということもやっぱり大きな要因というふうに私は考えています。
それから、最後に、日本の
エネルギー政策に対するインプリケーションということでいうと、実際、
米国の
シェールガス革命というのは私の予想よりも大体二年早く進んでいます。そういう意味で、私は、実際のところは、
シェールガス革命についての研究を始めてちょうど今年でもう、ですから八年になります。八年になりますけれども、実際に私の予想よりも常に二年早く
米国の
シェールガス革命が進んで、
シェールガスの
生産量、
シェールオイルの
生産量は増えているということがあるんですね。
しかも、
原油価格の下落は、日本に
シェールガスを原料としたLNGが輸入される二〇一七年以降に実際のところは
原油価格の下落が起こると思っていたんですけれども、実際には私の予想よりも二年早く、二〇一五年に
シェールガス革命を先取りする形で
原油価格は下落しているということがあるわけです。この
原油価格の下落によって、日本の石油、
天然ガスの輸入額というのは、二〇一四年と比較して二〇一六年は十五兆円も実は減少しているんです。
というのはどういうことかといいますと、実際日本においての最大の輸入品目というのは、これは言うまでもなく石油なんですね。その石油が、実際のところは、二〇一四年は十七兆円輸入していたんです。それが二〇一六年には僅か六兆円になっています。つまり、そこで十兆円実は減っているんですね。それから、LNGも二〇一四年には八兆円輸入していました。それが今三兆円です。ですから、石油と
天然ガスを合わせるだけで日本の輸入額は十五兆円減っているんです。
ですから、日本の貿易赤字が貿易黒字に切り替わった基本的なやっぱり大きな要因というのは、実際のところは、この
原油価格の下落、特にLNGの価格も、LNGの貿易の八割というのは
原油価格連動になっていますから、
原油価格が下落するとLNGの価格も下落するわけです。特にLNGの価格は、東日本大震災によって、最初は、百万BTUという単位で使うんですけれども、このときに十八ドルで購入していたんですね。そのときに
米国の
天然ガス価格は三ドルです。つまり、
米国の要するに六倍の価格で実際のところは買っていたんです。ところが、今はどうかというと、日本はLNGの価格は僅か百万BTU当たり六ドルになっています。三分の一です。
ですから、そういう意味では、
シェールガス革命によって、日本は、要するに今、電力の九割は大体火力発電です。LNGをフル稼働させることによって停電を起こしていないんですね。このLNGの価格が安くなっているということは、電気料金の引下げにもつながっている。それからあと、十五兆円の要するに石油と
天然ガスの輸入額が減少しているということは、その分国富の流出というものを実際のところは回避しているということです。これは、日本の名目GDPが五百兆円ですからその三%に相当するということで、かなり大きな意味を持っているということがあるわけです。
ただ、そういうことだけではなく、実際のところは、
米国が中東の安全保障に対して関心が低下しているということから、実際、日本がこれから先、ホルムズ海峡が封鎖されたような場合において、今まで
米国が安全保障というものに責任を持ってきたわけですけれども、中東からのホルムズ海峡の通過、あるいはマラッカ海峡の通過、そういったものの安全保障に対して日本がどのような責任を取っていくか、こういったものについて日本が新たに考えなければいけない。
米国は中東産
原油にそれほど依存する必要がありません。ただ、日本を始めとしたアジア大洋州は基本的に中東からの
原油の輸入に依存しています。ですから、そういう意味でいうと、これから先、日本としては、
エネルギーの安全保障のために新たな政策というものを考えていく必要があるというふうに考えています。
ちょっと時間になりましたので、私の報告は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。