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参考人(
安達毅君) 秋田大学の
安達でございます。
本日は、私は、さきのお二人の
参考人と異なる点としまして、鉱物
資源に関する情勢をお話ししたいと思います。(
資料映写)
鉱物
資源、主に金属ですか、メタルに関して述べさせていただきたいのと、さらに、現状をひもとくというよりも、少し長期的な見通しという面において、
意見といいますか、発表させていただきたいと思います。さらに、基礎的な統計
データが多いですので、そこからどう読み解いていけばいいかというのをちょっとメーンに話していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
まず
最初、金属
価格の推移と申しまして、ベースメタル、銅、鉛、亜鉛の
価格推移を示しているのがこのグラフになります。形としましては、今まで出てきました
石油、
原油価格の動きと非常によく似ております。二〇〇三、四年ぐらいから上がって、一度リーマン・ショックで二〇〇八年付近で下がって、また上がったんですが、今は約半値ぐらいまで下がっている。とはいえ、二〇〇〇年の値と比べますとまだ数倍の値段を持っているような金属もございますし、ですので、過去に比べると非常にまだ高いレベルにあるとも一方では言える状態です。
昔と比べて何が大きく違ってきたかと。まあ、いろいろ分析はございますが、こういうふうな大きな乱高下を示すようになった、いろいろな分野から資金がこういう金属まで投機的な動きが行われるようになったというのがここ十何年起こったことでして、恐らくこれは今後も続いてくるだろう。すなわち、
価格のリスクというのが下がるというのは余りないのかなと。下がるときもあれば上がるときもありますし、その上下動が激しい
時代になったんじゃないかなというふうに考えております。
次のグラフですが、これは
消費量、銅の地金の
消費量でございます。大きく
世界を
三つに分けておりますが、下の緑色が中国、真ん中がG7、
日本も含んでおります、アメリカも含んでおります、上がその他の国でございます。
一見してお分かりいただけますように、約半分が中国で、銅の地金ですけれども、消費されるようになりました。ですので、中国の経済の動き、工業
生産の動きが直接金属
資源の
価格であるとか需要に影響を及ぼすようになってきたということが一方で言えますし、さらに、
世界の合計で見るとそんなに乱高下せず一定の割合で増えていっているというのが見て取れると思います。これは、G7の量が減って、その分中国で
生産されるようになったというのが効いてきているかと思います。
次のグラフに参りますと、これは一人当たりの銅の
消費量を縦軸、横軸に一人当たりのGDPを取りまして、
日本、韓国、中国、インド、アメリカをプロットしたものです。一九七〇年ぐらいから四十年間分。
そうしますと、先ほど
世界の半分中国で消費されていると申しましたが、一人当たりに直しますとまだまだ低いレベル、五キログラム、六キログラムですか、の中国の消費、三角形の赤い方ですけれども、左下の方ですね、なっております。もちろんですが、人口がすごい大きいためです。韓国を見ていただきますと、一度二十キログラムまで上がって、その後下がってきていると。
日本、アメリカは十キログラムから少し下がってきている
状況というふうに言えると思います。
この図はよく出るんですけれども、
考え方としましては、一度二十キロぐらいまで上がって、その後、
産業構造が変化していくに従って十キロまで下がってくる。そこで、安定的な先進国といいますか、インフラが整った国になっていくというのが
一つの見方としてございます。
そうしますと、中国、
あと四倍ですか、一人当たり四倍まで一度上がって下がってくる可能性があるという
一つの
考え方ができるわけです。今までただでさえ
世界の半分を消費しているところが、まだ四倍まで行く可能性はあるというのが
一つ、今後需要が伸びていく、まだまだ伸び代があるんじゃないかなという
一つの分析の見方でございます。
続きまして、可採年数という
考え方、これも今までも出てきたかもしれませんが、七〇年代、
原油は
あと三十年でなくなるというんでオイルショックのときにいろいろ言われたわけですが、四十年、五十年たってもまだなくなっていない、どうなったんだというのはよく一般の方々の質問で聞くところでございます。
むしろ、今五十年まで上がっています。これはどういうことだと、トリックは何だということですが、下のグラフは金属についてと
原油について、一番上のオレンジ色といいますか黄色の線が
原油の可採年数の推移が一九九〇年から書いておりまして、その下は銅、鉛、亜鉛でございます。上昇しているか、微減といいますか、一定というのが分かると思います。こういうように、ずっと続く要因というのは何かといいますと、簡単に言いますと、埋蔵量がどんどん増えていっているからです。
今、
柴田参考人からお話ありましたように、
中東の
原油の埋蔵量、もっと減っているんじゃないかなというお話あったと思いますが、いろいろな金属取りましても、おおよそ二、三十年一定、微増とか、そういう動きで来ているものが多うございます。RバイPと呼びますが、Rは埋蔵量、それをその年の
生産量で割ったものが可採年数でございまして、年々
生産量が増える、それ以上に埋蔵量が増えるとこの可採年数が増えていくという、そういうトリックになっております。
埋蔵量を改めて定義しますと、下に書いてありますように、地質的に存在が確認されて、なおかつ経済性があるものと。今の
価格より経済性がないものは埋蔵量から省かれているというのがございますし、反対に言いますと、
価格が上がると埋蔵量が勝手にといいますか、埋蔵量に算入される量が増えていくという状態でございます。
参考までに、右のグラフは様々な金属の可採年数と
エネルギーとを比べたものです。多いものから少ないもの様々ございます。
エネルギーと違って金属数が多いものですから、それぞれにちょっと考えていかないといけないという面がございますが、多いものですと百年を超えるようなもの、ちょっと解説が必要なのは飛ばさせてもらいますが、少ないものですと十数年のものまでございます。
ただ、この状態が長く続いているので、必ずしも十何年のものが十何年たったらなくなるということでは決してないと思いますが、一方で、見付けやすさの差は出ているのかなと思います。探査をして見付かった量を算入していくわけですけれども、その見付かりやすさの何かしら鉱物ごとの差が出ているんじゃないかなというふうに考えております。
引き続きまして、
資源の偏在性の話、こちらの方が金属にとっては短期的に見る場合重要視される場合が多いと存じ上げます。鉱石の
生産量を、
世界の
生産量のシェアの上位三か国を取ってきて、それを三か国で占めるシェアが多いものから並べております、上から。そうすると、例えばニオブであるとかレアアースなんかが
生産に対しては非常に多うございまして、レアメタルは多めでございます。ベースメタルになってくるとだんだん低くなっていくと。
要は、多くの国から取れるので分散化、調達の分散化がしやすいのがベースメタルでして、金属ではよく問題になりますが、レアメタルは特定の国からやはり出てきやすい傾向がありますので、こういうふうな性質といいますか、そのリスクの度合いというのの
一つを見る方式としまして、この上位何か国で取れるかというのを見るのは
一つだと思います。
〔
会長退席、理事福岡
資麿君着席〕
ここで、こういうとき見るのに気を付けなければいけないのは、この中でも
日本が権益を取りに行っている金属もございますし、
日本の
企業がですね、ありますし、
あと日本との
関係が良い状態の国かどうかで短期的には重要になってくると思います。
あと、その国の
資源ナショナリズムの状態であるとかというのも重要な点かなと思います。
もう少し長期的に見る場合には、やはり埋蔵量の分布、同じように上位三か国を並べて、シェアが大きいものから並べたのがこのグラフになります。ニオブがブラジルから多く出てくる。白金族は南アフリカで多く見付かっている。ほとんどと言ってもいいぐらいかもしれません。リチウム辺りはチリとか中国。モリブデン、タングステンで見ますと中国が多い。コバルトはコンゴというような国ですね。ベースメタルになりますと、同じように上位の三か国で取ると、五〇%前後ぐらいで低めの値になっているというのが
一つでございます。
これだけで
資源戦略を正確に測るのは難しいところなんですが、イメージを与えるには重要な
資料かなというふうに考えております。
このような
状況の中で
日本の
企業はどうしているかというので、これは
日本鉱業協会さんの
資料をそのまま出させてもらっておりますが、主にチリにたくさん鉱山の権益若しくは操業を開始しようとして投資をしているところです。
日本の
企業は、オペレーションといいますけれども、自らの会社で操業を全て仕切るという形式まではなかなか行けていない、数が限られているところなんですけれども、部分的に権益に参入したりですとか投資しているというのまで合わせますと、チリとペルーに多うございまして、全体的には、環太平洋といいますけれども、カナダ、アメリカ、オーストラリア、
あとインドネシア辺りまで、太平洋で船で
日本に持ってこれるという範囲で鉱山権益を取りに行っているというのが現状でございます。
これ以外にも、商社さんが投資されている鉱山というのも南ア等々多くございますし、オーストラリアも多くございます。
これまた基礎的な話で恐縮でございますが、今現在
世界で行われている大規模な鉱山、銅ですとか金ですとか、そういう鉱山がどういうふうにやられているかというのがイメージとして、こういうふうにやられています。露天掘り鉱山といいますけれども、すごく大きな穴を掘って、直径が四キロメートルとか六キロメートルとかの大きな穴を階段状に掘っていってそこの鉱石を取ってくるというやり方、これが今の主体的な、特に大量に産出される鉱物の主体的な掘り方です。昔のように穴を掘ってやるやり方もございますが、量的にはこちらの方が圧倒的に多いと。
〔理事福岡
資麿君退席、
会長着席〕
そこで使われているダンプトラックの大きさを、ちょっと漫画チックで申し訳ないんですが、例えば人を連れてくるとまだタイヤの半分にも行かない。象を連れてくると、連れてこれないですけど、まだタイヤの上までは行かないというような、こういう四百トン積みトラックといいますか、ダンプトラックというような、こういうものを大量に導入して
生産しているというのが先ほどの大きな穴を空けて
開発するというには欠かせない点でございます。
こういう大型化と機械化が進んだおかげで、反面では我々今まで比較的安い
資源を手に入れられていた。金属
価格は高いときももちろんございましたけれども、安い金属を
生産する、費用を低減させるための
世界的な
技術の方向はこれでやられていたと。これだけではないです。これが大きな方向性であったのかなというふうに考えております。
その中で、今後どうなるかという話にちょっと移っていきますが、
開発が困難な鉱床が残されていると。優良鉱床の
減少というふうに書いておりますが、これも自然の流れとしまして、まず
企業は自分たちが見付けた鉱床の中から一番いいものから
開発していくと。一番
生産性が高いものとか利益が上がりそうなものを
開発していって、コストが高そうなものを後に置いていくと。そうすると、自然と今後残されていくのは、今までよりも
開発が困難なものが残されていくのは、これは
資源の必然性といいますか、
資源開発の必然性であると思います。
さらに、深くまで掘らなければならない状態になったりとか、鉱石の品位が平均的には下がってきていて、昔だったら扱わないようなものも扱いますし、不純物と言っておりますが、狙っている金属以外の毒性の高い金属が混じっている場合も多くなってきます。そういうものも
開発するようになってきておりますし、よりへき地、先ほどのチリの鉱山ですと標高が四千メートルとか五千メートルの富士山よりも高いところへ掘っていったりします。そういうところに鉱床があるんですが、そこまでインフラを整備して取りに行かなければならないというのもありますし、鉱石強度の
増加と。
さらに、下段になりますが、より求められる環境・地域対策としまして、地域とのコミュニケーションが重要になってきております。
開発地域の方とよりどうやって共存していくかと。そちらの面は
技術面にプラスして新しく
開発するときに求められている点でございまして、
あと環境の保護、環境対策にも非常に力を入れなければならない
時代になってきております。水の確保であるとか、
あと鉱山の場合、閉山した後、先ほどの大きな穴、そのまま残るところも多いんですけれども、そこでどういう対策をしていくかというのも掘った後の
課題として残ってきております。
技術開発の方向性としましては、採掘
技術で今求められているのは自動化とかIT化とか、より情報化の
技術を使ってより効率的に
生産性が高いものができないかというのが
世界の大きな、
世界の動静として各
企業取り組んでおりまして、例えば、先ほどのダンプトラックを無人で動かすであるとか、若しくは町の中からリモートコントロールでトラックやショベルを動かすといったそういう
技術が求められていますし、実際やり始めているところでございます。更なる大型化や高速化、大型の坑内掘り、トンネルを掘って地下から掘る方法ですね、それの
技術開発というのも求めておられますし、ズリであるとか尾鉱というようなそういう廃棄物を坑内で掘ったときの穴に充填するような
技術。
選鉱、製錬側。選鉱、製錬といいますのは、取ってきた鉱石を前処理したりですとか、そこから金属を抽出するような
技術でございますが、そこでも粉砕プロセスの低
エネルギー化、粉にしなければならない、処理するために粉にするんですけど、それの低
エネルギー化であるとか品位
低下への
対応、湿式製錬とか微生物を使ったような、そういう今まで
資源で扱ってこなかったような分野、
技術も取り扱っていく必要が出てきているのが今の
世界的な
状況です。
恐らく、こういう
技術的
課題を、
日本の
企業ももちろんなんですけれども、
世界のどこかの
企業といいますか、
世界的に解決していかなければ今後の
資源開発というのは難しくなってくるかなと。こういう
技術開発、実際どうなるかというのは誰も実は分からないところでございますね、どういうふうに成功するかと。しかし、こういうところが全部駄目だったとすると、取れる
資源というのはなくなってくるというのが金属の
状況かと存じます。
一方で、リサイクル、
日本の場合、非常に重要でございますし、注目されていると思います。私、リサイクルの話、今回はほとんどしなかったですけれども、なかなかリサイクル率を上げていくのは難しい。法律を作って、それで各家庭で分別して出していただいている
日本のような
状況でもなかなかリサイクル率を上げていくのは難しいというので、これ、上の方が
世界の平均的な銅のリサイクル率、下の方は
日本の率ですけれども、それぞれ取っている
データが違うので上下はあんまり比較していただきたくない面はあるんですが、要は、
価格が高くなったからといってリサイクル率が上がるというのはなかなかないということでございます。そのときの社会情勢といいますか、社会で回収する仕組みに依存しているのかなと。ですので、これはまた経済性以外で上げていかなければならない
課題かなというふうに思っております。
最後に、今後の見通しとして二点、二つのスライドに移らせていただきますけれども、
資源開発は新しく始めるには十年、十五年掛かります。ですので、国内の
資源セキュリティーを高めるためには常に十年以上の計画を持ってやる必要がありますし、これは、反対の
意味では、少々値段が上下して、それに合わせて
資源開発をやったりやめたりしていますと、その後続かないことになるかと思います。継続的な取組が、取組というか
開発が必要なものが
資源開発の特徴かなというふうに思います。
資源の安定供給、これは
我が国の
資源政策の昔からの一番重要な項目として挙げられますが、それを満たすためには、やはり
日本の
資源企業が海外の鉱山で継続的に収益を上げられるような構造が必要かなと。
価格に合わせてやったりやめたりしていると、結局いつまでたっても
資源のセキュリティー高まらないですし、むしろ
日本の需要を満たす以上に
生産して
資源を売っていくような意気込みがないとなかなか
世界の大きな
資源企業と対抗していくのは難しいんじゃないかなというふうに考えるところはございます。
次、
日本の
資源系
企業の強みとしましては、
日本型のチームワークを重視した雇用方法若しくは操業の仕方、これはやはり大きな海外
企業ではなかなか見られない点かなと。ここを強みとして生かしていけるかというのが今後の大きな分岐点になるかなと思いますし、
技術革新を進めていく、
あと、環境対策、住民対策、恐らくこの辺りで強みを出していけると、海外での
資源開発、
日本の
企業もやっていけるんじゃないかなというふうに感じているところでございます。
そのほか、リサイクルも重要だということも書かせてもらっています。
最後のスライドになりますが、需要
増加はとどまらず、投機的資金流入により
価格変動の激しい
時代に移行したと。これは一番
最初のスライドで述べたとおりでございます。
今後、
資源開発の
開発費用、環境対策費用は間違いなく高くなると思います。コストが高くなる。コストが高くなるという
意味では、
価格のベースが高くなるというふうにつながってくると思います。
地政学的な要因、いろいろ現在の情勢、
世界情勢、政治的な情勢ございますが、その点ちょっと除いて考えさせてもらいますと、
資源の制約を受けて
日本の産業が調達できずに困るというのはもう少し先の話であろうと、金属に関してはですね、思います。もちろん鉱種によって、レアメタルによっていろいろあるのはそのとおりでございます。ただし、
地球温暖化の問題、通常五十年とか百年単位で考える、それと同じように金属を考えると、金属によってはなかなか手に入りにくいような金属も出てくるんじゃないかなというふうに考えているところでございます。
以上で終わります。