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石井参考人 大阪府立大学の
石井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私の
資料は二種類用意しております。一番上に
説明骨子がついていまして、その後ろに
パワーポイントの打ち出し、
カラー版でつけております。それから、私が最近書きました、これに関する「
環境省第四次
レッドリストからみた
日本の
昆虫の現状と
危機要因」ということで
資料をつけさせていただいております。
それでは、
カラー版の方で説明させていただきますので、
ごらんいただければと思います。
最初に
自己紹介からいった方がいいかなと思います。
専門は
動物生態学で、
昆虫生態学をやっております。特に
チョウで
博士論文を書きました。
学位論文名が、
ギフチョウの
生活史に関する
研究というようなことです。
関連著書としましても、「
里山の自然をまもる」あるいは「
生態学からみた里やまの自然と
保護」「
日本の
昆虫の衰亡と
保護」ということで、
専門以外にもこのような本を書かせていただいております。
中央環境審議会の
委員でございまして、現在、
野生生物小委員長を務めております。それから、
大阪府の
外郭団体であります
公益財団法人大阪みどりの
トラスト協会の会長を務めておりまして、
大阪府域の
里山の
保全にかかわっております。それから、今般の
話題にかかわります、
絶滅のおそれのある
野生動植物の種の
保存に関する
法律のあり方の
検討会は、
座長を務めさせていただきました。
その横の
写真ですけれども、
里山の
チョウの代表になってしまいました
日本固有種の
ギフチョウの
写真、それから、今私が
保全にかかわっている
大阪府能勢町の吉野の
里山、ここは
ギフチョウがいるところです。
それでは、次の
資料で、小さな字で下の方に
数字が書いてありまして、
シート番号で言いますけれども、二番のところを
ごらんください。
もう
皆様方には
釈迦に
説法なんですけれども、
環境省が
レッドリストをつくったのが一九九一年ですけれども、このときに
植物の方は実は
環境省はつくっていなくて、
日本自然保護協会、お隣におられますけれども、それからWWFJが
委員会をつくってつくったものですけれども、緑のものが
植物で、小豆色に見えているのが
動物、そして、
内数ですけれども、私が今
座長を務めていますけれども、
昆虫の
レッド種が出ております。
黒い
数字は、
環境省が
絶滅危惧種として出している
数字より大きなものになっていますけれども、これは全
掲載種の
種数です。
括弧つきの赤い字が
絶滅種ということで、
ごらんのように、改訂を重ねるたびに、
レッド種と呼んでおりますけれども、ふえておるという
状況でございます。
では、次の紙に行っていただきたいと思います。
では、なぜこのように
日本の
野生動植物が減少するのかということですけれども、これについて分析したのが
シートナンバー三でございます。
開発、
捕獲・採集といった
人間の
活動ですね、それから、
遷移の進行というのが目につくと思いますけれども、これは後で少し述べますけれども、
植物は、
草原が例えば森に移っていくような
遷移という現象があるんですが、移ろっていく、これによるものです。これが今回の
話題の核心になります
里地里山の自然の
特徴かなというふうに思います。それから、
過剰利用とか水質の汚濁、それから
外来生物の問題も大きいかなと思います。
四番目の
シートに、
環境省が作成しております
生物多様性国家戦略の中から、
日本の
生物多様性の四つの
危機を出しております。
四つありますけれども、
人間活動による
危機、それから二番目に、枠をつけましたように、
里地里山の問題、ここはむしろ働きかけが縮小しているから
野生生物が減少しているんだと。それから三番目は、
農薬とか
外来生物のように持ち込まれたものによる
危機、それから四番目が、
地球温暖化のような
地球環境の変化による
危機となっております。
では、次ですけれども、このような
里地里山の自然というのは、
人間がかかわっているので、原生的な自然と分けて二次的自然と申しておりますが、このようなものが、各
絶滅危惧種がどのように分布しているかというのを示したものでございます。
ちょっと小さいですけれども、右の方に凡例がありまして、各グラフの中で赤い枠をつけたところが、いわゆる
里地里山を含む二次的な自然の
部分でございます。
ごらんになっていただくとわかるように、爬虫類というのは少しその
部分が少ないですが、ほかのところでは、特に両生類、魚類、
昆虫類、貝類といったところでは、二次的な自然のところに
絶滅危惧種が分布しているということがおわかりかなというふうに思います。
六番の
シートでございますけれども、
里地里山とは何かということで、本当に
釈迦に
説法で申しわけなく思いますけれども、狭い
意味では、
里山と言うときには、炭や
まきとかをとる、いわゆる
薪炭林、それから、
肥料をとる
農用林というのは林の
部分をいうんですけれども、ここに、絵にあるような全てのところ、これを含めて広義の
里山というふうに私は呼んでいますけれども、これを四
文字熟語で
里地里山と呼んでおります。これは、古くから人為により維持されてきた二次的な自然の典型と言えるかもしれません。
次の
シートへ行っていただきたいと思います。
次の
シートナンバー七が、先ほど申しました
遷移というものをあらわしたものでございます。
左側が裸の
土地、それから右に向かって森ができていきますけれども、
草地を放置すると、やがて
陽樹林という、明るい、あるいは乾燥した
土地にも強い林ができていきます。関東や関西の低地におきましては、これを放置しますと
陰樹林ということになりまして、これはいわゆる
照葉樹林、
シイや
カシから成る林でございます。
陽樹林は、
日本の
特徴は、下に
ササが生えていることでして、だんだん下から
ササが生えてきたりします。そして、森が大きくなると、今度は逆に森が暗くなって、
自分の林の中で
自分の子供を育てることができない、
ドングリが落ちても芽が生えないとか育たないということになってきまして、暗いところでも
ドングリが落ちてしっかり林ができるという
カシや
シイというのに変わっていくわけです。これを、
最後の
段階なので
極相と言っています。
これで右向きに進むことを
遷移といいますけれども、一番上に描いたように、
左側に戻ることもあります。これは、
自然災害であったり、農業なんかの働きによって草刈りをする、木を切るというようなことによって左に行くわけでございます。
こんな
ぐあいにして、
里地里山にはさまざまな
遷移段階の自然が含まれていて、これが多種多様な
野生生物に
生息環境を提供してきたという
仕組みになっているわけです。
里山林の
部分を見ていただくと、八番でございますけれども、こんな
ぐあいにして、一番下から見ていただくと、木が大きいうちは
落ち葉がたくさん落ちるので、
落ち葉をかいて
肥料にします。大きくなり過ぎたところで伐採して、これを
まきや炭、
シイタケのほだ木などに使っていきます。そうすると、コナラとかクヌギの場合にはひこばえが生えてきますので、これを育てていきます。
萌芽更新というんですけれども、そのときに光が
林床に差し込むために、
下草刈りといって
ササとかを刈らなきゃいけないんですね。ただし、昔は、この
下草についても
田畑に投入して
肥料にしていました。
ですから、こういう循環の中で全てのものを
利用してきたということです。持続的な
利用ができてきたということです。木を切ったり、
下刈りというんですけれども
下草刈りをしたり、
落ち葉かきをしながら、
まきや炭、
肥料を得てきた。こういう
行為によって、上にある
遷移の絵にあるようなさまざまな自然が存在し、そして、小さな
里山の中に多くの
生物を収容することができていたということでございます。
次の
シートへ行ってください。
日本の
里山林の
特徴ですけれども、放置すると、先ほど言いましたように、ネザサが生えてきます。七夕のときの
ササですね。それから、戦をやっていたときの
矢竹にするというようなものですけれども。そうすると、下の方に、十番にありますように、
ササの下に隠れた丈の低い草花が枯れていくわけですね。これに依存している
生物がいなくなっていくということになるわけでございます。これは
遷移の
一つということですね。荒廃と言ってもいいかもしれません。
次の
シートを
ごらんください。
それぞれの
里地里山の
要素ごとに説明したものですけれども、
里山林におきましては、
ギフチョウ、オオムラサキとか、多くの
生物が
掲載されております。
危機要因としては、
里山林というのは、
化石燃料それから
化学肥料が普及したことによって
経済的価値が一九五〇年代から低下していきまして、
開発されてしまう。それからもう
一つは、先祖から引き継いだ
里山ということで、そのまま放棄することになるんですが、そうすると今度は
遷移が進行する。
ササが生える、だんだん
シイ、
カシ林に変わっていくというようなことですね。最近では、竹林が拡大してのみ込んでいく、そしてニホンジカがふえていくなんということも
危機要因になっております。
保全事例としては、そこにあるように、赤城山のヒメ
ギフチョウなんというのがあります。
愛好家が立ち上がって、さまざまなことをやるということです。
ごらんいただければと思います。
それから、
里地里山の
草原の方はどうかと申しますと、たくさんの
チョウやガが含まれております。十二番の
シートでございます。
危機要因としては、
草地というのは、放牧とか火入れとか、それから、昔は牛馬で
田畑を耕していましたので、餌を上げなきゃいけないというので、
農地にも、その近くには草を刈る場所、
採草地というのがあったわけでございます。これがだんだんそれらの
活動の低下によってなくなる。そうすると、
草地は森になっていくということです。
草地そのものもなくなっていきます。というようなことで、次第に
草地も減っていった。それに伴って
草地の
生物たちがいなくなってきた。
広島県の
ヒョウモンモドキというのもそういう
チョウでございまして、もう既に
国内希少種に
指定されておりますが、
地元有志団によって
ヒョウモンモドキの
保護の会が発足したりして、
保全が行われております。
時間もありませんので、次に参りたいと思います。
十三番は、
日本チョウ類保全協会から
資料をお借りしたものでございますけれども、例えば
草原性の
チョウ、
ヒョウモンモドキ、ウスイロ
ヒョウモンモドキ、オオウラギンヒョウモン、オオルリシジミといった
チョウは、
市町村単位で数えた産地の
減少率というのが八〇から九〇%、ほとんどいなくなっているという状態でございます。
それから、
稲作水系と私が呼んでいるのは、
水田とか
ため池のような
稲作の装置というところですけれども、これもかなり
危機的でございます。もう既にキイロネクイハムシと
スジゲンゴロウというのは
絶滅しておりまして、
ゲンゴロウ、ミズスマシ、タガメ、トンボ、いろいろなものが減っているということです。
危機要因ですけれども、
水田や
ため池そのものが減っている、それから
生活排水や
農薬が流入する、コンクリート護岸する、
開発によって埋め立てる、
圃場整備を行う、そんなようなことだったり、それから、パイプライン化してしまうんですね、水路が。だからメダカもすめなくなる。そして、稲が植わっているときだけ水が入るという
意味で、乾田と呼ぶんですが、そういう
状況になったり、
農地周りに
夜間照明がついて、そこに虫が集まって、
コウモリ等に食べられてしまうなんということもあります。それから、
ブラックバスやオオクチバスのような
外来魚も入る、
アメリカザリガニが入るというようなこともあります。
保全事例として、房総半島のシャープ
ゲンゴロウモドキの例を挙げておきました。
次を
ごらんいただければと思います。
環境省の
資料から持ってきましたのですが、十五番目の
シートでございます。これが
絶滅危惧種の
保全対策の
相互関係ということで、いわゆる
保全戦略を絵にしたものでございます。
真ん中に赤い枠で囲ったように、種の
保護というのは、当然ですけれども、
生息域内で
保全するのが必要であるということで、いろいろな
要素から成り立っているということで、
ごらんいただければと思います。
モニタリング調査があったり、
生息環境の維持があったりするわけです。
それから、下の方に青い枠で囲ったのが
生息域外保全と言っているものでございまして、いよいよ危なくなってきたら、
動植物園、
昆虫館等を使って、そこで増殖させるというようなことが必要になってくるということです。それらを往復するような形で絵を描いています。
国内希少野生動植物種の
指定の
状況は、十六番を
ごらんいただければと思います。こんなように増加してきている。現在二百八まで来ているんですね。
次の
シートを
ごらんください。
十七番目でございます。
国内希少野生動植物種にしますとどんなことになるかというと、主に、下にありますように、
捕獲それから流通に強い
規制がかかるということでございます。
一番
最後の
シート、十八番目で私の主張が書いてありますけれども、とにかく、現在、二次的な自然の
絶滅危惧種というのは、赤い字で書いたところですけれども、
保全に熱心な
地元の
団体、
専門家、地方自治体の多様な主体との連携で守ってきているということがあります。
それから
二つ目に、
捕獲のところですが、
モニタリング調査、
遺伝的多様性の解析、
環境教育のためには、最小限の
捕獲というのをキープしないとまずいのではないか。
それから、
生息地等の
指定ですけれども、
行為規制の弱い
監視地区のみの
指定とか、
密猟防止のための
種名を伏せた
保護区の
指定というのをやらないと、すぐになくなってしまう
可能性もあります。
保護増殖の実施ですけれども、
昆虫類の場合は、実績のある
昆虫館などと連携した
生息域外保全も積極的に進める必要があるのではないかということです。
最後の紙は、一枚目に書いた
骨子と同じで、今述べたことをまとめたものでございます。
私からは以上でございます。(拍手)