○土肥和則君 連合愛知の土肥と申します。
私ども連合愛知は、愛知県に働く
労働者五十四万人で組織しております。そのスケールメリットを生かし、愛知
労働局並びに愛知県や各市町村に対し、働く者、生活者、納税者の立場から
政策制度要求を行い、地方行政
施策に対し私
たちの声を反映していただけるよう取り組んでおります。また、各行政が主催します
委員会、審議会などに参画し、意見を述べさせていただいております。さらに、経営者団体等との協議を重ね、労使共通の
課題の解決に向けて取り組んでいます。
しかし、地方行政が取り組める
施策だけでは、私
たちが目指す
社会、働くことを軸とする安心
社会の構築はできません。地方における働く者、生活者の声を国に届けさせるには、私
たちが選んだ国
会議員の皆さん方が取り組んでいただいております国会審議の場に委ねることになります。
そのような
現状から、本日、直接発言をさせていただく機会をいただいたことについて感謝申し上げます。
平成二十九年度
予算は、経済・財政再生計画二年目の
予算として、
経済再生と財政健全化の両立を
実現する
予算として編成されています。
予算の詳細を熟知しての発言とはなりませんが、
幾つかの
課題認識や問題意識を踏まえた発言となることを御理解いただきたいと思います。
日本は、既に超少子高齢化、
人口減少
社会に突入し、
労働力人口の減少がもたらす
人手不足は、多くの
企業や産業において喫緊の
課題として顕在化していると思います。また、IoTやAIといったイノベーションが、
企業や産業における働き方の変革まで迫ることが考えられます。
その視点に立って、
経済再生と財政健全化の両立を目指すとしている
平成二十九年度
予算案は、
現状の日本が抱える
課題に対応する姿勢が不十分であると、まず
指摘をさせていただきます。財政健全化を進めるのであれば二〇二〇年までにプライマリーバランスを
改善する目標があるにもかかわらず、歳入不足を国債に頼るということを繰り返しているのであれば、
人口減少において、ますます将来の子供
たちに負担を強いるのではないかと懸念を抱いております。
よって、
現状を踏まえた財政健全化に向けたロードマップと、国家財政のあるべき姿を国民に示すことが必要ではないかと思います。
連合愛知は、二〇一三年に組合員にアンケートを行いました。その中で、組合員が連合愛知に取り組んでほしい
政策の上位を紹介すれば、
雇用の安定と創出、仕事と生活の両立
支援、子供の健全
育成、地域の産業振興の強化、安心な医療体制・サービスの充実、高齢者福祉充実が上位を占めました。
当然に、働く者の立場でいえば、
雇用の安定と創出、地域の産業振興の強化であり、生活者の立場を踏まえれば、仕事と生活の両立
支援、子供の健全
育成、安心な医療体制・サービスの充実、高齢者福祉の充実など、
社会保障に関する
施策が多くありました。
その視点に立って、まず、
子ども・
子育て支援でありますが、
平成二十八年度
予算より増額していることは
評価いたします。しかし、
子ども・
子育ては、ことし一年とか二年とかの問題ではなく、少なくとも数十年先を見越しての対策を講じなければ間に合いません。このような視点から、
社会保障・税一体
改革の三党合意に基づく少子化
社会対策大綱等で決められた金額、一兆円規模を確保することが重要と考えています。
また、安心できる保育のあり方を考えれば、保育士の
処遇改善は必要不可欠であります。今回の
予算で
改善する
予算は
評価いたしますが、依然として、全産業平均に対して約十万円の
賃金格差があり、
処遇改善は、一時金ではなく、できる限り月給に反映させるべきだと考えています。
そして、保育
職場の実態である
予算上から、非
正規職員による保育士の要員確保や時間外
労働の実態等の
改善を含め、保育士の就労環境を整え、保育士が安心して働ける環境で子供
たちの成長を見守るとともに、親が安心して就労できる
社会環境をつくるべきと考えています。
そして、保育施設などの施設は市町村になることかもしれませんが、国としても、縦割り行政を改め、子供や育児をする親のことを考えた姿にすべきだと考えています。
続きまして、奨学金についてであります。
給付型奨学金が創設されたことは
評価いたします。しかし、先行
実施とはいえ、対象者並びに
給付額は極めて小さく、不十分であると
指摘をさせていただきます。
本来、学業に専念しなければならない中、バイトに精力を傾けなければならない状況や、ブラックバイトと言われるようなバイト先でバイトするような学生もいます。また、
大学卒業時に、奨学金の借金を抱え、
企業に
就職しなければならない
現状もあります。
この状況を考えれば、無利子奨学金も同様でありますが、子供の学びを
社会全体で支えるためには、大胆な
政策転換が必要ではないでしょうか。ぜひとも、本格
実施を迎える年度にかかわらず、大幅増額を必要と考えています。
連合愛知と愛知経営者協会では、労使共同研究として、二〇一五年度に、仕事と
介護の両立に向けた
環境整備についてを研究テーマに取り上げました。この研究は、仕事と
介護の両立に関する方針や考え方、両立
支援制度の整備、利用状況等の実態を明らかにするため、労使双方でアンケートを
実施し、仕事と
介護の両立に関する
現状把握を行い、個別の労使関係で
取り組みの推進に向けての
参考としていただけるように行いました。
調査
企業の約八割が、今後、
介護が
企業経営に影響を与えると回答し、管理職等のキーマンが
介護者になる影響、要員計画の影響、
介護者のモチベーションや健康状態が心配が上位でありました。また、調査
企業の二割弱の
企業で、
介護を理由とした退職者が発生しているという回答をし、退職理由を把握していない
企業と合わせると、潜在的には、
介護を理由として退職する社員がアンケート結果以上にいると推察できます。また、
労働組合としても、
介護をしている社員を把握している組合は約四割にとどまっています。
このような状況において、
介護離職ゼロの
施策はしっかりとして進めていただくとともに、
介護サービスを将来にわたり確実に利用するために、安易な
介護サービスの重点化、効率化につながらないようにすべきであります。
そして、
介護職員の
処遇改善のための
予算が組み込まれたことは
評価いたしますが、保育士同様、全産業平均に対して十万円の
賃金格差があることから、不十分と言わざるを得ません。そして、
介護職場における
人材不足や
雇用の
ミスマッチの
改善をすべきであります。
連合愛知として、長年続けております組織内の連合愛知助け合いカンパを行っています。そのうち、何らかの理由で親元を離れて愛知県の施設で生活しなければならない子供
たちが
就職する際に、
就職支度金を毎年お渡ししています。その子供
たちに
就職先を聞きますと、おじいちゃん、おばあちゃんが好きなので
介護の
職場に
就職し、ケアマネジャーを目指す子もいます。そんな
介護職場で働く子供
たちが安心して生活できる環境をぜひともつくっていただきたいと要請をさせていただきます。
このような
課題以外にも、子供の貧困と言われる
社会にもなっています。国としてのセーフティーネットの構築や親の
雇用の安定化はもちろんでありますが、そして、何よりも、
社会保障と税の一体
改革は早期に実行すべきだと考えます。ぜひ、党利党略によらず、日本の将来を考え、
社会保障と税の一体
改革を進め、
社会保障の充実、安定化と財政健全化に向けて、実効ある対応を望むものであります。
次に、働き方
改革に対して述べさせていただきます。
今、国では、働き方
改革実現会議が開催され、連合本部神津会長が私
たちの代表として意見を述べさせていただいております。
私も、
労働組合役員経験が長い者として、
平成四年に
労働時間短縮推進計画が示され、
平成十七年までに総実
労働時間千八百時間の達成、定着を目指すとした計画を記憶しております。
取り巻く時代の環境に違いがあることは理解しますが、本来、人間としての尊厳である仕事に対する適正な
労働時間管理は、普遍的な
取り組みであると考えています。今論議されている
労働時間の上限規制と勤務間インターバルの規制を求めるとともに、早急に労政審で審議され、法整備をすることが必要だというふうに考えています。
一方、
政府が
労働基準法等
改正で進めます、表面にあらわれない
労働時間による心身の健康阻害を引き起こしかねない企画業務型裁量
労働制の対象業務の拡大と高度プロフェッショナル制度の創設は、ぜひ撤回をすべきであるというふうに考えています。
次に、少し地方分権について
お話をさせていただきますが、地方分権という言葉が、今では過去の遺物になったように感じられます。
地方に交付される
予算は、ある程度の枠は必要かもしれませんが、それぞれの地域の状況により、
予算執行を任せることもできるものもあると考えています。国が進めること、地方に任せることについて、さらなる検討を進め、地方分権を進めるべきだと考えています。これからの
社会では、国としてすべきセーフティーネットと、地方が知恵を出し主体的に進める
政策が地方創生につながるのではないかと考えています。その視点に立った
予算編成が必要と考えていますので、お願いをしたいと思います。
最後になりますが、
平成二十九年度
予算には関係ないかもしれませんが、第四次産業革命が叫ばれる中で、心配する点があります。
今までの産業革命は、大きく変わる
社会環境の中に新たな
雇用を創出してきたと考えています。しかし、IoTやAIが駆使された
社会の中で、
労働というものはどのように変化していくのでしょうか。
企業が
人材を
育成し、
生産性向上に向け働く者も努力し、日本の経済を支えてきた時代から、想定されるイノベーションにより
企業がどのように
人材を
雇用し
育成するかであります。場合によっては、社内に
人材を抱え込むことの必要がなくなるのではないかと危惧しています。
第四次産業革命を否定するものではありませんが、この変化に適応できる者とできない者の間に新たな格差が生じるのではないかということと、
企業においても、対応できる
企業と対応できない
企業の差が出るのではないかと思っています。
これらのことは単なる杞憂で終わるかもしれませんが、まさしく、将来を見据えて、国として
雇用と
人材などについてきちんとコミットすることが重要と考えています。そして、その時代が到達したときに、働く者を守る
労働法等をどのようにすべきか、今からその
認識を持っていただき、対応する必要があると考えています。
以上が、私からの発言とさせていただきます。(拍手)