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内閣総理大臣(
安倍晋三君)
我が国の公的年金制度は、現役世代が負担する保険料や税によって高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、いわゆる賦課方式を基本としておりまして、少子高齢化が進む中にあっても国民の信頼を高めていくことが重要であります。
まず、年金の受給資格期間の短縮は、現在の法律では消費税率一〇%への引上げ時に行うこととされておりますが、無年金の問題は喫緊の
課題であるということから、できるだけ早期に実施すべきであると判断をし、今国会に関連法案を提出をしたところであります。
次に、現在継続
審議中の年金改革法案は、まさに将来世代の給付水準を確保するためのものであります。若い皆さんがよく言うことは、私
たち本当に年金もらえるのと、それまで大丈夫なのと、こういうことをおっしゃる方は多いわけであります。
そこで、まさに将来世代の給付水準の確保のため、
中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用を拡大をしていく、そしてまた、
中小企業で短時間労働で働く皆さんにもちゃんと年金の仕組みに入っていただけますよということ、そしてまた、国民年金の産前産後期間の保険料を免除していく、そして、年金額改定ルールの見直しを行います。そうしたことを内容として、加えて、GPIFのガバナンス強化のための組織改革などの重要な内容を盛り込んでいるわけであります。
ここで、
衆議院の方で随分
議論になったんですが、年金額改定ルールの見直しについてでありますが、実は過去に賃金がマイナスとなった際にはマクロ経済スライド調整が行われなかったわけでありまして、つまり、賃金が下がっているときにはマクロ調整、言わばずっとデフレが続いておりましたので賃金も下がる期間がずっとあったんですが、その間、本来であればこれはこれに合わせなければいけないわけでありますが、これをずっと合わせなかったわけでありまして、合わせなかったことによって、この年金財政は当然これ傷んでくるわけであります。
賃金が下がっていますから、保険料自体の徴収額もこれは下がってくるわけであります。年金が賃金ほど下がらず、年金水準が維持された結果、所得代替率が五九・三%から六二・七%に上昇した。これは、もらっている方にとってはいいわけでありますが、実力以上に所得代替率を良くしているわけであります。これは必ず将来に響いてくるのは、これはもう誰が
考えたって分かることであります。
所得代替率が上昇した分、今マクロ経済調整スライドというのをやっておりまして、物価が上がった場合、そこから、今のあれは〇・九%かな、一%上がっても、物価が一%上がっても一%上がらず、そこから〇・九%引いた段階で〇・一%しか上がらないという仕組みになっているんですが、この調整期間が、二〇二三年にこれは終わる予定だったんですが、二〇四〇年代後半まで遅れてしまったわけであります。
同時に、今の所得代替率が上がった分、将来の方々、将来受け取る方々の基礎年金の所得代替率は低下することになったわけでございます。そして、今やろうとしている改革を行わなければ、今やろうとしている改革を行わなければ、これはまた同じことが起こってしまうということでありまして、そうしますと、高齢者の皆さんと現役世代の皆さんの不公平、格差は、不公平な感はより一層強まっていくというふうになってしまうわけであります。
そこで、やっぱり年金の持続性そして公平性を担保するためには、これはいろいろ、それは私
たちだってできるだけたくさんの年金を払いたいわけでありますし、たとえ賃金が下がったとしても、賃金が下がったとしても、その下がった分は年金下げたくないですよ。しかし、それをやらないと、将来の世代と高齢者の世代の不公平が更に広がっていくということになってしまうわけでありまして、そこでこの仕組みを入れたわけでございます。
ただ、賃金が下がったときに合わせるということにならないように、先ほど申し上げましたように、しっかりとデフレから脱却をして、経済を成長させ、賃金が上がっていくという経済をつくっていきたい。必ずそうなるというわけではなくて、そうなったときにも、この年金制度の持続
可能性を確保し、かつ世代間の不公平さの拡大を防いでいるというふうに御理解をいただきたいと、このように思うわけであります。
また、この年金額改定ルールの見直しのうち、賃金に合わせた年金額の改定については年金生活者
支援給付金が施行された後の
平成三十三年度から実施されるものでありまして、来年からというふうに誤解されている方も、
衆議院での
議論の中で、もう来年から行われるのかという誤解されている方もおられますが、来年ではなくて、これは
平成三十三年から行われるものでありまして、我々はその前に消費税を一〇%に上げますから、低年金の方々には六万円の給付を行うと、これをセットで行うわけであります。
衆議院においても、
民進党さんの方からは、これはセットで行えという要望がありまして、我々は、それはセットで行いますよということを申し上げたわけでございまして、そういう仕組みになっているということは申し上げておきたいと、このように思います。
このような改革を含む二つの法案は、いずれも年金制度への信頼を高めるものでありまして、今後、早期の
審議を
お願いをしたいと思います。そして、将来にわたって所得代替率五〇%を確保して、そして高齢者世代も若い世代も安心できる年金制度を構築をしていきたいと、このように
考えております。