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参考人(
岩名礼介君) 皆さん、こんにちは。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの
岩名と申します。本日は
参考人としてお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、
地域包括ケアシステムに関しましては、特に現場での
自治体の
支援というところを主な業務としておりまして、
都道府県あるいは
市町村での
構築支援に関して調査研究、コンサルティング等に従事しております。
今日は大きく三つのことについて
意見を述べたいと思います。第一に
保険者機能強化、今回の
法案、法改正の大変大きな柱になっている部分だと思います。第二に
地域共生社会の
考え方について、そして第三に在宅医療・
介護連携について
意見を述べたいというふうに思います。
社会保障改革プログラム法ができてから、
地域包括ケアシステムというのが法的にやっぱり位置付けられたということは大変意義があったというふうに思っておりまして、各
自治体、ここ数年間、やはりこの
地域包括ケアシステムに取り組んでいかなければいけないんだという強い思いというか動きが出てきているというふうに感じております。今回の法改正につきましても、この流れを少しでも前に進めていこうという基本的な
考え方に基づいて位置付けられているというふうに理解しておりまして、私は評価しております。
元々
地域包括ケアシステムというのは、
地域それぞれの実情を反映させてそれぞれの
地域に合った
仕組みをつくるということでございますので、同じ
仕組みが全国各地にできるというわけではもちろんございません。かつて、多少なりとも人的資源あるいは財政的にも余裕があった時代であれば、多少無駄があってももう全国統一でやってしまった方がいいと、こちらの方が簡単だという
考え方もあったのかもしれませんが、この時代にそういった余裕というのはどこの
自治体ももうないという
状況でございます。それぞれの
地域に合ったものをやっぱり模索するしかないというのが基本路線だと思います。
ただ、この
考え方自体は、決して最近というか今回の法改正で突然出てきたというふうには思っておりません。元々
介護保険というのは、それぞれの
自治体の自治事務として位置付けられておりますし、当時は地方分権の試金石と言われていた時期もあるわけでございまして、元々
地域ごとで考えるという要素は設計上あったというふうに理解をしております。
ただ、実際には、最初
制度が始まって十年間ぐらいというのは、どちらかというと、やはり量的な拡大、必要な
サービスをどういうふうに確保していくか、そして在宅
生活に必要な
サービスをどういうふうに開発していくか、こういったことに
議論の中心が置かれていたようにも思います。どちらかといえば、全国で足並みをそろえてどこの
自治体も頑張っていきましょうということで、各
地域の
自治体のマネジメントというのも、どちらかというと、やはり国のガイドライン、手探りでやっておりますので、国のガイドライン等をある程度追いかけていくという言い方がいいかどうか分かりませんが、そこに従って設計をしていくというのがある程度習慣付いてきた部分、これはある程度の合理性があったんだというふうに思います。
ただ、
地域包括ケアシステムをつくっていくんだと、これもいろいろな制約の中でつくっていくというときに、これからは量的拡大をしていくということが
地域包括ケアの
考え方だと私はやっぱり思えなくて、むしろ重要なのは、今ある資源をどういうふうに結び付けていくかという
考え方だというふうに思っております。
私はいろいろなところで
お話しさせていただくときに、
地域のばらばらをまとめる
仕組みだというふうに
地域包括ケアシステムを説明しております。量を増やすだけだったら、これぐらいの数字つくりましょう、
サービスをつくりましょうということでいいんですが、どうしても、まとめる
仕組みとなると、
地域の
関係者の御
意見、
事業者さんの今の体制だったり、いろんなことを考えながら
仕組みをつくらなくちゃいけない。
これだけ言うと何となく効率化のためだけやっているように聞こえると思いますが、実はこれは在宅で
生活している方々の切なる願いでも私はあると思っておりまして、私の家族にもやはり要
介護になって在宅で
生活した者おりますが、うちの母が
介護をしていてやっぱり感じていたことは、いろんな
事業者さんが入ってくる、それがばらばらに提供されている感覚というのはとても不安、皆さん言うことが違うと不安だと。それが、たまたま利用させていただいたケアマネジャーさん、
事業者さん、多種多様あったんですが、一体的に感じるんですね。つまり、
介護者から見ると同じ
事業者さんに見えるということなんですね。
この一体的に見えるということが大変重要だと思っておりまして、在宅での安心感というものを本当に実現していこうと思うと、
地域の中で今多種多様な
事業者さんがいること、これはいいことだと思うんですが、一体的に見えるような
仕組みづくりということが重要だと。そうなると、先ほど申し上げたとおり、やはり
地域ごとに事情は違う、大きな法人さんが多種多様な
サービスを提供しているところもあれば、ある程度細かい
事業者さん、小さい
事業者さんが連携しているところもあるということで、やはり
地域ごとに考えるということが大変重要なんだというふうに思います。
少し前置き部分長くなりましたが、今回の法改正では
保険者機能の
強化ということがうたわれております。当然、今みたいな
考え方に基づけばこれもう大変重要なことだというふうに思っておりますが、一つ、これは注文ということではないんですが、
保険者頑張れというだけではなかなか
保険者さんの
負担大変なものになるというふうに思います。今回の法改正というのは、それぞれの
自治体が自分たちで考えるということを国が継続的に
支援していくんだという決意表明だというふうに私は理解をしておりますし、大いに期待もしております。
国ができることといいますと、データ提供であったり技術的なサポートということが今回の
法案の中でも出てきているわけですけれども、いま一つやっぱり重要だと思うのは、ツールを提供するだけじゃなくて、それが何のためにあるのか、何を目指しているのか、そのバックグラウンドが何なのかということをきちっと丁寧に説明すると、このフォローの部分というのが大変
自治体にとっては欠かせない部分だろうというふうに思います。
地域の
指標づくりだとかあるいはデータの提供ということはここ数年かなり進んできている部分で、見える化システムというのがつくられたり、財政的
インセンティブも今回入っておりますけれども、こういったものは、単に
お金がもらえるとか競争だとかということじゃなくて、どちらかというと、今やっている
取組がゴールまでの中の今どの辺にあるのかということを確認するためにもあるというふうに私は思っています。言わば海に出るときの海図、羅針盤のような部分、意味があるのではないかなと。こういうものがなければ、
自治体というのはなかなか前へ進んでいくということができないだろうというふうに思っております。
ただ、データの提供というのは、現場で実際拝見しておりますと、ともするとデータの山に埋もれてしまって、
自治体さんというのは研究所ではございませんので、そういうデータを
分析することが主たる業務ではございません。どちらかというと、やはり、どういうデータに意味があり、どこに着眼し、この数値が高いのはなぜなのか、こういうテクニカルなサポートというのは今後も、
都道府県でしっかりやっていただいている県も出てきているというふうに認識しておりますが、引き続き、
市町村だけでやるのではなくて、
都道府県でのサポートということも大変重要だろうと思っております。
私も、実は過去にある県ですごい分厚い電話帳みたいなデータブック作って
市町村に提供したことあるんですけど、しっかり怒られました。これをどうしたらいいんですかということなんですね。やはり必要なものを峻別して、どういう意味を持っているのかというのを伝えていくということが重要だろうと思います。
次に、
地域共生社会について少しだけ触れたいと思いますけれども、この
考え方、縦割りを排していこうという
考え方ですから、基本的にもうこれは今までずっと批判もされていた部分だろうと思いますし、是非進めていっていただきたいというふうに思っているところであります。
住民の方々の方を見ていきますと、
生活支援体制
整備事業なんかでも住民の方々の活動って最近大変活発になってきていると思います。全国どこでもというわけにはいかないんですが、そういう芽は確実に生まれてきていると。ただ、住民の方というのは、元々分野とか所管があるわけではありませんから、自由にいろいろ自分たちの御関心で必要だと思うことをやられているわけなんですね。これを
支援するに当たって、是非、
自治体の方々、どうしても
高齢者の部門の部署が、
生活支援体制
整備事業なんかサポートしていくことになりますが、余り分野を、元々広いものを狭めてしまうことがないようにむしろ気を付けるということが多分実施面では大変重要だろうというふうにも思っております。
一方で、専門職の側ということになりますと、これ、いろいろな
制度だとか規制の中でお仕事をしていただいている部分もございますので、今回は
サービスの部分での共生化ということで緩和が行われているわけでありますけれども、やはり
人材の部分、それを実際提供する側の
人材も様々なことができるようになっていかなければいけない、複数のことが担えるようになっていくということが必要になっていると思います。
キャリアの複線化については、
地域共生社会の中でも強調されている部分だというふうに思っておりますが、多分こういう
考え方というのは、別に
介護の世界の話ではなくて、今もう民間企業でもどこでも人が足りないのはみんなどこでも同じでありまして、多能工みたいな言葉もありますが、複数のことができる、そういうことができる環境をつくっていくということは大変重要だと思っております。今回の法改正、そこまで、キャリアの複線化まで細かく入っているということではないと思いますが、今後の方向性として重要になってくるだろうというふうに思っております。
最後に、医療・
介護連携について少し申し上げたいと思います。
人生のどこかの段階では必ず医療が必要になるというのは在宅
生活をしていけば当然のことだと思いますけれども、今回、
介護医療院というものを新設されるということでありまして、
地域での選択肢を増やしていくという意味では大変いい方向だったというふうに思っておりますし、医療を提供する
施設、医療提供
施設でございますけれども、同時に
生活の場という方向性で位置付けたということは、
地域包括ケアシステムの元々の
理念にもかなっているというふうに考えております。
ただ一方で、もちろんこの
介護医療院だけで解決する問題では当然ありませんし、
地域の中で選択肢が増えるのはいいんですが、一般的な住まいにお住まいの方、こういった方々にも医療ニーズは当然出てくるわけでございますので、引き続き、医療、
介護をどういうふうに在宅
生活へ提供していくのか、それも、先ほど申し上げたとおり、一体的に見える形で提供するのかというのは、まさに医療・
介護連携の本丸だというふうに思っております。
その点では、各
自治体での
取組、始まってはいるんですが、かなりいろいろ御苦労をされている
地域も多いというふうに私も拝見をしております。ちょっと危惧するというか、拝見していて、やっぱり難しくなっちゃっている一つ原因は、医療・
介護連携をすることそのものが
目的化していると、何のために医療・
介護連携をやっているのかということが見落としがちになってしまう。全く考えていないということではないんですが、ともすると、ある方は入退院
支援のことを話していて、ある方はみとりの話をしていて、あるいはある方はその在宅
生活の中での重度化予防みたいなことを
議論しているというふうになると、そこに関わる専門職だったり、その関わり方だとか、みんなそれぞれ少しずつ違うわけなんですね。
厚労省の方からは、医療・
介護連携の事業、
取組として八つほど項目が示されていますが、これやりやすいところから手を着けていきましょうという流れもあるんですけれども、やはり重要なのは、その
取組が何に向かっているのか。入退院
支援のことを一生懸命
地域の専門職で話していて、一方で、じゃ住民の説明会、セミナーも重要だ、そこで話していることは実はみとりの話。それが悪いとは言いませんが、やっぱり資源が限られている、時間が限られている中で、できるだけ同じ方向を向いて
地域で取り組むということが大変重要になってきているということで、これは先ほど
保険者機能強化のところでも
お話をいたしましたけれども、
目的意識ということを、
地域でやり方が違うからこそ、手段が違うからこそ、
目的の部分をきちっと明確にするというガイドの仕方ということが大変今求められているというふうに考えております。
地域包括ケアシステムは二〇二五年を一つの目途として取り組むということでございます。時間はだんだんなくなってきているところではありますけれども、ともすると一年とかぐらいで、一年、二年で結果を出したくなってしまうという感覚、これはもう行政ですから、当然
自治体さんもそういうことを求められているとは思うんですが、やはり
地域の
関係者が参加してこれは考えることでもありますので、少し腰を据えてという部分、しっかり、余り短期的な成果を求めずに取り組むということも重要だろうというふうに思っております。
以上、私の
意見として述べさせていただきました。御清聴ありがとうございました。