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内閣総理大臣(
安倍晋三君) 吉良よし子
議員に
お答えをいたします。
安倍
内閣の
経済政策について
お尋ねがありました。
安倍
内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものであります。成長し、富を生み出し、それが
国民に広く均てんされ、多くの人
たちがその成長を享受できる社会を
実現していきます。
御
指摘の
消費税率の引上げは、
社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡すとともに、国の信認を維持していくためのものです。増収分は、全額
社会保障の充実、
安定化に充てられます。
法人税の減税については、法人実効
税率を二〇%台にまで引き下げると同時に、政策減税や大
企業の
欠損金繰越控除
制度等を見直し、特に大
企業の課税ベースの拡大に取り組んできています。研究開発税制についても、利用件数を見ると、大
企業だけでなく
中小企業も含め幅広く利用されています。個人消費も、過去最高水準の
企業収益を雇用の拡大、賃金の上昇につなげることにより、
経済の好循環が生まれる中、三四半期連続で前期比プラスとなるなど、総じて見れば底堅い動きとなっています。
こうした状況を更に推し進めるため、一億総活躍社会
実現に向けた最大のチャレンジである働き方
改革を断行します。同一労働同一賃金を
実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることにより、中間層が厚みを増し、より多く消費することにつながると
考えています。今後とも、あらゆる政策を総動員し、成長と分配の好循環をつくり上げてまいります。
安心して働き、子育てもできる社会についての
お尋ねがありました。
現在、安倍
内閣は、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会の
実現に向け、
取組を進めています。
その中で、子育ての環境
整備は重要な位置を占めています。保育の質の確保を図りつつ受皿の確保を進めるとともに、保育士の離職防止や再就職支援、処遇改善を行うなど、保育人材の確保に総合的に取り組んでいます。また、働き方
改革において、子育てと仕事の両立に向け、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の
実現を進め、ライフスタイルに合わせた多様な働き方が選択できるようにしていきます。
子育てをしながら仕事を続けることができる社会をつくり出すことは、子育て世帯の所得を支えることになるのはもちろん、
日本経済の持続的成長にもつながります。成長と分配の好循環の
実現に向け、引き続き安倍
内閣の
取組を進めていきます。
労働の在り方についての
お尋ねがありました。
先般、電通の社員の方が働き過ぎによって尊い命を落とされました。こうしたことは二度と起こってはなりません。働く人の
立場に立った働き方
改革をしっかりと進めてまいります。
現在提出中の労働基準
法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働
制度を選択可能とするものです。残業代ゼロ
法案との批判は当たりません。また、昨年成立した労働者派遣
法改正法は、正社員を希望する方に道を開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方の待遇改善を図るものであり、しっかりと施行状況を注視してまいります。
長時間労働の是正については、働き方
改革実現会議において、時間外労働の上限規制の労働基準法の在り方を含め、働く人の
立場、視点に立ってきちんと
議論を進め、
年度内に具体的な働き方
改革実行計画を取りまとめ、関連の
法案を提出いたします。
保育士の配置基準と処遇改善について
お尋ねがありました。
保育士の配置基準は、児童の身体的、精神的、社会的な発達に必要な保育の水準を確保するための最低基準であり、質を確保するため適切に設定しているものと認識しています。一方で、より質の高い保育を提供するため、
平成二十七
年度から、三歳児に対して手厚い保育士の配置を行った保育園等に対して、そのために追加的に要した人件費を、
消費税財源を活用し、一定の範囲で補助しています。
保育士の処遇については、
安倍政権は、政権交代直後二・八五%相当改善し、以降、毎
年度改善に取り組み、これまで七%相当改善してきました。来
年度は更に二%相当の処遇改善を行うとともに、保育士としての技能、経験を積んだ職員について四万円程度の追加的な処遇改善を実施することとしており、継続して実施できるよう
予算編成過程でしっかり検討してまいります。
経済・財政再生計画の
改革工程表と年金
改革法案における年
金額改定
ルールの見直しについて
お尋ねがありました。
昨年末に取りまとめた
経済・財政再生計画の
改革工程表は、持続可能な
社会保障制度の構築と
財政健全化を同時に達成していくために必要であり、撤回すべきものとは
考えておりません。
年金
制度については、現役世代が負担する保険料、さらには税によって高齢者世代を支えるという仕組みで運営されています。その仕組みにおいて、今回提案している賃金に合わせた年
金額の改定の見直しは、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることで将来にわたって給付水準を確保し、世代間の公平の確保等に資するものです。
また、この見直しについては、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付金が
平成三十一年十月までにスタートした後の
平成三十三
年度から適用することとしており、現在の給付者にも十分配慮しています。これにより、年金と相まって、今まで以上に高齢者の生活を支えてまいります。したがって、高齢者に痛みを強いるや若者の不安を広げるといった御
指摘は当たらないと
考えています。
南スーダンPKOに関する
お尋ねがありました。
南スーダンは、最も新しい国連加盟国であり、独立から間もない
世界で一番若い国です。治安情勢は極めて厳しく、だからこそ、その平和と安定を図るため、
我が国を含め
世界のあらゆる地域から六十か国以上が部隊等を派遣しています。治安情勢を理由に撤退した国はありません。
武力紛争の当事者となり得る
国家に準ずる組織は存在しておらず、また、反主流派によって支配が確立されるに至った領域があるとは
考えていません。PKO参加五原則は維持されています。
自衛隊が展開している首都ジュバについても、今後の状況は楽観できず、引き続き注視する必要がありますが、現在は比較的落ち着いています。危険の伴う活動ではありますが、自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たしています。
先般の国連
報告書については、治安情勢に関する
内容は
我が国の認識と基本的に異なるものではないと
考えています。他方、
報告書の末尾に潘基文事務総長の
意見が付されており、その
内容は
報告書全体の治安情勢の
評価と一致しない部分があるため、その真意を国連に照会したところ、安保理が行動を取らなければ状況が深刻になるという趣旨であること、また、ジュバは比較的安定している、ただし引き続き情勢を注視する必要があるとの趣旨である旨、回答を得ています。なお、過去の隊員家族に対する
説明資料には誤解を招きかねない不正確な記述があったことから、既に防衛省において資料の訂正を行っています。
駆け付け警護について申し上げれば、南スーダンには現在もジュバ市内を中心に少数ながら邦人が滞在しており、邦人に不測の事態が生じる
可能性は皆無ではありません。過去、自衛隊が東ティモールや当時のザイールに派遣されていたときにも、不測の事態に直面した邦人から保護を要請されたことがありました。自衛隊は、十分な訓練もなく、任務や権限が限定された中でも邦人保護に全力を尽くしてくれました。
実際の現場においては、自衛隊が近くにいて、助ける能力があるにもかかわらず何もしないというわけにはいかないのが現実です。現実を直視しなければなりません。それが私
たち政治家の責任でもあります。
しかし、これまでは法
制度がないため、そのしわ寄せは結果として現場の自衛隊員に押し付けられてきました。本来あってはならないことであります。駆け付け警護はリスクを伴う任務です。しかし、万が一にも邦人に不測の事態があり得る以上、あらかじめ必要な任務と権限を付与し、事前に十分な訓練を行った上でしっかりと態勢を整えた方が、邦人の安全に資するだけではなく、自衛隊のリスクの低減に資する面もあると
考えます。
また、南スーダンでは、
一つの宿営地を自衛隊だけでなく複数の国の部隊が活動拠点としています。宿営地の共同防護の権限付与により、平素から
他国と共に訓練を行うことができ、緊急の場合の
他国との
意思疎通や協力も円滑になります。これにより、宿営地全体としての安全性を高めることになり、自衛隊に対するリスクの低減に資するものと
考えています。
自衛隊による貢献に対しては、南スーダンのキール大統領から、また
政府内で反主流派を代表するタバン・デン第一副大統領からも、感謝の意が、言葉が示されており、国連を始め
国際社会からも高い
評価を受けています。国連の旗の下、
国際社会とともに力を合わせている自衛隊の活動が殺し殺される活動であるかのごとくの主張は、全く不適切なものであります。
政府としては、今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視してまいります。その上で、自衛隊の安全を確保し、
意義のある活動が困難であると
判断する場合には、撤収をちゅうちょすることはありません。この点は明確に申し上げておきたいと思います。
憲
法改正について
お尋ねがありました。
現行憲法が成立して七十年が
たちました。憲法は国の未来そして理想の姿を語るものであり、二十一世紀の理想の姿を私
たち自身の手で描いていくという精神が、
日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと信じております。
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった現行憲法の基本原理は堅持しつつ、その上で必要な改正は行うべきものと
考えておりますが、どの条文をどのように変えるかは
国会や
国民的な
議論が深まる中で収れんしていくものと
考えております。(
拍手)
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