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参考人(
水谷和子君)
水谷です。
今日はこのような
機会を与えていただき、ありがとうございます。感謝申し上げます。
先に豊洲問題から申し上げます。一、お手元の資料に沿って申し上げますので御参照ください。豊洲問題に取り組んで九年目になりますが、この問題には、
土壌汚染対策法、土対法ですが、深く関係していることが分かりました。約八百六十億円もの出費をしていながら結果が出せなかった
汚染対策、法令を使った
汚染隠しなど、都で起こったことをここで報告するのは法の
改正を考える上でも意味のあることだと考えます。
二、不動産
評価について。
統計資料の中に、二〇〇二年法成立以降の要
措置区域に対する
指定解除の割合が五四%、二〇一〇年の
法改正による
形質変更時要
届出区域の場合は
指定解除は三五%に及ぶことが記されています。
汚染の除去などの
措置の
実施の
状況が高いのは、
土地取引などによる不動産
評価が関係していると考えられます。
国土交通省の不動産鑑定
評価基準運用上の
留意事項では、
対象不動産について
土壌汚染が存することが判明している場合の鑑定
評価についての項目で、
土壌汚染が存することが判明している不動産については、原則として
汚染の分布
状況、
汚染の除去などの
措置に要する費用などを他の専門家が行った
調査結果を
活用して把握し鑑定
評価を行うものとするとあります。このことから、専門家の
調査と
汚染の除去の
措置などの有無が不動産鑑定の重要な判断
基準になっていることが分かります。
二〇一六年五月、経団連からの資料にも、
土地取引における
土壌汚染調査、
対策の一般化、デューデリジェンスの際、
土壌汚染を確実に考慮など、
土壌汚染対応事例で取り上げられており、不動産売買、投資など、この場合の資産
評価の適正な
評価において
土壌汚染の
対策などが重要な要素になっていることが分かります。しかし、今回のように、
豊洲市場用地の
汚染対策の失敗を考えると、資産の適正な
評価には別な方法による
調査、
対策が必要ではないかと考えます。
三、
豊洲市場用地の用地交渉についてです。
豊洲市場用地の
土壌汚染について今に至るまでの二十年近くの混乱は、都が大量の
汚染を隠しながら
汚染がないとして説明してきたことに始まっています。市場用地
取得交渉で都が東京ガスに対して、
汚染については
拡散防止の
対策でよいという約束をしました。これは二〇〇一年七月の確認文書です。しかし、表向きは、環境確保条例に基づき対応、測定できないごく微量の
汚染物質が残留の
可能性はあるとして、東京ガスが条例に従って
対策をして、
基準を超える
汚染は全部除去したかのような議会答弁を行っています。実際適用された条文百十七条では、
調査と
拡散防止のみが
義務規定でしたから、都は条例を隠れみのにして安全宣言を出したことになります。
都が用地交渉を急いだ背景には破綻した臨海会計を助けるためだった経緯があり、都議会百条
委員会でも
指摘されました。百条
委員会の資料には、市場会計から一般会計への貸出しが一九九九年時点で二千四百億円にも及び、築地再整備の
工事が続けられなくなっている様子がうかがえます。
四、市場
土壌汚染の実態と財産価格審議会についてです。
二〇〇六年、市場用地
取得時の財産価格審議会に都は議案書を
提出して、東京ガスが
汚染物質を
掘削除去することになっているとして、大量の
汚染が残置しているにもかかわらず、
汚染を除去と入れることで
汚染なしの価格で購入しました。
汚染の実態を正しく都民に伝えずに
汚染隠しに加わった環境局は重大な責任があると思います。
後の二〇〇八年の専門家会議で大量の
汚染が発覚したために、二〇一一年、残りの
土地取得時の財産価格審議会では除去の文言が使えず、売買当事者の協議に委ねるとして審議を放棄しました。このとき
提出された不動産鑑定
評価報告書の入札時の仕様書には、
汚染を考慮外とすることが条件となっていました。これは不動産鑑定士が百条
委員会で証言していますが、公正な
評価と言えるかどうか、また想定上の条件としても不適切だったのだと思います。
五、土対法の
調査スケールに関してです。
二〇〇八年の専門家会議で大量の
汚染が発覚したため、都の
汚染を除去したの説明は破綻いたしました。
汚染は除去できるに本質のすり替えを行いました。
実際、専門家会議の
調査内容の結果は、私が資料二にまとめましたので、ちょっとそちらの方も御覧いただけると思うのですが、色が付いている
部分が専門家会議で見付かった
汚染です。三十メーターの、大きいバツが付いているところは東京ガスが
対策した範囲を示します。ですから、東京ガスが
対策をした後も相当のものが実態としては、専門家会議でも
調査の結果、大量の
汚染が残っていたということが分かるということです。
結局、都は、
土壌も
地下水も環境
基準を超える
汚染物質は全て除去しますというふうな約束をするに至りました。それは、それまでの財産価格審議会などの経緯からそういうことになったということなんだろうと思いますが、資料三は東京都がそのように説明しているというものです。
土壌も
地下水も環境
基準を超える
汚染物質は全て除去しますというふうに書かれてございます。
しかし、この約束が最初から無理であったことは、実は専門家会議は既に認めていました。
土壌に四万三千倍のベンゼン
汚染が見付かったときに周辺の追加
調査を行った結果、同様の
汚染がなかったことから、専門家会議の結論は、たまたまサンプリングの管がタールだまりに当たったのであって、散らばっているタールだまりを全部見付けることは不可能であるというものです。
対策としては、
汚染地下水の水位をコントロールすることと盛土による気化ガスの軽減、RBCA、レベッカによる地表への
影響評価でした。
結局、地下空間は盛土がなかったのですが、その概念図を作成しましたのを添付いたします、資料四にございます。
専門家会議がこの
調査方法では
汚染の
調査漏れが生じると結論付けた土対法の
調査スケールも図にいたしました。資料五にございます。資料五を見ていただくと、十メーター掛ける十メーターに直径七センチのサンプリング管を通したときに、たまたまぶつかるところが非常に確率としては低いと。そうなると、この一律の単位で
調査をする方法というのは実態に即していない、だからたくさんの
汚染が残ったということが資料五の図から見て取れるのではないかと思います。
六番、
対策費八百六十億円はなぜ使われたか。
汚染対策が失敗することが分かっていて約八百六十億円もの市場会計を使ってなぜ
対策工事が行われたのかと。これは築地の仲卸さんたちが怒っていることです、怒りはそこにあります。
二〇一七年一月、専門家会議で公表されてちょうど二年目に当たる第九回の
地下水モニタリングの結果は衝撃的でした。一回目から八回目までの
地下水では、僅かな例外を除いて土対法
指定基準を下回っていたものが、九回目で突然、ベンゼン最大七十九倍、ほかにシアン化合物や水銀など、二百一か所中七十二か所から
基準超えの
汚染が出たのです。これは小池都知事にしか描けなかったとして百合子グラフと呼ばれているものです。資料六を御覧ください。これは皆さんも御覧になったことがあると。これはベンゼンの経緯を示しているものです。
八回目までの試料採水者への聞き取り
調査により、
事業者である東京都が
基準を超過した試料の再採水を
指示していたことが分かりました。複数の
調査から都合のよいデータだけを採用することについて、二〇一〇年十一月、
環境省が、
土壌汚染状況調査などの公正な
実施に
支障を及ぼすおそれのない体制の整備について、通称二度掘り禁止の
通知ですか、を示し、これは問題があるというふうに
指摘しています。
敷地面積の約半分は建物で覆われています。構造上、追加
調査や
対策は不可能ですから、そもそも
汚染が出るということは想定しなかったと考えるのが合理的です。ごまかさないと続けられない公共
事業というのは一体何なんでしょうか。
汚染が見付からないとされれば、除去の
措置の完了から一部を除く
指定解除、市場の開場という流れになったのですから、取り返しの付かない事態の前に止まったということは、都民にとっては大変よかったことだと思います。
七、官製
土壌ロンダリングについてです。
東京ガスが
汚染を除去したと、二〇〇七年に専門家会議が始まるまではそう説明していましたが、新たな
調査で
汚染が見付かるのは不都合なことだったはずです。そこで、十メーターより浅い位置に粘土質の有楽層、沖積層、Yc層ですけれども、それが、Yc層が連続しているとすることで、深度方向の
汚染のボリュームをコントロールしたというのが第一の偽装です。
結果は、試料採取のボーリング
調査の余掘りの厚みが五十センチを確認できなかった箇所が二百七十八か所にも及びます。Yc層上端面の不整合
部分約八十か所も見付かっています。水を通しにくい難透水層であることの説明に、専門家会議に使われた透水係数についても一桁安全側に書き換えていた箇所も見付かっております。それについては資料七、資料八に示してございます。
また、省令に示された試料の採取方法も三百か所以上無視し、
指定調査機関に
指示し、最初から
汚染区域外しを行っていた事実、第二の偽装も見付かりました。これは、先ほどお示ししました資料二の中の箱書きで書いてある、箱の印が、四角い印を付けていた表記の
部分ですが、三百か所以上でそのようなものが見付かっております。しかし、土対法どおりの
調査をしたからとしても、
汚染の取り残しを全て説明できるわけでもなく、
汚染は底部だけの問題ではないのは事実です。
次に、土対法の
改正を考えます。
まず、
自然由来の
汚染について。
豊洲の場合、
土壌汚染対策法の
対象になったのは、第一種
特定有害物質はベンゼン、第二種ではシアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムです。全部が石炭ガスの製造過程で
汚染の
可能性のある物質として
調査の
対象になったのですが、ヒ素については大量に
汚染が存在していたために、高濃度の
汚染の
区域があったとしても、その近辺が溶出量十倍以下であると一律に
自然由来扱いとしたということです。
これは、資料九にヒ素の
汚染についてまとめましたのでそれを御覧になっていただくとお分かりになると思いますが、亜ヒ酸を使ったという、
工場由来のものであるという箇所が確実に分かっていながら、上の方は
操業由来、有楽町層の内部については十倍以下だから
自然由来というふうに、
かなり御都合主義的に東京都がそのように判断をしたということについては、非常にその辺が
自然由来と
操業由来が曖昧になるゆえんではないかというふうに思います。そのことは豊洲でも起こったということです。
それから、
自然由来の
汚染の
移動の場合なのですけれども、そもそも
管理票と
汚染土壌処理者
制度とによって
管理されていた
記録がどうなるのか、それがどう担保されるのかという点で不明な点がこの法の
改正にはあるのではないかと考えます。
それから、二、
臨海部特区について、工業専用
区域に特区
指定に関して申し上げます。
豊洲市場の用地の
汚染対策の場合も、
計画段階で八十万立米の
汚染土、
基準十倍以下の油分を含むものを除いて新海面処分場に捨てられました。全体の
汚染土量が
計画段階で百万立米ですから、大半は処分場に捨てられた計算になります。ボリューム的には四十ヘクタールに関して二メーターの層厚のものが全部捨てられたということなんです。
ちょっとそれを都の担当者にお聞きしましたところ、降雨時の
汚染が海面に流出しないように税金でずっと維持
管理をするというふうに答えていました。放置しておいても
汚染の総量は減らないのですから、一企業がその
管理を継続して行えるのだろうか、その保証があるのかのようなことに懸念するところです。
それから、
汚染土が持ち込まれるわけですから、
拡散防止は具体的にどうするかなど
課題が多いのではないかというふうに思います。また、地方に特区が
指定されれば、都市部の
汚染が大量に搬入されるなど、
汚染土壌受入れビジネスも生まれるのではないかというふうに予測されます。
都市
計画法上の
特定街区の
工業専用地域ですけれども、隣接して第一種住居
地域が
指定されている場合もあります。といいますのは、
臨海部というのは非常に眺めが良い、海に面しているので眺めが良いので割合住居があったりするんですね。また、
工業専用地域に隣接しているのは、
工業専用地域には工業
地域や準工業
地域も隣接している場合も多いのですが、それぞれ住宅や共同住宅、店舗なども建つ、居住空間もあるということですから、近接地がそのような
汚染土壌の
特例区域に
指定されれば不安な住民も多いのではないかと。
指定の場合の近隣の同意を条件にするなどが必要と考えます。
最後に、土対法そのものを考えます。
このように、土対法の
調査方法は出口のない袋小路に追い込まれているように、すっかり信用をなくしているように思います。そろそろ
汚染の実態を把握する新たな方法を考え、実践に移す時期が来ているのではないでしょうか。第二の方法、既に研究され実践されつつあります。取組を簡単に御紹介します。資料の十にお示ししております。
実際、先ほど見ていただきましたように、十メーター掛ける十メーターの任意の真ん中でやって一律に取っていくという方法は、もうそれは無理が来ているのではないかというふうに思います。実際、実践されている方法は、その地質を、単一の地層ごとにどのような地層があるかということを立体的に判断して、その地層と
汚染の関係を調べていくことで
汚染を捕捉していくという
考え方ですが、これは既に千葉県などでも
自治体単位で
実施されていることでもありますし、実務者、研究者もたくさんその辺りの研究に携わっているということもありますので、
土壌汚染対策法上、省令で試料採取方法、
調査方法など詳細に決まっているのはいるのですけれども、また
自治体単位で自治事務として自由度を与えて、それで研究を盛んにして、その
汚染の実態になるべく沿った
調査ができるようにというふうな方向も必要なのではないかと思います。
以上です。ありがとうございます。