○木内孝胤君
民進党・
無所属クラブの木内孝胤です。
民進党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
所得税法等の一部を改正する等の
法律案に対し、
反対の
立場から
討論を行います。(
拍手)
経済は、それぞれの
立場で受けとめ方は異なってきます。円安を背景に、株価や
企業収益は好調な一方で、二〇一四年四月の
消費税増税以降、
個人消費の低迷が続き、家計は痛み、
中間層は疲弊しています。家計
消費支出は三年
連続マイナス、
実質賃金は
安倍政権になってから五ポイント程度も下がっています。先週の月例
経済報告でも
個人消費を下方修正したばかりです。もう少し謙虚に、
全国の商店街や中小
企業、家計を預かる人
たちの声に耳を傾けていただくと、景気はいかに厳しいかということを実感できると思います。
安倍総理は、こうした現実には目を背け、
全国津々浦々で確実に
経済の好
循環が生まれているなどと自己満足に浸っています。基本的な
経済指標の一つ、
実質GDPも、四年間の平均で一・三%です。一・六%成長だった前政権時を下回っています。
また、今年度の
税収は、当初
見込みよりも一・七兆円も下振れし、新たな特例
国債を発行して穴埋めせざるを得なくなりました。年度途中に赤字
国債を
追加発行するのは実に七年ぶり、リーマン・ショック以来の事態です。
麻生財務大臣は円高が原因で
法人税が減少したと
説明しましたが、
税収減は
法人税だけではなく、
所得税も
消費税も減りました。このことは、
実質賃金の低下や
消費も低迷したままであることと符合します。
税収減は
財政健全化にも大きな影響を及ぼし、先月発表の基礎的
財政収支は、
経済再生ケースであっても、二〇二〇年度の赤字額が八・三兆円となりました。昨年七月の試算から二・八兆円も悪化しています。
経済再生、
財政再建のいずれについても万策尽きたと言わざるを得ません。
経済を底上げし、成長軌道に乗せるためには、低迷している潜在成長率を
引き上げるような規制
改革、構造
改革が重要な課題です。
安倍総理は、TPPが構造
改革の柱だとしてきましたが、既に頓挫しています。コーポレートガバナンス
改革などのかけ声は、資本市場からも一旦は期待されましたが、出てきた結果は、
日本を代表する東芝の不正
会計でした。しかも、特設注意市場銘柄、いわば執行猶予中に七千億円を超える追加の減損をやられたという失態です。
九年間で東芝から自民党へ二億七千百万円もの寄附をしているからなのか、カネボウ、西武鉄道、ライブドアなどの上場廃止と比較すると極めて甘い
対応です。政官業の
癒着構造が市場の規律をゆがめている残念な事例です。
デービッド・アトキンソン氏の著書「新・
所得倍増論」の試算によれば、
日本の一人当たりのGDPは、世界の
先進国二十八カ国中、びりから二番目の二十七位です。しかし、
日本の底力はびりから二番目ということはあり得ません。
文部科学省の
天下りの問題、森友学園の
国有地の不正な払い下げ疑惑や、その疑惑に対して事実の解明や
説明責任を果たそうとしない
政治の姿勢、東芝の不正
会計、全てが政官業の
癒着構造の結果と言えます。
生産性が低い原因は、弱い経営力に加えて男女間給与
格差があります。
日本の男女間給与
格差は、二十歳代は男性一〇〇に対して女性が八〇程度、それが、四十五歳から六十四歳になると、一〇〇に対して四五程度に大きく低下します。英国、米国は、二十歳代は男性一〇〇に対して女性九〇、四十五歳—六十四歳でも一〇〇に対して七〇程度です。女性の働きやすい
環境を整え、四五という女性の給料の低い水準をいかに
引き上げるかが課題です。
こうして女性の働き方を変え、給与水準を上げる
最大の好機が、今回の税制改正の目玉、配偶者控除、配偶者特別控除の見直しでした。
しかしながら、今回の配偶者控除の見直しは、当初の理念を放棄し、意味のない改正案となってしまいました。すなわち、百六万円、百三十万円の
社会保障の壁の問題は放置し、百五十万円という新しい
貧困の壁をつくっただけです。女性の社会進出を阻む問題や、専業主婦と働く女性の分断、男女間給与
格差の問題の
改善にはつながっていません。
また、
税収中立のために
所得制限を設け、新たな社会の分断を生んでいます。みんなで負担してみんなで受益する、ただし負担の高低はそれぞれの能力に応じるという
制度設計をすべきです。
本
法案には、静かに、そしてこそくに、電磁的記録の証拠収集手続の
整備が盛り込まれています。これは、いわゆるサイバー監視
法案の内容を国税犯則
調査に取り込もうとするものです。
共謀罪の立証のために、国税犯則
調査で収集した証拠が利用され得る。通信の秘密やプライバシー権など、憲法上の基本的人権が脅かされ、一億総監視社会を招きかねません。
加えて、今回、
安倍政権は、国税犯則
調査手続が規定されている国税犯則取締法自体を廃止して、通常の税務
調査を定める国税通則法と一本化しようとしています。通常の税務
調査と犯則
調査の境界を曖昧にする意図だとすれば、極めてこそくな手法と言わざるを得ず、この部分は
法案から直ちに削除すべきであります。
また、複雑で重い自動車関連諸税については、見直されないどころか、グリーン税制が縮小される方向が打ち出されました。
自動車産業は非常に裾野が広いことから影響が大きい上に、地方では自動車は生活の足となっています。そうしたところで負担をふやすことは、景気や
消費の足を引っ張る結果となります。
経済再生といいながら税制でブレーキをかけており、ちぐはぐと言わざるを得ません。
世界的に
所得の再分配機能が低下し、
格差拡大の是正と
中間層の復活が課題であり、
日本も同様です。
私
たち民進党は、
格差拡大や社会の分断化を食いとめ、誰も置き去りにしない、全ての人に居場所と出番があって、全ての人を包摂する自由で公正な社会の実現を目指しています。そのために、
実質的に全ての人への基礎的な
所得保障につながる
所得税改革を行うべきと考え、
法案も既に提出をしています。これにより、無年金者、生活保護世帯を減らし、
社会保障制度再編の起爆剤にする、これが
民進党の
日本版ベーシックインカム構想です。
その第一弾として、まずは従来の
所得控除を税額控除に変えます。
具体的には、基礎控除を税額控除に変え、配偶者控除、扶養控除は廃止、縮小、統合し、新たに世帯控除を創設します。これにより、百三万円の壁は極めて低くなり、税制はライフスタイルにほぼ中立になります。
次の段階としては、給付つき税額控除の導入です。
具体的には、就労により得た
所得に応じ減税額をふやすことで就労を促進する就労税額控除を給与
所得控除に再編成して導入します。