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参考人(
菅沼綾子君)
愛知県
環境部長の
菅沼と申します。
この度は
意見陳述の機会をいただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。
本日は、
廃棄物の
処理及び
清掃に関する
法律、以降
廃棄物処理法と述べさせていただきますが、この
改正案につきまして
愛知県の立場から
意見を述べさせていただきます。
最初に、今回の
法改正のきっかけとなりました、あの昨年一月に発覚いたしましたダイコーによる
廃棄物の不適正
処理の事案について、御説明させていただきます。お手元に
資料をお配りしておりますので、それを御覧いただきたいと
思います。
本事案は、
廃棄物処理への信頼性、食の安全性を脅かす非常に重大な問題だと認識しているところでございます。
それでは、まず、本事案の経緯から説明させていただきます。表紙をめくっていただきまして、裏面でございます、一ページ目を御覧ください。
昨年一月十二日に壱番屋の方から、本来店舗外に出ることのない冷凍ビーフカツが県内のスーパーで売られているが、これはダイコーに産業
廃棄物として
処理委託したものであるとの通報が県の方にございました。そこで、県は翌日、十三日でございますが、ダイコーと壱番屋に立入検査を行い、
廃棄物処理法第十八条に基づく報告徴収を行いました。
その結果、ダイコーは六か所、うち
愛知県内では四か所に
廃棄物を
保管していることが判明いたしました。このうち、
廃棄物処理法の許可を受けていたのは本社
工場の一か所のみでありまして、残りは県外も含め無許可若しくは無届けといった
保管場所でございました。
保管量につきましても
調査を行ったところ、
愛知県内の四か所には合計八千九百八十一立米、岐阜県と三重県の二か所に合わせて約四千立米、全体で約一万二千九百立米という大量の
廃棄物が
保管されておりました。
その後、昨年二月の末でございますけれども、
保管されている
廃棄物の撤去等を五月十七日までに行うよう
廃棄物処理法に基づく
改善命令を県として発出いたしました。
なお、この命令を発出した時点で、ダイコーは既に事実上の倒産
状態でありました。
廃棄物を自力で
処理することができないという回答がございましたので、県ではダイコーに対しまして
廃棄物処理法に基づき
廃棄物の排出事
業者に
処理困難
通知を発出するよう指導を行い、同社はそれに従って
処理困難
通知を発出いたしました。
廃棄物処理法では、
処理困難
通知を受けた排出事
業者には
廃棄物の撤去などの適切な措置を講ずる義務が生じることとなりますことから、県としても、契約書、マニフェスト等の書類の確認により排出事
業者の特定を進め、新たに判明する都度ダイコーに
処理困難
通知を発出させ、排出事
業者による排出物の撤去を進めました。結果といたしまして、ダイコーは、許可を
取り消される六月二十七日までの間に合計七十八の排出事
業者に対して
処理困難
通知を出しております。
また、排出事
業者が特定できない
廃棄物についても、容器や包装にある製造者名ですとか
廃棄物の性状等から排出事
業者を
調査し、排出事
業者と思われる者に対し県から自主撤去を指導し、実際に回収がなされたところでございます。
こうした中、四月十八日に、岐阜県と三重県は、ダイコーが両県で有していた産業
廃棄物収集運搬業の許可の取消処分を行いました。
本来であれば、これらの取消処分により
廃棄物処理法上の許可の欠格要件に該当いたしますので、本県も許可を
取り消す必要が生じます。本県でもこの時点で既に許可取消しに必要な聴聞等の手続を済ませておりましたが、この時点で許可を
取り消しますと、二月末に発しました
改善命令が履行期間中であるのにもかかわらず、その効力が失われ、履行に支障が生ずることとなります。また、ダイコーが
廃棄物処理法に基づく
処理困難
通知を出せなくなることで、新たに判明した排出事
業者に対する
廃棄物の撤去指導が困難となることへの懸念がございました。
このため、ダイコーがこの時点で営業実態がなく、許可を
取り消さなくとも新たな
処理を受託することがないことも考慮し、当面は
廃棄物処理業の許可を
取り消さずに、
廃棄物の撤去を優先させるという判断をいたしました。この結果、産業
廃棄物処理業の許可の取消処分を行いましたのは、同社の処分許可の有効期限の一日前に当たる六月二十七日ということになっております。
次に、県による
廃棄物の撤去について御説明申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、ダイコーに
保管されている
廃棄物につきましては、排出事
業者による撤去指導を行うことで撤去を進めてまいりましたが、ドラム缶に入っている液状物や腐敗等により原形をとどめないものなど、排出事
業者が特定できない食品
廃棄物も多くあり、これらの
廃棄物は撤去の見込みが立たない
状況でございました。一方で、夏の時期を控え、気温上昇により腐敗が進むことで悪臭の
発生や害虫の異常
発生など
周辺の
生活環境保全上の支障が生じることが懸念され、早急に撤去が必要な
状況にありました。
このため、まずは
廃棄物処理法に基づく行政代執行により撤去することを検討いたしましたが、そのためには同法に基づく
措置命令の発出が必要となり、不適正に
保管された
廃棄物の種類と排出者の特定が必要となるなど、事務手続等で実際に
廃棄物の撤去に着手できるまで数か月の期間を要するということが判明いたしまして、早急に撤去することが困難な
状況にございました。
また、同法では、緊急に支障の除去等の措置を講ずる必要があり
措置命令を行ういとまがないときは、
措置命令を発出しなくても法に基づく代執行が可能であるとされていますが、国にも確認させていただいた結果、いとまがないときとは、直ちに支障の除去等の措置を講じなければ回復困難な
生活環境の保全上の支障を生ずるおそれがある場合をいうとの考えが示され、本県においては、悪臭の
発生や食品
廃棄物の腐敗による汚水の流出、害虫の
発生が推測されることのみでは法に
規定するいとまがないときには当たらないとの判断をいたしました。
これらのことから、本県では、
法律上の義務はありませんが、他人の事務を
処理するという民法第六百九十七条に
規定します事務
管理によって、
生活環境保全上の支障が生ずるおそれのある
廃棄物を県として撤去することといたしました。この撤去に当たっては、県内の
処理業者や業界団体、稲沢市等、四十二事
業者団体の無償協力を得まして、昨年六月八日から撤去を開始したものでございます。
県では、分別、積込みのためのフォークリフト等のリース代や
作業委託費等として、必要最小限の約四千万円の予算措置を行っております。
廃棄物の
保管状況が非常に悪く、当初の見込みを大幅に上回る時間が掛かり、最終的には今年の二月二十七日に撤去が完了いたしました。
この間、排出事
業者等によって二千九十一トンの
廃棄物が回収されており、県の事務
管理による撤去九百四十五トンと合わせ、合計三千三十六トン、容積では当初確認いたしました八千九百八十一立米の約八四%に当たる七千五百四十立米となりました。
なお、残りにつきましては、パレットや空のフレコンバッグなどの安定物等であり、
周辺環境に
影響を及ぼさないことから、
現場に残置いたしました。
今回の事案では、ダイコーによるマニフェストの虚偽記載や立入検査時の偽りの説明など悪質な隠蔽行為が行われており、これにより本県の職員も不適正行為を見抜くことができなかったものでございます。しかしながら、立入検査を重ねながら本事案を見抜けなかった点、また問題の
発生を未然に防げなかった点は
反省に値するものと考えております。その立入検査に当たっては、事
業者の説明に疑問を感じ、うそを見破るための立入検査を行う者にとっての十分な知識や経験がないと難しいものでございます。
また、今回の事案では、排出事
業者による排出者
責任の理解、認識が不足していると感じました。例えば、ガムやみそといった
廃棄物、これらは発酵
処理は不可能と言ってもいいでしょうが、発酵するということで
処理委託されておりました。さらに、排出事
業者による
処理状況の確認についても、現地に来て建物の
写真だけ撮って帰ってしまったりと十分な確認がされておらず、また料金についても、今回は相当に安い料金で
処理委託されていたというふうに聞いております。
したがいまして、本県では、この
反省を踏まえまして、次のページでございますが、掲げさせていただいております再発防止策の
一つとして、まずは具体的な立入検査用マニュアルの作成や、新たに保健所の食品衛生監視員に
廃棄物処理法上の立入検査の権限を与えまして、関係部局が連携して立入検査を実施するなどの監視体制の整備強化を行ってまいります。
さらに、
最後のページでございます。その次のページを御覧ください。
廃棄物処理業者はもちろんのこと、排出事
業者の現地確認等も不十分でありましたことから、排出事
業者に対しましては、契約の締結、マニフェストの交付、
処理状況の確認といった
廃棄物処理法における責務をしっかりと確認させるため手引書を作成し周知を図ることや、関係団体とも連携して
処理施設
場所での現地研修会を実施し
処理状況確認能力の向上を図るなど、法令遵守の徹底について指導強化を行ってまいります。
また、これらの
対策に加えまして、その下の③に記載しておりますように、そもそも
廃棄物として
発生させない、やむを得ず
廃棄物となった場合にも適正な
リサイクルを推進させるといった食品ロス削減の
対策を総合的に進めていくこととしております。
本県では、こうした取組により、
廃棄物処理業者及び排出事
業者における
廃棄物の適正
処理を図り、県民の
皆様の安心、安全を確保してまいります。
そのほか、この事案を通じまして感じました問題点について少し説明をさせていただきます。
まず、マニフェストについてであります。
マニフェストによるチェックを行う際には、記載されております内容と
廃棄物の照合が重要となりますが、マニフェストには実際に
処理した方法や具体的な
廃棄物の内容が記載されないなど照合に必要な
情報が十分でなく、実際に搬入された
廃棄物と
処理後のものと関連付けが十分できないといった問題がございました。
また、食品
廃棄物は腐敗したり混合されることでその性状及び外見が大きく変化するため、本事案では
保管状況が悪かったことも重なり、
廃棄物とマニフェストを突き合わせようとしても、
廃棄物から追えないし、マニフェストからも追えないという
状態となっておりました。
これらは、今回の事案で
廃棄物の排出事
業者の特定がなかなかできなかった理由の
一つでもありました。
ダイコーが不適正
保管をしていた食品
廃棄物の多くは動植物性残渣に該当する性状のものでありましたが、
廃棄物処理法施行令の
規定では、食料品製造業等において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物が産業
廃棄物であり、それ以外は一般
廃棄物に該当することになります。
廃棄物処理法に基づき知事が命令できる
対象は産業
廃棄物のみであるため、今回のように一般
廃棄物が混ざっている場合については、本来であれば、産業
廃棄物について監督権限を有する
愛知県と一般
廃棄物について総括的
責任を有する稲沢市が協議をして、それぞれ
措置命令等を行うこととなりますが、早急に撤去が必要な
状況であり、また排出事
業者や産業
廃棄物の量や内容も判明しないため、
愛知県としては、確実に産業
廃棄物として特定できた汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリの約三千六百立米のみを
対象として
改善命令を発出いたしております。
今回の
法改正では、まず、マニフェスト制度の強化として、多量排出事
業者に電子マニフェストの使用を義務付けるとか、マニフェストの虚偽記載等に関する罰則が強化されており、さらに、許可を
取り消した者に対しても必要な措置を命ずることができるようになるなど、今後、事
業者指導を一層強化できる
改正が行われており、大変有り難く思っております。
その上ででございますが、
最後に、今後に向けまして幾つかお願いをさせていただきたいと
思います。
一つ目は、電子マニフェストについてでございまして、記載事項に不自然な点があったときに自動的に不正を検出できるような機能を検討していただければ大変有り難いと考えております。
二つ目は、一般
廃棄物と産業
廃棄物が混ざっている場合の取扱いを
明確化していただきたいと
思います。本事案のように、不適正な
状態を改善するため、どのように
改善命令等を行えるのかを明らかにしていただければと考えます。
三つ目は、
廃棄物の
処理を委託された
廃棄物処理業者に対し、
廃棄物の転売を含め、委託された
処理以外の行為は防止するような
対策をしていただきたいと
思います。
最後に、緊急時の
対応の在り方について御検討いただければと考えます。
今回の事案では、緊急に代執行を行うためのいとまがないときの要件が限られていることで、
措置命令を発出することが求められ、迅速な
対応が取れませんでした。緊急な
対応が必要な場合であり、不適正
処理の行為者等による支障の防止措置が行われないときには、速やかに代執行が可能となるよう御検討をお願いしたいと
思います。
以上で私からの
意見を終わらさせていただきます。
私どもは、今後とも全力で地域の環境行政を推進してまいります。何とぞ御支援、御指導を頂戴できますよう、よろしくお願いいたします。
本日はありがとうございます。