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柴田参考人 皆様、おはようございます。
柴田でございます。
先ほどの
花井さんからの現場の話、そして
久波さんからの当事者の
お話、非常に重い話でして、特に
久波さんからの当事者の
お話、ぜひ重く受けとめていただければと思います。
お手元に配付
資料がございます、こういうA4のものですけれども、私はどういう
立場で御発言するかと申しますと、データ分析をしてきた、とりわけ先進諸国のマクロデータを分析してきた
立場から
お話しさせていただきます。
ただ、私の分析、まだまだ粗い分析でして、まだまだ
改善の余地があります。ですので、結論としましては、ぜひこういったマクロデータの分析をもっと進めていただきたい、できれば、政府の研究機関だとか、あるいは
民間の研究機関に委託するなりだとかいろいろな方法がありますので、そういったことをお願いしたいと思います。
今回の私の分析の結論がタイトルになっておりますけれども、
大学の
学費の
軽減は、出生率の上昇と労働生産性の上昇、この
二つをもたらすのではないかという可能性が見えてきたというのが今回
お話ししたいことでございます。
細かく言いますと、ポイントというところにまとめているんですけれども、特に下線部を引いたところですね。
大学の
学費の
軽減によって、希望出生率一・八だとか、あとは労働生産性の上昇によるGDP六百兆円といったものは実現できる可能性があるんじゃないかということです。
もう少し細かく言いますと、
大学学費軽減だけではなくて、労働時間の短縮、つまり働き方改革、あとは待機児童の解消といったものも必要かとは思うんですけれども、そういったものを組み合わせれば、今の政府が
目標としている数値の実現が可能ではないかということが分析から多少見えてきたということでございます。
ただ、先ほども申し上げましたように、まだ粗いところがありますので、ぜひとも今後、詳しく分析をさらにしていただきたいと思います。
詳しくは、どういった分析をしたかというのを簡単に御説明いたしますと、三ページの下のところを見ていただけますでしょうか。三ページの下のところを見ていただきますと、分析の概要が載っております。下線を引いたところですけれども、私が行った分析は、先進諸国のデータを分析したということでございます。
詳しく言いますと、先進二十八カ国の八〇年代から二〇〇〇年代のデータを分析したところ、どういった
傾向が見られるのかというのを見出していきました。その結果、先進国の過去の
傾向というのを今後の
日本に当てはめて推計した結果が次のページに載っております。
今回のこの
委員会は
給付型奨学金に関するものですが、私の
お話は、もう少し大きな視野で、その後、さらにどういった形で、どこら辺まで
教育への投資を広げていくべきか、それが
社会にどういった影響をもたらすのかというところが主眼になっておりますので、その点は御了承ください。
そして、四ページの上の方、下線を引いておりますけれども、先ほども言いましたように、あくまでこれは先進諸国の過去の
傾向をそのまま今後の
日本に当てはめて推計した、試算したということですので、その点は御了承ください。
また、因果関係の細かいメカニズムも、まだ明らかになっていません。あくまで、こういった政策を組むとこういったアウトプットが出てきたという
傾向にすぎませんので、ぜひとも今後、さまざまな検証、分析をいろいろなところでしていただければ、それを総合的に判断して政策に生かしていただければと思います。
得られた結論がこの図に載っております。これは、先日、二月八日の
日本経済新聞に「経済教室」という欄で載せた分析を若干さらに改定した数字になっております。
ここの図を簡単に御説明しますと、まず、一番左上に書いてありますものが労働時間の短縮、これを週三時間短縮するという改革ができたと仮定します。これを今後、二〇一七年から二〇二五年までの八年間で実現するという前提を置きます。
次に、
大学の
学費の
軽減、これを
国立大学相当分のみ、全ての大
学生、専門
学校生、短大生に
国立大学授業相当分のみ
学費を
軽減する、方法は特には問いませんけれども、そういった大規模な
学費軽減を行う、これは予算が一・七兆円ぐらい必要かと思うんですが、そういった設定をいたします。これも今後八年間で実施するという設定です。
三つ目が待機児童の解消です。これは、保育士への給与
改善も含めた数字になっているんですが、保育士の給与を大幅に
改善した上に、さらに保育所あるいは保育ママを拡充するといった形で保育サービスを拡充するということに一・四兆円を投入する。これによって、恐らく待機児童はかなり大幅に減少するのではないかと見込んでおりますが、この一・四兆円という数字でインプットを設定しております。
この三つのインプットを設定すると、先進諸国のこれまでの
傾向から試算しますと、どういった変化が
日本社会にもたらされるのかというのを推計したところ、まず、総合的に、結論、この三つの合計値が一番右のところに書いてあります。出生率がプラス〇・三六ほどということです。かなりこれは大きな数字なんですが、とりわけ働き方改革、つまり労働時間の週三時間短縮と
大学学費の国立相当無償化によって、かなり大幅に出生率は上がるんじゃないか。これはもうわかりやすい話ですけれども、労働時間が短縮すれば、家庭の時間が持ちやすくなるわけです。子育てもしやすくなる。あと、
学費が
軽減されれば、子育てのコストが減るわけです。
こういったところから、主にこの〇・三六一、あとは待機児童解消も少し出生率を上げる効果が見込まれるという結果になっております。この〇・三六一が、もしこの分引き上がるとしますと、直近の出生率は一・四五ですので、足し合わせると一・八、希望出生率一・八が実現できるんじゃないかという試算になります。
逆を言いますと、このぐらい大胆な
学費軽減や働き方改革、待機児童解消をしないと希望出生率一・八は実現できないんじゃないかというのが、現在のところ、私が持っている所感でございます。もちろん、検証は、まだまだ必要でございます。
さらに、出生率の上昇だけではなく、労働生産性の上昇も、この分析から見られたということでございます。これは労働時間の短縮がとりわけ大きな効果をもたらしているんですが、この労働生産性というのは一時間当たりの生産性です。一時間当たりに生み出される実質GDPの上昇率が上がるということでございます。労働時間短縮と
学費軽減と待機児童解消によって、合計、合わせて、年平均で一・一%ぐらい労働生産性の上昇率が引き上がるという結果になっております。
さらに、待機児童の解消は、もう
一つ、
子供の貧困を減らすという効果も見込まれまして、これは、待機児童解消によって保育所を利用しやすくなるというところによって、まあ保育所が安くなるというところもありますけれども、それによってお母さんが働きやすくなるというところから、
子供の貧困が二%ほど減るのではないかというふうに見込まれました。
以上が私の見出した分析結果なんですが、もちろん、今後検証していただきたいと思います。
最後に、労働生産性が一・一四、年平均で上がると、これは八年間続けて年平均ということなんですけれども、これをGDPに換算してみたところ、現在のGDPが五百兆円ぐらいと想定しまして、二〇二五年にGDPがどのぐらいになるのかというのを簡単に試算いたしました。
これは、これまでの労働生産性の伸び率をそのままと仮定して、四ページの一番下に書いてあるところなんですが、就業人口は変わらないと仮定します。これは難しい仮定ですけれども、とりあえず仮定いたします。そうしますと、まず、この三つの改革をしなかった場合は、GDPは五百五十兆円という計算結果になります。これまでの成長率をそのまま当てはめますと五百五十兆円。この三つの改革をした場合、GDPはどのぐらいまでふえるかといいますと、単純計算しますと六百兆円ぐらいというふうになりました。
ですので、GDP六百兆円という
目標値で現在政府は取り組んでおられると思うんですけれども、その六百兆円を実現するためにいろいろな取り組みがあるかと思うんですが、
一つにはこういった働き方改革はもちろんされておりますけれども、それだけじゃなくて、
大学の
学費の
軽減によって家計が消費がしやすくなるわけですね。とりわけ、今消費が伸びていない子育て世代の消費が恐らく伸びるんじゃないか、それによってGDPはふえるんじゃないか、生産性もふえていくんじゃないかというふうに解釈しております。
ただ、何度も申し上げておりますが、この推計はまだまだ粗いものでして、今後、ぜひとも政府系の研究機関だとかあるいは
民間の研究機関に委託するだとかいった形で、より専門的に、より精緻な分析をしていただいて、
教育の投資というのがマクロ経済やあるいは出生率にどういうプラスの影響を与えるのかというのを検討していただきたいと思います。
一点だけ補足いたしますと、先日、三月十日の
日本経済新聞の「経済教室」で、
日本経済研究センターの主任研究員の河越正明さんが、
教育の投資、子ども・子育てと
教育に八兆円を投資するというふうにすると、実質GDPの成長率が、二〇二六年から二〇三〇年度にかけての年平均が、何もしなかった場合は〇・四%ですが、この改革、つまり八兆円を子ども・子育てと
教育に投資すると二・〇%まで引き上がるというような推計も出されております。
こういったいろいろな推計、
民間でも推計されていますので、こういった推計を総合的に判断しながら、
教育の投資のマクロ効果というのをぜひ積極的に検証していただきたいと思います。
以上で
参考人としての発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。(
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