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2017-02-08 第193回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十九年二月八日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員氏名     会 長         鴻池 祥肇君     理 事         酒井 庸行君     理 事         柘植 芳文君     理 事         宮本 周司君     理 事         藤田 幸久君     理 事        佐々木さやか君     理 事         武田 良介君     理 事         室井 邦彦君                 今井絵理子君                 小野田紀美君                 尾辻 秀久君                 大野 泰正君                 武見 敬三君                 中山 恭子君                 丸山 和也君                 三木  亨君                 宮島 喜文君                 吉川ゆうみ君                 大塚 耕平君                 古賀 之士君                 杉尾 秀哉君                 真山 勇一君                 高瀬 弘美君                 横山 信一君                 伊波 洋一君     ─────────────    委員異動  一月二十日     辞任         補欠選任      室井 邦彦君     東   徹君      武見 敬三君     木戸口英司君  二月八日     辞任         補欠選任      杉尾 秀哉君     浜口  誠君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         鴻池 祥肇君     理 事                 酒井 庸行君                 柘植 芳文君                 宮本 周司君                 藤田 幸久君                佐々木さやか君                 武田 良介君                 東   徹君     委 員                 今井絵理子君                 小野田紀美君                 尾辻 秀久君                 大野 泰正君                 中山 恭子君                 三木  亨君                 宮島 喜文君                 吉川ゆうみ君                 大塚 耕平君                 古賀 之士君                 杉尾 秀哉君                 浜口  誠君                 真山 勇一君                 高瀬 弘美君                 横山 信一君                 木戸口英司君                 伊波 洋一君    事務局側        第一特別調査室        長        松井 一彦君    参考人        政策研究大学院        大学長      白石  隆君        杏林大学名誉教        授        馬田 啓一君        青山学院大学特        別招聘教授    榊原 英資君        公益社団法人日        本中国友好協会        会長       丹羽宇一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国際経済外交に関する調査  (アジア太平洋における平和の実現地域協力  及び日本外交在り方について)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ただいまから国際経済外交に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る一月二十日、室井邦彦君及び武見敬三君が委員辞任され、その補欠として東徹君及び木戸口英司君が選任されました。     ─────────────
  3. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事東徹君を指名いたします。     ─────────────
  5. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際経済外交に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際経済外交に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ政府参考人出席を求め、その説明を聴取することとし、その手続につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  10. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 国際経済外交に関する調査を議題といたします。  本日は、「アジア太平洋における平和の実現地域協力及び日本外交在り方」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、政策研究大学院学長白石隆参考人杏林大学名誉教授馬田啓一参考人及び青山学院大学特別招聘教授榊原英資参考人に御出席いただいております。また、公益社団法人日本中国友好協会会長丹羽宇一郎参考人は、後ほど御出席いただく予定となっております。  この際、一言御挨拶を申し上げます。  各参考人先生方におきましては、御多用のところ本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  それぞれの先生から忌憚のない御意見を頂戴いたしまして、今後の調査参考にいたしたく存じております。よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、白石参考人馬田参考人榊原参考人丹羽参考人の順でお一人十五分程度意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、白石参考人から御意見をお述べいただきます。白石参考人
  11. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  それでは、申し上げます。  お手元に資料があると思いますので、このとおりに申し上げますが、まず最初に、現在の世界趨勢というものを簡単に押さえておきますと、世界経済は、二〇〇〇年から二〇一五年までで三十三兆ドルから七十五兆ドルに拡大しております。  その中で大きく三つ、富の分布については変化がございます。一つはG7が地盤沈下し、新興国が台頭した。二番目に欧米、北アメリカとそれからヨーロッパが地盤沈下し、アジアが台頭したと。で、アジアの中では日本が地盤沈下し、中国が台頭した。これが一つでございます。  もう一つは、それに伴いまして力のバランス、これはここでは指標として軍事費を見ておりますけれども、アメリカ軍事費を一〇〇としますと、中国軍事費というのは、一九八九年にはアメリカの三十分の一でございましたが、二〇一四年には三分の一に拡大していると。ソ連、ロシアは、冷戦最後のときで大体アメリカの三分の二でございましたけれども、これがいっとき一九九八年には六%まで下がりまして、最近では一六%程度まで回復していると。日本オーストラリアは、経年的に下がってきております。  三番目に、期待と現実ということで、一九九六年から二〇〇五年までの十年間と二〇〇六年から二〇一五年までの十年間に一人当たりの実質の国内所得がどのくらい伸びたかを見ますと、日本最初の十年間が六%、次の十年間が四%で、ある意味では低空飛行しておりますが、アメリカ、イギリス、フランスなどは、最初の十年間に非常に順調に所得が伸び、次の十年間に所得が伸びなかったと。その結果、国民期待が膨らんだところでこの期待に応えられなくて国民が怒り、ポピュリズムが今現れていると言っていいと思います。  それに対しまして、アジアは、最初の十年にも非常に、実は中国の場合なんかは二倍以上に所得が伸びておりますし、それ以外のところも大体が二桁の伸び率ですけれども、それ以上に最近の、次の十年間に所得が伸びております。これは国民期待が非常に膨らんでいるということでございますので、これからの十年、この期待に応えられないとアジアは不安定化する可能性が高い、こういうのが大きな傾向でございます。  次に、世界システム地域システム特徴について申し上げます。  現在の世界システムというのは、原理的には大きく五つ制度の上に成り立っているというふうに言っていいだろうと思います。一つアメリカの平和、これが国際的な安全保障の仕組みでございます。二つ目国際経済としてはドル本位制WTOでございます。三番目に国内政治体制としては自由民主主義国内経済体制としては市場経済。こういう五つ制度の上に現在のシステムというのは基本的につくられていると。  ただし、世界中こうなっているとは申しません。現在の東アジアについて申しますと、安全保障システムというのはアメリカの平和でございますけれども、アメリカ中心とするハブスポークス安全保障システムが、これが制度的には基盤になっており、日米同盟というのはこの地域的な安全保障システム基軸になっております。国際金融では、ドル本位制が基本でございますが、これがチェンマイ・イニシアティブ等によって補完されていると。貿易システムは、WTOに加えて地域的なバイマルチFTA、これはASEANプラスFTAであるとか現在交渉中のRCEPというようなものがございます。それから、TPPもこういう試みでございました。国内政治的には、自由民主主義権威主義ミックスになっております。経済的には、市場経済中国のような社会主義市場経済、これは最近英語では国家資本主義というふうに言われるようになっておりますけれども、こういうもののミックスになっております。  次に、アメリカ政策というものをざっくりと、過去三十年あるいは三十五年くらいで見ますと、冷戦終結以降、特にレーガン政権の第二期以降ですね、アメリカの大戦略というのは、封じ込め戦略が終わって、先代のブッシュ大統領が一九九一年に使った言葉を使いますと、新国際秩序というのが言わば大きな国際秩序のビジョンになっております。  これはどういうものかと申しますと、先ほど申しました世界システムの大きな五つ原理を踏まえてこの原理を強化していこうというのが、これが基本的な考え方だというふうに言っていいだろうと思います。つまり、アメリカの平和ということで、唯一の超大国としてのアメリカの地位を守る、これが一つでございます。それから二番目に、グローバル化戦略としましては、国境を越えた資本移動自由化を進める、通商自由化を進める、民主主義を推進する、あるいはグッドガバナンスを行うと。それから、マルチラテラリズムで、みんなでできる限りルールを作ると。みんなで作っても、アメリカが一番力が強いですからアメリカに有利なルールができると、こういうものでございます。  これを受けまして、地域戦略としましては、オバマ大統領の下で八年間にわたってはリバランシングということが行われてまいりました。これは、軍事的には太平洋大西洋、五対五で置いていたアメリカの軍事的なアセットを太平洋六、大西洋四に少し軸足を移す、これが軍事的なリバランシングでございます。政治的には同盟国パートナー国との政治的連携を推進し、ASEANプラス様々プロセス、つまりこれは東アジア・サミットであるとかRCEPだとか、あるいは、あっ、ごめんなさい、これRCEPじゃございません、ASEAN地域フォーラムでございます、それからASEAN防衛大臣会合プラス、こういうふうなものを強化していく。それから、TPPをつくる。それから、同盟重視で、G2ということで中国を重視するのではなくて同盟中心にしてアジア外交を組み立てる。それから、対中政策としては関与抑止の両にらみでアプローチすると。  これがオバマ政権下地域政策でございましたが、トランプ政権になりまして、どうもこれまで、まだ二週間ちょっとでございますけれども、これをひっくり返し壊そうと、そういう非常に大きな衝動があるように思います。ただし、現在のところ、まだ政策決定プロセスは極めて不確定でございまして、確定的なことを申し上げるというところには来ておりません。ただ、これまでの大統領等の方々の発言を見ておりますと、以下のようなことはおよそかなり大きい確率で言えるのではないだろうか。  一つは、アメリカファーストということで、アメリカとしてできる限り大きな行動の自由を維持しながらアメリカの国益を追求する。そのときにはマルチラテラリズムよりもバイラテラリズム、二国間の交渉の方がはるかに自分たちの意思が通りますので、バイラテラリズムを重視すると。そうしますと、まずアメリカの平和については、アメリカの平和ということで世界全体にコミットするのではなくて、むしろバイ同盟を重視すると。通商についても、TPPのようなマルチではなくてバイを重視すると。  通貨、金融は、これまでのところよく分かりませんし、ナショナル・エコノミック・カウンシルはまだ現在のところ音なしでございますが、為替政策通商政策の一環になるかもしれない。これは非常に警戒する必要があるんだろうと思います。  国内政治体制としては、自由民主主義人権には恐らく全く関心がないと。それから、国内市場経済につきましては、市場経済にはもちろん賛成だけれども、過度の規制には反対であるし、競争条件は平準化しなきゃいかぬということで、EUはどうも好きではなさそうですし、中国国家資本主義に対してもかなり批判的な立場を取っていると。  つまり、ごく簡単に申しますと、強引にアメリカ市場経済ルールを他国に押し付けてくる可能性が強いのではないかと思います。  地域政策としましては、こういうことを踏まえまして、同盟重視といって一番重視されるのは日本であり、恐らく次にオーストラリア、インドでございますが、韓国韓国国内政治の事情もありまして、どうなるかはよく分からない。中国については、恐らくこれまでの関与抑止ではなくて、関与よりも抑止に相当傾いた対中政策になるのではないかと。ASEANについてはどうなるか全く分かりません。それから最後に、TPPには参加しないと。  こういうことを全部踏まえますと、どうも大きい趨勢としては、安全保障通商いずれにおいてもバイを強調し、アメリカ中心とするハブスポークスシステムをもう一度つくっていこうとするのが基本的なアプローチになるのではないだろうかと思います。  次に、中国につきましては、習近平政権中国の夢ということを言っておりますが、経済的には既に経済成長が減速し、そういう中で膨らんだ期待にどう応えるかというのが、これが非常に大きな国内政治課題になっております。と同時に、今年に限って申しますと、党大会に向けて党国家の中枢のリーダーシップをどう編成するのかということが非常に大きな課題になっていると。  そういう中で、恐らく確実に言えますことは、もう現在の政権韜光養晦ということはもう言わなくなりまして、中国の夢というふうに言っておりますけれども、この中国の夢というのが、英語で申しましてチャイナドリームなのかチャイニーズドリームなのか。中国の私の同業者のような研究者に聞きますと、これは両方いまだに追求しているんだと申しますけれども、だんだんと国の資源が厳しくなってきたときにどちらを選ぶんだろうかという問題が一つ。そういう中で、安全保障では既にアジア秩序観ということで、アジア安全保障アジアでというふうに言っておりますし、一帯一路ということで、これは国際公共投資であると同時に、オバマ政権時代リバランシングに対抗するカウンターリバランシングであり、同時にインフラの分野ではそれぞれの事実上のスタンダードを取りに行くものでもあるというふうに言えると思います。  ということを全部踏まえますと、本音のところではやはりアジアの盟主を目指しているというふうに考えざるを得ないと。ただし、現在のところ国内的にいろんな課題がありますので、アメリカトランプ政権とは正面から対立したいとは思わないのではないかと想像しますが、一つ中国という原則は譲れませんので、なかなかこれから緊張が厳しくなっていく可能性は十分あると思います。  その中で、それではアジア地域のダイナミズムというのはどうなるかと。一言で申しますと、アジア地域協力特徴というのは、その時々の大きなリスクをどうヘッジするかにございます。  一九九七年、九八年の経済危機のときには、アメリカが幾つかの国に介入して、アメリカが非常に大きなリスクと意識されるようになりました。そのときにはアメリカを外した地域協力ということで東アジアが重要になりましたが、二〇〇〇年代の半ばから中国南シナ海等リスクとして意識されるようになると、ASEANプラス3に加えてASEANプラス6ができ、このASEANプラス6がASEANプラス8になって、アメリカを入れて中国というリスクをヘッジするようになったと。  もう一遍アメリカリスクになったらどうなるかと。私は、そのときには中国の出方次第だと思いますが、一帯一路あるいは南シナ海中国行動次第によっては、もう一度アメリカを抜いた地域協力という可能性はあるだろうと。これは、例えばドゥテルテ・フィリピン大統領現状凍結のようなものを中国が事実上やるかどうかに相当懸かっていると思います。  こういうことがなければ、それぞれの国は勝手にいろんなことを始めるようになるだろうと。そうしますと、人権とかあるいは民主主義ということをアメリカ政府が言わなくなりますと、例えばタイのプラユット首相であるだとかフィリピンのドゥテルテ大統領だとか、あるいはマレーシアのナジブ首相のような人たちがもっとやりたいようにいろんなことをやり始める可能性もあるということでございます。  それでは最後に、もう時間がございません、日本外交在り方について申し上げます。  念頭に置いておくべきことは七点ございます。これだけ申し上げます。  一つは、日本は超大国ではございませんが、決して小国でもございません。日本が右往左往することほどこの地域を不安定化させるという危険はあります。ですから、右往左往しない、これが非常に重要だと思います。  二番目に、日本世界システムから非常に恩恵を受けた国であるが、同時に外から見ると模範国でもあると。  三番目に、アメリカ中国の力が拮抗するようになればなるほど日本戦略的価値は上がる。  四番目に、日本予測可能性の高い信頼される勢力なのだと。これは、アメリカ予測可能性が落ちれば落ちるほど日本安定勢力としての価値は上がるということでもございます。  五番目に、アメリカファーストということを言うアメリカ政府日本アジアで追随すると、あるいはアメリカと同じことだけやると日本存在感は薄れます。  六番目に、アメリカファーストという戦略がこれからトランプ大統領以降にもずっと定着するかどうかというのは、これは分かりません。私は、アメリカ人という人たちはそういう人たちではないのではないかという感覚は持っております。  最後に、中国の夢というのは次第にチャイナドリームに傾斜していくんではないだろうかと考えております。  そういう中で、日本外交、もう時間がございませんのでやめますが、一点だけ、日本外交というのは日米同盟基軸であるが、同時にマルチ様々の動きをする必要があるだろうと。つまり、バイマルチの組合せで、外交については、アジアについては日本でかなり独自の取組もした方がいいというのが私が申し上げたいことでございます。  どうもありがとうございます。
  12. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、馬田参考人から御意見をお述べいただきます。馬田参考人
  13. 馬田啓一

    参考人馬田啓一君) 馬田でございます。よろしくお願いいたします。  本日は、トランプ・ショックとアジア太平洋の新通商秩序の行方という、こういうタイトルで意見を述べさせていただきたいと思います。  お配りしました資料ですけれども、これはパワーポイントで作成したものでありますけれども、十五分という非常に短い時間でございますので、後半の方の特に日本TPP絡み通商戦略については、議論の中でより詳しく御説明していくという、そういう意味資料程度にとどめておかせていただければというふうに思います。  前半のFTAAPアジア太平洋自由貿易圏実現に向けて、アメリカTPP離脱を表明してどうなるんだろうという、そういう非常に暗雲が漂っておる状況であります。このTPPが完全に葬り去られれば、その延長線上につくられているFTAAPがどうなるか、アジア太平洋の新しい秩序がどうなるかと、非常に大きな問題がここに存在しておりますので、そのアジア太平洋、新しい秩序の問題について私見を述べさせていただきます。  FTAAPというのは、御存じのとおり、アメリカが言い出しっぺでございます。東アジア共同体構想が出たときに、アメリカを締め出すと、こういうふうなことでアジア地域主義に非常に不安を持った当時のブッシュ政権が、二〇〇八年に、APECをベースにAPEC加盟国参加国とするFTAAPアジア自由貿易圏構想を打ち出しました。しかしAPECは、御存じのとおり、非拘束の原則に基づく組織でございますので、APEC内でのFTAAP交渉は非常に難しいというふうにアメリカは判断し、方向転換し、二〇〇八年、APECの外のTPPに参加し、TPPの拡大を通じてFTAAP実現を目指すことになったわけでございます。  TPP意義につきましては、改めて言うまでもなく、高いレベルの包括的な二十一世紀型のFTAモデルと言われますように、他のメガFTA交渉ひな形となるであろうと。さらには、将来、WTOルールに進化していくことも期待されております。  そういった高い自由化と、そして包括的なルールを目指しているものでありますけれども、TPPの長期的な意義は、これは中国が最終的なターゲットであるということであります。中長期の視点で見れば、TPPの最大のターゲット中国TPP参加国を増やし、そして中国包囲網を形成し、さらに外堀、内堀を埋めるような形で中国に対してTPPに参加せざるを得ないような状況をつくり、そして、中国TPPに参加したいときに、今の体制国家資本主義というこの体制を変えろ、さらには国際的なルールに従えというふうに中国に迫る、これがアメリカのこれまでの通商戦略のシナリオでありました。これがトランプTPP離脱によってどぶに捨てるような形で葬り去ってよろしいのかという、そういう問題がございます。  アメリカ主導のTPPを警戒した中国は、RCEP、東アジア地域包括的経済連携に肩入れし、国家資本主義体制を維持しながらメガFTA締結を目指しておるところであります。ですから、アジア太平洋に、一方でアメリカが主導するTPP、もう一方は中国が非常に肩入れするRCEP、このTPPRCEPをめぐり米中の確執が強まってまいりましたけれども、米国のTPP離脱でまさに中国が不戦勝というふうな形になるような状況になってきております。それでよろしいのかというふうなことで今注目が集まっているというふうに思います。  アジア太平洋における主導権をめぐる力学が変わろうとしているわけでありますけれども、二〇一〇年にAPEC日本で行われまして、横浜ビジョンが採択されました。それはFTAAP実現への道筋を提示しましたけれども、TPPルートかあるいはRCEPルートかについてはいまだ不確定な状況であります。  このため、二〇一四年の中国で行われたAPEC北京会合におきましては、FTAAP実現に向けて具体的な道筋を示そうと、中国は北京ロードマップの策定を議題といたしました。しかし、その狙いはどこにあるかといえば、TPPを牽制し、TPP以外の選択肢もあるのだということを示すことによってアジアの国々にTPP離れを促すと、こういうふうなことをもくろんだわけであります。  習近平は、北京ロードマップを歴史的一歩というふうに自画自賛いたしましたけれども、しかし、TPPルートを重視する、TPPの延長線上にFTAAP実現しようと思っているアメリカがこの北京ロードマップを骨抜きにしたと、こういうふうなことは否めないと思います。  今後の展開につきましては、TPPによりFTAAP実現するというふうな大方の見方があったわけですけれども、それが完全に崩れ、トランプ・ショックでまさかの事態になったわけでありますけれども、去年、二〇一六年十一月に、APECリマ会合ではリマ宣言が打ち出されました。発効に向けて協調を演出した形でありますけれども、TPP参加国TPP国内的な承認手続を完了せよ、一方でRCEP交渉については早期にその合意を得よと、こういうふうな声明が出されました。  しかしながら、トランプFTAAPに対してどういうふうな対応を示すか、TPPを否定し、さらにはその先に位置付けられるFTAAPも冷淡になるのか、予断は許されない状況であります。TPPが日の目を見ないようなことになる最悪の事態がある場合には、APECの中でFTAAPの問題をしっかりと議論していく、そういうAPECの出番も場合によっては必要になるかもしれません。  日本が今なすべきことは、アジア太平洋のリーダーとして、形を変えてでもTPPの生き残りに向けて最大限の外交努力をすべきかと考えます。  RCEPTPPか、どういう形でFTAAPができるか。TPPルートよりもRCEPルートであれば、決して、高いレベルの包括的なメガFTAになる可能性は非常に薄いものがあります。中国は、中国国家資本主義とうまく相入れるようなメガFTA実現しようとしているわけであります。それに対して日本は、それをよしとしないと、こういうことであれば、何とか、TPPが脱線しても、その脱線したTPPを、FTAAPに向けた同じレールに持っていくことができなくても、FTAAPに向けた違うレールに、元に戻すようなそういう積極的な対応がアジアのリーダー国として必要ではないのかなというふうに思われます。  アメリカを抜きにしたTPPの案も、今オーストラリアとかニュージーランド、あるいは中南米から出ています。しかし、日本はそのアメリカ抜きのTPP11の案に乗るべきではない。あくまでもアメリカが参加するような形で、修正されてもTPP実現に向けてアジア太平洋諸国の間を調整していく、それが今、日本がやらなければいけない役割ではないだろうかと思います。  そういう意味で、アメリカをもう一度、あのトランプをもう一度TPPの方に顔を向けさせるために日本は今何をすべきか。一つは、RCEPが早期に合意されればアメリカアジア地域主義の新しい経済統合体の実現に非常に警戒心を持つであろうということで、TPPに対するまた見直しが始まるだろうという意味で、RCEP交渉をできればこの二〇一七年、年内にまとめるというふうな努力を日本も積極的にしていく必要があろうかと思います。  TPPの頓挫が、その危機がRCEPにどういうふうな影響を与えるか。加速させるのか、それとも停滞の方向に持っていくのか、意見は、見方は二つに分かれております。RCEPASEANプラス6の枠組みで十六か国によって交渉がされていますけれども、ASEANが議長国であります。ASEANセントラリティーを尊重する形でASEANが運転席に座ってハンドルを握っているはずですが、どこまでしっかりそのハンドルを握っているのか。調整役がなかなか存在感を示し切れない中でRCEP交渉をどう今年中にまとめるか、それには裏技の折衷案も日本から提案すべきである。  その折衷案は何か。今、TPPをこれまでてこにして、日本オーストラリア、そしてニュージーランド、高いレベルのRCEP、一方でインドとか中国は低いレベルの自由化、緩い枠組みでRCEPをつくろうという、その二つの、高いか低いかの利害対立が非常に激しくなり、溝が埋まっていない状況であります。その溝をどういうふうに埋めるのか。これは、溝を埋めようとすると二〇一七年中にはまとまりません。  そこで、ASEAN経済共同体は二〇一五年末に発効しました、AEC二〇一五。そして、百点満点で八十五点でありますけれども、その残された十五点は残り十年間で埋めていこう、AEC二〇二五。二〇一五と二〇二五とを上手に使って、二段階方式でASEAN経済共同体を発足しています。  そのASEANのやり方をRCEPも取り入れるべきである。ASEANが議長国であり、今年二〇一七年、ASEANが創設して五十周年という記念すべき節目の年であります。その節目の年に議長国ASEANRCEPをまとめる。そういうふうなことが可能なチャンスなんです。日本がそういうふうな二段階方式で、AEC方式で、ASEANがそれを言えばそれなりの重みがあると、こういうふうな捉え方ができますので、日本ASEANとともに年内にRCEPをまとめる、それがひいてはTPPの生き残りにつながるのであろうと、こういうふうに考えるところであります。  トランプTPP離脱によって本当に墓穴を掘るのか。墓穴を掘る、そのとばっちりは日本が受けることになるわけです。日本TPPを、どんな形であるにせよ、これを葬り去るというふうなことはさせずに、何とか生き残る方法を粘り強く積極的に進めていくべきだろうと思います。そのために、TPPの修正案をいいタイミングでトランプに主張する、それが大事だろうと思います。  日米首脳会談が二月十日に行われます。その場でそれを言うかどうかは安倍首相の判断でありますけれども、最もいいタイミングで、アメリカTPPに対して、その意義と、そしてアメリカにとってもプラスだと、そしてアジア太平洋にとっても必要なルールだと、こういうふうな認識を持ってもらうために、修正案というふうな、現行のTPPではない修正案という形でアメリカの方にうまく説得していく、そういう姿勢が大事であろう、こういうふうに思います。  待てば海路の日和ありという言葉がございます。待てば海路の日和あり、いずれは太平洋の荒波も収まるだろう、トランプの話もやむであろう、時間を掛けてでもTPP修正案を何とかまとめ上げ、そしてその延長線上にFTAAP実現していくという、そういうふうな積極的な日本の取組が必要であろうというふうなことで、私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  14. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、榊原参考人から御意見をお述べいただきます。榊原参考人
  15. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 私の方は、アジア経済の現状と、経済的な日本アジアの関わり合いというようなことを中心にお話ししたいと思います。  一九九八年にアンドレ・グンダー・フランクという、これはドイツ生まれのアメリカ人ですけど、これが「リオリエント」という本を書きまして、二〇〇〇年には邦訳されておりますけれども、これは、要するに世界の経済の中心がオリエント、アジアに戻ってくると。オリエントというのは方向性を変えるという意味がありますから、二重の意味でリオリエントという言葉を使ったわけでございますけれども、欧米が一時中心だった世界経済アジアに戻ってきているというような話をしたわけでございます。  実は、一八二〇年、十九世紀の初めでございますけれども、このときの世界のGDPをアンガス・マディソンという経済史の専門家が推計しておりますけど、このとき世界のGDPの二九%が中国、一六%がインドということでございますから、中国とインドで世界のGDPのほぼ半分を占めていたと。これに日本とか韓国とかASEANを加えますと、大体五二%がアジアのGDPだったということでございますから、十九世紀初めまで非常にアジアの比重が多かったと。さらに、それを一五〇〇年とか一六〇〇年に遡りますと更に中国、インドの比重が多くなってまいります。大体一五〇〇年、一六〇〇年では中国とインドで世界のGDPの六〇%、アジア全体では七五%というようなことでございまして、まさに長い二〇〇〇年の世界の歴史を見ますと、そのほとんどの時代、アジアが経済の中心だったということが言えるわけでございます。  アジアが衰退しますのは、十九世紀の半ばから欧米によるアジアの植民地化が行われたということでございます。アジアの国の中で実質的に植民地にならなかったのは実は日本だけでございます。タイが形式的な独立を保っていますけれども、これもイギリスの支配下にあったものですから。そういうことで、アジアが植民地化によって衰退するということが実は十九世紀の半ばから起こったわけでございます。  一八四二年には香港と九龍半島がイギリスの植民地になる、あるいは六三年には上海が事実上英米の租界になるというふうなことがありましたし、それからインドも一八七七年にはイギリスの植民地になるというようなことがあって、これでアジアが衰退するということが起こったわけでございますけれども、第二次世界大戦後、アジアの国が次々と独立するわけでございます。一九四六年のフィリピンの独立から始まりまして、日本も一九五二年には占領が終了するということで、大体五〇年代の初めまでにはアジアの国々が次々と独立していったということでございます。  そういうことでアジアが次々と独立した後で、非常に高い成長率をアジアが達成するわけでございますけれども、まず日本が高度成長、これは一九五六年から七三年、平均成長率九・一%ですから極めて高い成長率ですね。日本に次いで韓国、台湾、香港、シンガポールというところが成長率を高め、それにまたASEANが続いたということでございます。それから、一九九〇年代になりますと、インドと中国が計画経済から市場経済に移行するということが実は起こってくるわけでございまして、ここで一九九〇年代以降は中国とインドが極めて高い成長率を達成するということでございます。  資料の四十四ページにも書いてございますけれども、一九七九年から二〇〇八年の三十年間、成長率のトップテンは全てアジアの国でございます。中国が九・八%とほぼ一〇%に近い成長率を達成したわけでございますけれども、中国に次いでシンガポール、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、韓国、台湾、インドというようなことで、アジアの国が第二次世界大戦後、独立後極めて高い成長率を達成するわけでございます。ちなみに、七九年から二〇〇八年のアメリカの成長率は二・九%、日本の成長率は二・四%ですから、エマージングアジアがこの間にいかに高い成長率を達成したかということが分かるわけでございます。  現在のGDPでございますけれども、購買力平価ベースでは、GDPでは中国アメリカを抜いているわけでございますね。これは計算にもよりますけれども、若干中国アメリカを抜くというようなことでございます。それから、二〇三〇年、二〇五〇年ということになりますと、これは推計でございますけれども、プライスウォータークーパースというアメリカのコンサルティングファームが推計しているわけでございますけれども、二〇五〇年には実はインドがナンバーツーになる、インドのGDPがアメリカのGDPを抜くというような推計をしております。中国がナンバーワンで、二〇五〇年、六十一兆七百九十億ドル、インドがナンバーツーで四十二兆二千五十億ドルということで、アメリカが四十一兆超でございますから、中国とインドがGDPの二大大国になるということでございます。  中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、メキシコということで、大体日本が第七位ぐらいというようなことになるわけでございます。ですから、これから二〇五〇年にかけて、グンダー・フランクが言ったリオリエント現象、要するに世界経済中心アジアに戻ってくると、中国とインドが中心でございますけど、そういうことが起こってくるわけでございます。  二〇五〇年のGDPの大きさでトップセブンというのをプライスウォーターハウスクーパースが推計しておりますけれども、トップが中国、二番目がインド、三番目がアメリカ、四番目がインドネシアということでございまして、その次、ブラジル、メキシコ、日本と続きますけれども、トップセブンのうち日本を含めてアジアの国が四か国というようなことでございまして、非常にアジアの国が今後大きく伸びてくるというようなことが予想されているわけでございます。  二〇一五年から二〇五〇年の平均成長率というのも、これもプライスウォーターハウスクーパースが推計しておりますけれども、最も高いのが実はナイジェリアで五・四%、その次がベトナム、バングラデシュ、インドということで、アジアの国が続くわけでございます。それから、フィリピン、インドネシア、パキスタンというようなことで、二〇一五年から二〇二〇年の成長率のトップテンのうちアジアが七か国ということでございますから、これから極めて高い成長率をアジアの国が達成するというようなことでございます。  世界の総GDPに占める中国のシェアというのは、大体二〇二五年辺り、今から十年弱先でございますけれども、このときには中国世界のGDPの二割、二〇%に達するというふうに考えられております。まあ、大体二〇%ぐらいで安定するのではないかと。現在、インドは世界のGDPの七%ですけど、これは二〇五〇年に向けて一四%まで増えていくということでございまして、先ほど申し上げましたように、二〇五〇年にはインドのGDPがアメリカを抜くというようなことが予測されているわけでございます。二〇五〇年には中国とインドで世界のGDPの三四%を占めると。一八二〇年には四五%でしたから、一八二〇年には及びませんけれども、中国とインドが世界の二大経済大国になっていくということが今後実現されてくるわけでございます。  それから、人口から申し上げましても、御承知のように、中国が最大の人口、現状では十三億七千六百五万人、その次がインドで十三億一千百万人程度でございまして、中国がトップ、インドが二番目、インドネシアが四番目ということで、アジアの国が人口でも非常に大きいわけでございます。  実は二〇五〇年になりますと、中国は一人っ子政策なんかを取りましたから、実は人口がピークを打って減っていく可能性があるわけですね。ですから、二〇五〇年には中国の人口は今と余り変わらない、あるいは若干減少する、それから老齢化ということも起こってくるということでございますけれども、実はインドは今後ともずっと人口が増えるということでございまして、二〇五〇年にはインドが人口でトップになって、十六億六千万人というようなことになるというふうに言われております。しかも、インドは今人口構成が若くて、二十五歳以下の人口が五割以上を占めておりますから、これからインドの人口増加というのは生産年齢人口の増加ということにつながっていくわけでございまして、こういうことでインドの成長率はかなり高く維持されるだろうというふうに考えられるわけでございます。  実は、インドと中国の成長率が二〇一五年に逆転しているんですね。中国は、先ほど申し上げましたように、一九八〇年から二〇一一年までは一〇%弱の成長を達成したわけでございますけれども、二〇一二年辺りから成長率が落ちて七%台、現在は六%台まで落ちているわけでございますね。今後、恐らく二〇五〇年にかけて中国の成長率というのは三%ぐらいまで落ちていくだろうということが予測されているわけでございます。人口が減る、老齢化が起こるということで六%ぐらいに減っていくわけでございますけれども、インドはしばらくの間七%の成長を続けるというふうに考えられております。  二〇一六年の数字ですと、中国の成長率が六・五九%、インドの成長率は七・六二%でございますから、まだGDPの絶対的な大きさからいうとインドは中国の三分の一ぐらいでございますから、その意味ではまだまだ伸びる余地があるということでございまして、恐らく今後、二〇五〇年まで六、七%の成長を維持するということが考えられるわけでございます。  そういうことでアジアの成長が非常に高いんですけど、中でもインドが非常に高い成長率を今後とも維持していくと。また、インドネシアも大体五%ぐらいの成長を今遂げているわけでございますけれども、これも中国、インドに次ぐ人口を持っている国でございますね。アジア大国でございますけれども、インドネシアもポテンシャルとしては五%前後の成長率を維持していくということが考えられるわけでございます。  日本との関係ということでいいますと、日中関係とか日韓関係というのは時々ぎくしゃくするわけでございまして、これは戦前から戦時中の日韓、日中のその関係からそういうことでございますけれども、日本とインドというのはずっと極めて良好な外交関係を維持しているんですね。  というのは、日本が戦時中からインドの独立を支援したわけですね、日本は英米と戦ったわけでございますから。逆に、インドの人たちの一部、インドの国民会議派の例えばチャンドラ・ボースなんという人がいますけれども、チャンドラ・ボースとかビハリー・ボースとかいう人は、これは日本に亡命しまして、日本と一緒になってインドの独立を達成しようというふうにしたわけでございます。実際に一九四四年にはチャンドラ・ボースが義勇軍を組織して、日本軍と一緒にインパール作戦というのをやって、たしかあれはビルマで英国と戦っているわけでございますね。  そういうことで、その時期から国民会議派の左派といわれる人たち国民会議派の中心にいたガンジーとかネルーは、どちらかというとイギリスとも友好な関係を維持し続けようというふうに考えていた節がありますけれども、チャンドラ・ボースとかビハリー・ボースとか国民会議派の左派の人たちは、むしろ日本と組んでイギリスと戦うということを選んだわけでございます。  そういうこともあって、日印関係というのは戦時中から極めて良好でございまして、現在も非常に良好な関係を維持しているわけでございますね。たしか、日本とインドの間には、一年ごとに両国の首相が相互訪問するということが制度化されております。恐らく来年は安倍さんが向こうに行く番ですかね、ナレンドラ・モディが今首相でございますけれども、そういうことで、両方の首相が交互に訪問するということが制度化されていると。もちろん、首脳の訪問というのはいろいろあるわけでございますけれども、交互の訪問というのが制度化されているのは日本とインドだけでございます。  そういうことで、日本とインドというのは外交関係も良好ですし、対日感情あるいは日本のインドに対する感情も非常に良好ですから、今後やはりインドというのは日本にとって非常に重要な国になっていくということでございます。  それからまた、先ほど申しましたように、成長率も非常に高いまま維持されるということになりますから、非常に重要な市場になっていくと。日本の自動車会社というのはほとんどが今インドに進出しておりますけれども、バンガロールか何かに工場を持って進出しておりますけれども、これから例えば自動車の販売量とか、あるいは耐久消費財の販売量というのはインドは急速に増えていく可能性があります。そういう意味で、市場としてインドを見た場合に、日本の企業にとって極めて有望な市場ということになっておりまして、自動車とか自動車部品の企業がインドに進出しておりますけれども、今後とも日本企業のインドに対する進出は続いていくんだというふうに考えております。  そういうことで、今後の日本外交ということを考えた場合に、やはりアジアとの外交というのが非常に重要になってくる、特に経済的にはアジアとの外交が極めて重要になってくると。安全保障の面では日本の最大のパートナーはアメリカでございますけれども、実は経済ということに限っていうと、日本の最大のパートナーは中国なんですね。日本の貿易ということ、例えば輸出ということを考えましても、日本の輸出の一五%弱がアメリカでございますけれども、もう中国への輸出は日本の輸出の二〇%になっていると。それに香港、台湾などを加えますと、中国圏への輸出は日本の輸出の三〇%を超えているわけでございますね。あるいは、アジア全体ということでいいますと、日本の輸出の六〇%はアジア全体に対する輸出ということでございますから、これからやはり経済的にはアジアというのが非常に重要な日本の相手、パートナーになってくるということでございますから、これは今後の日本外交政策を考える上で極めて重要ということでございますね。  既に日本の企業というのは相当中国に進出しておりますけれども、今はインド進出というのが一つの流れになっておりまして、多くの日本の企業はインドに次々に進出をしているということでございまして、インドは実はスズキ自動車が非常に強いんですね。スズキが、インドの国民車をつくるというその要望に応えて、スズキ・マルチという合弁会社をつくってインド国民車の製造に協力したわけですね。ですから、実は今、インドの自動車市場の六割をスズキ・マルチが占めているということでございまして、元々はインドがマジョリティーシェアを持っておりましたけれども、今やスズキ、日本がマジョリティーシェアを持っておりますから、恐らく、正確な数字を持っておりませんけれども、スズキの自動車というのは日本よりもインドで売れているんじゃないかと、台数が多いんじゃないかというふうに思われますけれども。  そういうことで、スズキが典型でございますけれども、今やトヨタもホンダも、あらゆる自動車企業がインドに進出してインドの今後のポテンシャルということを生かそうというふうに考えております。  そういうことで、アジア全体の成長率が非常に高いんですけれども、中国は次第に減速していきますけれども、インドは相当高い成長率を今後二十年、三十年にわたって維持する可能性が極めて高いわけでございますから、インド市場ということを重視していかなきゃいけないということと、日本アジア外交ということからいいましても日印外交というのが非常に重要になってきます。現在、既に非常に良好でございますけれども、これを良好のまま維持して、例えば総理の相互訪問などということを続けていくということが非常に重要ではないかと思っております。  一応時間になりましたので、私の話はこのくらいにさせていただきます。
  16. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、丹羽参考人から御意見をお述べいただきます。丹羽参考人
  17. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) 残り五分のようでございますけれども、十五分でよろしゅうございますか。
  18. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) どうぞ。
  19. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) 私、少し切り口を変えまして、二十一世紀の半ばに向かって世界はどのように変わるだろうか、あるいはアジアはどうだ、あるいは日本の国の姿はどう変わっていくであろうかというようなことを念頭に置きながら、世界のグローバリゼーションの潮流はどうなるか、あるいは、その中でも非常に重要なのは、戦後のレジーム体制の変革の時期が来ているのではないかということで警察官不在の世界というふうに書いたわけであります。三つ目は、やはり日本のこれからの姿、その中で外交をどのように展開していくべきか、基本的な問題は何だろうかと。私は中国に二年半大使として行っておりましたので、この外交という問題につきましてもなかなか新聞等では出ないような話もあるかと思います。その一端でも少し触れながら、これからの日本外交はどうあるべきかと、基本的な問題を少しお話ししたいと思います。  最初に、グローバリゼーションが世界の潮流である。これにさおを差す動きが少し出ているようでございますけれども、特にトランプ大統領がツイートで動いておりまして、私の毎朝もこのトランプさんのツイートで始まる日々でございまして。そういう中での一つが、先ほどから出ておりますアメリカファースト、それから保護主義支持者、あるいは反グローバリズムという極めて身勝手な政策が最近出ておりまして、QアンドAなしの百四十語のツイートで世界に混乱のつぶやきを、さえずりをばらまいているというのが現在の姿で、どの国も大変に迷っていると思います。  安倍さんだけではなく、世界の各国が、この百四十字の言葉で、しかも中学生が理解できるような英語で分かりやすくこれを表すことは大変に難しい。皆さん、そのトランプさんのツイートを英語で御覧になっている方もおられると思いますが、非常に日本語に翻訳するのが難しい。裏と表でやはり英語を理解していかなきゃいけない部分があると思います。これをどのように日本語に訳して新聞が報道しているか、あるいはまた欧州の各国にどのように伝わっているか、大変に判断に迷うところがあると思います。そういう意味で、最近のスマホもインターネットもそうでございますが、真実はどこなんだ、ポストトゥルースという話が最近出ておりますけれども、やはりそういう目であらゆる情報をよく見ていく必要があるだろうということではありますけれども、どうも間違いなくグローバリゼーション、アンチグローバリズムというのが一つ入っているようでございます。  それから、アメリカファーストといいますけど、チャイニーズファーストアメリカの大統領が言うことはありませんね。日本の首相がアメリカファーストと言うこともありませんね。こんなものはごく当たり前のことでございまして、なぜこのフレーズがこれほど世界に広がって新聞の一面を飾るんだと、私にとってみますと極めて疑問であります。日本の首相がジャパニーズファーストと言って新聞の一面になりますかね。  というふうに考えますと、アメリカファースト、それは、重商主義だとかあるいは保護主義だといいますけど、こんなものは別に今に始まったことではなくて、どの国も自分の国益が第一であることは疑いのないことでありまして、これをもってトランプアメリカファーストでアンチグローバリズムだというふうに片付けるとか保護主義だとして片付けるというのは、やはりちょっと過剰反応ではないかと私は思っております。  したがいまして、最初に申し上げたグローバリゼーションというのは避けられない世界の動きでありまして、なぜかと。  これは過去、例えば江戸の時代から人口の増加というのは非常に顕著に続いてきているわけですね。これは世界的に見まして、例えば江戸幕府の開幕のときに世界の人口はどれぐらいあったかといいますと、三億人でした。そして、一七〇〇年になって六億人になりました。一八〇〇年、マルサスの「人口論」が出る少し後、この頃になりますと九億人。それで、マルサスは何を言ったかというと、幾何級数的に人口が増える、算術級数的には増えない、例えば食料とかいろんなものは二〇%、三〇%アップで来るでしょうけど人口は違うんだと言いました。そして、一九〇〇年になりましたら十六億人になった。なるほど、マルサスの言うとおりかと。それじゃ、一九〇〇年はそうでしたが、二〇〇〇年になったらどれぐらいになるか。六十四億人になりました。そうか、人口はその勢いで増えるのか。  それじゃ、国連もいろいろ調べましたけれども、世界は二十一世紀の半ばに何億人になるだろうか。今、大体、平均的に見ますと百億人です。そこまで地球は耐えられるだろう。どういうことか。水と食料、自然現象、環境問題からいって百億ぐらいがいいところではないか。誰も正確な数字は分かりません。という姿を我々は頭に入れて考えなきゃいけない。資源は有限であります。これはローマ・クラブをまつまでもなく、依然として地球で続く問題です。  人口はこのように大きく、江戸幕府のとき三億人が今や七十二億人になってきた。二〇〇〇年から二〇一七年までの間に大体毎年六千万とか七千万人増える。アフリカはこれから三十年で、今十億でありますが二十億人になるだろう、アジアの人口も増えるでしょう。ということを考えますと、世界のこれからの姿というもので何が一番大事なんだということは、やはり食料が安定するか、あるいは世界の水は大丈夫かということを我々は念頭に置いてこれからの姿を考えなきゃいけないだろう。  その中で、日本というのはどういう立ち位置に今世界の中であるか。  人口問題、水問題、人、物、金、これは人間が止めようとしても、トランプが止めようとしても絶対に止まらない。人口がこれだけ増えたからグローバリゼーションの動きは大変な勢いで進んでいるわけです。これを止めるわけにはいかない。人も金も物も、幾ら止めても、人は穴を掘ってでもモグラのようにメキシコから米国へ入ります。空からも来るでしょう、海からも来るでしょう。  したがいまして、トランプさんがメキシコとアメリカの間の不法移民を帰すとか柵を造ると言っております。これは、私もアメリカに十年いまして、そんなものは昔からあるよと。アメリカも移民を停止したり廃止したり反対したりしていますけれども、アメリカの国家理念というのは移民合衆国家です。移民があってあの国はこのように発展をしてきたわけでありまして、この移民を止めるということはアメリカの国家理念を壊す、私はそんなことはできないと思います。そうやってアメリカが発展してきたことは、経済の歴史であろうと政治の歴史であろうと見れば分かるわけでありまして、大統領一人でこれを止めることはできないと思います。  したがって、今動いているトランプ大統領のいろんなつぶやきも、やはり時間を掛けてもう少し冷静に物を見ていく必要がある。株式市場のように、翌日すぐ反応する。千ドル上がって千ドル下がるとか、千円ですか、上がって下がるとか、為替も飛んだり跳ねたりすると。私は経済界に長くいますから分かりますけれども、冷静に物を見なさい。一日、二日で世界は変わらない。一日、二日で政策は実行できない。そうすると、三日、四日、一か月、二か月待ちなさい。そうして、よく冷静に数字を見て、実際の行動を見て、各国の反応を見て動きなさい。それを一番やっているのはドイツのメルケルでしょう。あるいは習近平でしょう。じっとしていますね。アメリカへ行ってゴルフやるとか、アメリカへ行ってトランプさんと遊ぶとか、そういうことをやっている国はどこにあるかと。やはり冷静に見なきゃいけない。もし、あれがアメリカ国民の非難を相当浴びるようになると、日本は一体何なんだということになります。  私は、国の姿を考えるときに、日本はグローバリゼーションから離脱することはできません。グローバリゼーションがあって初めて、日本の平和、日本の生活は守られているわけです。人、物、金が動かなくなったら、江戸の鎖国時代と一緒で、皆さん方は、鎖国時代、今、日本は生きていけないんです。あらゆるものが世界のどこかの国とつながっています。ボタンを押すと連続的につながっているわけです。  そういうふうに考えたときに、日本の国是としては、やはりこの四海、海に囲まれて、あらゆる面から見て日本世界のどの国とも仲よくしなきゃいけない、どの国とも平和で付き合っていかなきゃいけない、どの国とも自由に貿易できるような体制に持っていかなきゃいけない。根本のところはここです。したがって、あらゆる政策は、中国でもロシアでも、イーブン北朝鮮とでも、いずれはですよ、やはり仲よくやっていくということが、日本の地政学的にもあるいは経済的にも政治的にも、絶対に離れられない国是なんです。マストなんです、これは。けんかをやっていいことは、日本の国としてはあり得ません。今、全てのものを自給自活できるのは、アメリカオーストラリア、ロシアぐらいです。資源がなくてはできない。そして、経済制裁とかけんかをして、日本は立ち位置ありません。  また、もう一つの問題は、資源も有限と知って、私が申し上げましたけど、アメリカでさえも、今地球上で未開発の資源はどこにあると思われますか、北極海です。北極海を支配しているのは誰ですか、ロシアです。だから、トランプさんがロシアに非常に近いティラソンを国務長官にしたと。全く理にかなっていると私は思っています。もしそうであるならば、中国の習近平も恐らくロシアとは面と向かっては戦えないでしょう。しかも、太平洋中国から欧州へ行けば四十日掛かります。北極海を行けば多分半分以下でしょう。その間の経済的な利益は大変なものであります。  そういうことも頭に入れて、二十一世紀の半ば、果たして世界はどのように変わるか。そして、日本は、立ち位置は平和と自由でしょう。平和と貿易でしょう。これなくしてはあり得ない。イーブン中国日本と立ち位置はほとんど変わりません。これだけの十四億近い人口をどのようにして安定した国民の生活に持っていくか。彼らの今の資源の使い方からいえば、日本以上に平和と自由貿易が国是になるはずです。彼らもいずれ気が付くでしょう。  というのがこれからの世界の立ち位置で、全ての議論はその立脚点に立って物を考えていく必要があるという。難しいことは分かります。しかしながら、それをやっていくのが政治の仕事です。軍人の仕事とか経済界の仕事ではない。その国の姿勢を、基本をどのように維持していくかを考えるのが私は政治の仕事だと思っているんです。  ということで、グローバリゼーションは日本の国是というのは、まさに今、私が申し上げた点でお分かりいただけるだろうと思いますが、中国の一番の経済的な問題は水です。  これは、人口は世界の大体五人に一人、中国人です。水はどうだ。世界の大体二〇%を占める人口の国が今、水においては世界の八%です。つまり、それだけ一人当たりの淡水の占有量というのが少ない。一人当たりで見ると百八位。経済的には第二位だ、しかし、人間が使う水の、淡水の一人当たりの占有量というのは八%にすぎない、世界の百八位だということなんです。そして、中国の中で、普通の都市の四割近いところが水で大変に問題があるということです。重化学汚染を受けている可能性がある、あるいは農業の水はどうするかというようなことを考えると、中国においてもグローバリゼーションは避けて通れないだろうということがお分かりいただけると思います。  それじゃ、二つ目の、こういう中で習近平体制中国体制、特に日本アジアにとって中国はどんな存在なんだ。潰れるだろうか、あるいは経済的に波乱が起きるであろうか、起こしてはいけないということなんです。起きるのは勝手ですが、日本の国益を考えなければ、まあ勝手にしたらいいじゃないの、共産党の世界がどうなろうとわしの知ったこっちゃない。しかし、それじゃ済まないから我々は心配をしているわけです。中国の経済が崩壊したら日本の経済も崩壊すると思います。それほど中国の経済の位置は大変に強いし、中国の力自身が大変に今や強いということなんですね。  それはどういうことかと申しますと、あるいは軍事力においても、経済力においても、あるいは科学者の数においても、留学生の数においても、貿易の総額においても世界第二位以上の地位を占めている。特に軍事力においては、一兆七千億ドル世界全体であるとしても、アメリカが三三%、中国は一〇%強、日本は二・五から二・六%です。何倍かの力をもう持っている。  それから、科学者の数も、最近OECDが調査をして発表しました。去年の夏ですかね、発表しましたが、まず中国のRアンドDの科学者の数は百四十八万人ぐらいいる。アメリカが百二十五万人である、日本は六十六万、ロシアが四十四万、韓国が三十二万というように、科学者の数においてもかなり出ているんです。  それから、四百四万人という留学生が四十年間で海外に出ている。そのうちの五〇%が中国に戻ってきているということを考えると、我々が今まで思っているように、中国はあほやばかやうそつきだという時代はもう過ぎた。つまり、それだけ教育受けた連中が今や政府の中枢なり国有企業の中枢に入ってきているというふうに考えなくてはいけません。もちろん、中には変なのはいっぱいおります。日本の十倍ばかもいるし賢い人もいるということを考えると、中国世界第二位だというのは、科学者の数、留学生、あるいは軍事力から見てもそうである。  経済的にはどうかと。  ここでちょっと、今日お配りした資料に、先ほどから出ておりますRCEPASEANというものの国、あるいはアジア二十四か国というのは、どういう国があってどれぐらいのGDPの規模かというのが出ております。  これを見ていただきますと、中国日本、インド、韓国、この四か国でアジア二十四か国の九〇%を占めているんです、GDPでは。ということは、あと二十か国で一割しか占めていない。そして、今から三十年前、中国のGDPはここにありますタイの三千九百五十億ドル、〇・四兆ドルぐらいでした。今、十一兆ドルに近い。二十五倍だ。  日本はその頃どうであったか。日本は、先ほど榊原さんから出ました一九五三年から七三年の第一期の戦後最大の日本の好景気のときですね、日本経済成長率が九・一%でございました。その頃、中国が〇・四兆ドルの頃、日本は三兆ドルでした。現在は、名目でいいますと、ドルで直しますと、やはり為替にもよりますけれども、二〇一五年ベースにすると大体四兆一千か二千億ドル。僅か一・数倍にしかなっていない。  ところが、中国は今や十一兆ドル。〇・四が十一兆ドル、二十五倍になっている。貿易総額においても中国が、二〇一六年はかなり落ち込んでおりますけれども、やはり三兆六千か七千億ドルぐらいあるでしょう。そして、世界全体が三十六、七兆ドルになっています。アメリカが第二位です。そういうような状況の中で、中国がいろんな面から見てももう第二位という地位を固めているというふうに思った方がいいと思います。  アメリカはもう今や世界の警察官ではあり得ないというふうに言っておりますが、トランプ発言を聞いてもその傾向はうかがえます。じゃ、そういう中で日本外交上の将来はどうなんだということであります。  これは、私が見る限り、一番大きなものは情報管理です。サイバーアタックです。サイバーアタックについて、日本ほど無防備で弱い国はありません。それはなぜでしょう。これは政治家の皆さんに是非お願いしたい。日本の縦割り組織がこうしているんです。何とか省何とか省で、各々がサイバーアタックを受けていても、全体として、日本のこのサイバーアタックに対する防衛の形は全くと言っていいほどできておりません。それはそういった、今申し上げたような縦割り行政というものがそういうふうにしているということ。  もう一つは、サイバーアタックを受けた企業が必ず報告の義務付けがなされていない。欧米はされている。ところが、日本の場合には、民間企業にしても、サイバーアタックを受けたことを言うと、あの会社はだらしない、あの会社は情報が盗まれているという。隣を意識したことでなかなか報告が行われていないということは、国としてのサイバーアタックがどの程度あるか皆さん御存じないということでありまして、しかも、漢字の世界英語に訳さなくても恐らくスパイ行為はかなりイージーにできるだろう。  そこで申し上げたいのは、一月二十七日に公開されました映画「スノーデン」、覚えておられる方はおられると思うが、元CIAのエドワード・スノーデンの国際情報スパイの実話と言われておりますのが映画になっております。是非御覧いただきたい、政治家の皆さんは。そして、日本の情報管理がいかにいいかげんかをちょっと考えていただく必要がある。  それから、戦後レジーム体制の刷新というのは、実を言いますと戦勝国中心の戦後のレジーム、英、米、仏、ロシア、中国。どうしてドイツと日本が入らないか、国連の安全保障理事会の常任理事として。もう一つは、G7の中にどうして世界ナンバーツーの中国を入れないんだ。  つまり、G7じゃなくて、先ほども出たインドも入れればG10にすべきだ。そして、常任理事国にドイツと日本を入れるべきだ。これを動かすのは、ドイツと日本がよく話合いをして、そしてアメリカとかほかの先進国を動かすことです。こうすることによって、インターナショナルバリューを中国なりロシアなりに自覚をさせるという方向でいかないと、軍事対軍事、力対力では世界は解決できないんだということで、取りあえず終わりたいと思いますが、また御質問があればお受けいたします。
  20. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。     ─────────────
  21. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、杉尾秀哉君が委員辞任され、その補欠として浜口誠君が選任されました。     ─────────────
  22. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言いただくようお願いいたします。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただきたいと存じます。  委員の一回の発言時間は答弁を含め十五分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  酒井庸行君。
  23. 酒井庸行

    酒井庸行君 自由民主党の酒井庸行でございます。  本日は、参考人の皆様には、大変お忙しい中御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。  今調査会のテーマというのは、皆さん御存じだというふうに思いますけれども、アジア太平洋の平和の実現地域協力、そして日本外交在り方というのがテーマでございます。この調査会を今日からスタートするわけでありますけれども、この時期に合ったというか、調査会に合ったように、御承知のとおり、今も参考人の皆様からお話がございました、アメリカの大統領がトランプさんになって様々な影響を世界に及ぼしているというところにちょうど来て、今も皆様から活発な御意見があって、お話をしていただいて、まだまだお話が足らないというふうに思いますけれども、やはり私としてはここで、最初質疑者でありますので、アメリカトランプ大統領政権外交政策最初に取り上げさせていただきたいというふうに思います。  安倍総理は、この十日にトランプ大統領との会談を予定しております。日米同盟を強固なものにして、世界課題に取り組むことを発信していくというふうにおっしゃっておられますし、また、マティス国防長官が先週来日をされました。日米安保には尖閣諸島が含まれることを確認をして、日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対すると明言をして、大きな成果も上げたところであります。  それで、トランプ大統領の基本方針というのはアメリカ第一主義ということで、内向きで保護主義的でありまして、これまでのアメリカは、自らの懐を開いて、そして世界規模での繁栄を望む中で自らの国益を増進をするというふうに図ってきたというふうに思います。これまでのアメリカ政策とは異質で、国際社会に戸惑いが広がっているというふうに考えます。  アジア経済の構造を考えたときに、私は愛知県の刈谷というところであります、トヨタの本拠地みたいなところでありますけれども。日本などが生産する自動車部品あるいは高度な部品というものは、東南アジアあるいは中国で組立てをして、その製品をアメリカに輸出をして、そこで利益を得ます。その利益というのがアメリカへの投資の原資にもなっているというふうに私は考えます。そのような中でアメリカが保護主義的な通商政策を取った場合に、アジア経済に大きなダメージを与えるということも考えますし、結果としてアメリカにもマイナスになるのではないかというふうに思います。  また、参考人からもTPPのお話がございましたけれども、離脱したアメリカは二国間交渉を重視する姿勢を打ち出していますけれども、様々な条件が異なる無数の、先ほどお話が馬田さんからもありました、FTAが混在をするという、国際貿易を揺るがしかねないという懸念ももちろんありますし、TPPなどマルチの経済連携を拡大をしていく中でWTO等の交渉にも本当はつなげていかなければいけないという考え方から見ると、弊害が非常に大きいのではないかというふうに実は考えます。  一方、昨日でありますけれども、アメリカ商務省が発表した二〇一六年の貿易統計によりますと、対日貿易赤字が約七兆七千億円になったという報告もされました。  こういうことも踏まえて皆さんにお尋ねをしたいんでございますけれども、トランプ政権の、皆さんからお話があった中、政権の具体的な政策の影響と、また我が国としての取り得べき対応ということについて、まずは白石参考人にお伺いをしたいんですけれども、お話のあった中で、念頭に置いておくべきことというのがありました。その中で、全部申し上げませんけれども、日本予測可能性の高い信頼される安定勢力である、あるいはその上の、米中の力のバランスが拮抗すればするほど日本戦略的に重要になる、それから、日本地域戦略アメリカと余りに同期すると日本存在感が薄れると、それから、アメリカファーストが米国の大戦略となるかどうかというふうに投げかけていらっしゃいます。この点について、白石さんはアジア太平洋地域における大変造詣も深いということでありますので、是非ともその辺のところをお伺いしたいというふうに思っております。  そして、馬田参考人には、先ほどお話がありました中で、TPPRCEP等に大変に御造詣が深いということもありまして、資料をいただいた中でアメリカにとって不都合な現実を直視せよというのがあります。これを少し具体的にお話をしていただければ有り難いと思います。  以上、お願い申し上げます。
  24. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) まず、白石参考人
  25. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  まず最初に、御指摘のございましたトランプ政権通商政策によってアジアあるいは世界に広がる生産ネットワークが非常にずたずたにされるんじゃないかという、そういう危惧の念を示されました。これは非常に的を得た懸念だろうと思います。  これを申し上げた上で、先ほど、ちょっと私、時間が押しておりましたので申し上げなかったところもちょっと踏まえて申し上げますと、私は、日本の場合には日米同盟基軸でございまして、この日米のバイの関係を非常に重視しなければいけない。これは当然でございますが、それと同時に、アジア地域、あるいはもっと広く、もう最近ではアジア太平洋というよりは、私はむしろインド・太平洋と言った方がいいと思いますけれども、このインド・太平洋におけるマルチ様々の活動というのを日本はする必要があるだろうと。  これは、安全保障について申しますと、日米同盟基軸でございますけれども、同時にインド・太平洋において、オーストラリアであるとかあるいはインドであるとか、あるいはASEANの国々だとか、そういうところとの安全保障協力を推進するというのが重要でございますし、特に、これからトランプ政権はほぼ間違いなく日本の防衛努力をもっと要求してくると思いますが、それに対して安全保障のどういう分野に資源を投入するのかということは、例えば戦闘機を三機、四機余計に買うのか、それとも、先ほど少しほかの参考人からもお話がありましたけれども、そのお金を例えばサイバーセキュリティーのところに投入するのか、こういうことは是非先生方に考えていただきたい。  通商につきましては、日米FTAというのは、これは政治的なコストというのは随分高いのではないかと察しますが、私としては、これはやはりやった方がいいように思います。と同時に、TPPといっても、これはほかの国、TPP参加を決めているほかの国はアメリカ抜きでもやろうという議論もありますし、ここは私は日本としてはきちっと検討するべきだろうと思います。  それからRCEPも、できる限り質のいいRCEPをつくると、それでもって生産ネットワークの円滑な運用に資するようなものをつくると。これ、こういうことでRCEPもやればいいし、なかなかヨーロッパの情勢というのは難しいものがございますけれども、日本・EUのFTAというのもこれはやるべきだろうと思います。  金融、通貨について申しますと、私は、IMFとチェンマイ・イニシアティブという現在のこの地域の仕組みというのは、これはこれで結構なものだと思いますが、同時に、為替政策というのを通商政策の一環として決められるというのは、これは非常に困ると。ここのところは日本としては峻拒すべきだろうと。  最後に、経済協力について申しますと、やはり人材育成とインフラ整備のところについては、日本としてこれも選択的に戦略的にやる必要があるだろうというふうに考えております。
  26. 馬田啓一

    参考人馬田啓一君) 不都合な現実についてと、こういうふうなことでありますけれども、アメリカTPPを本当に離脱すれば、アジア太平洋におけるアメリカの影響力が完全に低下していくということは避けられないと思います。  アメリカアジア戦略というのは、結局、とどのつまり、中国をどう変えるかと。国家資本主義の下に国営企業が世界中を席巻して、それが自由貿易体制をも揺るがすような状況になっている。国家資本主義の国家の二文字を取りたいということです。  そのために、ブッシュ政権のときから米中戦略・経済会議、二国間の、米中の構造改革を中国にもやらせる、その取組をアメリカは始めたわけです。もう十年以上になりますが、これによって確かにアメリカにとって得るものもあったけれども、なかなか中国は変わっていない。トランプバイ交渉の重要性を強調していますけど、しかし本当にそうなのか。アメリカは、バイの枠組みで中国に対して中国を変えようと。これは、日米構造協議でアメリカ日本の譲歩を引き出してうまくいったと、その同じやり方を中国に適用したわけですけれども、中国はなかなかしたたか、変わらない。  米中戦略・経済会議は、これはなかなかアメリカが思ったように効果が上がらないという反省の下に、バイではなくて今度はマルチでいこうと。TPPという多国間の枠組みで、最初から中国を入れれば骨抜きにされる、後でいいと。APECの枠組みの中で、まずはこの指止まれという形でTPPを立ち上げて、そしてそのTPPに参加する国の数を増やして、まさに中国を孤立させる。外堀、内堀埋めて、最後中国が入らざるを得ないような形にし、入りたいというときに、中国変わらなければ駄目だ、参加条件として国家資本主義を改めろ、国際的なルールも従え、国有企業も改革だ。  WTO中国が入るときに、二〇〇一年十一月、中国は何を約束したか。国有企業の民営化、国有企業改革。しかし実際には、二、三年たったら、後は喉元過ぎれば熱さ忘れるということで、国有企業はますます強くなって、その悪影響が欧米に及んでいる。  TPPについては、今度はそうはさせない、TPPに入るときに完全に中国を変えてやろう、構造改革だ、これがアメリカのシナリオなんです。それに日本も、中国におけるビジネス環境は非常に難しい、日中韓のFTAも多分なかなか中国の壁を打ち破れないだろう、日中韓FTAも駄目だ。そこで日米が中心となってTPPをまとめたわけです。それは、今は中国は入っていませんが、やがて中国が入らざるを得ない状況をつくり出して中国を変えるという、アメリカにとっても日本にとってもこれは長期戦略なんですね、中長期の。  つまり、トランプは不動産屋のおやじで、バイの取引を重視しマルチはばかにしている。だけれども、そうじゃないんだと。マルチの取引、交渉の重要性ですね、中国みたいな国を何とか抑え込むためには、マルチTPPのような、これが非常に手段として役に立つ。  ということで、もったいないぞ、TPPから離脱してどぶに捨てるようなことをして。中国を変えられるこのカード、切り札ですよ、これは。中国の構造改革、中国をがっと変えていく、その切り札であるTPPを、入らねえやということでどぶに捨てる。もったいないぞ。経済的な利益を重視するアメリカであれば、トランプに上手に、もったいないことするな、TPP中国を変える切り札だ、アメリカにとって都合のいいように中国からいろんな譲歩も引き出すことができる。そういう対応をしていかなきゃいけない、またできる手段であるのがTPP。そのTPPをむざむざと捨てる、TPPの葬式を挙げる、これはアメリカにとってまさに大きな損失。それを望んでいないのはアメリカの産業界じゃないですかと。  つまり、アメリカの産業界が、アジア太平洋地域アメリカの企業がもっとビジネスチャンスを増やそう、そのためにいろんなアジアの壁をぶち破る、アメリカ価値観で、まあ押し付けるわけですけれども、いろんな交渉の中で、百点満点で八十点ぐらいの内容かもしれませんが、それでもTPPがないよりはアメリカの企業、産業界にとってプラスの内容になっているわけですね。  企業は本当にTPPがこれで駄目になっていいと思っているのか、指をくわえて黙って見ているのか。そんなはずはないんじゃないですか。あれだけTPPに、熱意でもってオバマ政権を後ろからたたき、あるときはいろんなサポートもし、あめとむちでTPPをまとめ上げたその産業界が、ここでむざむざと、TPPトランプが駄目だと言って、永久離脱だと言って、はい、そうですかと黙っているんですかね。  二国間のFTAでは、企業のグローバル化がこれだけ進んでいて、グローバルサプライチェーンが企業の生命線、競争力を左右すると。グローバルサプライチェーンの効率化のためにはバイでは駄目だ。アジア太平洋十二か国の中で二国間のFTAを結べば、まさにスパゲッティボウル。皿の上のパスタがこんがらがっているように、企業からすれば面倒くさい、煩わしい、一つルールにしろという、これがTPPです。  企業は二国間FTAでは飽き足らず、その問題点を十分理解しながら、アジア太平洋にぶわっと大きなメガFTAという一本のルールでぴしゃっと決める、それを望んでいる。それを今、トランプの登場で黙り込んでしまうのか、そんなことはないだろうと。  つまり、アメリカにとって不都合な真実とは、中国がのさばる、中国を変えられない。アメリカの企業も決してこれは想定外の出来事。このままで済むのか済ませぬのかという、日本がその辺のところをトランプによく説得していく。ただし、現行のTPPでは難しければ、ちょっと再交渉トランプの頭を変えさせるのは、現行のTPPは非常に難しい。再交渉という甘い言葉でもって、TPP修正版という形で土俵に引きずり込めば、あとは結果は交渉次第。相撲でいえば取り直し、仕切り直し、これをやろうというふうに安倍さんはトランプに上手に言うべきじゃないでしょうか。下手に言うとトランプは怒りますから日米関係も壊れますけれども、いいタイミングで、トランプが聞いてもらえるようなタイミングで日本からそういう提案を上手にしていくことが今、日本に求められている。  つまり、アメリカにとって不都合な現実をきちっと説明するけれども、だからといって現行のTPP、これは難しいだろうと私は思っています。  以上です。
  27. 酒井庸行

    酒井庸行君 榊原参考人と、それこそ丹羽参考人に今の中国の話をお聞きしたかったんですけど、時間が参りましたので、後日またお願いをします。  ありがとうございました。
  28. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 藤田幸久君。
  29. 藤田幸久

    藤田幸久君 民進党の藤田幸久でございます。  参考人の皆さん、ありがとうございます。  時間の関係で、主に榊原先生と丹羽大使に質問をさせていただきたいと思っております。時間の関係がありますので、幾つか質問させていただきますので手短に御回答いただければ有り難いと思っております。  まず、榊原先生ですが、チャンドラ・ボースの話が出ました。私の理解では、戦争中に渋沢敬三さんのお宅に滞在しておられて、それが今、財務省の三田公館になっていると、そういう縁もあるかと思っておりますが、いい話を伺いました。  それで、今日はインドと中国の話伺いましたが、一昨年、中国に行ったときに、習近平さんから、アジアインフラ投資銀行と一帯一路のお話、十五分、二十分ぐらい超党派の議員で伺いました。  今日お話しになったことは、ある意味では戦後、欧米列強がアジアを分断していったと思っています、インドとパキスタン等々でございますが。それを逆に言いますともう一度統一をする話でもありますし、と同時に、よく需要と供給といいますか、大きな需要を起こさなければ戦争が起きてしまうと。戦争に代わる需要をしっかり起こしていくというのがアジアインフラ開発銀行と一帯一路。  かつ、これがシルクロード全体でという話になっていますので、単にGDPがこのアジア、リオリエントとするばかりではなくて、需要喚起による戦争回避、平和構築という流れでもあるのではないかと思いますけれども、そういう観点から申しますと、サンフランシスコ講和条約が一九五二年に発効したわけですが、実は日本にとっての隣国でありますところの中国、ロシア、北朝鮮、韓国はサインをしておりません。そことの関係改善ということと需要を起こしていくということが平和の基本ではないかというふうに思っておりますが、そのことと今日おっしゃっていただいたこととの関連でコメントをいただければ有り難いと思います。
  30. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 先ほども申し上げましたけれども、日本の経済面での最大のパートナーは中国なわけでございますね。ですから、中国とは、まあ戦前、戦中いろいろぎくしゃくありましたけれども、ここの関係を良好に保っておくというのはこれは極めて重要なことでございます。ですから、中国外交というのは、安全保障では日米外交が主軸でございますけれども、それをベースに置きながら、経済面では中国と極めて友好的な関係を維持するということが重要だと思いますので、その辺が日本外交一つのポイントになるのではないかと思います。  それからロシアも、日ロ関係は今非常に改善しておりますし、特にシベリア開発なんかで日本協力できる余地が相当ございますから、この日ロ関係の改善というのはプーチン、安倍さんでかなり進んでいくんだろうと思います。また、日ロ関係の改善にアメリカ異議を唱えるような状況ではございませんよね。トランプ政権は割にロシアと接近しようというふうにしておりますから。やっぱり、日ロ関係を改善していろんな形で経済協力を進めるというのも日本にとって非常に重要なことだというふうに思います。  ですから、今後やっぱり日本にとって極めて重要なのは、別に日米外交が重要でないと申し上げるつもりはございませんけれども、アジア外交、特に対中、あるいは対インド、あるいは対ロシアと、そういうところがポイントになってくると思いますし、そこにいかに注力していくかということが重要ではないかというふうに思っております。
  31. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 丹羽参考人ですよね。いいんですか。
  32. 藤田幸久

    藤田幸久君 丹羽参考人に別の質問を。  済みません、今のは榊原先生への質問でございまして、次に丹羽大使に。  先ほどティラソン国務長官のお話されまして、先週ちょっと、簡単でございますがある会議で御挨拶をしてまいりました。よく、ある意味では外交の素人が国務長官というパターンはありますが、とんでもない話で、逆で、これは四十年間、五十数か国と、ある意味じゃアメリカ外交を実質仕切ってきたような方が国務長官に直接来たような気もいたしまして。  ただ、いわゆるヨーロッパのロイヤル・ダッチ・シェルとかロスチャイルドの自然化学エネルギーの転換に対して、エクソンは化石エネルギーで、そちらの分野で負けたけれども、ロシアと今はよりを戻したと。ですから、これからある意味では化石エネルギーと天然エネルギーと争いの中核に行くような面もあると思うんですけれども、そんな中で、アメリカは決して、いわゆる撤退していくというよりも、そういう面ではかなり厳しいヨーロッパと中国との連合軍に対してアメリカが戦いを挑んでいくという面もあると思うんですけれども、その辺、商社の御経験も含めて、どういうふうに御覧になっているかお答えいただきたいと思います。
  33. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) 大変厳しい質問だと思いますね。  特に、先ほど申し上げましたけど、今、地球上、世界で残っている最大の資源で、この再生エネルギーというのはやはり限界がありまして、コスト的にも今かなり競争力が世界的に付いております。日本だけが再生エネルギーについてはかなりビハインド、遅れておりますけれども、いずれ再生エネルギー出てくると思いますが、依然として主役はやはり先ほどあった化石燃料だと思うんですね。  そういう中で、ティラソンというのは、私もお会いしていますけれども、大変にしっかりしたバランス感覚の取れた人だと思います。したがって、トランプさんとの意思の疎通といいますか、調整というのはこれから恐らく行われるんではないだろうかというふうに私は期待しているわけですね。  トランプさんがどの程度かは別としても、このCOP21につきましても彼はオバマ・レガシーの一つとして否定しているわけですね。あれは、地球環境問題は中国の仕掛けなんだということで言っておりますけど、ティラソンさんはそう思っていないと思うんです。ティラソンさんは、やはり基本的には私が申し上げた北極圏の資源に目が相当行っているだろうと思います。  それで、中国と欧州の問題がありますけれども、欧州はある意味ではそれはもう頭に入れて、ロイヤル・ダッチ・シェルも含めて、やはりロシアとのこの問題については、ティラソンさん以上に注目をしているというふうに思いますので、最終的には欧州とアメリカの北極圏をめぐるロシアとの協調というものの争いになるだろうと。それをどのように外交的に詰めていくかというのは、ティラソンさんの大きな、トランプから恐らく言われている役割じゃないかと思うんです。  したがいまして、日本はその中でどのような対応をしていけるかということなんでしょうけれども、圧倒的な力が、やはりエクソンとロイヤル・ダッチ・シェルというようなところとは力の差がありますから、日本は、やはりアメリカのティラソンさんと協力しながらその部分についても一つの役割を持つべきじゃないかというふうに思います。  エクソンは、日本の我々ともシベリアの開発で一緒に動いておりましたから、そういう意味からいっても、やはり欧州というよりも、日本アメリカと一緒にロシアの北極圏についても何らかの役割を持てるようにしていくのが外交上はいいんではないか。だから、ティラソンさんとできるだけ意思の疎通を民間も併せてやっていくことが大事ではないかというふうに思っております。  中国と欧州の間もそういういろんな問題ありますけど、資源からいいますと、やはり中国はロシアとダイレクトにいろんな動きをするだろうというふうに思いますね。
  34. 藤田幸久

    藤田幸久君 ありがとうございました。  榊原先生にもう一つ。  先週、トランプ大統領に近い方に何人かお会いした中で、いわゆるカレンシーマニピュレーションを日本はやっているんじゃないかと非常に気にしておりました。  今、日銀がある意味では財務省に代わって支えているような部分があって、それで今までの低金利から金利が変わってくる流れになってきて、こういうときに、トランプさんのツイッターでぱっと来たときに今までのように日銀と財務省で管理ができない、瞬間的にいろんな局面が起こり得るんだろうと思うんですけど。つまり、金利の問題で、いわゆる国債の問題でかなり瞬間的に危機的な状況が起こり得るんだろうと思うんですけれども、それに対して未然にどういう対応ができて、今どういうふうな危険水域というふうに思っていらっしゃって、どういう対応が可能なのかについて、ミスター円にお答えをいただきたいと思います。
  35. 榊原英資

    参考人榊原英資君) まず、為替の話ですけれども、トランプが、カレンシーマニピュレーションをしているという批判に対しては、これはもう堂々と反論すればいいと思うんですね。要するに、日銀の金融緩和というのは当然為替に跳ねてきて為替が安くなるということになるわけでございまして、日銀がドメスティックなその目的を達成するために緩和をしていると、それで円安になっているということでございますね。  これはアメリカも同じようにやったことでございまして、二〇〇九年から二〇一二年にかけて、三度にかけて量的緩和というのをやったわけですね、QE1、QE2、QE3と。このときはドル安になっているわけですね。それで、ドル・円はたしか八十円前後まで円高になっているということでございますから、彼我のその金融政策のスタンスによって為替が影響を受けるというのが近年の為替の動きの大体大きなファクターでございますから、それをきちっと言って、日銀が金融緩和していることによって円安というのはもたらされているんだということを言うべきだと思います。  ただ、今後の動きは、そのトランプの圧力だけではなくて、どちらかというと円高に推移する可能性が高いと思います。  二つぐらい要因がありまして、一つは、アメリカの利上げは予想されていたよりも恐らく回数が少ないと。一年ぐらい前は、今年三回か四回利上げをするんじゃないかというふうに言われておりましたけれども、恐らく一回か、せいぜい二回で終わるというふうに考えております。これは、予想ということとの兼ね合いで言いますとドル安要因でございますね。  それから、日本銀行の金融緩和というのはずっと円安要因になってきたわけでございますけれども、日本銀行の金融緩和もそろそろ最終局面に入ってきたという認識がマーケットにあるわけでございます。これも円安要因が消えるということでございますから円高ということでございまして、トランプの主張と一緒に考えますと、恐らく今後、円が百十円を切って百円を目指す展開になってくると思います。  ちょっと大胆な予測でございますけれども、私はパブリックに、今年中に百円を切っても不思議じゃないと、切るということではありませんけど、切っても不思議じゃないというふうに言っておりまして、恐らく緩やかな円高が今後も進んでいくんだろうというふうに思います。
  36. 藤田幸久

    藤田幸久君 ありがとうございました。  最後の質問、丹羽大使に伺いますが、最近、資料にもございますが、アメリカの沖縄における米軍基地、それよりも、例えば国連機関の招致とか、それからいわゆる経済のためには基地よりも別の方法というようなことをおっしゃっておられますが、実際にいろいろ資料を見てみましても、むしろ基地がない方が沖縄経済にとってはいいというようなこともかなり出ておりますが、その沖縄の問題、それから、沖縄の民意を尊重してというようなことをおっしゃっておられますが、そのことについてコメントをいただければ幸いでございます。
  37. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) 私、実は数日前も沖縄に行っておりまして、沖縄の方ともお話をしていますが、やはり一番の問題は沖縄の県民の安定した生活ということでしょう。あるいは、漁業の問題についてもそうだと思いますね。  実は、軍事ジャーナリストの有名な方と最近もお話をちょっとお聞きしたんですけれども、対中国に力と力でいった場合に絶対に負けるだろうと言うんですね。それは、私はよく分かりませんけれども、要するに、軍事対軍事ということになると制空権は完全に中国に握られているんではないかというふうに言っておりまして、そうすると、沖縄の基地の存在というのは一体どうなんだというようなこともそのときの議論になったわけでありますけれども、基本的にはやはり日米同盟というものがあって初めて現在の北東アジアの平和の安定というものがあるんではないかという前提に立って考えますと、急激に今その基地を全部なくしてというようなことはあり得ないですよね。基地を少なくしてどうするんですかと。  というと、今や、やはり肉弾戦ではなくてロケット、中国もロケット軍というのをつくりましたけれども、ロケットあるいはミサイルというものがやはりこれから日中の間にしてもあるいは米中の間にしても主流を占めていくんではないかということからいって、沖縄の基地をやはり平和な機関で使えるようにしていった方がいいんではないか。  だから、沖縄の基地で返還されている部分がありますけど、そこにやはり、国連に対する寄与度からいうと日本は結構高いんですよ。ところが、アジアに国連の主要な機関はほとんどないんです。ほとんど欧米にあるんです。ということからいいまして、できるだけアジアに、その中の中心のところに平和的な国連の機関を誘致する、あるいはそれを日本の国としてもお金の面においても多少の支援をしていくというような方向にやはり日本も動いていったらどうなんだというふうに思って、私はその沖縄の人ともちょっとお話をしたわけでありますが、政治としてもそういう方向に少しかじを切っていくような時期に来ているのではないかというふうに思っております。
  38. 藤田幸久

    藤田幸久君 馬田先生白石先生には質問できずに申し訳ございませんでしたが、四名の先生方、ありがとうございました。
  39. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  佐々木さやか君。
  40. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。  今日は、参考人先生方、お忙しい中貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。  今日、これまでも議論になっておりますように、アメリカトランプ大統領の誕生ですとか、またイギリスのEU離脱の動きだとか、世界というのはグローバリゼーションからその反対の方向へ動いているのではないか、このような分析もあるところではございますけれども、しかしながら、今日参考人先生方からは、やっぱりグローバリゼーションというものは避けられない世界の潮流なのであると、また、日本予測可能性の高い信頼されるそうした安定勢力であると、こういうお話がございました。私も、やはり日本というのは、冷静に今アジアのリーダーとしてしっかりと見極めながら落ち着いた判断をしていかなければならないのかなと、このように思いながら先生方のお話をお聞きをしていたところでございます。  時間が限られておりますので四人の参考人先生方にはちょっと御質問できないと思うんですけれども、白石参考人にお話を伺いたいと思います。  日本がどういうふうにリーダーシップを取っていくかということで、日本外交在り方ということで先ほどお話を伺いましたけれども、例えば地域戦略アメリカと同期をすると日本存在感が薄れる、日本としては独自の取組を行っていく方がいいのではないかと、こういうお話がございました。  先ほどちょっと時間がなかったと思いますので、もう少しこの点を詳しく教えていただきたいのと、このレジュメの八ページにございますけれども、経済協力というところで人材育成とインフラ整備と、この点も非常に重要なのではないかと思うんですが、ここのところについても詳しく教えていただければと思います。
  41. 白石隆

    参考人白石隆君) どうもありがとうございます。  まず最初に、一つ、グローバル化、グローバライゼーションについて申し上げておきますと、私自身もグローバライゼーションあるいはグローバル化という現象がこれからも進んでいくであろうことはそのとおりだろうというふうに考えておりますが、同時に、アメリカ政府は、大体レーガン政権の頃から、つまり一九八〇年代からこういうグローバル化の趨勢を後押ししていく、あるいはそのためのいろんな政策的な措置を国内的にも国際的にもとっていくことがアメリカの大きな利益になると、そういうグローバル化戦略というものを取ってきたというふうに私は考えております。  このグローバル化戦略というのは大きく四つの要素を持っておりまして、一つは国境を越えた通貨の自由な移動でございまして、これは一九八〇年代以来、急速に進展いたしました。  二番目は通商の自由でございまして、これもレーガン時代にアメリカとカナダのFTAとか、あるいはアメリカとイスラエルのFTA、それから、もう既にレーガン時代にWTOにつながるウルグアイ・ラウンド始まっておりますけれども、大体クリントン政権の終わる頃までにはNAFTAができ、それからWTOができ、オバマ政権になると今度はTPPに進んでいったと。  三つ目が民主化の推進、それから人権外交というものでございまして、これも大体一九九〇年代にはアメリカ外交の大きな特徴になっております。  最後マルチラテラリズム、つまり多国間でルールを決める。こういうことをずっとオバマ政権まではアメリカ政府は大きな戦略としてやってきたと。  ところが、トランプ政権になって、これまでの発言あるいは行政命令等で行われたことを見ますと、通商自由化については巻き戻しを図ろうとしているかもしれない、民主化の推進、人権擁護については恐らくほとんど関心はないだろうと。マルチラテラリズムについてはマルチではなくてバイを重視するということで、このままいくと、国境を越えた通貨、資本の自由な移動以外のグローバル化戦略というのは相当に危うい状況にあると。これが一つ非常に大きな動きでございます。  それを踏まえた上で、それでは日本としてどういうことをするのかと。実はもう既にオバマ政権時代から、これは実は必ずしも安倍政権になって始まったことではなくて、野田政権の頃から事実上始めていたのでないかと私は考えておりますけれども、日米同盟基軸といいながら、実は同時に日本政府は多くのこの地域の国々との安全保障協力を始めております。  これは、オーストラリア、インドなどとは防衛装備の協力まで入り込んでおりますし、この日本政府の、言わばアメリカ中心とし日米同盟基軸とするいわゆるハブスポークス地域的な安全保障の仕組みというのを日本ができる限りネットワーク化していくということは、これは長期的に地域の安定にも資しますし、それから長期的に私はアメリカ政府からも歓迎されるものだろうというふうに考えております。  それから通商については、先ほどもう既に申しましたが、日米のバイFTA、これはなかなか難しゅうございますが、やはり交渉はできる限りした方がいいと。そのほかに、TPPは救えるものであればアメリカ抜きでも救った方がいいし、RCEPは、これは中国は習近平国家主席のメンツに懸けても私はやろうとすると思いますけれども、できる限り日本もノーとは言わずに質の高いものをつくった方がいいと思います。それから通貨、金融については、やはり決して為替政策通商政策の一部じゃないんだということは確認すると。  その上で、私は、人材育成とインフラ整備がこれからのアジアにおける日米協力においても非常に重要ではないだろうかと思います。  例えば、これまでの日本の人材育成戦略というのは、これは一つでは留学生をどんどん受け入れるということと、それから、技術協力の一環として産業人材の育成等にJICAが中心となって随分資源を投入するということをやってまいりましたが、これは少し厳しい言い方をしますとかなりばらまき、資源を広くまいて、その中で、決して歩留りはよくないけれども、それぞれの国にとってはプラスになるような人材育成をやりましょうと、そういう基本的な考え方だったんだろうと思います。  私自身が申し上げたいことは、そういう中で、例えば日本の官僚機構を取りましても、大体、一回目の課長をやる頃には、誰がもっとずっと偉くなりそうでどの人は課長止まりかというのは、実は相当程度分かります。同じように、官僚機構のしっかりしているアジアの国でも、大体四十代の前半ぐらいになりますと、この人は将来本当に重要な仕事をするだろうなという人とこの人は多分駄目だろうなというのが、実はお付き合いしておりますとなかなか分かります。  ですから、偉くなりそうな人をきちっとつかまえて幹部養成を日本政府としてもやるというのが重要でしょうと。それが日本戦略的な人材育成の政策になるんではないでしょうかというのが人材育成ということで申し上げたいことでございます。  それからもう一つ、インフラビジネスでございますが、これは中国から見ますと、実は一帯一路に対抗するものと見えます。実際に王毅外務大臣はそういうふうに言ったこともございます。実際そういう面も間違いなくございます。  ただ、例えば一昨年のインドネシアにおけるジャカルタ—バンドンの高速鉄道プロジェクト、これは中国が取りましたけれども、このいきさつなんかを見ておりますと、ちょっと荒っぽい言い方しますと、日本はやっぱり怖くないんです。中国は怖いんです。ですから、日本が幾らこれはいいんですと言っても、最後政治的な判断になったときには、ともすれば日本中国で競争すれば中国に行く可能性があると。だけれども、その結果、恐らく高速鉄道の事実上の標準というのは次第次第に中国のものになる可能性が高い。これは決して日本のためにも多くの地域のためにもいいことだとは私は思いません。  それであれば、日本の企業と、例えばアメリカの非常に優秀な企業ございますので、そういう日米の企業が民間で連携していろんなことをインフラの分野でやるというのは、これは実は今度の新しいアメリカ政権から見ると非常に望ましいやり方なんではないだろうかと。というのが、ここでインフラビジネスにおけるオールジャパンというのはそろそろやめた方がいいんではないでしょうかというふうに書いておる理由でございます。
  42. 佐々木さやか

    佐々木さやか君 ありがとうございました。  少し時間が残っておりますけれども、これで終わらせていただきます。
  43. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 武田良介君。
  44. 武田良介

    武田良介君 日本共産党の武田良介です。  今日は四人の先生方、大変お忙しい中、本当にありがとうございます。  時間もありますので、端的に、できるだけ端的にお伺いしたいと思います。  最初に丹羽先生にお伺いしたいと思うんですが、中国大使としての経験もおありになって今も御活躍かと思いますが、大きく二つお聞きしたいと思っておりまして、一つは今のトランプ政権との関わりでありますが、例えば今、入国制限の問題は大変大きな問題になっています。国連含め各国が非常に批判的なコメントなども発表しておりますが、安倍首相はコメントする立場にないということもおっしゃっておりました。  先ほどのお話の中で、全ての国と仲よくしていく必要があるという、日本の国是ということもおっしゃられておりましたが、そういう立場から、コメントをすべきとお考えなのか、もしすべきだというふうにお考えであればどういったコメントを発することが一番望ましいとお考えかということが一つ。  それからもう一つは、今日、丹羽先生にお話伺うということで資料を見ておりましたが、雑誌「Voice」というところの中で、アジアの問題を考えるときに北朝鮮の問題は非常に大きな問題だということで、北朝鮮問題の解決のために必要なのは、まず日本中国韓国の三か国で北朝鮮が話合いのテーブルに着くことができるように協議をすべきと、その仲介の労を取るべきは日本であると指摘をされています。日中韓三か国が考えるべきは落としどころの設定であるということもおっしゃっているのを拝見をいたしました。  そこで、お聞きしたいと思っているのは、その三か国の会合というのはこれまでもあってしかるべきだったのではないかというふうに思うんですが、なぜそれがなかなか行われてこなかったのかということと、おっしゃられていた落としどころというところ、どういったところが考え得るのか。  大きく、北朝鮮と、それから入国制限の関係でまずお聞きしたいと思っています。
  45. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) どうも大変に悩ましい質問をたくさんいただきまして、ありがとうございます。  トランプさんの移民の入国制限につきましては、これはいろんな意見があって当然でございますけれども、やはり、つぶやきでおっしゃっている、ツイートされているトランプ大統領の真意は本当のところどこにあるんだろうか。全面的に禁止というのは、過去の歴史からいいましても、移民合衆国家であるアメリカの理念からいいましても、全面的な禁止ということは私はやるべきではないし、多分やっておられない、やるおつもりもないんじゃないかというふうに思うんです。ただ、不法移民ということにつきましてはいろんな制限があって当然だろうと。法に違反するようなことがあればやはり入国は差し控えてもらうというようなことは、どの国でもあり得ます。もちろんアメリカだけじゃございません、それはイギリスにしてもそうですけれども。  やはりこの問題は、貿易との絡みからいって、イギリスのブレグジットと同じように身勝手過ぎる。いいとこ取りというような中で、移民によって、過去のイギリスにしろアメリカにしろ、いろんな利益が失われる、彼らに奪われるんだというようなことから移民は制限をする、しかしながら貿易は今までどおりやってほしい。これはイギリスの主張でありますけれども、アメリカにおいてもトランプさんは同じような考えを持っておられるんではないかと思うんですね。  私が思うのは、やはりマネーロンダリングとか薬物とか、いろんな形で不法移民が入ってくるということは間違いのない事実で、この問題については、ある程度の制限を設けるということは私はやむを得ないことだと思います。アメリカにおいても多分そうなるであろう、そういう形になるであろうと思います。一律に全員入国禁止とか、そういうことは恐らくグローバリゼーションの流れの中ではやれませんし、やればやるほどアメリカにとってのマイナスになるだろうと。いろいろ技術者にしても、いろんな形でいろんな国のやはり協力、努力というものが、共同ワークというものがアメリカのこれからの発展にも必要であることは疑いのないことであります。したがいまして、そういう方向へ行くであろうというふうに私は思っております。  それから、北朝鮮問題につきましては、アメリカの元の大使と私は親しいものですから前に話したことがあるんですけれども、北朝鮮については一体どうしたらいいと思いますかと、こういう質問を受けたことがあるんですね。どうしたらいいと自分が分からない、アメリカ人はよく分からないから、日本は近いだろうからどう思いますかという話がありまして、私はそのときはまだ民間でありまして、大使にも行く前ですが、ディスリガードと言ったんですよ。要するに、金正恩の発言を無視しなさい、みんなが騒ぐから余計勢い付いて、トランプさんもそういうところありますけれども、どんどんどんどんエスカレートしていくんだ。  そのときに言ったのは、アメリカはやはり北朝鮮から遠いんですね、一番近いところはどこだと、韓国中国日本ですよね。彼が最後に言いましたのは、君はディスリガードと言うけど、もし北鮮から難民が何万人、十万人と日本海あるいは四海、海の日本に押し寄せたとき日本はどうする、何人か制限して入れるのか、そんなことはできないね。まあそれは、空から海から、陸からは来ないけど、どんどん入ってきたときにどうします、自衛隊並べて全部撃ち殺すか、それはできませんね。じゃ、どうするつもりだという質問を受けまして、それは、その頃に難民が脱国をするということになれば、船なんか持っていないから来れないよと、私はそういう言い逃れをしたんですけれども、実際問題として、そういう問題が起きないようにするにはどうするか。  やはり、今の状態からいいますと、北朝鮮とアメリカが話をするということは非常に難しいです。じゃ、どこが窓口になって話をするか、やはり隣国ですよね。アメリカからは離れているけれども、隣国はどこだ、韓国中国日本です。そして、その三か国はいずれにしても人、物、金は動いている。裏であろうと表であろうと、表は難しいけど、裏でやはり結構動いている。なぜ動くかと。本当に北朝鮮が潰れる、崩壊するようになれば何が起きるか。一番被害を受けるのは中国でしょう。延吉市とか延辺に私も行きました、大使の頃。本当に小さな川を一つまたげばそうですね。あそこに韓国という字はないですね。朝鮮です、みんな朝鮮民族。ほとんど北朝鮮ですね、あそこにいる人、二百万人ぐらいいると思います。朝鮮自治区みたいなのがあります。  そうすると、中国としては崩壊するほどまで経済制裁等々はやるわけにいかない。やれば、アメリカは大丈夫かもしれないけど、中国は真っ先に、あそこに何十万人と人間が押し寄せたときどうするかです。朝鮮民族として中国の軍隊が撃ち殺すかと。例えば、北朝鮮が何かやるときに真っ先に軍隊を移動させるのは中国です。あの国境の川沿いにばっと軍隊を派遣するんです。事ほどさように、陸続きの国の思いというのは我々には分からない。日本は非常にその辺はのんびりしているけど、アメリカの大使でさえ、おまえそうなったらどうするか、手が打ちようがないですね。  じゃ、それはどうするかといえば、今の段階で北朝鮮の金正恩とまともに話ができないです。どういう人か分からない。トランプ以上に暴言を吐くかもしれないし、何かやるかもしれない。全く人脈もない。韓国もルートほとんどないです。私の知っている、中国大使のときの韓国大使と親しいものですから、その話、したことある。全然ないです。その当時の韓国中国大使は帰りまして、要するに北朝鮮と韓国の担当大臣になったんですよ。それほど北朝鮮についても造詣が深いんですけれども、彼自身も全く人脈がない。話ができない。  そういう中でどうするかというと、やはり中国を我々が、日本なり韓国なりという隣国がやはり中国に話をして、何とか話合いの場に引きずり込むことはできないかというようなことを、すぐはいかないでしょうけど、少なくともその契機はつくっていかないといかぬじゃないか。力と力でやったら、確実に何事か、非常に想定外の見たくもないことが起きる可能性があると思うんです。これをやれば絶対大丈夫ということはありませんけど、少なくともやれるのは中国です。そして、そこにこういうことでどうだという話ができるのは多分アメリカ日本でしょう。  ということからいいまして、私は、それをやれば確実だというようなことは世の中にはありませんけど、ベターウエーですね、社会科学は要するに演繹法ですから、ベターな方法を選ぶしかない、ベストというのはありません。したがって、これをやるしかないんではないかという方法は、やはり中国を動かして北朝鮮と話合いをさせる、そして、要するに、嫌な言葉ですけど、生かさず殺さずというような形で北朝鮮を壊滅的なことが起きないようにしていかないといけないと思います。もし壊滅的なことが起きれば、必ず隣国にシリア以上に大きな被害が及ぶだろうというふうに思いますので、唯一の道はそれだろうというふうに思っているわけです。  じゃ、どうするか。それは、非常に今の安倍総理の立場からいって、中国にどうだと言うような雰囲気はありません。非常に難しい。しかしながら、何らかの北朝鮮とルートのある人がやはり中国側と一度話をするというようなことをアメリカの了解の下でやっていく必要があるんじゃないか。  私が申し上げたいのは、力と力の対決は絶対にいい結果を生まない。これは間違いない。経済界もそうです。トランプが自動車紛争をやっていますけど、これは一九八〇年代からあれをやったおかげで、スーパー三〇一条を適用してからアメリカの四大自動車メーカーは実力をどんと落としました。GMも破産法の適用をしたわけです。それでもちっとも良くならない。何百万台という彼らは生産能力を失いましたよね。また同じことをトランプはやろうとしているということでございましょうから、力でもって押し切るということは必ずその国に禍根を残すことになるだろうというふうに思いますから、今申し上げたような方法しかないと思います。
  46. 武田良介

    武田良介君 ありがとうございました。  白石参考人と、また馬田参考人榊原参考人にもお聞きしたいことあったんですが、時間ですので終わりにしたいと思います。  ありがとうございました。
  47. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  東徹君。
  48. 東徹

    東徹君 日本維新の会の東徹でございます。  今日は、大変お忙しいところ、また貴重なお話を聞かせていただきまして、四人の参考人先生方、本当にありがとうございます。  余り時間がありませんので、お話のあった中から少し質問させていただければというふうに思っております。  まず最初に、白石参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。  RCEP、これはもう中国が威信に懸けてでもやっていくだろうというふうな話で、日本もそれにはノーと言わない方がいいというふうな話でありました。  その中で、質の高いRCEPをやっていくべきだというふうなお話だったと思うんですけれども、その質の高いRCEPというのは一体どういったことをやっぱり目指していくべきなのか、ちょっとその辺のところ、具体的にお話をしていただければ有り難いなと思います。
  49. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  まず、ちょっと補足的に申しますと、私は、中国の習近平国家主席はRCEPをメンツを懸けてもやるだろうというふうに申し上げましたが、これは、例えば先日のダボスの会議のときに、保護貿易、保護主義というのは全くどの国、世界のためにもならないし個々の国の利益にもならないということをはっきり言っておられて、それを現実に示すものとしてはこのRCEPをまとめるくらい象徴的な成果というのはないと。ですからまとめるだろうと。  だけれども、拙速でまとめますとどうしても、これは元々ASEANプラス6の、何というんですか、取決め事でございますので、そもそもASEAN経済共同体以上には行きませんし、そういう中で、実はインドなどは余り、物のあるいは財の貿易で関税が引き下がってもプラスにならないんで、ですからインドやなんかも抵抗すると。どうしてもそうするとかなり水準の低いところに行ってしまうという、そういう懸念がございます。  ところが、日本からしますと、日本の企業は国境を越えてこの地域に広く生産ネットワークを展開しておりまして、ここで重要なことは、こっちの例えばA国である部品を作り、B国でほかの部品を作り、C国でまた別の部品を作って、これを全部D国で集めて何かを作って輸出すると、こういうことをやっておりますので、この部品に原産地規則が余り適用されないでそれで関税が掛かると、何のための自由貿易協定なのか、経済連携協定なのか分からなくなります。ですから、そこのところの原産地規則を非常にできる限り透明で使いやすいものにするというのが、これが私が一つ質の高いということで申し上げている点でございます。  それからもう一つは、実は最近のって、もう既に十年以上ですけれども、製造業というのは、製造業の付加価値を、例えば私が所長をしておりますジェトロ、アジア経済研究所の研究で見ていますと、実は製造業の付加価値でもほとんど三分の一はサービスから生まれていると。ということは、別の言い方をしますと、サービスの自由化を進めないとなかなか経済連携の効果というのは上がらないということになります。ですから、その意味でサービスの自由化もできる限り進めると。  この二つを私は大体念頭に置いて、先ほど質のいい協定ということを申し上げました。
  50. 東徹

    東徹君 ありがとうございます。  馬田参考人にお聞かせをいただきたいと思います。  TPPについてですけれども、修正をしてというふうなお話がありましたが、これは国会でもなかなかTPP成立させるのに大変だったわけですけれども、トランプ大統領としたらどの部分を修正すれば一番乗ってくるだろうと。ただ、非常に自動車でも日本にとってもなかなかこれもまた大変難しい問題でもありますから、その辺のところをどのようにお考えなのか、ちょっと時間を短めに、ちょっとお話を簡潔にしていただければ有り難いと思います、済みません。
  51. 馬田啓一

    参考人馬田啓一君) お答えします。  TPPの修正については、アメリカが一方的に言ってそれをほかの十一か国が受け入れるという一方的な修正ではありません。これではほかの国が付いてこない。ふざけるなという話です。アメリカの論理を押し付けるのかと。  そこで、私が提案しているのは、例えばNAFTA、北米自由貿易協定と同じ補完協定ですね。あれは環境と労働に限定して成立させました。同じように、NAFTAと同じように、TPPについても、既に調印まで済ませたこの本体はできるだけそのままにして、あとは足りないアメリカが文句を言っているようなところ。これは去年、土壇場で最終合意にこぎ着けたアトランタの会合で、知財、医療品のデータ保護期間、五年、八年の問題とか、あるいは原産地規則とかですね。  これ、アメリカ、非常に譲歩し過ぎたと。甘利大臣がフロマンを恫喝して、譲歩しろ、これを譲歩しなければ漂流だと。で、大統領選予備選にもみくちゃにされないようにここでというんで、十月でついに、まあアメリカはいつもそうでしたけれども、ずどんと譲歩したんですね。これがアメリカの議会でくすぶっているわけです。選挙中も、TPPについてはトランプもそれから民主党サンダースも駄目だと言って、その流れの中でヒラリー・クリントンは再交渉。でも、最後はそれで収まらないで反対よと、こう言ったわけですね。  今の上院、下院の議員は多かれ少なかれ反対だということで議員になった人たちですから、これが仮にトランプ政権でまあ片目つぶって通すかといっても、議会が通るか分からない。本当は、オバマ政権があれで、ヒラリー・クリントンが当選して、あのレームダック会期ですね、大統領選直後の、あそこで最後っぺで、本当はTPPはいろいろあるけれどもやっぱりアメリカのためになるんだということでわっとオバマが上手に通す、これが日本から見てもハッピーだったんですけれども、まあそうはいかない。  つまり、アメリカの議会を今、現行のTPPで通そうといってもうまくいかないぞというのが私の見方です。甘いと、それは。ですから、修正というのは、再交渉というのはもう去年からアメリカの議会は言っているわけです。  あのTPPを何とか実現したいと思った人たちも、やっぱりいろいろ、商務長官のウィルバー・ロスも原産地規則は駄目だとか、マコネル院内総務も医療品で譲歩し過ぎている、もっと、十二年、データ保護期間。そういうところが修正される、つまり百点満点で九十点だとして、まあ随分高い数字だと思うんですが、業界のいろんな突き上げがあって駄目だ、じゃ、九十五点、百点にできるだけ、そうすればTPPを通してもいいと。つまりTPPの修正版ですね。これを日本側が何となくにおわせながら再交渉でもと。現行のTPPアメリカがうんと言えばこれはファーストベストで結構ですが、まずは現実的に難しい。であれば、セカンドベストで一部はアメリカ意見を入れて修正。しかし、それは一方的に譲歩をするんじゃない、ほかの国がそれは駄目だということになりますから。  私が言っているのは、あのアトランタの会合まで時計の針を戻して、あそこで仕切り直しだと、あそこで問題になった、あそこでもう一回交渉し直そうと。であれば、限定的で、はるかに二国間のFTAを結ぶよりは、自動車にしろ何にしろ、農産物も危ない、そういう日本への風当たりが弱まるだろうと。ですから、恐らくアメリカの方では、水面下で二国間FTAと言っていますけど、ちょっと待ってくれと。  そういう問題も含めて、日米経済協力あるいはTPPも含めFTA在り方について、もう一回しっかりそういう日米の話合いの場、これは例えば日米経済対話みたいな、つまりお互いにそれぞれ相手の問題点をつつき合いながら、何らかいい改善の方法という、そういう一旦は、いきなり二国間FTAではなくてそういう話合いの場、枠組みをつくって、そこに持ち込んで時間稼ぎ。そのうちにトランプの勢いも弱まるだろう、嵐も普通の雨になるだろう、途中で失脚するかもしれない、四年間もたないトランプ政権、急いで二国間FTAに入ってばかを見るなということですよ。  ですから、TPPについては再交渉。つまり、トランプというのは不動産屋のおやじで、たたき上げの、まあそれは不動産王かもしれません。彼のやっていることは不動産という狭いビジネスなんです。普通のビジネスマンだったらもっとマルチに人間関係、人脈というふうに言いますよ。彼はそうじゃない。変わったちょっと異常なビジネスマンです。彼の考え方は非常に狭くて、常識もない、TPPFTAAPも知らない。それで来ているわけです。自信だけで交渉力と言っているわけですね。  そこで、結局、彼のやり方は、どんと肝を潰すような、みんながびくっとするような、それをぼんと駄目元で、いいですか、駄目元でやって落としどころ、妥協点、これが彼の不動産ビジネスのやり方だった。同じように、いいですか、これは分かりませんが、こんな物件なんて要らねえや、どんなにいい物件でもこんな物件要らねえとけち付けて、そして売主が売りたければ値を下げる、値を下げて値切ってビルを、ホテルを買ってきた人間ですから。TPPなんかと言って、離脱だと、知りもしない。  でも、それで日本が、ちょっと待ってくれ、再交渉、これを待つ。つまり、離脱だと言って落としどころは再交渉。これがどのぐらいのパーセンテージで可能性があるのか分かりませんが、彼のやってきた世界というのは、そういうやり方で、ずっと交渉で自分の思いどおりに。だったらそれを、完全に否定するんじゃない、現行のTPPと言ったって怒るだけです、いらつかせるだけですから、ちょっと向こうの言い分というかメンツを立てるように再交渉、補完協定。再交渉の土俵に持ち込めば、あとは限りなく現行のTPPに近いところに持っていく。これは日本とかほかの国の交渉力です。もしかしたらアメリカのどんどん強い交渉力に負けて追い込まれる。でも、それはやってみなきゃ分からない。やってみなきゃ分からない、やってみろということです。  そういうマルチの、TPPアメリカにとっての経済的なメリットとか戦略的な重要性、意義、これを説いても、だからこの現行のTPPを認めろというのはちょっといかがなものかなと。そこは落としどころも考えながら、ちょっとアメリカがうんと言えるような交渉日本が仕掛けていく必要があるんじゃないですかね。  そういう話合いの場は、いきなり二国間のFTAをやろう、うんと安倍さんが言ったら駄目ですよ、これは。ちょっと待ってくれ、だってアメリカの閣僚、商務長官ロスも決まっていないんですから。まあ、商務長官ロスと、それから国際通商会議トップは例のナバロですね、対中強硬派。それから、USTR代表はライトハイザー。戦略はナバロとロス、そして交渉はUSTR代表のライトハイザー。ライトハイザーが自分で戦略立ててくる、ロスは日本もよく知っている、分かってくれているはずです。  ロスがアメリカ通商チームの柱になるだろう。だったらロスに何とか理詰めで説明すれば、ロスは元々自由貿易論者ですから、そしてTPP最初はいいと言っていたんですから。だけど、トランプに擦り寄ってというか、分かりませんが、最後は、商務長官の名前が挙がったときにこんなひどい協定と。でもあれは本心じゃない。恐らく裏で、分かりませんよ、これも、ロスとトランプは裏で、ぼおんと離脱だと言って、落としどころは再交渉。これは俺がやるとロスが言っているかもしれない。私も自由貿易論者です、TPP推進論者です。幾ら安倍さんに甘い言葉を言われたってTPP反対とはなかなか言いにくいところがありますが、でも彼はそれをやった。なかなかのくせ者です。  つまり、アメリカトランプ政権との交渉は、額面どおりトランプの言ったことを、ツイッターを真に受けて、慌てふためいて対応を、答えを出しては駄目で、愚の骨頂であって、先読み、深読み、裏読み、場合によっては逆さ読み、これをしなければまともにトランプ政権に対して日本の国益を守る外交はできないんじゃないのかなと。そういう枠組みの中でうまく修正版TPPで復活の糸口をつかめば、これは、ほかの国がああ助かったと、アジア太平洋における日本存在感、役割、リーダー国としての一目置くんじゃないですかと思いますが。
  52. 東徹

    東徹君 時間がなくなりましたので。ありがとうございました。
  53. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 木戸口君。
  54. 木戸口英司

    木戸口英司君 参考人先生方、本当にありがとうございます。  希望の会、自由党の木戸口英司でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  まずは白石先生にお伺いをいたします。  御説明の中の確認のような形になりますけれども、ASEAN共同体、日本との関係も深い地域でありますので、先生資料でいただいた論文、興味深く読ませていただきました。経済共同体が先行して関税撤廃を進めていると。なかなか、また非関税障壁、安保、社会文化と、これからということで、できるところから進んでいるという東南アジアらしい進め方かなと、そのように感じたところでありました。  その中で、先生の今日の日本外交在り方という御指摘の中で、米中の力のバランスが拮抗すればするほど日本戦略的に重要になるということ。アメリカASEAN政策はまだ分からないという先生の御指摘でありましたけれども、今のトランプ政権の動向を推察すれば、ASEANとの関係も少し、バランスが大きく崩れることはないとは思いますけれども、若干これまでのバランスが変わってくる可能性もあると。そうすれば、日本戦略的な重要性にも変化が訪れるのではないかと読ませていただきました。  また、日本地域戦略で米国と余りに同期すると日本存在感は薄れると。ここは何かリンクするような感じをして読ませていただいたところでありますが、日本の今の経済力、また投資力という部分においても、ASEAN諸国から期待されている部分というものがまた当初とも変わってきている部分があるのではないかと思いますけれども、このASEAN共同体と、今、日本期待されることということを改めて確認をさせていただければと思います。  その中でもう一つ、今年ASEANの会議がフィリピンで行われるということをお聞きしております。その中で、アメリカの対ASEAN政策が変化するかもしれないという中でやはり中国の影響というものが大きくなってくるんだろうと思います。地政学的課題ということの中にも、それぞれ各国の中国との対応というものが違うということで、なかなかASEANとして一つの方向にまとまらないという部分があるということもありましたけれども、ある論文で、今年のASEANの会議においては、対中国、その断固たるコンセンサスという書き方をしているんですが、これをしっかりとまとめる方向で今そのコンセンサス形成に向けているんじゃないかと。ちょっとアメリカ寄りの論文かもしれませんけれども、今こういう方向があるのか、ASEANの今後の、もちろんこれ安全保障にも関わる話だと思うんですが、今の動向などを白石先生からお知らせいただければと思います。
  55. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  まず最初に、ASEAN共同体でございますが、ASEAN経済共同体というのは、私はちょうど現在踊り場にいると。決してASEAN共同体がこれから崩壊に向かうなんということは考えておりません。ただ、これから数年は、現に二〇一五年に合意されましたASEAN経済共同体の様々な合意事項を国内法制に落とし込んでいく、このプロセスというのは、これどこでも時間の掛かることでございまして、それをやるのに恐らく二、三年は掛かるのではないだろうかと。その先どうするかというのは、それは恐らく今年、多分来年辺りから本格的に議論が進むだろうと。  それから、ASEAN安全保障共同体の方は、これは南シナ海の情勢がどう展開するかによって、まとまることもあればまとまらないで推移することもあり得るだろうと。  ここでもう一点、少し特に現状について申しますと、私の理解しているところでは、フィリピンのドゥテルテ大統領は、習近平国家主席に対しては南シナ海の領有権問題について現状凍結ということを提案したというふうに聞いております。これはどういうことかと申しますと、例えばフィリピンは、マレーシアとサバの領有権について紛争を抱えております。つまり、サバというのは、これはマレーシアの実効的な支配下にある州でございますけれども、フィリピンは歴代、サバに対する領有権は放棄していないと。だけれども、じゃ、何かするかというと何もしないと。つまり、領有権の主張を引き下げないだけであとは何にもしないと。  同じように、これまで南シナ海で、例えばスプラトリー諸島で中国が人工島の建設、軍事化をやってきましたけれども、これについてはもう言わないと。だけど、別にスプラトリーの地域のフィリピンの領有権を取り下げることもしない。だから、ここで現状凍結しましょうということを、仮に、そういうふうに言ったと聞いておりますが、その後、例えばスカボロー礁においては中国はフィリピンの漁民の漁業を認める方向になっております。  ですから、例えばこれから人工島の建設が特にスカボロー礁で進まない、それどころか、今年、南シナ海における行動規範について、これまでずっと中国というのは時間を稼いで何にもしなかったわけですけれども、まとめるということになると、これは南シナ海の問題で中国が相当やはり圧力を緩めたというふうになりますと、そうすると、今まで圧力を掛けられた国はほっとします。  そうすると、ここで、私先ほど言いましたけれども、アメリカリスクになりそうだというときに、そのリスクをヘッジするための地域協力のイニシアティブを中国が取って、ASEANプラス3だとかASEANプラス6で、かつて日本がチェンマイ・イニシアティブのようなことをやったのと違う形で、だけれども中国のイニシアティブで地域協力が進んでいくという可能性はあると。この二点が特に今ASEANについては注目すべき点だろうと思います。
  56. 木戸口英司

    木戸口英司君 そうすると、ちょっと確認ですが、やはり日本地域戦略で米国と余りに同期すると日本存在感は薄れるということは、そういう点でございますか。
  57. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  そういうことでございます。  ですから、例えばASEAN経済共同体につきましては、日本はこれまでもASEANの統一性と統合を支援するということをやってきておりますので、これからもはっきりとこの方向でASEANの統一、統合支援のためにできることを、いろんなことをやっていくと。  それから、南シナ海の問題については、緊張が緩和されるのはこれは結構なことですけれども、やはり国際法に基づいた紛争の平和的な処理、それを可能にするような、特にASEANの国々の領海の実効支配あるいは実効的管理の能力に対する支援、こういうことが私は日本政府としてできる限りのことをした方がいいだろうというふうに考えております。
  58. 木戸口英司

    木戸口英司君 ありがとうございます。  それでは、榊原先生にお伺いいたします。  少し国内の話で恐縮なんですが、ドメスティックな話になりますけれども、やはり先ほど中国、インドという話がありました。インドには特に自動車産業が進出しているということ。やはりこれから、今グローバリゼーション、様々、メガFTAの話もありましたけれども、やはり日本が進出していく、有効な投資をしていく、また日本が有効な投資先になっていくという意味で、やはり国内対策が、その意味ではジャパン・ファースト政策というものがやはり日本は少し欠けているところがないかという危機感も持っております。  そういう中で、先生が数年前に出されたこれ対談本、ちょっと私も持っておったので少し読んでみましたけれども、日本企業のビジネスモデルが時代遅れになってきていると思うという発言もございました。また、日本企業が非常にドメスティックな状況ではないかと、また戦略がないと。そこを後押しする政府も、最近はかなり安倍総理御一行ということで海外に企業同行することも多くなってきているようでありますけれども、政府の政策も少し弱いのではないかという御指摘があったと思います。その点、今後、今こういう国際関係、国際状況を見ながら何か御示唆をいただければと思います。  また、もう一点、あと、国内のやはり国民の暮らしという意味で、フランス型の大きな政府、社会保障、子育て、そういったものをしっかりとやはり国内対策をするべきだということも先生おっしゃっております。また、農業者の戸別所得補償も重要だと。もちろんその裏には規制撤廃とか自由化ということも先生はしっかりおっしゃっておられますが、こういった国内対策、やはり日本経済しっかりしていくことということが大事だと、そのような観点で先生から御示唆をいただければと思います。
  59. 榊原英資

    参考人榊原英資君) まず、グローバリゼーションということでございますけれども、過去に指摘したこともありますけれども、日本企業の対応が遅れているということをしばしば指摘しております。大体東京の本部を向いているということで、例えばボードメンバーに外国人いないですね。これだけアジアに進出しているんであれば、ボードに結構アジアの人がいてもいいわけですけれども、まあやっているところも若干あるのかもしれませんけれども、これが非常に少ないということが一つですね。  それからもう一つは、やっぱり日本人の英語の能力が低いということですね。これは当然、アジアあるいは外国に進出するためには英語が公用語にならなきゃいけない。まあ一部の企業、楽天みたいなところはその公用語でやっておりますけれども、そこのところが非常にやっぱり遅れているというふうに思いますから、やっぱりその辺の英語の能力を高めていくのをどうするかということで、これは私はいつも言っているんですけれども、要するに学校の教育が悪いと。中学校から十年も英語をやって、できないというのはおかしいんですよね、大体。  ですから、これは英語教育をもっと抜本的に変えるべきだというようなことを言っておるわけでございますけれども、語学というのは二、三年集中すりゃできるようになるというのが国際的な常識でございますから、大学を出た日本の人が英語ができないというのは信じ難いんですけれども、これは大きくやはり教育の仕方を変えていくべきだと。今はどちらかというとリスニングを中心にして、やり方が変わってきているようですけれども、これは非常に重要なことだと思います。  それから、よく申し上げているんですけれども、日本というのは、ヨーロッパ、日本アメリカと、先進国比べるとどちらかというと小さい政府なんですね。税金及び社会保障の保険料というのは、日本の場合には、アメリカほどではありませんけれども、ヨーロッパに比べると非常に低いレベルになっておると。私は、どちらかというと、将来の問題として、ヨーロッパ型福祉社会をつくるという方向に行くべきではないかというふうに思っているわけでございます。  ヨーロッパ型福祉社会というと、出産とか育児とか教育とか、そういうところに国家の資金をつぎ込むということになるわけでございますけれども、これをやっぱり志向するというのが一つ政治的な方向だと思いますけれども。ただ、これをやるためには財源が必要ですから、やっぱりヨーロッパ型に消費税を二〇%まで上げろと、これはとんでもないと言う人がたくさんいると思いますし、大体日本の首相というのは、消費税をつくったり上げたりすると一年後には交代させられるということになっているので、政治家の立場としては非常にやりにくいことかもしれませんけれども、やはり消費税を次第に上げていって、少なくとも一〇%に早くしろと、延ばすなというふうに言いたいんですけれども。少なくとも一〇%にして、将来は二〇%ぐらいにして、ヨーロッパ型福祉社会をつくるんだと、出産、育児、教育について国が負担すると、そういうことをやるべきだというのが私の意見でございます。  これは政治家によっていろいろな意見があると思いますけれども、少なくともどちらかの政党には言ってほしいと、自民党が言わないんだったら民進党に言ってほしいというふうに、それが一つの対立軸になると思うんですね。日本の場合には、政権交代しても何が変わるんだということがはっきりしないですね。実際に自民党から民主党になって、民主党から自民党になりましたけれども、何が変わったのと言われると余りすぐ指摘できないというようなことでございますから、やっぱり一つの対立軸を持つという意味で、そのヨーロッパ型福祉社会をつくるというようなことを例えば今の野党が言うというようなことは、相当有効な提言になるんではないかと私は思っておりますけれども。
  60. 木戸口英司

    木戸口英司君 ありがとうございます。  まだまだお聞きしたいことはありますが、時間になりましたので終わります。
  61. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) 伊波洋一君。
  62. 伊波洋一

    伊波洋一君 私は、沖縄の風の伊波洋一です。沖縄から参議院に出ております。  今日の四名の先生方のお話聞きまして、やはり私たちがしっかり備えておかなきゃならないのは、未来に対する日本在り方ではないかと、このように思います。とりわけ、経済の動向を見ますと、これほどアジアが経済的に発展をしていく、中でも中国がトップに躍り出ていくという現実を、やはりしっかり政治の場でも生かしていく流れをつくっていかなければならないのだろうなと感じました。  二〇一〇年に内閣府が世界経済の潮流という報告書を出しておりました。そのときに、中国は二〇三〇年に日本アメリカのを足した経済力の二倍になるというふうに書いてありましたが、今は二倍にはなくても大きくなっております。そういう意味では、やはり私たち、日本の経済力あるいはこれからの行き先を考えるときに、中国との関係をどう正常化するかということが一番大きな課題なのではないかなと思いました。  確かに、今、南シナ海の話も含めて、日本との間には尖閣の問題があるわけですが、ドゥテルテ大統領現状凍結という、先ほど来のお話があるように、新しい展開へ中国も進めばいろんな形が可能性としてあるのではないかと。とりわけ尖閣問題を、このとげを、例えば同じような現状凍結あるいは棚上げという議論でされてきましたけれども、そのことが今やはり求められているのではないかなと思います。短期的なトランプ大統領によるアメリカの動向に左右されないで、やはりRCEPの問題とか、長期的に経済を発展させていく、日本世界各地に進出したりあるいはアジアに企業が進出していくためには、経済的な安定というよりは平和的な安定がとても求められているのではないかなと、安全保障上のですね。  その中で、まず白石先生にお話をお伺いしたいんですけれども、やはり米中の力のバランスが拮抗すればするほど日本戦略的に重要であるというときに、やはりアメリカの側だけに立っていたらなかなか日本の役割というものが果たし切れないのじゃないか。これからの、安全保障面も含めてですけれども、例えば経済の面から日本がどのような役割を演じながら新しい二十一世紀後半に向けた方向を進んでいった方がよろしいのかと。そういうことで、もし御意見いただけたら有り難いと思います。
  63. 白石隆

    参考人白石隆君) ありがとうございます。  まず最初に、少し補足させていただきますと、フィリピンのドゥテルテ大統領、確かに現在、現状凍結という形で南シナ海の紛争を封じ込めようとしておりますが、これは一つ決定的に重要な条件がございまして、それは、中国がこのスカボロー礁で何もしない、つまり人工島を造ろうとしないというのが、これが条件でございます。これが崩れますと現状凍結というこの暗黙の合意も崩れてしまうと。ですから、非常に際どいある意味では条件の上に立っているものなんだということを申し上げます。  その上で、尖閣諸島の領有権の問題は、私は、日本は実効的管理をしているので、現在、日本政府の立場も分からないではございませんが、もう一つの選択としては、これは政党の先生方の中にもそういう考え方を言っておられた方あるように記憶しておりますけれども、例えば国際仲裁裁判所だとか司法裁判所に中国が持っていくんだったら日本も受けて立ちますということで、百年でも二百年でも神棚に置いてしまうというのも一つの考え方としてはあるんではないかと。ただ、それを中国は恐らくできない。なぜかというと、それを日本とやれば、南シナ海でも同じことをしなきゃいけないというのが現状だろうと思います。  これを申し上げた上で、これからの経済潮流ですが、これからの経済の趨勢を考えるときに非常に注意しなければいけないのは、購買力平価で経済の規模を考えるのか、それとも為替の市場価格でもって考えるのかで随分経済の規模についての感覚が違ってまいります。私は常に市場価格の方で考えておりまして、そうしますと、いまだにもちろんアメリカの方が中国よりも経済規模は大きいですし、私は、多分中国アメリカの経済規模を超えることはないのではないだろうかというふうに考えております。  その上で、今度は軍事費の方に参ります。中国軍事費というのは今名目で一四・七%ぐらいの平均成長率でございますが、それでも日本アメリカと例えばインド、オーストラリアの全部の軍事費を加えますと、中国一国の軍事費がそれを凌駕することはほとんど考えられないと。だから、その意味で力のバランスを、日本も含めた言わば民主主義的な国々の方に有利な形で維持するということは決して不可能ではないし、普通に努力していればできることだと。  その上、それじゃ何が大事かと。ここが先生の一番重要な肝腎の御質問でございますけれども、やはり日本としてはイノベーションをやるしかないと。そのためには、この大きなグローバル化の趨勢の中で国際的に競争力のある人材を養成していくと。これは先ほど榊原参考人が言われたこととほとんど同じことでございますけれども、世界のどこに行っても活躍できるような人を我々は育てていくというのが、これが肝腎なことだろうと思います。
  64. 伊波洋一

    伊波洋一君 榊原先生の方は、中国日本にとっても一番の大事な輸出貿易パートナーだとおっしゃっておられますし、そういう意味でも、これからのやはり日本の発展には今の流れをどうより発展的につくっていくかということがとても大事だと思いますが、何か政治の場を見ますと、企業はそういうふうに、現実の経済の流れと政治の流れがそこを見ていないような、逆行しているような感じがするんですが、それをやっぱりどう変えていけばいいんでしょうか。
  65. 榊原英資

    参考人榊原英資君) 確かに、おっしゃるように、日本企業が中国に大量に進出している割には日中関係、政治的に余り、時々ぎくしゃくするということが起こるようでございますけれども、これは中国共産党の政策からいって、なかなか中国日本がうまく折り合いを付けるというのは難しいかもしれませんけれども、ただ、やっぱり中国のトップも、日本企業が大量に進出して、それが中国のプラスになっているんだということは分かっていると思うんですね。ですから、経済的な依存関係の深さというものを両方で認識して、認識はあると思うんですね、それで日中関係を更に改善するという努力を日本側もするべきだと思います。  その際、もちろん日米関係というのが一つのバランスを取るファクターになるんですけど、私が今後重要だと考えているのは、日本とインドの関係ですね。日印関係を深化して、それで日中関係とのバランスを取るということが非常に重要だと思います。  先ほど申し上げましたように、インドの対日感情というのは非常にいいですから、そういう意味で、それからまた、インドはGDPではまだまだ中国より低いですけど、これから最も成長が高い、恐らく大国一つになると思いますから、日印関係をどんどん深化させることによって日中関係とのバランスを取るというのが非常に重要だと思いますから、日中、日韓、あるいは日印ということで、今後やっぱり日本アジア外交というのは極めて重要になっていくと思いますね。もちろん、アメリカが重要でないということではございませんけれども、今後、アジア外交をどう展開していくか、対中、対韓、あるいは対インドというのをどう展開していくかということを十分考えなきゃいけない時期に入ってきているんだろうというふうに思います。
  66. 伊波洋一

    伊波洋一君 今度、丹羽先生にお伺いしたいんですけれども、王毅外相が駐日大使の頃、しきりに日本の行政システム中国に教えてほしいと、そういうことをお話をしておりました。それから、とにかく、ある意味中国日本の後を追いながら今の産業の進展をしておりますね、公害の問題とかですね。様々意味日本中国にできることはいっぱいあると思うんですが、でも政府としてそういったことをやっているというふうには見えていないんですけれども、政府として中国とのパートナーシップをつくり上げることが今とても求められているのではないかと思うんですが、御意見をお伺いしたいと思います。
  67. 丹羽宇一郎

    参考人丹羽宇一郎君) そのとおりだと思いますね。  私も中国におりまして、恐らく世界のどの大使よりも中国を歩き回ったのは私だと思います。もうほとんど、チベットからウイグルから内蒙古から歩いておりますが、その歩く過程におきまして、やはり日清戦争以来、百二十年たっていますけど、その間の日中関係の文芸評論集というのが最近出まして、岩波書店から。それも読んでみますと、もう日本の有名な夏目漱石も含めて武者小路から菊池寛とか、中国の方もそうです、いろんな意見や評論集を読んでみますと、やはり中国と力と力でやってはいけないという印象が非常に強いですね。  それで、私は、現在の日中関係を見てみますと、結局、最近も共同調査とかいろいろありますけれども、日本人の九割は中国人嫌いだと言うんですね。それで、中国人の七、八割は、多少爆買いで改善はしていますけど、やっぱり七、八割は日本人嫌いだと言っているんですね。じゃ、どれぐらいの人が交流をしているのか。もうほとんどと言っていいほど増えていないですね。日本人の大体二、三〇%ですかね。それから、中国人はその十分の一ですね、恐らく三%、それぐらい。中国、十四億の三%といったって四、五千万はおりますけれども、日本へ来たことがあるとか知っているとかいう方がですね。  ただ、一番の問題は、政治の問題は領土問題がありまして、これは絶対に譲れないということは、中国は自分の領土だと思っている、それから日本は自分の領土だと、一切お話合いをする余地はありません。だから尖閣問題でお話ししましょうということは日本は一切受け付けない。じゃ、先ほどの裁判所にと、裁判所に自分の領土を訴えるやつはいるかということで、もし訴えたとしても、俺の領土を何で人が訴えてくるんだと、もう受けないわけですね。  そういうことがずっと続いています。おっしゃったように、凍結以外ないでしょう。凍結をして、一九九六年に池田行彦外務大臣が、当時、これはもう話合いの余地はない、本来日本固有の、中身はともかく固有の領土であるというふうに言って以来、一切受け付けない、紛争もない、問題もないという姿勢ですから日本は。だから、その問題についての話合いの余地はないんです、今。  じゃ、どうするか。やはり、一九七二年の日中共同声明、それから七八年の平和条約、それから九八年、二〇〇八年、こういう四つの政治声明の中身をよく読んでください。つまり、棚上げというのがあるかないかは、本当はあるんですけれども、ないとしてもですよ、いずれにしても、お互いがこの覇権を争わないとか仲よくやる努力をしましょうと言いながら、仲よくやる努力はほとんどしていないんです。やらなきゃいけないことは書いてある、漁業交渉、資源の共同開発、それから青少年の交流、経済協力ということなんです。どれもほとんど進展していないんです。  だから、まずやらなきゃいけないことは、そういう領土問題の決着、北方四島もそうです、領土問題の決着よりも漁業です。漁業協定をやること、資源の共同開発をやること、それから青少年の交流。四十五周年が今年、平和条約から四十周年、来年ですね。この二年間で、まあとにかくいろんな問題がありますけど、今やらなきゃいけないことは、自民党も含めて、二階さんが非常に力を入れてやっていただいておりますけれども、そういう、党を挙げてでも四十五周年記念のいろんな事業をやろうと。三百六十八の姉妹都市関係があるんです、日本中国は。その姉妹都市が一件ずついろんな事業をやるというような方向へ進んでいけば、自然と理解者が、中国日本とも青少年の交流も進んで理解が深まっていくと思いますので、是非その方向で一歩踏み出してほしい。政治の方も、二階さんは本当に党を挙げてやろうとおっしゃっていますし、そういうのを実際に形として表していけば少しずつ良くなるだろう。絵の具を塗ったように急には良くなりません、何十年と掛かっておりますから。  だから、是非そういう前向きに、今年と来年に向かって、日中の民間が政治と官を動かすんだということで、経団連もその中心になってやろうということを合意していますから、恐らく今年はそういう形で、先生がおっしゃるように、一歩前へ行こうということを民間が中心になって、三百六十八の姉妹都市で進めていただくということが私は一番大切なことだと思っています。
  68. 伊波洋一

    伊波洋一君 ありがとうございました。  もう時間でありますので、馬田先生には質問できませんでしたが、RCEPもやはりとても大事だろうと思いますし、そういう意味では、日中国交四十五周年、そしてまた来年、平和友好条約のときに、日中が、やはりアジアにとって大事な二つの大きな国が新しい関係をつくり出していく流れができたらいいなと思っております。  ありがとうございました。
  69. 鴻池祥肇

    会長鴻池祥肇君) それでは、予定の時刻が参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言お礼の御挨拶を申し上げます。  四方の参考人先生方には、御多用の中、長時間貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。心から御礼を申し上げます。先生方のますますの御活躍を祈念申し上げております。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時六分散会