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参考人(
藤田孝典君) 改めまして、皆さん、こんにちは。今日は本当にお招きいただいてありがとうございます。貴重な
機会をいただいたことに感謝申し上げます。
私の方からは、
経済・
生活不安の
解消において今、近々の
課題となっている
格差、
貧困をどう縮小していけばいいのかということを話をさせていただけたらと思っております。(
資料映写)
私は、今日、肩書にも書いてありますが、NPO
法人ほっとプラスというところで、これは埼玉にある団体なんですけれども、年間約五百件、
生活に困窮されている方の相談を受ける事務所で活動しております。そこには十代から八十代まで様々な方が、
生活に困窮されて、中には明日の
生活にも不安を抱えているという状況で相談に来られています。その方
たちの実態から、まずは、どう政策があるべきなのか、どういうふうにしたら
生活不安を
解消していけるんだろうかということを話をさせていただけたらというふうに思っております。
私自身、いろんな相談を受けておりますので、昨今、ブラック企業等の問題で若者が非常に苦しいという方も相談に来ますし、労働相談ありますし、あるいは家賃が滞納してしまってというような住宅政策の相談も多く寄せられるというような、そんな状況があります。様々な
生活に困難を抱えるという方
たちがいらっしゃるので、これにどうやって向き合っていったらいいのかというのが今の現場の専らの
課題になっております。
それに対して、私
たちのNPOは、弁護士、司法書士、税理士、あるいは不動産屋さん、労働組合、様々な方に協力してもらいながらそれに対応していくということをしています。ここから見えてきた問題を少し今日は話ができたらいいかなというふうに思います。
一言で言えば、現場で困っているという方
たちにサポートするNPOの活動がまだまだ足りないという状況もありますし、そういった活動のネットワークがまだ弱いというんですか、そういった実態もあるかなというふうに思います。なので、これは、おととしから
生活困窮者自立支援法が施行されていますけれども、まだまだそれを加速していく必要性があるだろうというふうにも思っております。
なぜこういう
生活に困っている方
たちが実態としては増えている、あるいは高止まりの状態が続いているのかということについては、やはり失われた二十年というんですか、
経済がなかなか上向いていかないという中で、働いても十分収入が得られない、
賃金が得られないという若い人、それを中心にしながら、
子供は育てにくい、あるいは親に仕送りができない、後半でちょっと
高齢者の
貧困問題についても
お話をさせていただこうと思いますが、親を援助することが難しいというような実態が浮かび上がってきます。
なので、まず、
貧困率が非常に
世界で見ても高い方に位置する国にもうなってしまったんだというような、そこからどうやって脱却したらいいんだろうかということが大きな
課題として上がってくるんじゃないかというふうに思っております。
御承知のとおり、先ほど
駒村先生もお出しした、先ほどは全消の
資料に基づいた
データですけれども、こちらは
国民生活基礎調査に基づいた
調査でも同じように高い数値が見られる傾向があるかなというふうに思います。
子供の数は減っているわけなんですが、
貧困に苦しむ、そういった状況にある
子供たちは逆に増え続けてきているというのが今の
日本の実態であるかと思います。
中でもNPOに相談が寄せられる件数で多いのは一人親のお母さん、母子家庭のお母さんという実態はもう明らかです。これは統計を見てみるとはっきりしておりまして、相対的
貧困率、これ五四・六%と非常に高い
数字が見られていて、
世界最悪の水準じゃないかというふうな指摘もされている状況です。要するに、
貧困が生まれやすい家庭があって、
生活不安を抱えやすい家庭があるんだということがまず注目すべきところじゃないかというふうにも思います。
先ほど、
駒村先生の補足にもなりますけれども、じゃ
子供の
貧困を放置するとどうなるのかということを考えていただけると、これ
日本の将来を大きく左右する問題と言っていいんじゃないかというふうな
データが出てきます。
これ、文科省が出している
データですけれども、低
所得の
子供の家庭からは
大学進学率が低い、もう性急に労働力を売らざるを得ない、労働力の窮迫販売と呼ばれますが、もう中学校卒業、高校卒業してから働かざるを得ないというような、そういった
子供たちが出てきているという状況です。ですので、当然ですが、まだ
日本社会、
大学、
大学院、進学した方がほかの学歴と比べても
所得がやっぱり高いという傾向が見られますので、この
大学の学費が捻出できない、教育費が捻出できないということは
子供の将来に大きな
影響を与えていくだろうということが
データでもはっきり見えてくるかと思います。
下の
データは、低
所得であればあるほど成績とも相関関係が激しいという
データです。これ、ようやく少しずつ、
大学の学費をどうやって工面していけばいいのかということで、政府の方でも少しずつ奨学金等を入れていこうということで
議論が始まっていますけれども、どの家庭で生まれたとしても、これは将来、もう希望ですね、
大学に行くか行かないかと選択肢を提供するということはやっぱり大事だと思います。今は選択する余地すらもないというのが、低
所得の家庭の
子供たちあるいはお母さん方が抱える大きな不安として上がってきています。
是非現場に足をお運びいただきたいなというふうにも思っておるんですけれども、今、
子供食堂、
子供の学習支援、急速に行っているNPO、各
社会福祉
法人が増えてきています。この現場に足を運んでみるとどうかというと、もう既に将来の夢を語らない
子供たちが出てきています。
この前相談を受けた女の子は中学校二年生で、将来の夢は何ですかと聞いてみると、正社員と答えるんですね。正社員ってなぜなのかというと、これ雇用形態ですので、なぜこういうふうな答え方をするのかというと、お母さんがダブルワーク、もう日中も夜も家にいなくて、一生懸命働いて
子供を育てている、時給八百円、九百円で働いているという状況ですので、それだと将来が不安定なので、私はああいう働き方はしたくないという声が現場の多くの
子供たちから出てくるというんですか、もう非
正規雇用が非常に広がっているという状況もあって、正社員であることがそもそも夢になりつつあるというような
子供たちもかなり見られてきている傾向かなというふうに思います。成績が優秀であっても
大学進学を諦めざるを得ないという
子供たちが平成になったこの
日本社会であってもまだいらっしゃるという状況を何とか
改善していかないといけないかなというふうに思います。
一つは、なぜこういう実態になっているのかというと、働いている労働者、特に三十代以降でばりばり働いている、要するに稼働
年齢層と呼ばれる方
たちの
貧困率が上がっているという傾向も見られています。ですので、働いて、普通だったらちゃんと
賃金が得られる、福利厚生等企業から受けられて安心して家族を養うことができるという
人々が、企業の体力の
低下とともに、なかなかそうなっていないという方
たちが非常に増えてきている実態があります。
要するに、社宅であるとか家族手当であるとか、以前は大
部分の企業が提供していたということがあるんですが、軒並み、企業で今、給料以外
支給する、ほかの福利厚生がなくなっているという状況がありますので、これは、後半にも少し付け加えさせていただきたいなと思っているんですが、まず、これまで企業が行ってきたこういった福利厚生を出さない限りは
国民生活の不安は
解消しないんじゃないか、あるいは、働いている
賃金だけだと十分に
子供を育てること、あるいは家族を養う、親を養うということはちょっと難しくなってきているんじゃないかということを指摘せざるを得ない
社会保障の実態があるかなというふうに思います。なので、まず一番
最初に削る、
経済が衰退している、低迷しているという状況で削るのは人件費あるいは福利厚生費になりますので、この
部分を誰が担うのかという
課題が大きく出てくるだろうというふうに思っております。
もう
一つ、昔から
貧困問題がなぜ起こるのかという
議論をしていく中で、必ず
賃金と
社会保障という
議論になります。これは、
賃金が少なくてもそれを補う
社会保障があれば
人々は
生活不安を抱えないというわけなんですが、
日本は残念ながら今非常に中途半端な状況にあると言わざるを得ない、
賃金が低くて、なおかつ
社会保障が弱いと言わざるを得ないんじゃないかなというふうにも思っております。
これ、国際比較で最低
賃金の
金額を挙げているもので、少し前の
データなんですけれども、
世界各国と比べてもまだ随分低いレベルの水準にあります。少しずつ、今、過去最多で最低
賃金の伸び率も上がってきている状況ではありますが、引き続き、シングルマザーのお母さんが少なくとも
子供と向き合える時間を持つための
賃金、あるいは、この後お見せする、
年金を少ないがために働くお年寄りが少し働いただけで暮らしが楽になる、
生活ができる、過度に労働に埋没しなくても人間らしい暮らしができるというような、そういった働き方を是非御
議論いただけたら有り難いなと思っております。残念ながら、今シングルマザーのお母さん、低
所得である若者、
高齢者、様々な方は、低
賃金であるがゆえにダブルワーク、トリプルワークという非常に過酷な中働いている、働かざるを得ないという実態があるんじゃないかなというふうにも思います。
今までは
子供の
貧困、シングルマザーのお母さんの
貧困等を見てきましたが、次は、若者の
貧困、なぜ
生活不安なのか、生きづらいのかということを見ていけたらと思っています。
御承知のとおり、非
正規雇用が非常に拡大してきているという傾向もありますし、福利厚生が軒並み削られてきているという傾向もありますので、なので、結婚することもそもそも難しいという若い方
たちが出てきています。これは先ほどの
駒村先生の
お話にもあるとおり、
少子高齢化が進む中で、
子供がいなければ当然、
年金、様々なもの、
社会保障の財源というものが確保することが難しい中で、若者の
貧困が広がっているという状況なんかがあるかなというふうに思います。
どれだけ働いてもなかなか今報われないという状況もありますので、それが何を招いているかというと、若い
人たちは本当は元気に働いてもらって納税をしてもらったり
社会に貢献してもらうということが必要なはずなんですが、私
たちの元に相談に来られる方は軒並みうつ病、精神疾患、あるいは自殺未遂含めてかなり追い詰められている状況にあるんじゃないかというふうに思います。これは、頑張って働いても報われないという実体験があるというんですか、あるいは三十代になるともう三つ、四つ転職を繰り返さざるを得ない、なかなか
賃金が上がらないという就労形態が増えてきていますので、この
賃金だけだとなかなか
生活ができない若者
たちをどうするのかということが
議論される必要があるんじゃないかというふうに思います。
後半の話にもちょっとつなげていきたいところはこの上の実家暮らし率の割合でして、若者が実家から出られないという現象が今急速に起こっているというところが私が各種指摘しているところです。以前であれば、ちゃんと働きさえすれば、企業に勤めさえすれば、
最初の三年、五年は実家暮らしで、その後は実家を出られて独り暮らしということがあって、そこで結婚する、同棲する、様々な
機会があってライフコースを歩んでいくということになるわけなんですが、
日本の若者は実家から今出られない。要するに、
賃金が低過ぎて、あるいは企業が社宅、住宅手当、様々なものを
支給を取りやめていますので、この辺りの急速な実家依存というんですか、親依存、あるいは家族依存と言ってもいいかもしれないですけれども、相互に支えざるを得ないという実態が生まれています。
これ、フランス等幾つかヨーロッパの
調査結果でも住宅政策の弱さと未婚率、少子化の相関関係って比較的エビデンスが出始めておりますので、この住宅政策、若者の住まいをどうするのかということ、特に低
所得の若者、非
正規雇用、不安定な若者の住宅をどうするのかということがもう少し
議論されてもいいのかなというふうにも思っております。
特に若者についていえば、教育費の高さ、これ子育て世帯にも言えますけれども、教育費の高さ、あとは卒業した後の職業訓練制度の不十分さ、失業した後はまた同じ低
賃金の労働に従事せざるを得ないというような、なかなかそこから抜けられないという実態とか、あとは家賃分が高過ぎるというんですか、特に二十三区内、
平均すると大体家賃十二万円から十四万円、ワンルームでもそれくらい掛かりますので、初任給十八万円から二十二万円くらい、大卒初任給であってもこれくらいの住宅費になってくると負担するのは到底難しいだろうということが見て取れるかなというふうに思います。
これ、以前は、繰り返しになりますが、企業が一部住宅手当を
支給していたということなので、それは表面化しなかったわけなんですが、非
正規雇用の拡大と福利厚生費の削減に伴って若者が非常に急速に
生活がしにくくなっている、明日への希望が持ち得なくなってきているという状況があるんじゃないかというふうに思います。それの一環が、うつ病あるいは自殺等の蔓延ということで起こってくる
一つの問題かというふうに思います。
あとは、最後は
高齢者の
貧困問題についても見ていこうと思いますが、まず、
高齢者の
貧困も、悠々自適に
高齢者は暮らしているんじゃないかと思われていたんですが、そうでもないんだという実態を一昨年からずっと指摘してきています。
まず、先進諸国の中でも、幾つか
議論、先ほど
駒村先生の中でも
年金の
議論がありましたが、
年金が実は
貧困を抑止するためのものになっているのかということがもう
一つ注目すべきところかなというふうに思っております。特に一人分の
年金、
国民年金であったり遺族
年金、旦那さんが亡くなった後の
女性の遺族
年金が、
支給されたとしても人間らしい暮らしが難しいというんですか、そんな実態なんかが浮かび上がってきています。
特に、
年齢を重ねれば重ねるほど、年を取れば取るほど
貧困率は上がっていくというんですか、そんな傾向も見られていて、そのときに医療費、介護費の負担が重くのしかかってきますので、
高齢者は、当然ですが、
自分の
生活を何とかしようとすると過度な貯蓄に励むということが今の実態です。
ですので、個人
消費が伸びようがないというんですか、一生懸命今政府でも
経済対策をやろうとしていますが、将来不安、
生活不安があればあるほど、それが
解消しなければしないほど個人
消費が伸びないだろうということはやっぱり言うまでもないことかなというふうに思います。若者は教育費の高さ、住宅費の高さ、
高齢者は医療費、介護費、あとは住宅、同じように困っている、それに不安を抱えているということが分かりやすく出てくるかなというふうに思います。
あとは、ちょっと飛ばそうと思いますが、
高齢者の中で
生活保護受給世帯も、やっぱり
年金を受けていても
生活保護にならざるを得ないという方も増えているということからもお分かりのとおりですし、これは幾つか私もやや過激な言葉を使いながら、下流老人という言葉を使いながら
高齢者の
貧困問題を可視化、見える化していこうという取組等をしております。これくらい過激な言葉を使わないとなかなか対策が前に進まないというんですか、なので、実態としてはかなり広範に
高齢者の
貧困問題も広がっているという状況があるかと思います。
どれくらい
高齢者が今
年金もらって
生活しているのか、個人当たりの
年金を見てもらうと、一人当たり十万円以下で
生活しているという状況があります。これは夫婦で何とか暮らしているから今の
高齢者は
貧困に苦しまなくて済んでいますが、これくらいの水準の
年金支給額だと容易に
生活保護基準を割り込んでくる、あるいは人間らしい暮らしができなくなってくるということが
予想できるかと思います。医療、介護が必要になったら誰がこれを負担するんだろうかということは
議論がされる必要があるだろうというふうに思います。
あとは、なぜ今
格差、
貧困の
議論なのかというと、このなかなか
経済が低迷しているという状況の中で、
生活費自体は減らない、だけれども収入が下がっている。これは全体的に収入が下がっているんですが、
年金受給者、労働者、全体的になかなか上がらないという状況もありますので、最近、若干大企業を中心に上向いてきている傾向はありますが、全体的には相変わらず沈んでいる傾向が取れますので、
生活費自体は下がりませんから当然手元に残るお金が減りますので、これが
生活が苦しいという要因の
一つになるだろうというふうに思います。
なので、後半のまとめになっていくと思いますが、この支出をどう下げるのかという政策がやっぱり最も重要になってくるかと思います。介護費、医療費、教育費、住宅費、保育料、様々な支出、これがなければ人間らしい暮らしができないというものの支出をいかに下げていくのかということが
議論として必要かと思っております。これ、収入を上げるということがちょっと難しいという場合には、あとは支出を下げる政策をどう入れるかということになりますので、この支出を下げる政策も是非御
議論いただけたらいいのかなというふうに思っております。
これからも独り暮らしの
高齢者は増え続けていきますし、地域の関係性も希薄化していくという状況も見られています。なので、働かざるを得ないという
高齢者が増えていきますので、これ、元気に働く
高齢者はいればいいと思いますが、先ほど
駒村先生もおっしゃったとおり、
高齢者は非常に個別差がありますので、
年金が少ないがために特に低
所得の方
たちが窮迫して労働力を売らないと暮らしが成り立たないということがないように、丁寧な制度の導入を
期待したいところです。既に
高齢者であっても働かざるを得ないという
環境が広がっていて、
世界でも類を見ないくらい働かざるを得ない
高齢者が多い国になっています。
結論を申し上げると、最後、これがやっぱり必要だということで申し上げると、医療、介護、住宅、教育、保育で積極的な税の投入をまず先行的にお願いしたいというふうに思っております。これ、支出を下げる政策を是非導入していただきたいということです。これ、具体的に空き家活用であるとか、あるいは、今、定年した方
たちが退職金でたくさんアパートを建設したりとしていますので、この税制優遇をしたりしながら、なるべく低
所得の人に住宅を供給するのであれば、税制優遇等の措置をするということであるとか、様々、住宅の支出を下げてあげたり教育費をなるべく無償に近づけていったりだとか、医療、介護等の不安を
解消していく施策を更に推進いただけたら有り難いというふうに思っております。特に、家族がいないと苦しいという状況にある、家族が依存し合わないと困ってしまうという状況をなるべくなくしていくというんですか、そういった状況がやっぱり必要なんじゃないかということを思います。
今は残念ながら、上に挙げた五つ全て買わないといけない、商品になっていますので、これ買わなくてもあらかじめそろっておくような、脱商品化された
社会といいますけれども、そういった
社会をなるべく目指していく方が、
人々の
生活不安は
解消し、個人
消費、貯蓄に回っていたお金が個人
消費に回っていくんじゃないかということも
予想されるかというふうに思います。
私の方からは以上にしたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。