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福永参考人 おはようございます。
岐阜女子大学南アジア研究センターの
福永と申します。
もうお二人の
先生が詳細に
お話をしていただきましたので、事実
関係につきましては私はかなり省いて、
ポイントのみを
お話しさせていただければと思っております。
まず、
インドが一九七四年に第一回の
核実験を行った際に、これは
アメリカと
カナダからの
民生協力によって
提供を受けた燃料、
資機材などを
秘密のうちに軍事転用して
核実験を行った、
核実験とは言っておりませんが、
平和的爆発というふうに言っておりますけれども、七四年にはそういう、言葉は強くなりますが、前科がある。
最近でも、二〇〇四年には、
インドの
原子力公社の元役員が当時制裁中であったイランに対して
秘密裏に
技術転用をしたのではないかというようなことが、
アメリカ政府から指摘もございます。
次に、この
条約、
協定を
日本が、唯一の
戦争被爆国として核不
拡散に大変努力し、
核軍縮に向けて努力してきた
日本がこういう
条約、
協定を結ぶということは、非常に大きな影響を国際的にも及ぼすのではないかと考えます。
インドは
NPT未
締約ですので、正式に言いますと
核兵器国でも非
核兵器国でもございません。ただ、勝手に
核兵器をつくってしまったという宙ぶらりんの状態を、
NPTの
枠外という
扱いであります。そうしますと、この
条約でその
枠外にある
インドに
核協力、
原子力協力を行うということは、あたかもこれまでの
インドの
核実験、
核保有というのが正当であるかのように、あるいは六番目の
核保有国であるかのように認めることになるのではないかということを大変危惧いたしております。
次に、当然のことながら、
国際原子力機関、
IAEAと
インドは
議定書を結びまして、
査察、
保障措置が行われることとなっております。しかし、これは非常に重大な問題を含んでおりまして、
インドが
国内の
原子力施設を
軍事用と
民生用に分ける。
民生用については全て
査察を受ける。しかしながら、
インドが
軍事用ですよと言った
施設については
査察は入らない。ということは、
インドは国際的な監視のないところで、
査察を受けずに
原子力活動、
生産活動、あるいは
プルトニウム濃縮、そういったことを行うことができる。
この
条約、
協定は、この
IAEAの
保障措置に非常に依拠している
部分がございます。となりますと、
保障措置が行われるのだから大丈夫だろうというよりも、むしろ、
保障措置から漏れているところがあるというところは大変重要な問題なのではないかということを申し上げたいと思っております。
次に、
公文のことがございました。多分、
先生方がお受け取りになられている
資料には、これは
参考というふうに入っております。
協定本体ではないわけでございます。非常に重要な
部分がここにまとめられているようなんですけれども、
参考文書であると。
それはどういうことかといいますと、二〇〇八年九月に
原子力供給国グループ、
NSGが
インドに例外
措置を認めた際、直前、九月五日、当時のムカジー外相が
インドの核方針というものを表明し、それを受けて
NSGで
インドの例外
措置を認めたという経緯がございます。
しかしながら、これは今、
鈴木先生から
お話ありましたように、
日本にとってはぎりぎりの選択であった、そして非常に厳しい
決意表明をしていたという
部分をなしにして、この
声明があるから大丈夫ですよというふうに御
説明があるんですけれども、むしろ
核実験を行った際には即時に
停止するということが
協定には書かれていないという
部分が非常に重要なところだろうと思います。これは多分
インドが拒絶し続けたのだろうと思いますけれども、
協定にありますのは、再
処理は
停止するという
部分がございます。しかしながら、
日本政府は、
インドが自主的に
核実験モラトリアムを表明しているから、それを翻すようなことがあれば
停止しますよということを述べ、
インド側もそういうことを述べたねという確認をしているのがこの
公文でございます。
すると、この九月五日の
声明を絶対的に強調して、過度に強調して、将来に及ぶ政策とするということは非常に危険なのではないか。
例えば、
インドが核
モラトリアムを維持しない、あるいは核政策を転換した場合には、どのような
立場を
日本はとっていくのか。例えば
核実験を行ったときに、
日本が一年後の
終了の通告を行うということは決まっておりますけれども、そこにはさまざま
条件がついております。安全保障の面を点検する、あるいは
原子力計画を点検するなどなど、
協定本文の中では考慮することに
合意しております。そうしますと、
NPTに入らない国にこういう形で進めていいのだろうかという大きな問題を持っております。
日本が
インドに対して再
処理、しかも
濃縮まで認めたことは非常に重大な問題であるということを思っております。
先ほど申し上げましたが、
民生用施設については
査察がございます、しかし、
軍事用施設については
査察がございません。では、すぐ
民生用施設でプルトニウムをつくってそれを軍事転用するのかということではなくて、
インドは
国産ウランが非常に限定されております。外国との貿易、とりわけ
ウラン輸入が開始され、
日本から
資機材が、これは非常に重要な
部分の
日本製品が必要とされておりますので、これに
インドが、
民生用では原発を動かし、再
処理を行い、
濃縮を行う。そうすると、そこは一貫して、一つのルートとして完成するわけです。ところが、
国産ウランにつきましては、
軍事用施設で
濃縮する、再
処理する、そしてさらには、現在は高速原型炉というものを、年内に完成と言われておりますけれども、それも
軍事用施設として認定されて、認定といいますか、
インドが特定しております。
このように、
協定には中止の文言が入っておりますけれども、果たして、
核実験が行われたから、さあ中止だよ、あるいは
終了だよということが現実として
可能性があるのか、一度使われてしまった
資機材をどうやって返還するのか、あるいは
インド側に返還する際には国費によって賠償するということのようですけれども、果たしてそれは現実性があるのかどうかということについては非常に疑問を持っております。
最後に、まとめて申し上げますと、この
協定は
枠外にいる
インドを入れるということが強調されているんですけれども、むしろ
日本は、これまでの戦後七十年の外交を維持するならば、やはり、
NPTに入れ、
核実験はもうしちゃだめなんだよということを
約束させるべきであり、それが最低
条件であっただろうと思われます。
特に現状の中で、
日本が、
日本からの輸出の中で再
処理あるいは
濃縮を認めるということにつきましては、
各国、今御
紹介ありましたけれども、ほかの国との
協力よりもより緩いものではございます。あるいは、印米の中では、現場に十人以内の現認団が入って確認できるということが書かれておりますけれども、
日本の
協定にはございません。
二〇〇八年に
インドは海外との
原子力関係の輸入貿易が認められました。それ以後、大規模な
開発計画が進んでおります。しかしながら、現在、まだ事業について本契約はございません。
今、もう二〇〇八年と二〇一七年の
原子力産業の、あるいは原発に関する認識というのは大きく変わっております。
核兵器禁止に関する勢いも変わっております。
今ここでこの
協定ができ、かつ、契約がうまく進み、建築工事が順調に進みましても、十年後の電力を
インドの人たちが手に入れることになる。であるならば、
日本が行うべき
協力というのは、送電ロス三〇%と言われている
インドに対してはそういう
技術を
提供する、あるいは、再生可能エネルギーを
提供していく、
インドの人たちに、より今必要な電力を確保できるようなことを進めるということではないかと思っております。
そのほか、本
協定には、
インドの
原子力賠償法の問題、住民による現地での反対運動などなど、さまざま問題はございますけれども、議員皆様には、慎重な御審議の上、ぜひとも
協定の
問題点を御
理解いただければと、重ねてお願いいたします。
ありがとうございました。(
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