○国務大臣(山本有二君) 重徳議員の御質問にお答えをいたします。
本法案における競争力と日本農業の価格競争力についてのお尋ねがございました。
本法案における農業の競争力とは、農業の生産性を高め、高い収益力を確保することにより持続的な農業発展ができる力であると考えております。
したがいまして、競争力につきまして、価格競争力のみを指すものではありません。品質の高さや安全といった点も競争力の重要な要素であると考えておりまして、価格競争力のみに重きを置いているのではございません。
次に、農業分野の国際交渉への対応方針についてのお尋ねがございました。
農林水産省としましては、今後とも、国際交渉に当たりましては、
我が国の農林水産業をしっかり守っていくため、農林水産品につきまして、貿易、生産、流通実態等を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに十分配慮しながら、しっかりと交渉に取り組んでいく方針でございます。
なお、先日の日米首脳会談における一連の会談を含め、米国政府から二国間交渉について具体的な要請はなかったものと承知しております。
次に、今後の農業対策予算のあり方についてのお尋ねがございました。
総合的なTPP関連政策大綱において、農林水産分野につきましては、まず、TPP発効を見据え、それに備えることをきっかけとして、
協定の発効を前提とせずとも取り組むべき農林水産業の体質
強化を加速する対策と、次に、TPP
協定発効後に必要となる関税削減等の影響に対応するための経営安定対策の充実等の二種類の対策を行うこととしたところでございます。
これまで、
平成二十七年度補正予算及び
平成二十八年度補正予算におきまして、TPP大綱を実現するための予算として
措置したものは、全て前者に該当するものでございまして、これらを着実に
実施して、農林水産業の体質
強化を進めていく必要があるものと考えております。
もとより、
我が国の農林水産業の活性化は待ったなしの状況にあります。農林水産業の体質
強化に必要な施策につきましては、今後とも着実に講じてまいる所存でございます。
次に、
平成二十七年の農協法
改正法に対する
修正の意義についてお尋ねがございました。
平成二十七年の農協法
改正法に対しましては、維新の党
提案による
修正が加えられまして、組合の構成員と役職員との徹底した議論を促すことにより、これらの関係者の意識の啓発を図り、改革の
趣旨に沿った自主的な取り組みを促進する旨の
規定が追加されたと承知しております。
この
規定が追加されたことの意義は、農協改革は自己改革が基本であり、その前提として、第一に組合員と役職員の徹底した話し合いと、第二にこれらの関係者の徹底した意識改革が重要であるということを明らかにしている点にあると考えております。
次に、農協の自主的な改革への取り組みについてのお尋ねがございました。
本法案は、農業生産資材価格の引き下げと農産物の流通、加工構造の改革の実現を目指すものであり、農協に対して改革を強制するものではございません。
また、農協改革は、農協が農業者の協同組織としての原点に立ち返って、農業者の所得向上に向けて、地域の農業者と力を合わせて農産物の有利販売などに取り組んでいただくものであります。JAグループには、この考え方に沿って自己改革を進めていただきたいと考えております。
各地の農協改革の進捗状況につきましては、都道府県に対して毎年
実施していますヒアリングなどさまざまな機会を通じて、各農協の改革の取り組み状況を把握しているところでございます。
全体として見れば、まだ十分な改革効果が出ていると評価する段階には至っておりませんが、今後さらに改革を促してまいりたいというように考えております。
次に、第五条の農業者等の努力
規定についてのお尋ねがございました。
本法案では、農業生産関連事業者に対して、良質で低廉な農業資材の供給や、農産物流通等の
合理化の実現に資する取り組みを持続的に行うよう努めることを求めております。取引相手である農業者がこのような努力を行う事業者を利用しなければ、その実現につながりません。
このため、農業者の方々に対しても、このような努力を行う事業者との取引を通じて農業経営の
改善に努めることを求める旨の
規定を置くこととしたものでございます。
このように、本
規定は、
本法案の目的を実現するために必要と考えておりますけれども、国がこれを根拠として農業者等に何かを強制しようとするものではございません。
次に、他の
法律における努力
規定の例についてのお尋ねがございました。
本法案第五条は、農業者や農業者の組織する団体の個別の経営
内容について努力義務を課しているものではありません。
本法の目的の実現のため、一定の行為を行うことを求める旨の
規定を置いたものでございます。
このような立法例といたしましては、食料・農業・農村基
本法第九条があり、「農業者及び農業に関する団体は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たっては、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。」と
規定されているところでございます。
次に、政府が
実施する調査についてのお尋ねがございました。
農業資材等の状況につきましては、国内の生産、流通や業界構造等の状況を、韓国との比較を含めて調査し、昨年九月に公表しました。
これらの調査結果を分析し、洗い出された農業資材等に係る課題に対処するため、今般、
本法案を
提出したところでございます。
本法第十六条に基づく調査につきましては、
法律の施行後できる限り速やかに
実施するとともに、その後も定期的に調査、公表を行い、農業資材等に係る施策のあり方の検討に結びつけてまいりたいと考えております。
次に、農業者団体に対する農業者の所得増大への配慮に係る
規定についてのお尋ねがございました。
本法第五条三項は、農業生産関連事業を行う農業者団体に対して、農業者の農業所得の増大に最大限配慮するよう努めることを
規定しております。この
規定は、農業生産関連事業を行う農業者団体全体に対して努力を求めたものであります。農協に限定されるものではないため、
本法案において
規定したものでございます。
次に、
本法案の第八条三号の
規定についてお尋ねがございました。
同号による銘柄の集約の
対象となる農業資材といたしましては、一律の
基準はないものの、例えば、「銘柄が著しく多数」につきましては、肥料の銘柄数が、韓国の約五千七百銘柄に対して
我が国では二万銘柄も存在すること、「銘柄ごとのその生産の規模が小さく」につきましては、代表的なメーカーにおける肥料の一銘柄当たりの年間生産量が、韓国の一万七千トンに対して
我が国では約九百トンにすぎないこと、「事業者の生産性が低い」につきましては、飼料工場の稼働率が、韓国の二三七%に対して
我が国では九三%にとどまること等が
改善すべき状況であり、現状では、肥料、飼料が
対象となると考えているところでございます。
次に、銘柄集約に関し、実行できる解決策の速やかな
実施についてのお尋ねがございました。
我が国における肥料の登録銘柄数は、近年一貫して増加しておりまして、現在、二万銘柄となっております。また、飼料につきましても、製造現場の方から、銘柄数がコスト増の要因になっているとの
意見もいただいております。
銘柄数が多くなっている背景には、都道府県による細分化された施肥
基準や、ブランド化を図ろうとする農業者からの要望、メーカーの販売戦略等があると考えております。
こうした状況を踏まえ、銘柄の集約に向けて、都道府県や農業団体、メーカー等との
意見交換を始めているところでございます。
また、今回、こうした取り組みを国の施策として法案に明示することにより、
地方公共団体等の協力を得ながら、国が強力に
推進していくことを明確にすることとしております。
次に、事業再編や事業参入の促進
対象事業に係る事業分野についてのお尋ねがありました。
昨年秋に取りまとめました農業競争力
強化プログラムを踏まえ、事業再編促進
対象事業につきましては、農業資材では肥料、飼料等、農産物流通等では卸売市場関係業、米卸売業、食品小売業等を想定しているところでございます。
また、事業参入促進
対象事業につきましては、同様に、プログラムを踏まえ、農業機械等を想定しているところでございます。
なお、事業再編や事業参入は個々の事業者の自主的な判断によるため、どのような事業者がどの程度再編、参入するかを見込むことは困難でございますけれども、
本法案に基づく支援
措置を講ずることで、これらの取り組みが進むよう、後押ししていきたいと考えております。
次に、第三条の国内外という文言についてのお尋ねがありました。
良質かつ低廉な農業資材の供給や農産物流通等の
合理化を実現するためには、その状況について国際比較を行い、これに基づき施策を講ずることが重要でございます。
本法案の第三条では、こうした観点から、国内外の農業資材の供給や農産物物流等の状況を踏まえと
規定したのでございまして、欧米の多国籍企業に門戸を広げるといったことを意図したものではございません。
次に、農業関連産業における外国資本企業についてのお尋ねがありました。
農業関連産業においては、農薬のように、既に外資企業が一定のシェアを占めている資材もあるところでございます。
本法案は、
我が国農業の競争力
強化のため、良質かつ低廉な農業資材の供給等に取り組む事業者に支援を行うものでございまして、外資企業のシェアの向上を支援するものではございません。
以上でございます。(
拍手)
〔国務大臣山本幸三君
登壇〕