○横路
委員 過去の御発言では、南京事件と従軍慰安婦の問題を扱った発言がございます。大分世の中にも間違って河野談話などを受けとめている方がいるようなのでちょっと御説明しますと、従軍慰安婦の問題というのは、かなり
日本軍もあちこち広がりましたから、それに伴ってふえているんですね。
陸軍省の課長
会議の
資料という昭和十七年、一九四二年の九月三日の
資料を見ますと、中国の北支に百カ所、中支に百四十カ所、南支に四十カ所、南方に百カ所、南海に十カ所、樺太に十カ所、合計四百カ所あると言われているんです。
問題は、強制したのかどうかということなんですが、オランダ女性慰安婦強制事件に関するバタビア臨時軍法
会議の判決とオランダ
政府の
報告書というのが出ています。これは正式な
報告書です。
オランダは、第二次大戦後、オランダやジャワのバタビアを初め十二カ所の臨時軍法
会議を開設して、
日本人及び
日本人に使用された
外国人の戦争犯罪を裁いたんですね。件数で四百四十八件、人員で千三十八人、そのうち二百三十六名が死刑判決を受けています。うち十人は減刑になっています。このうち、強姦の起訴人員が十人、売春の強制が三十人いるんですよ。オランダ
政府の
報告書は、約六十五人のオランダ女性が強制的に売春を強いられたと結論づけています。
判決文を見ますと、軍隊の
責任者は、オランダ人の入っている収容所に行って女性を引っ張り出して、そして軍の慰安婦のところに連れていって、強制的にさせているわけですよ。それの
責任者も死刑になっていますよ、これは。
だから、従軍慰安婦の問題について、強制されたことはないとか、河野談話が間違っているということはないんです。河野談話は、何も韓国のことだけを言っているわけじゃなくて、全体のことを言っている談話ですからね。それもぜひこれからよく調べて、軽率な発言をしないでください。
それから、南京事件。
南京事件は、参考になるのは、石射猪
太郎という当時の
外務省の、今で言えばアジア局長のような
立場に立った人の「外交官の一生」という中央公論文庫がございます。それから、彼の日記が国会図書館にございます。それをちょっと紹介しますよ。
南京は暮れの一三日に陥落した。わが軍のあとを追って南京に帰復した福井領事からの電信
報告、続いて上海総領事からの書面
報告が我々を慨嘆させた。南京入城の
日本軍の中国人に対する掠奪、強姦、放火、虐殺の
情報である。憲兵はいても少数で、取り締りの用をなさない。制止を試みたがために、福井領事の身辺が危いとさえ報ぜられた。
ということの話があって、一九三八年の一月六日の日記に、
上海から来信、南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る。掠奪、強姦、目もあてられぬ惨状とある。嗚呼これが皇軍か。
日本国民民心の頽廃であろう。大きな社会問題だ。
と。
南京、上海からの
報告の中で、最も目立った暴虐の首魁の一人は、元弁護士の某応召中尉であった。部下を使って宿営所に女を拉し来っては暴行を加え、悪鬼の如くふるまった。何かいえばすぐ銃剣をがちゃつかせるので、危険で近よれないらしかった。
私は三省事務局長
会議で度々陸軍側に警告し、広田
大臣からも陸軍
大臣に軍紀の粛正を要望した。軍中央部は無論
現地軍を戒めたに相違なかったが、あまりに大量な暴行なので、手のつけようもなかったのであろう、暴行者が、処分されたという話を耳にしなかった。当時南京在留の
外国人達の
組織した、国際安全
委員なるものから、
日本側に提出された
報告書には、昭和一三年一月末、数日間のでき事として、七十余件の暴虐行為が詳細に記録されていた。最も多いのは強姦、六十余歳の老婆が犯され、臨月の女も容赦されなかったという記述は、殆んど読むに耐えないものであった。その頃、参謀本部第二部長本間少将が、軍紀粛正のため
現地に
派遣されたと伝えられ、それが功を奏したのか、暴虐事件はやがて下火になっていった。
これが聖戦と呼ばれ、皇軍と呼ばれるものの姿であった。私はその当時からこの事件を南京アトロシティーズと呼びならわしていた。暴虐という漢字よりも適切な語感が出るからであった。
日本新聞は、記事差し止めのために、この同胞の鬼畜の行為に沈黙を守ったが、悪事は直ちに千里を走って海外に大センセーションを引き起こし、あらゆる非難が
日本軍に向けられた。わが民族史上、千古の汚点、知らぬは
日本国民ばかり、大衆はいわゆる赫々たる戦果を礼讃するのみであった。
というのが、担当した当時の
外務省のアジア局長の日記なんですよ。
だから、
大臣も何か南京事件にかかわる一場面について裁判にかかわられたというようなことがあったようでございますが、全体として、まあ、
人数が何人かというようなことはいろいろ
議論はあるにしても、やはり大虐殺が行われたというのは事実なんですよ。だから、そこを否定してしまったら、やはりそれは一人の国
会議員としても大事なことなので、南京事件と従軍慰安婦、きょうまでも随分発言されていますから、こういう
資料に基づいて提起をして、そのことはまた改めて、もし疑問でしたらこの本を読んでみていただきたいというように思いますが、感想はどうですか。