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吉良委員 ありがとうございます。
実は、お答えいただいたんですけれ
ども、資料二の方にもちょっと用意させていただいていまして、今、総理が御
指摘いただいたように、本来、米国の証券市場というのは非常に開示義務のハードルが高い、これでもかこれでもかというぐらいに開示義務を課すことによって、一般の投資家が、これだけ情報公開している中で、投資する側がきちっとリスク判断して社債を購入してくださいねというのが基本原則なんですけれ
ども。
その例外として、今、総理おっしゃったように、一定の規模を持った、一定の要件を備えた機関投資家、専門的にはクオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーズ、QIBといいますけれ
ども、その人たちが相手であれば、要はプロですね、開示内容がさっき言った一般よりも低かったとしても、プロだからきちっとリスク分析できる、しかも、一定の規模を持っているということで信頼ができるということで、今言ったクオリファイド・インスティテューショナル・バイヤーズを対象にして、開示義務をぐっとハードルを下げた上で社債発行ができる、これがルール百四十四Aであります。
これによって、非常に大きなメリットが出てきます。それは、米国市場以外でも、米国以外のマーケット、米国以外のプロジェクト推進会社が発行した社債を米国市場で売りさばける、こういうメリットがあるわけなんです。
ちょっと、次の資料三を見ていただきたいと
思います。これは
各国におけるルール百四十四A債の発行例ということで、これはほんの一部ではありますけれ
ども、
日本でも、三井物産、住友銀行、損保ジャパン。三井物産の場合は、さっき言ったプロジェクトファイナンスの一部でありますけれ
ども、住友銀行
あたりは、調達目的で書いてありますように、自己資本の充実。それから、米国で幾つか例がありますけれ
ども、やはりプロジェクトに対する
資金調達としての社債発行、引き受けというものがここでごらんいただけるかと
思います。
実は、このルール百四十四A市場というものがどれだけ莫大なものに、市場が大きいかということを、資料としては載せていないんですが、口頭で申し上げると、一九九〇年から二〇一〇年、ちょっと数字は古いんですけれ
ども、この二十一年間でどれだけの調達がなされているか、ちょっと一例を申し上げますと、オーストラリア、二千三百五十八億ドル、約二十六兆円。カナダ、千二百九億ドル、約十三兆円。ケイマンアイランドは、御承知のとおりタックスヘイブンの地ですけれ
ども、ケイマンが千八百九十四億ドル、二十一兆円。フランスは千四百三十五億ドル、十六兆円。オランダが千二百五十四億ドル、十四兆円。先ほど鉄道プロジェクトの紹介がありましたけれ
ども、イギリスでは四千百三十六億ドル、四十六兆円です。
米国以外の七十六カ国の合計が二兆六百五十七億ドル、二百三十一兆円。そして、本拠地米国は、何と三兆三千七百十六億ドル、
日本円で三百七十七兆円。二〇一〇年以降も
拡大していますから、これだけの巨大なマーケットになりつつあるわけです。
ちなみに、
日本は、先ほど言った九〇年から二〇一〇年まででは、十六社が二十二案件で発行して百九十一億ドル、ざっと二・一兆円。ドイツが二百四十二億ドル、二・七兆円。こういう
状況であります。
日本は大幅にこの市場の利用がおくれているということが御理解いただけるかと思っています。
実は、かく言う私めが、この市場で、プロジェクトのボンドを発行して、売りさばいて調達した経験がございます。
資料の四をごらんいただきたいんですが、これは本当はもっと複雑なスキーム図なんですけれ
ども、非常に簡略化したプロジェクトで、メキシコのモンテレーという土地がありますけれ
ども、そこで天然ガスだきの四百八十四メガワットのコンバインドサイクルの複合発電所を建設するときに、スイスの大手重電メーカーABBというところと組みまして、当時私がおりました日商岩井という会社とABBとで五〇%ずつ出資してプロジェクトの遂行会社、SPCを、実はケイマンアイランドにつくりました、サイトはメキシコのモンテレーでありますけれ
ども。そこの右側に、「クオリファイド インベスターズ」と書いてあるところに、百四十四Aボンド、USにして二百三十五ミリオンということを書かせてもらっていますが、これを発行しました。そして、一日でこの二百三十五ミリオンを調達できた、こういう経験を持っているんですね。
もちろん、一日で調達するにはレーティングの取得が必要であります。ですから、私も、ABBだとか、当時、ファイナンスアドバイザーをやっていた会社と一緒にS&Pとムーディーズに行ってこのプロジェクトのプレゼンテーションをやって、そこでレーティングを取得し、そのレーティングをもとに、今言いましたように、社債を発行して、即日販売をした、こういうことなんですね。
ですから、先ほど言いましたように、アメリカ国内はもちろんですけれ
ども、メキシコという土地でもできる、三井物産がやったようにインドネシアというプロジェクトでもできる。先ほどJBICがリスクマネーを提供できるようになったことを大変私は評価しているということを申し上げました。これはこれで大変いいことですけれ
ども、とかく、プロジェクトに
協力するということは、何となく、
自分が融資をしたりしてリスクもとってあげるということが貢献のように感じられるんですけれ
ども、一番いいのは、リスクは他人にとってもらって、他人のふんどしで
お金を集めてやるというのが一番いいんですよね。だから、そういう
意味で、このルール百四十四A市場を使わない手はないということできょうは紹介させてもらおうというふうに思っているんです。
もう一件、資料を見ていただきたいんですけれ
ども、次の資料五、これは同じくメキシコで、ロザリートというところで、もう少し大き目の複合発電を、同じくスイスのABBと組んで、全く同じ仕組みで
資金調達をしようと思っていたんです。
ところが、次のページ、資料六を見ていただきたいんですが、これは米国のキルパトリック・タウンゼント弁護士
事務所というところの実績表ということで出しているんですが、上の段は「二百三十五ミリオン ルール 百四十四A ファイナンシング」と書いて、下の方のところに、ABBエナジーベンチャーズと日商岩井というふうに書いています。これは私なんかがやった案件なんですけれ
ども、これは百四十四Aで調達できた。その下を見ていただきたいんですが、今度は「三百三十五ミリオン ファイナンシング フォー ア 五百四十一メガワット パワー プラント」と書いていますが、これがさっき言った二例目のプロジェクトです。
ところが、これは、下を見ていただきたいんですが、下の方に下線を引いていますが、三百三十五ミリオンファイナンシングで、「インクルーディング エクスポート クレジット エージェンシー」となっているんです。これは、JBICと同じ制度
金融、実は、これはERGというスイスの制度
金融を使いました。実は、ルール百四十四Aをこのプロジェクトでは使えなかったんです。
副総理に聞いていいかな。なぜだか想像がつきますでしょうか。わかりました。
実は、わずか三カ月の間にロシアの
金融危機が起こったんです、一九九八年に。
金融危機前は、今言ったように一発で調達できたんだけれ
ども、
金融危機があると、当然、そういうリスクマネーを引き受けようとする投資家たちが引いてしまうわけですよ。それで、この仕組みでは実は調達できなくなりました。それで、急遽、主要な機器がスイスから出てきますので、ABBという重電メーカーから出てくるので、そこの国、スイスの制度
金融であるERG、これを使って実はファイナンスを完了したわけなんです。
ですから、一方では、リスクはできるだけ他人にとってもらおうという
意味で、この市場というのは非常に使い勝手がいい。だけれ
ども、一方で、世界的な
金融混乱によって成立しない場合もあるということなんですね。
ですから、私自身が思うには、一方では、そういう世界的な
金融混乱が起こらないときにはできる限りこのルール百四十四Aを利用する。だけれ
ども、何かあったときは、ボンドを引き受けることができるようになったJBICがこのボンドを引き受けることによって、例えば一億ドルなら一億ドルのうちの半分の五千万ドルをJBICが引き受けるということによって、
残りのポーションについてはほかが引き受けやすくなるというような環境をつくる、または、JBICの本来業務である投資
金融含めて、JBICの制度
金融としてのファイナンスを提供する、こういう仕組みを持っていれば非常に万全だというふうに思っております。
そういう
意味で、私がきょう紹介し、かつ
提案をしたいことが、このルール百四十四Aというものを、
政府としても
インフラ海外展開においてできるだけ利用できるような環境を整えていくことが一点。そして、JBICのボンド引き受けで、JBICが直接はできないかもしれません、米国に何らかの投資エンティティーをつくるのか、ツーステップローンみたいな形にするのか、いろいろな手法があると
思いますけれ
ども、ただ、ボンド引き受けができるようになったJBICがこのルール百四十四Aに基づいて社債の引き受けを行う、こういうことを検討してもらいたい、こういう
思いできょう
質問に立たせていただいている。いかがでしょうか、
大臣。
〔土井
委員長代理退席、
委員長着席〕