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会計検査院長(河戸光彦君)
会計検査院は、
国会法第百五条の
規定に基づき
平成二十八年五月二十三日付けで参議院議長から
会計検査及びその結果の
報告の要請がありました「日本放送協会における関連団体の
事業運営の
状況」につきまして、日本放送協会を対象に検査を行い、
会計検査院法第三十条の三の
規定に基づき二十九年三月二十九日にその結果の
報告書を提出いたしました。その
報告書の概要を御
説明いたします。
検査しましたところ、業務委託額の妥当性を検証する実績原価調査の結果が業務委託費の積算等の見直しに結び付いていなかったり、子会社による明確な投資
計画が示されないまま特例配当の要請を行わない判断が行われていたり、関連団体における不適正経理の再発防止に向けた日本放送協会の取組にもかかわらず不適正経理が依然として生じていたりなどしていました。
検査の結果を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、日本放送協会において、実績原価の確認の結果を適切に反映し業務委託額の削減等に努めること、適切な特例配当の要請を行うことを検討し、子会社の利益剰余金額を適切な規模とするための指導監督を適切に実施していくこと、経理適正化策について関連団体の
事業全般を対象として関連団体に対する指導監督を更に徹底していくことなどに留意して、関連団体の
事業運営に対する指導監督を適切に実施する必要があると考えております。
会計検査院としては、日本放送協会における関連団体の
事業運営に対する指導監督が適切に行われているかについて、今後も引き続き検査していくこととしております。
これをもって
報告書の概要の
説明を終わります。
次に、
会計検査院は、
会計検査院法第三十条の二の
規定により
国会及び
内閣に対して、
平成二十八年十二月二日、十六日、二十九年一月二十七日、三月十五日及び二十九日に計七件の
報告書を提出いたしました。その
報告書の概要を御
説明いたします。
最初に、「租税特別措置(所得税
関係)の適用
状況等について」を御
説明いたします。
所得税
関係特別措置の適用
状況並びに
関係省庁及び財務省による検証
状況等について検査しましたところ、
平成二十二
年度から二十七
年度までの間に、政策評価及び税制改正要望の際の検証を行っていないものが見受けられました。また、減収見込額が多額に上っている措置について見ると、申告不要配当特例等については、
事業参加的側面が強いことから大口株主等は適用できないこととされており、その要件は少数株主権の
制度との整合性等の観点から定められていますが、少数株主権を行使できる者である一方で、その措置を適用している者が見受けられたり、年金控除特例については、課税総所得金額が高額な階層区分の納税者も他の階層区分の納税者と同様にこの措置を適用している
状況となっていたりしておりました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、
関係省庁において、政策評価や税制改正要望の際の検証を行い
国民に対する
説明責任を果たしていくこと、財務省において、今後とも十分に検証していくことが望ましいと考えております。
会計検査院としては、今後とも、所得税
関係特別措置の適用
状況並びに
関係省庁及び財務省による検証
状況について、引き続き注視していくこととしております。
次に、「年金個人情報に関する情報セキュリティ
対策の実施
状況及び年金個人情報の流出が日本年金機構の業務に及ぼした影響等について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、厚生労働省及び日本年金機構において、情報セキュリティーポリシーの改正に向けた連携等が十分とは認め難い
状況となっていたり、同機構の情報セキュリティーに関する体制
整備が十分でないことについて、厚生労働省の同機構に対する監査及び同機構の内部監査で
指摘したことはないなどの
状況となっていたりしておりました。また、流出事案の発生を踏まえて
国民年金保険料の納付督励業務の一部を中止したことにより、
国民年金保険料の債権に係る消滅時効期間が経過するなどの影響等が見受けられました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、厚生労働省及び日本年金機構において、年金個人情報に関する情報セキュリティー
対策を適切に行うこと、監査を一層実効性のあるものとすること、再発防止の取組を一層着実に実施することなどに留意して、年金個人情報の
管理に関する一層の体制の
整備を図るなどの必要があると考えております。
会計検査院としては、日本年金機構の情報セキュリティー
対策が適切に実施されているかなどについて、引き続き検査していくこととしております。
次に、「各府省等における
職員の研修の実施
状況等について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、一般職の
国家公務員に対する研修において、研修
計画等で対象者の範囲が明確になっていない事態、他府省等の
職員も対象としている研修について、他府省等への研修実施の周知が十分でない事態、研修施設の年間使用
計画等の情報を
関係各庁間で共有できていない事態等が見受けられ、特別職の
国家公務員に対する研修においても同様の事態等が見受けられました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、各府省等は、研修
計画の策定に当たり研修の対象者を可能な限り明示すること、他府省等の
職員も対象としている研修において情報提供を十分に行うなどして相互に連携、協力を図ること、
内閣人事局は、必要に応じて研修施設についての情報を
関係各庁間で共有できるよう働きかけを行うこと、人事院は、
内閣人事局と連携して、
関係各庁の研修の
計画策定及び実施に関し、必要に応じて監視の前提となる調査の充実を図ることなどに留意して研修の実施等を行う必要があると考えております。
会計検査院としては、今後とも各府省等における
職員の研修の実施
状況等について、引き続き注視していくこととしております。
次に、「
地方公共団体における社会保障・税番号
制度の導入に係る補助
事業の実施
状況等について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、総務省及び厚生労働省から
補助金の交付を受けて
整備を行った情報システムのうち、作業項目ごとに作業工数の記載がなく、かつ、人件費単価の記載がない見積書により予定
価格を算定していたものがありました。また、
平成二十八年三月末時点において、住民票記載事項の確認や調査を実施していないため受取人に交付等ができないまま市町村に保管されている通知カードがありました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、総務省及び厚生労働省において、業者から適正な見積書を徴することなどの必要性等を
地方公共団体に示すとともに、
内閣官房において、
地方公共団体の求めに応じて協力していくことについてなお一層の取組を行うこと、また、通知カードについては、総務省において、今後も返戻された通知カードに関する調査等に関して、市町村に対して必要な助言を行うことに留意して
地方公共団体における社会保障・税番号
制度に係る補助
事業の実施等に取り組んでいく必要があると考えております。
会計検査院としては、社会保障・税番号
制度の実施
状況等について、引き続き多角的な観点から検査していくこととしております。
次に、「
地域活性化・
地域住民
生活等緊急
支援交付金(
地域消費喚起・
生活支援型)による
事業の実施
状況について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、プレミアム付き商品券が新規の消費喚起を推進することを目的とした交付金の趣旨に沿っていないものと考えられる自動車の車検費用、プロパンガスの使用料等の支払に利用されていた事態等がありました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、
内閣府において、今後同種の
事業を実施する
地方公共団体に対して
支援を行う場合には、プレミアム付き商品券等の利用対象となる商品やサービスの範囲、利用条件、販売方法等について、新規の消費喚起効果を高めるものとなるようにすることなどについて、より具体的な方策を
地方公共団体に対して示すなどして
地域における消費喚起等の推進に向けた
事業が適切かつ効率的、効果的に実施されるよう、的確に
支援を実施していくことが重要であると考えております。
会計検査院としては、今後、消費喚起や
生活支援を目的とする
事業に要する費用に対して国が交付金を交付する際には、その実施
状況について注視していくこととしております。
次に、「各府省等における研究開発
事業の実施
状況等について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、
科学技術政策の司令塔である総合科学技術・イノベーション
会議が、大部分の研究開発
事業について経費の執行
状況に係る情報を把握していない
状況、府省共通研究開発
管理システムが過度の集中を排除することを
支援するという本来の
機能を十分発揮していない
状況、国の資金により研究開発を行う委託契約の条項に基づいて資金配分先が行うこととされている資金配分機関への
報告が適切に行われていない
状況等が見受けられました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、総合科学技術・イノベーション
会議において、科学技術
関係予算の適切な配分の検討に資するために経費の執行
状況に係る情報を収集して把握することを検討すること、文部科学省において、科学研究費助成
事業の研究開発課題に関する情報を府省共通研究開発
管理システムに登録する際に研究者の時間の配分割合を確認できるようにすること、委託
事業を行う資金配分機関において、資金配分先に対して
報告等の義務があることを委託契約の終了時にも周知することを検討することなどに留意して研究開発
事業の実施等を行う必要があると考えております。
会計検査院としては、今後とも各府省等における研究開発
事業の実施
状況等について、引き続き注視していくこととしております。
最後に、「国立研究開発法人における研究開発の実施
状況について」を御
説明いたします。
国立研究開発法人三十一法人における研究開発の実施
状況について検査しましたところ、評価手法の一つとして研究開発に係る成果と投入された金額や人員との対比を行うなどにより評価の実効性を確保するとされておりますが、研究開発評価項目と一定の
事業等のまとまりごとの区分に基づく財務会計上のセグメントとが適切に
対応していない法人が見受けられました。また、研究開発力強化法に基づく人材活用等に関する方針を作成していない法人や、国立研究開発法人にとって重要な成果である特許権を貸借対照表に資産計上していない法人などが見受けられました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、各法人において、セグメントを研究開発評価項目と適切に
対応させること、人材活用等に関する方針を速やかに作成して遅滞なく公表すること、特許権を貸借対照表に計上することによりその保有の
状況を明らかにすることについて改めて検討すること、各法人及び主務府省において、評価の実施に当たり評価の実効性の確保に努めることなどの点に留意することが必要であると考えております。
会計検査院としては、国立研究開発法人における研究開発の実施
状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととしております。
これをもって
報告書の概要の
説明を終わります。