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2016-11-25 第192回国会 参議院 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十八年十一月二十五日(金曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  十一月二十四日     辞任         補欠選任      平野 達男君     自見はなこ君      福島みずほ君     森 ゆうこ君  十一月二十五日     辞任         補欠選任      高野光二郎君     石田 昌宏君      藤木 眞也君     宮島 喜文君      藤末 健三君     舟山 康江君      石川 博崇君    佐々木さやか君      田村 智子君     武田 良介君      高木かおり君     石井 苗子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林  芳正君     理 事                 石井 準一君                 二之湯武史君                 福岡 資麿君                 三宅 伸吾君                 山田 修路君                 小川 勝也君                 大野 元裕君                 浜田 昌良君                 紙  智子君     委 員                 石田 昌宏君                 古賀友一郎君                 佐藤  啓君                 佐藤 正久君                 自見はなこ君                 進藤金日子君                 高野光二郎君                 高橋 克法君                 滝波 宏文君                 中西  哲君                 中西 祐介君                 藤木 眞也君                 堀井  巌君                 舞立 昇治君                 松川 るい君                 宮島 喜文君                 山田 俊男君                 吉川ゆうみ君                 渡邉 美樹君                 相原久美子君                 石上 俊雄君                 江崎  孝君                 田名部匡代君                 徳永 エリ君                 浜口  誠君                 舟山 康江君                 河野 義博君                 熊野 正士君                佐々木さやか君                 平木 大作君                 大門実紀史君                 武田 良介君                 石井 苗子君                 儀間 光男君                 森 ゆうこ君                 松沢 成文君                 中野 正志君    事務局側        常任委員会専門        員        藤田 昌三君        常任委員会専門        員        宇佐美正行君        常任委員会専門        員        大川 昭隆君    公述人        一般社団法人日        本経済団体連合        会常務理事    根本 勝則君        NPO法人アジ        ア太平洋資料セ        ンター代表理事  内田 聖子君        横浜国立大学名        誉教授      萩原伸次郎君        医師       住江 憲勇君     ─────────────   本日の会議に付した案件環太平洋パートナーシップ協定締結について  承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、  第百九十二回国会衆議院送付) ○環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関  係法律整備に関する法律案(第百九十回国会  内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 林芳正

    委員長林芳正君) ただいまから環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会公聴会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、福島みずほ君及び平野達男君が委員辞任され、その補欠として森ゆうこ君及び自見はなこ君が選任されました。  また、本日、田村智子君、石川博崇君、高木かおり君及び藤末健三君が委員辞任され、その補欠として武田良介君、佐々木さやか君、石井苗子君及び舟山康江君が選任されました。     ─────────────
  3. 林芳正

    委員長林芳正君) 本日は、環太平洋パートナーシップ協定締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定締結に伴う関係法律整備に関する法律案の両案件につきまして、四名の公述人方々から御意見を伺います。  御出席いただいております公述人は、一般社団法人日本経済団体連合会常務理事根本勝則君、NPO法人アジア太平洋資料センター代表理事内田聖子君、横浜国立大学名誉教授萩原伸次郎君及び医師住江憲勇君でございます。  この際、公述人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、公述人方々からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをください。  なお、公述人の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず根本公述人にお願いいたします。根本公述人
  4. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 経団連常務理事根本でございます。  本日、このように意見陳述機会を与えていただきましたことに、まずもって感謝を申し上げます。  TPPをめぐりましては各国に様々な動きがございますけれども、こうした時期であるからこそ日本がリーダーシップを取るべきであるという立場から意見を申し述べさせていただきます。  経団連では、昨年の一月、二〇三〇年までに日本が目指すべき国家像を描きました将来ビジョン、「豊かで活力ある日本」の再生、これを公表したところでございます。天然資源に乏しく、少子化高齢化による労働人口の減少に直面する我が国でございますけれども、この再生の大きな鍵を握っているのはイノベーションとグローバリゼーションであるというのが私どもビジョンが打ち出しているメッセージでございます。  いかにしてグローバル化を進め、海外活力成長力を取り込むのか。ビジョンでは、二〇二〇年までにEPA相手国我が国貿易総額に占める割合を八〇%程度にまで引き上げ、二〇三〇年までにそうしたEPAの成果を取り込んだ高水準の多角的自由貿易投資体制を確立する、こうした目標を掲げたところでございます。  そうした目標を達成するために直ちに取り組むべき課題の一つとして掲げましたのが、TPP協定早期実現でございました。経団連は、TPPを始めとする経済連携協定推進を、WTO中心とする多角的な自由貿易体制維持強化と並びます貿易投資自由化のための車の両輪と考えて取り組んでまいりました。現実には、WTOドーハ・ラウンドがなかなか答えを出せない中にありまして、各国ともEPAネットワーク拡大に力を入れておりまして、我が国国際競争でこれ以上不利な立場に置かれないためにはEPAの一層の推進が急務と考えるところでございます。  しかしながら、これまでに我が国締結いたしましたEPA相手国貿易総額に占める割合、これは約二三%にとどまっているところでございます。自動車、エレクトロニクスといった基幹産業において我が国企業と激しい競争を行っている韓国の貿易総額に占めるEPA相手国割合は六七%であり、大きな差がございます。TPP協定実現すれば、これが約四〇%となり、約三〇%のEU、三八%の中国を超え、米国の四七%に近づくことになります。  我が国産業空洞化を防ぎ、投資先としての魅力を高め、本格的かつ持続的な成長軌道に乗せるために不可欠であることがお分かりいただけるのではないかというふうに考えるところでございます。TPP協定の速やかな承認発効への努力を引き続きお願いするゆえんでございます。  経団連では、政府部内でTPP交渉への参加の検討が始まりました二〇一〇年から、一貫して協定早期実現を強く働きかけてまいりました。二〇一〇年三月に米国豪州を含む八か国が交渉を開始するに及んで、その直後の六月には交渉参加経団連として提言もさせていただいているところでございます。結局、我が国交渉参加は二〇一三年七月まで待たなければなりませんでしたけれども、この間、様々な誤解や根拠のない懸念が広まりました。しかしながら、交渉参加後は広く情報提供を行う機会を設けるなど、政府民間双方において努力した結果、そうした誤解懸念はかなり払拭できたのではないかというふうに考えているところでございます。  我が国交渉参加から昨年十月の大筋合意までの二年余り経団連では、協定に盛り込むべき具体的な要望を政府提出をさせていただく一方、内外の経済団体連携をいたしまして共同提言を取りまとめ、各国政府に働きかける等の活動を行ってまいったところでございます。  また、交渉会合が開催される現地に代表団を派遣いたしまして、交渉推進を働きかけてまいりました。その一環として、交渉が大詰めを迎えました昨年の夏から秋にかけての閣僚会合の際には、経団連副会長を始め幹部が現地入りし、各国経済界とも連携しながら歴史的な合意を後押ししてきたと考えております。  経済界は本当にTPP協定実現を望んでいるのか、余りそういう声を聞かないという御批判があるとすれば、専ら私どもPR不足が原因でありまして、この機会に改めて経済界から見た協定意義について続いて御説明をさせていただきたいと存じます。  協定意義は、大きく分けて経済的な意義と戦略的な意義の二つがあると考えております。  まず、経済的な意義についてでございますが、三点指摘をさせていただきたいと存じます。  第一に、世界のGDPの約四〇%、八億人の自由で公正かつ巨大な市場が誕生するということでございます。この市場活力を取り込むことで、政府、世界銀行、民間の研究所、それぞれの試算によりますと、我が国GDPは約二・五%から二・七%押し上げられるという試算がございます。  第二に、成長著しいアジア太平洋地域に高度なバリューチェーンを構築することを容易にする制度インフラ、これを獲得できるということでございます。  例えば、基幹部品我が国生産し、それを東南アジアにおいて東アジアで生産された部品と合わせて組立てを行い、完成品米国で販売するといった水平分業がビジネスの現場では進んでいるところでございます。TPP協定では、こうした複数の国にまたがって作られる製品については、累積原産地規則の下で、言わばメード・イン・TPPとして認定することによって、関税の引下げ、撤廃のメリットを享受することができるようになります。その結果、高付加価値基幹部品について日本国内工場での生産維持することができますし、日本にとどまりながらグローバル化メリットを享受することも可能となりますので、日本国内への投資を促し、雇用を生み出すことにもつながると考えております。実際に会員企業からは、TPP協定は、新技術、新製品の開発を担う国内マザー工場維持強化先端技術海外流出の防止、国内雇用維持につながるとの期待を耳にしているところでございます。  第三に、TPP貿易投資に関する広範かつ高度な水準のグローバルなルール作りをリードする二十一世紀型の画期的な協定であるというところでございます。  例えば、電子商取引に関するチャプターでは、国境を越える情報の移転の確保、サーバーなどコンピューター関連設備自国設置を求めることの禁止などが盛り込まれております。これによりまして、映画やゲームなどのコンテンツをインターネットで提供するサービスなどを行いやすくなるものと考えているところでございます。こうした時代に即したルールTPP協定に盛り込まれたことによりまして、他のEPA交渉サービス貿易に関する協定交渉にも既に波及効果をもたらしていると感じておりまして、TPP協定実現すればグローバルなルール作りが更に加速するということが期待できると考えます。  また、新興国の一部においてはコンピューター関連設備自国への設置を要求する国内法を制定する動きが見られますが、これに対して、最近も日米欧豪州、カナダなど、四十以上の経済団体が結束して反対の声を上げております。そうした結束を容易にしている背景にも、TPP協定における合意があるものというふうに感じているところでございます。  以上申し上げましたような経済的な意義を有するTPP協定を積極的に活用し我が国経済成長軌道に乗せることこそ、成長戦略の要であるというふうに考えます。そのため、経団連では、大企業のみならず、中小企業農業生産法人労働組合といった多様な関係者の御参加を得まして、TPP協定の活用を促すシンポジウムを開催するなどの取組も行ってきたところでございます。また、TPP協定によりましてアジア太平洋地域に自由で開かれた予見可能性の高い経済圏実現することは、昨今の反グローバル化保護主義の伝播を断ち切るためにも必要であるというふうに考えております。  次に、TPP協定の戦略的な意義について申し述べます。  経団連としては、TPP協定を、自由、民主主義、法の支配、市場経済といった共通の価値観、原則に基づく経済秩序づくり一環であると捉えております。また、アジア太平洋地域安全保障において重要な役割を果たしている米国日本豪州を含む経済連携ネットワークがつくられることは、この地域の安定と繁栄にも大きく貢献するものと考えております。  ベトナムグエン・クオック・クオン大使は、経団連機関誌への寄稿の中で、TPPへの参加により太平洋の両側の国々との連携が深まり、この地域の重要なパートナーとベトナムとの長期的なパートナーシップが構築され、利益を共有できるようになると戦略的な意義を語っておられるところでございます。  発言最後に、中小企業農業にも一言触れさせていただきたいと存じます。  先ほど申し上げましたTPP協定の経済的な意義は、大企業ばかりでなく、中小企業にも当てはまるものと考えております。実際、経団連シンポジウム参加され、既にベトナムで事業を行っておられる中小企業の方からは、TPP協定中小企業にとってフォローの風であるという御発言をいただきました。先ほど申し上げました経済的な意義のほか、税関手続等貿易円滑化のための規定は、中小企業輸出拡大に貢献するものと考えているところでございます。  農業につきましては、粘り強い交渉の結果、日本からの農産品輸出には関税が掛からなくなる一方、我が国は二割弱の農産品について関税維持することとなり、我が国の事情を踏まえた結果になったのではないかというふうに考えております。今から力を注ぐべきは輸出海外展開強化であるというふうに考えます。この点、経団連といたしましては、去る九月に提言を取りまとめ、公表しておりますけれども、今後は、農業界経済界との連携において、輸出海外展開にもつながるプロジェクトの創設、創生、形成にも取り組んでいきたいと考えているところでございます。  今週初め、トランプ次期大統領は、米国民向けビデオメッセージで、大統領就任初日TPP協定からの離脱に言及をされたと聞いております。残念と言わざるを得ませんけれども、この点につきましては、余り予断を持たず、まずは我が国を含めた参加各国国内手続を進めていくことが将来への道筋を開く上で重要であると考えます。経済界としても、TPPの経済的な意義のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に重要な役割を果たすという戦略的な意義機会あるごとに訴えてまいりたいと思います。  私からは以上でございます。ありがとうございました。
  5. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、内田公述人にお願いいたします。内田公述人
  6. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 私は、アジア太平洋資料センターと申しますNPO団体代表をしております内田と申します。  私たちの組織は日本に基盤を置く国際NGOですが、八〇年代以降の新自由主義の促進や自由貿易投資自由化推進がもたらした負の側面について、途上国先進国市民社会とともに調査研究や発信、政策提言を続けてきました。TPP以前のWTOですとか多国間投資協定、現在ではRCEPTiSA、新サービス貿易協定等々のメガFTAにも着目をしております。  今TPPが直面している状況というのは、まさに過去三十年の自由貿易推進の歴史の失敗を如実に表していると指摘したいと思います。その意味で、私たちは今まさに、今後の国際貿易の在り方、これを大転換を迫られているという歴史的な岐路に立っている、まずこの大きな認識が必要かと思います。  TPPだけではなく、アメリカEU自由貿易協定、TTIP、それからRCEPも、そしてTiSAも、非常に交渉は難航し、進んでおりません。日本EU経済連携協定も同じです。  これは、例えば先日のイギリスのEU離脱ですとか、つい最近のアメリカの選挙の結果、トランプ氏が選ばれる、こういうところにも人々の政治的な意思として、自由貿易のやり方、ルールフォーマットそのものがもう立ち行かないと、これを示している一つの証左であろうというふうに思っております。  今日はTPPの中身の問題点を十分に指摘をしたいと思っておりますが、やはりその前に重要な点を申し上げたいと思います。それは、なぜ今この国会の中でTPP協定関連法案が粛々と議論され続けているのかという点です。既に衆議院の段階からもそうでしたが、日本が急いでTPPをこの国会の中で批准をするという合理的な理由は既にありません。  私のレジュメ等々見ていただきたいんですが、外的な要因としては、アメリカ大統領選の結果であるとか、それからオバマ大統領残存期間、レームダック、ここでの承認というのもほぼ可能性はゼロです。伴いまして、幾つかの国では、この大統領選の結果を踏まえ、当面は状況を静観するというような態度を取り始めた国もあります。  今日、マレーシアムスタパ大臣が出した声明というのも資料として付けておりますが、ここには、第六番目には、マレーシア米国次期政権の下でのTPPの行方を見極めていく、米国TPP批准しないと決定した場合、ほかの加盟国とともに次の方針について議論する。つまり、静観する、急がないという方針です。という外的な要因というのは幾つかあります。  ただ、これ、アメリカがどうとか、ほかの国がどうとか、そういうことで国会が左右されていいのかという論もあると思います。そのとおりと思います。  では、日本国会でどうなのかということは、四月の国会も含めて、そして九月からの国会も含めて、この衆参の審議、私もできる限り見ておりますが、この審議を通じて見えてきた様々な問題があると思います。  一つは、TPPというのは大変膨大な領域をカバーする協定です。協定文だけでも八千ページ以上のページ数、それから分野も二十一分野にも至ります。この国会で、やはり農業関税問題が中心になっておりまして、十分に全ての分野が熟議されたとは到底思えません。  それから、メリットがあるというようなこともいま一つ具体的ではなく、そして国民に行き渡るようなメリットがどこにあるのかという点が十分にまだ明らかになっておりません。  そして、問題点の方は野党の議員の方が次々と質問されておりますが、これは秘密交渉で、交渉プロセスは今も開示されない、話せないという壁にぶつかって、十分にその経過が分からないものですから議論が深まらないんですね。  そして四点目は、やはりこの審議を通じて、TPPに入る、批准するかどうかという以前に、既に今の日本政府の例えば食の安心、安全に関する規制の状況だとかというのは非常に問題があるということが次々と指摘されてもおります。というように、とてもこのような議論進行状況では、いいも悪いも国民的な理解を得られていないというふうに思います。  そして五点目としては、さきの衆議院TPP特別委員会では強行採決というものが行われました。これは国民から見ても到底受け入れられない非民主的な決定だったと思っております。そして、こうした状況を受けて、世論は日に日にTPPについて疑念と不安を高めております。審議をすればするほど不安が高まる、分からないという方が多くなっている。そして、慎重審議を求める声というものも各種の世論調査で増えております。  そして最後に、トランプ氏の百日計画の発言、つい先日ありました。これを受けて、レジュメの七番に書きましたが、安倍首相自身成長戦略を練り直さなければいけない事態にも至ったというような報道もあるほどです。これは確かにそうなんだろうと思います。アメリカ決定日本も影響せざるを得ませんから、成長戦略全体を練り直さざるを得ないというところまで来ているわけです。  つまり、これまでは、TPP成長するとか海外成長を取り込むとかグローバルマーケット、いろんなことが言われていましたが、TPP成長戦略の柱として位置付けられていました。その柱が発効するかどうかがほぼ絶望視をされているという中で何もなかったかのように批准を進めていいのかということが、これは私だけではなくて多くの国民の方が思っていると思います。ひょっとすると、政府・与党の議員の皆さんの中にも、なぜ今これをやるのかとどこかで思っていらっしゃる方がいるのではないでしょうか。  次の項で申しますが、ですから、私は批准というプロセスを一旦停止するしかないと思っております。これは承認プロセスを全て破棄せよということではなくて、マレーシアが取った態度のように、一度立ち止まって静観をする、相手の出方を見ると。アメリカ市民国民でさえ、今、新大統領に対してはこういうふうに言っています。シー・アンド・ウエートです。黙って見詰めて次の体制を取ろうと。アメリカ国民ですらそう言っているという状況の中で、どうして日本国会審議を進めるのかという問題です。  ですから、私はまず、今、参議院で公聴会を今日開いていただいているわけなんですけれども、やはり即座にこの審議を止めるということを御提案したいというのが一番の今日の強い思いです。  なぜそういうことを言うかというと、このTPP発効がほぼ絶望視されていく中で、実は既に日本の中では様々な形で予算が執行されていたり、それからTPP発効を見据えて、つまりTPPを前提として様々な対策、それから例えば中小企業に対する投資をどんどん海外でやろうというような推進が各地で行われて、実際にそれを実行している企業さんなんかもあるわけです。あるいは、農家さんで、私全国歩いていろんな方聞くんですけれどもTPP発効してしまえばもう農業続けられないと、TPPに背中を押されて農業やめましたという方も多数おられます。等々、これ実はもう影響というのは既に実際上起こっていてということを鑑みますと、これ以上こうした影響、TPP発効するからという名の下に、これ以上の規制緩和や一人一人の方の生業や人生の選択にまで関わっているという事態を放置することはできないと思っております。  予算に関しては、東京新聞が一昨日報道いたしましたが、既にTPP対策大綱という下に予算が組まれています、一兆千九百六億円。このうち二〇一五年のものは既に執行されておりますし、二〇一六年のものも相当程度執行されているというふうに聞いています。  他国はどうなのかといいますと、ニュージーランドやオーストラリア、それからアメリカは当然そうですが、発効もしていない、それから批准もしていないという状態の中でTPP対策の予算を組んで執行しているような国などはありません。当然だと思います。その意味で、日本は極めて異様な、異常な状況をこの間つくってきたと言わざるを得ないと思います。  そして、いろいろと言いたいこともあるんですが端折っていきますけれども、日米並行協議の問題を私はやはりこのTPP発効絶望視される中で非常に重要な危機として感じております。  御存じのとおり、日米並行協議というのは、日本交渉に正式参加する前の二〇一三年四月にアメリカとの間で始めた交渉です。これは日本参加するための前払あるいは入場料としてアメリカからの要求に相当程度応じた一方的で片務的な交渉だということは、これはTPP推進している有識者の方でさえこのような御指摘をしております。  対象となる分野は非常に多岐にわたっております。自動車から、それから食の安心、安全、急送便、知財、投資等々、非常に多岐です。ところが、この全容はいま一つ明らかになっておりません。政府の公表している文書というのは手に入れておりますが、基本的には全部が開示されていないんだろうと思っております。  問題は、これが既に日本国内においては幾つかの分野では実現されてしまっているということです。私のレジュメの四ページ目辺りにいろいろと書いておりますが、例えば保険分野では、アフラックという米国の外資系企業が、かんぽ生命の新規参入を認めないということを決定して、そして日本の郵便局のネットワークを使って販売できるというようなことも実際に行われております。それから、食の安心、安全に関しても、既に規制緩和というのが、これ、ここに挙げているのは米国の要求ですけれども、進んでおります。  そして、その全容が分からない中で私たちもいろいろと調べているんですけれども一つ大変気になる記述が、この「ドキュメントTPP交渉」という、これは日米の交渉それからTPPに関わった朝日新聞の鯨岡仁さんという方が最近出された本ですけれども、日米並行協議についてこのように書いております。二〇一三年に始まった並行協議、途中端折りますけれどもアメリカではカトラーさんというUSTR代表代行が来て、それから日本では外務省の経済外交担当の森さんという方が交渉していたんですが、ちょっとくだりを読みます。  カトラーは、日本側の外務省経済外交担当大使、森健良に要求リストを差し出した。その内容は、米韓FTAに盛り込まれたものに似た、法外なものであった。日本側は、TPP交渉に入る前の事前協議で、米国の自動車の関税撤廃をTPP交渉で最も遅いものとそろえるという条件をのまされた等々。いろいろと続くんですけれども、そして一番重要なのはこの一文です。しかも、カトラーは丁寧に、日本の法改正リストまでつくり、森に手渡したというふうに書いてあります。  こういう事実を国民は少なくとも聞いておりません。国会議員方々も、こういうリストを作られて、法律の改正リストを突き付けられたということを御存じなのかどうか私は分かりません。ですが、こういうところにまでTPPと並行する協議の中でかなり攻められてきているという事実があります。  もう時間がないのでやめますけれども、この日米並行協議というのはそもそもTPPと並行して始まったものであり、政府の見解としては、日米並行協議はTPPが成立しなければ無効となる、意味を成さない、これが従来の説明でした。つまり、既に、TPP発効してもいない、批准もしていない中で、実際上私たちの社会というのは変えられてきているわけですね。あるいは、水面下でいろいろなことが攻められているわけですね。  発効しなかったら、じゃ、どうなるのか。それは当然、何もなかった状態に戻していただかなければ困りますという話になっていきます。この辺りが全く不明瞭でよく分からないという領域なんですね。ですから、TPPの行方がどうなるか分かりませんけれども、私は冷静に、発効しないときにこれらの責任をどういうふうに取るのか、そして原状復帰をどういうふうにして、そして次の体制にどうやって臨むのかということこそが、今、日本政府、与野党を問わず取り組むべきことであろうと思っております。  その他、中小企業へのメリットTPPではやはりなく、むしろ打撃になるというお話もしたいと思っておりましたし、それからISD条項、これが大変私ども懸念している分野であります。こういうお話もしたいんですが、時間になりましたので、できれば後の御質問でいただければ、詳細を御説明したいと思います。  最後に、私のレジュメ最後の部分をちょっと見ていただきたいと思うんですけれども、冒頭に申しました、今何が問われているのかという点です。  今ほど、各国、いろんな地域でこの貿易投資というのが主要な政治課題になっているという時代はないと思います。非常に、アメリカを見れば分かるように、政治的な課題に貿易がなると。これはなぜかというと、これは冒頭申し上げたように、この三十年の自由貿易の歴史というものが、確かに大企業は多大な利益を得ています。租税回避等しながら肥え太っていったということがあります。しかし、問題は、それが人々に還元をされないということ。とりわけ日本では、賃金は九七年度以降上がっておりません。企業はもうけるんですが、人々は豊かになっていないと。格差が広がっている、あるいは地域間格差というのも広がっています。大都市に集中しているんですね、投資も、利益を蓄積していくのも。これは世界の各地で起こっている現象です。  このことの矛盾が露呈しているのがアメリカでの選挙の結果であります。たくさんの報道にありましたが、アメリカの地方都市で地域が荒廃して、仕事を失って、ラストベルトと言われているところですね、白人の労働者の人が絶望をしてトランプさんに投票すると。これはコミュニティーももうぼろぼろですよ。仕事もない。私はこの光景を、日本の報道を見ると、もしかしたら日本の近未来を表しているんじゃないかというような恐怖すら思います。  ですから、今どういう貿易が必要かという意味で問われているのは……
  7. 林芳正

    委員長林芳正君) 内田公述人、そろそろおまとめいただけますか。
  8. 内田聖子

    公述人内田聖子君) はい、終わります。  大企業投資家だけが利益を得る仕組みではなくて、どうやって公平な分配、それから地域再生ができるか、こういう貿易の在り方をきちんと議論をしていくと。これは、国際的な市民社会それから国連や様々な専門家の間での共通のテーマに既になっているという意味では、日本も何とかそこにきちんとキャッチアップをして貢献をする、市民社会もそれから国会議員の皆さんも含めて、そういう意識で是非努力を私どももしていきたいと思っております。  時間が遅くなって済みません。以上です。
  9. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、萩原公述人にお願いいたします。萩原公述人
  10. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 横浜国立大学の萩原でございます。  去る十一月八日の米国大統領選挙で、共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏が次期大統領に選出されました。環太平洋経済連携協定から離脱するという、これが明らかになりました。一月二十日に就任式がありますが、そのときに発表するということですので、最も重要な政策課題というふうにしているわけであります。  また、オバマ政権は、十一月八日から翌年新政権までの連邦議会、一般にレームダックセッションと言われていますが、そこでのTPP批准を強く要請しておりましたが、下院議長のポール・ライアン氏あるいはマコネル上院の院内総務、こういう方の賛成を得られず、オバマ大統領TPP批准を諦めたということでございます。  したがいまして、昨年の十月五日に大筋合意を得ましたTPP協定発効できないということになります。米国は原署名国GDPのほぼ六〇・三%を占めますので、米国協定から離脱しますと発効条件の八五%以上というものに達しませんので、この協定は成立いたしません。歴史的なごみ箱に入れられたと、こういう表現もされているわけであります。  したがいまして、この国会でのTPP審議意義というのは基本的に私は崩壊しているというふうに考えますが、政府・与党はあくまで今国会で成立をということでございますので、一国民立場からこのTPP協定について意見を述べさせていただきたいと思います。  経済政策というのは、国民大多数の経済繁栄と安定を目的に策定されると私は考えております。経済利害というのは当然ながら経済的立場によって異なります。ですから、その政策実施によっていかなる人が利益を獲得し、いかなる人が不利益を被るのか、それを比較考量して、一部の人々のみが利益を得る、あるいは多くの人が利益を得ないという政策は採用すべきではありません。よく国益という言葉が言われますが、それは立場の違いによって異なるわけでございまして、政策を実行していく人たちは大局的立場から判断することが求められているわけであります。  トランプ次期米国大統領TPP離脱表明をしたというのは、雇用の喪失、賃金下落という事態を招くTPP米国の政策として間違っていると、そういう判断を下したからであります。代わって、トランプ次期大統領は、米国は公平な二国間貿易協定を進めると明言いたしました。この貿易政策というのは我が国に対してどういう影響があるかというのは、今日のテーマではございませんので差し控えます。本日は、現在、政府・与党が成立を急いでおりますTPP協定、これが対象になるわけでありまして、そもそもこのTPPというのは何なのかということをやはりきちんと押さえることが私は必要だというふうに思います。  言うまでもなく、このTPP協定というのは三十章から成る膨大なものでありまして、内閣官房のTPP政府対策本部がおまとめになりましたTPP協定意義というのを読みますと、その本質がよく見えてまいります。二十一世紀型の新たなルールを構築する、TPPは、物の関税だけでなく、サービス投資自由化を進め、さらに知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い二十一世紀型のルールを構築するものと、これが一つ。それから、成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリューチェーンをつくり出す、域内の人、物、資本、情報の往来が活発化し、この地域を世界で最も豊かな地域にすると。これは根本公述人が述べられたことと重なるわけでございますが。  ここから見えてくることは、TPP協定によって、海外進出を図る多国籍企業は国境を越える統合を円滑にいたしまして、国内市場を開放する継ぎ目のないバリューチェーン、まあサプライチェーンといいますが、そういうものを形成して、生産の効率性を高め、企業利益をグローバルに高めるということになっていきます。  TPP推進する方は、自由貿易というのは、生産性を高め、イノベーションを引き起こす、そして輸出増大による高賃金職の創出につながると、こういうふうに言うわけでありますが、こうした貿易効果というのは既に過去のものになっております。企業が原材料から完成品まで国内において行って輸出を増加していると、こういう時代の話でございまして、確かに日本の高度成長時代は自由貿易輸出の増進、雇用の増進につながりました。しかし、今日の多国籍企業の時代では、国境を越えて企業は利潤追求のための効率的なバリューチェーン、サプライチェーンを形成しますから、自由貿易の促進というのは必ずしも雇用の増大にはつながりません。  現在、米国のAFL・CIO、TPP批准反対を主張しておりますし、次期大統領ドナルド・トランプ氏がその声に耳を傾け、TPP離脱を行おうとしている背景、これは、一九九四年の北米自由貿易協定によって米国内の雇用が失われ、一九九〇年代の後半、IT革命による景気高揚にもかかわらず労働賃金の上昇にはつながらなかった、こういう苦い経験を踏まえて、TPPはそのアジア太平洋版であると言っていることが重要なポイントになってきます。  TPP協定が多国籍企業本位の国際連携協定であるということを示す事実は事欠くことがございませんけれども、例えば第三章の原産地規則及び原産地手続を定めた箇所を検討しますと、それが非常に明らかになります。ここでは、輸入される産品につきまして、関税の撤廃、引下げの関税上の特恵待遇の対象となるTPP域内の原産品として認められるための要件、そして特恵待遇を受けるための証明手続というのが定められておりますが、そして、国境を越えるバリューチェーンの観点からこの箇所の規定を見てみますと、複数の締約国におきまして、付加価値、加工工程の足し上げによって原産地を説明する、つまり完全累積制度ということでございまして、これは明確に多国籍企業が国境を越えるバリューチェーンを形成する、それを促進するということになります。  なぜかと申しますと、一般の原産地規則というのは付加価値方式でありますから、当然、当該国の付加価値のみが輸出の場合にカウントされるわけでございますが、累積制度を取りますと、当該国のみならず、輸入してくる先の生産された部品、中間財の付加価値も原産品としてカウントされますから、コストダウンのバリューチェーンというのを締約国内で自由に形成するということができるようになります。  したがいまして、自由貿易による輸出促進が雇用を増大させるというふうによく言われますけれども、必ずしもそうなる保証はどこにもないということであります。多国籍企業にしてみれば、賃金が高ければ、そうした地域を避けまして、締約国内のどこでも自由に企業活動ができる、他企業との取引も可能になるという、そういうものでございます。  第九章の投資におきましても、さらに、TPP協定は多国籍企業が締約国内のどこでも自由に企業活動ができるように様々な仕掛けを用意しているということがございます。投資しようとする締約国とそうでない他の国を差別してはいけませんし、一旦企業が設立されればその国の企業と同じように処遇すべきであるというそういう、外資系企業では差別してはならないとか、あるいはローカルコンテントの要求、技術移転の要求をしてはならないとか、様々なことがそこで定められております。  つまり、効率的なバリューチェーンを形成するということがこのTPPの目的であるということになりますので、言わばそうした様々な現地の企業の要望といいますか、そういうものが無視されて、多国籍企業本位の言わばサプライチェーン、バリューチェーンが形成されるということが大変大きな問題でございます。  そして、特にISDSという、これはよく言われていますので、ここで時間も限られていますので申し上げることを差し控えますけれども、そういう問題もございます。  そして、言うまでもなく、このTPP協定の大変大きな問題は、農産物におけるところの関税が、確かに一部では守られておりますけれども、それが中長期的には限りなくゼロに近づくという、そういうことが大変大きな問題になっているわけでございます。  これは、一般的に農業の問題であるというふうに考えられております。確かにそのとおりでありまして、こうした関税撤廃であるとか無関税枠が拡大していくということは、言わば日本農業に壊滅的な打撃を与えるということと同時に、食料の自給率が低下する、あるいはそれに伴って地域経済の崩壊というものが引き起こされるという可能性が出てくるわけでございます。  TPP推進する方は、関税撤廃による輸入製品の価格が低下して消費者が恩恵を被るというようなことを主張されますが、締約国から安い農産品や食品が日本に大量に入ってくるということになりますと、確実に日本の賃金は低下の傾向をたどるということになります。賃金は基本的に生活費から成り立っているということを忘れてはならないということであります。農産物の約八割が無関税日本に入ってくるということになりますと、当然、食料品価格の低下と生活費の低下と賃金削減、こういうような事態になってきますと、日本経済のデフレと言われる状況、これは解消するどころか、より深刻な事態になるということが懸念されるわけであります。  更なる賃金低下、内需の落ち込み、デフレの進行と、これは魔のスパイラルと言われておりますが、こうした事態がTPPによって引き起こされるという可能性を否定することはできません。日本銀行が必死になって金融緩和政策をして、デフレを要するに物価上昇という方に持っていこうという政策を取っていますが、実体経済が停滞している以上、それはなかなか難しいということを考えなければなりません。  したがいまして、安倍首相も、賃金を上げる、日本経済を活性化したいというふうにおっしゃっているわけですから、そういう安倍首相の考えを実現するということを考えれば、まさにこのTPPから離脱することこそが、日本のそうした賃金、そして経済、地域の底上げということになる、それをやはり是非考えていただきたいということでございます。  したがいまして、多国籍企業、あるいは海外進出を図ろうとする一部の中小企業の利益には確かに私はTPPはなると思います。これはまさにそのとおりであります。しかし、TPP協定は、多くの労働者、それから農業者、それから中小企業の方、消費者、地域住民、そういう言わば層との矛盾というのを大変深くするということになります。したがいまして、私は、今国会でこのTPP協定批准するということに対して反対いたしたいということが私の結論でございます。  以上です。
  11. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、住江公述人にお願いいたします。住江公述人
  12. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) まず、こういう陳述の機会を与えていただいたことに厚く感謝を申し上げます。  私は、全国保険医団体連合会と申しまして、地域の第一線の医療機関で働く保険医の医科、歯科合わせて十万五千名を擁する団体の会長としてやらせていただいております。そういう立場意見陳述させていただきます。  衆議院での強行採決に抗議し、今国会での承認批准を行わないことを求めます。  政府・与党は、アメリカ大統領選挙の結果など情勢の変化にもかかわらず、また、徹底審議を求める多くの国民の声を無視してTPP協定承認案及び関連法案衆議院での採決を強行し、参議院に送付されました。これは、情報開示と国民的な議論を求めた国会決議にも反するものでございます。私たちは、TPP協定内容の十分な開示と臨時国会での徹底的な審議がなされないまま今国会承認批准されることは断じて許されないものと考えております。協定上、今以上の情報開示は困難というならば、そもそもそんな貿易交渉は二十一世紀の今のこの世界では認められることはないと思います。  そもそも貿易交渉の在り方とは、相手国と相互に事情、実情を真摯にしんしゃくし合い、対等、平等、互恵関係を構築することにあると思っております。TPPのように、ただただ投資、多国籍企業が徹底的に保護され、相手国に徹底的に市場開放を求め、投資、多国籍企業に徹底的に有利な紛争解決規定を求める、こんな強者の論理、資本の論理むき出しのTPPでは、今、全世界で反省の極みにある、前世紀までの列強による世界支配によって今のテロのような報復の連鎖をつくっているという、そういう反省に対する冒涜であり、何よりも報復の連鎖の再生産そのものであるということを銘記せねばならないと思っております。  公的医療保険制度を切り崩し、国民の生活と健康を損なうという危険がございます。  私たちは、政府が明らかにしている内容だけから見ても、TPP協定我が国の公的医療保険制度を切り崩し、国民の生活と健康を損なうものであると考えております。地域医療に従事する医師、歯科医師の団体として、下記の点からTPP協定国会承認を行わないよう強く求めるところでございます。  一つ、新薬の高止まりが続き、医療保険財政を圧迫することでございます。  政府は公的医療保険制度そのものの変更はないとしております。しかし、医薬品については制度的事項で取り扱われ、透明性や手続の公正の名の下に、公的医療保険制度の一部である医薬品の保険適用や公定価格に関する我が国決定プロセスに多国籍企業が利害関係者として影響力を及ぼすこと、すなわち日本の薬事行政への介入が懸念されます。  また、特許期間の延長やバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、そして特許リンケージといった多国籍企業に有利なルールで、現状でも諸外国と比べて高い日本の薬価が構造的に維持され、そしてまた、特許延長はすなわちジェネリック医薬品の開発を限りなく遅延させることになります。  ちょっとここで七ページの次の図を見ていただきたいと思います、私の資料の。  これは、私ども全国保険医団体連合会は二十年来、日本の薬価、国際的に見て高薬価ということを盛んに警鐘してまいりました。上の段の棒グラフは、二〇一〇年に再度、国際比較調査しました。そうすると、イギリスを一〇〇としますと、日本は二二二、米国は二八九という、そういうデータが出ました。これを厚労省に提示しますと、厚労省、本当にほんまかいなということで、再度厚労省として調査した図が下の段です。そうしますと、イギリス一〇〇としますと、日本は一九七、米国三五二と、そういうデータが出ました。米国については私どもの調査よりも高く出ました。そういう構造がございます。  こうした仕組みにより、安価で有効な医薬品が手に入りにくくなり、患者、国民の命や健康が危険、危機にさらされるだけでなく、我が国の医療保険財政が圧迫されることになります。  ここで直近の、皆さん御承知のように、オプジーボの問題をちょっと紹介したいと思います。  これは、薬価は百ミリグラム七十三万円で、六十キログラムの人は一回投与で百三十万円、一年間で三千五百万円掛かる、そういう高薬価です。これは最初、悪性黒色腫という腫瘍に対する症例で適応されまして、大体四百七十症例、三十一億円程度の経済規模とされてそういう薬価が付いたんですけれども、この薬価、私どもの調査で、イギリスを一〇〇とすると、アメリカは二〇〇、日本は五〇〇という事実が判明しました。これは最後から二枚目のページのところにあります。それを見ていただきたいと思います。  私ども保団連として厚労省と交渉し、厚労省としては二五%引下げで幕引きを狙ったと思うんですけれども、経済財政諮問会議でも保団連の私どものデータを取り上げられ、十一月十六日に中医協総会で五〇%引下げが決定されました、市場拡大再算定ルールというのが適用されて。  これ、TPP下であればどうでしょうか。直ちにISDS条項の発動、そういう事態になったかもしれないんです。ですから、五〇%引下げなんてとんでもないと。従来、日米経済、いろんな会合、最近では、対話、調和、何かややこしい名前の会議ですけれども、そういうところでも盛んにUSTRがこの市場拡大再算定ルールを撤廃せよと、要求がもう毎年のように来ていたわけでございます。そういう事実がございます。  そして次に、ISDS条項導入で医療の非営利性が脅かされる懸念がございます。  そもそもISDS条項とは、投資企業が法的整備のない相手国でどんな損害を被るかも分からないということで一定の保障を担保するという前時代的な条項でございまして、TPP十二か国では、全て法治国家でございまして、こんな条項設定する必要が全然ないわけです。こんな前時代的な条項を持ち出すこと自体、強者の論理、資本の論理そのものであると言わざるを得ないです。ISDSを克服すること自体、今まさに人類の英知が問われているんではないかと思っております。  現在、構造改革特区において、自由診療については株式会社による医療機関経営が認められております。保険診療を取り扱うには保険医療機関の指定を受ける必要がありますが、国家戦略特区において外国の株式会社が医療機関開設の許可を得た後、当該医療機関の保険医療機関としての指定を求めてISDS条項の発動を求めるおそれがございます。そうなれば、営利企業の医療への参入を招くことになり、命と健康は金もうけの対象にしないとの趣旨で現在も堅持されている医療の非営利原則が崩されることになってしまいます。  そのほかにも、ネガティブリスト方式、きっちり営利企業参入禁止という項目が医療の項目の中に書き込まれているかどうか、これがもう甚だ不明瞭であります。  そして、もう一つ重要なことは、SPS条項、衛生植物検疫のことですけれども、危険性の評価は徹底的に科学的根拠に基づくとされております。ですから、国民の命、健康にとってこれはちょっとやばい、そういうおそれがあるとき、予防的に事前規制を掛けることが不可能になります。そういう危険性がございます。  そして最後に、助け合いの共済制度に民間保険会社と同等の規制が掛けられるおそれがございます。  当会は、会員が安心して診療に従事し、地域住民の命と健康を守る役割を果たせるよう、助け合いの制度として保険医休業保障制度を運営しております。一九七〇年の発足以来、多くの加入者の生活と医院経営を支えてまいってきました。ところが、TPP協定の金融サービスでは全ての保険サービスが対象となっております。米国保険業界は、長年、共済が事業拡大の妨げになっているとして、各団体が行っている共済制度などにも民間保険会社と同等の規制を課するよう求めており、TPPの今後の協議においてこの圧力が強まることが十分想定されます。そういう危険があります。  最後に、国民の命、健康、暮らしに関わる医療を市場原理に委ねて、国民一人一人自己責任で手当てせよでは、貧困と格差が付きまとう資本主義社会では一人一人に行き渡りようがございません。だからこそ所得再分配として、社会保障制度としての公的医療保険制度がございます。そして、医師、医学者としても、今日の最新最善の医学、医療をあまねく国民一人一人が享受できるようにすることこそ医の倫理と私どもは考えております。これを全うできるのが公的医療保険制度下こそでございます。この公的医療保険制度を瓦解させる、そういう危険大であるTPPには断固反対を表明させていただきます。  以上です。
  13. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑に入ります。  なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう、御協力をよろしくお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 中西哲

    中西哲君 自民党の中西哲でございます。  公述人の皆様、意見陳述どうもありがとうございました。  それぞれお聞きしたいことが何点かありまして、最初に根本公述人にお伺いします。  今、御説明の中で中小企業輸出対策のお話が出てきました。我々自民党としてもなかなか中小企業輸出に取り組みにくいということで、それが可能に、輸出しやすい制度をつくろうという話がこの委員会でもされたんですが、もう少し詳しくお聞かせ願えないでしょうか、中小企業の実態を。
  15. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  中小企業輸出につきましては、先ほどの公述で述べさせていただきましたとおり、日本にいながらにして競争力のある製品TPP域内に輸出しやすくなる、サプライチェーンが域内で構築されるわけでございますので、まずそういう環境整備が図られる。さらには、ISDS等によりまして投資の保護もなされますので各国に進出しやすくなる、最適立地がしやすくなるという制度的な担保がなされるというふうに理解をしてございます。  もちろん、政府におきまして、様々中小企業に対する輸出促進策、投資促進策、あるいはその支援の方策が講じられておりまして、両者相まって今後中小企業におきましてもTPP域内での事業活動が活性化するものというふうに考えております。
  16. 中西哲

    中西哲君 それぞれの公述人の御意見にもありました。この委員会でも安倍総理が、米国トランプ大統領が撤退発言をしたことによって非常に厳しい状況になっているというお話がございました。しかし、安倍総理のお話の中では、自由貿易経済圏を確保するために日本立場をきっちりとさせておきたいというのが安倍総理の考え方でございまして、与党の考え方でもございます。  もしも一月にこのTPPアメリカが脱退する、この枠組みが崩れるということになった場合にも、将来的に日本の人口減を考えた場合に輸出拡大を図らなければならないというのが我々の立場なんですが、根本公述人は、もしもこの今のTPPの枠組みが崩れたときに、RCEPとかそれからFTAAPとか、いろいろもうこの委員会でも名前が出ておりますが、どういう日本はこれから自由貿易圏をつくる構想に持っていけばいいと思われるのか、御意見をお聞かせ願えますか。
  17. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  まず、一月の段階におきましてトランプ次期大統領が脱退を表明した場合にどうかという問いをいただきました。この場合におきましても、どのような形でその発言がなされるかという具体の内容につきましては現時点で不明確であるというふうに考えております。  構成国としては、現時点におきましては、非常に高いレベルの協定になってございますので、まずはこれを批准し、将来の発効に備えていくという立場を崩すべきではないというふうに考えております。もちろん、大枠合意を目指しております日EUEPA、あるいは日中韓、RCEP、あるいはFTAAPへの道筋というのは当然に追求すべきものではございますけれども合意の得られたTPPをその時点、すなわち一月の時点で諦めるというような選択肢は取るべきではないというふうに考えております。
  18. 中西哲

    中西哲君 どうもありがとうございました。  続いて、内田公述人に御質問をいたしますが、御説明の中で、イギリスのEU離脱、そして今回のヒラリー・クリントンではなしにアメリカ国民トランプ大統領を選んだと、これはもう自由貿易の行き詰まりなんだというお話がございまして、私自身もイギリスやアメリカのマスコミのいろんな報道を見ていて、まさかこういう、EU離脱にしろ今度のトランプにしろ、そういう状況になったことに非常に驚いていまして、イギリス国民が変わっている、アメリカ国民も大きな流れで変わっている、その延長上に多分、内田公述人のお話は、自由貿易が行き詰まっているというお話があったんだと思うんですが、もう少し詳しくお聞かせ願えませんでしょうか。
  19. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 御質問ありがとうございます。  私は、自由貿易の行き詰まりがアメリカやイギリスの政治的な選択というふうに出ているというふうに申し上げました。  実際に、世界規模で格差というものが広がっています。これは先進国においても広がっています。これは先ほど萩原さんからもおっしゃっていたように、グローバル経済というものが推し進められた結果です。つまり、自由貿易が最大限世界に広がった。  当初はこれ、グローバル経済が広がれば、いわゆるトリクルダウンといって、上の方の豊かな人が、大企業投資家、富裕層ですね、こういう人たちが豊かになっていくわけですね、まず先に。そうすれば、中間層そして最低のラインにいる貧困層にまで富が循環して下に落ちていって、やがて底上げができると、こういう経済理論が八〇年代当初は信じられていたわけですね、理論としても。それで推進されてきた。  しかし、この三十年の壮大な実験といいましょうか経験の中で、そういうことは実際起こらなかった。むしろ格差は広がっていると。これは国内的にもそうですし、国際的にもそうですが、やはり大企業投資家、富裕層というのは、例えば内部留保であったり、それから、先ほど申し上げましたが、タックスヘイブンのような、これは一応合法ですが、そういう租税回避の仕組みを使って利潤をためていくというような現象が起こるから下にはこぼれ落ちないということなんですね。  ですから、今は、私は企業が利潤を上げるということ自体はもちろん否定いたしませんが、問題は、それが再分配をきちんと国内的にもされない、それから法人税の安いところへ、税金を払わなくて済むと。つまり、拠点のある国には税金を納めていないわけですね。そうすれば、当然その国の国民の社会保障とか公的なサービスに回るお金は少なくなる、税収が減るわけですから、そういう問題が世界的な課題になっていると。これはどの国でも、先進国途上国を問わず共通認識としてあると。  ですから、これをどう是正していくかということが問題であって、企業に全部もうけさせるのを禁止せよとか、そういう乱暴な議論をしているわけでは決してないということです。
  20. 中西哲

    中西哲君 それと、いただいた資料の中に、七ページに基本的考え方の問題点、この③に輸出によって一国の経済が発展するという認識の誤りという記述がございまして、元々このTPP参加という話が出たのは、日本が将来的に人口減少、消費する人間も減れば作る人間も減るということが大きな問題点になっておりまして、そこからの脱却という意味でこういう話が出てきておるんですが、この日本の人口減少についてはTPPの枠組みとはまた別個のことで解決できるという考え方をお持ちでしょうか。人口減少に対するお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 人口減少自体は、今後日本が何らかの対応をしていかなければいけない現実だと思っています。ごめんなさい、御質問の御趣旨がちょっと私のあれで理解はできませんでしたが、人口減少自体はもちろん起こるわけですね。その際にどのように対応するかというようなお答えでよろしいでしょうか。
  22. 中西哲

    中西哲君 ごめんなさい。それで日本の経済が沈んでいくと、それに対してどうやって上げるのかと。  さっき内田公述人のお話にありました内部留保の問題ありましたね。私、高知県の出身なんですが、高知というのは日本の中でも一番経済的に数値の低いところなんです。その高知でも結構皆さんもうかっていまして、県の法人二税、これがずっと上がっているんですね、ここ三、四年。しかし、それが消費に回っていかない、先が見えないというんですよね。  そういう、先が見えない、多分、日本国中蔓延していると思うんですが、それを打ち破る一つの方法としてこの自由貿易圏の拡大ということに入ったんですが、そういう目標に対して、一方で、人口減少するんだけど、TPPに入らなければ、この枠組みは崩れたとしたら、どういう方法で日本が生き延びるかという趣旨で人口減少を聞いたんですが。
  23. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 失礼いたしました。  一つは、今地域の経済というのを担っている担い手というのは、まさに中小企業であったり中小零細であったり、それから協同組合、農協含めてですね、それから小さなNPOとか、そういうとても小さな単位の経済主体だと思っております。そういう人たちからとって、今、実はTPPでアジアの成長にアクセスしてそこからもうけるんだなんという話は全く非現実的なわけです。  私は、中小企業という話でよく語られますが、この中小企業というくくりは極めて乱暴だと思っています。日本では、たしか今、中小企業の数は三百五十万社、日本のほぼ九割以上ですよね、九五、六%かと思いますけれども。そのうち海外に展開できている企業というのはたったの一万数千社しかないわけですよ、中小企業の中でも。圧倒的な多くの中小企業というのは内需です。つまり、地域内内需です。地域で物を作って運んで加工して、そしてその小さなお店でも雇用をつくってやると。  日本貿易立国だという根本的な誤解があって、経済成長の時代、特に経済成長時期は日本は内需の国としてやってきたわけですね。もちろん、それが今後どうなるかというのもありますけれども、私は、地域においてはやっぱりこういう小さな経済主体、これがちゃんと活性化されてきちんと地域循環型の経済をつくれるかどうか、ここに懸かっていると思います。ですから、中小企業はみんな外に出ていってもうかるんだみたいな大変乱暴な言説がまかり通っているのはゆゆしき事態と思います。  その意味では、地産地消であったり、それから、実はTPPでは禁止されるんですが、ローカルコンテンツといって地元から労働力や素材を、原材料を調達する、こういう地域振興条例だとか公契約条例だとか、今まさに地域で頑張っていらっしゃる、作られている条例こそが地域活性化の鍵だというふうに思います。
  24. 中西哲

    中西哲君 ありがとうございました。  次に、萩原公述人に、TPP、このままじゃもうやることはないという御意見でしたので、将来的には我が国が人口減少に入る、そういうときに、この国の経済を活性化させるために、じゃ、貿易はどういう形態でやられたらいいのか、御意見お聞かせ願えませんでしょうか。
  25. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 貿易について少し申し上げますと、かつての貿易と現代の貿易というのは大きく変わってきているということですね。つまり、かつての貿易というのは、国内で作って外に売るという、これが基本的なものでございまして、要するに雇用も増えるし輸出も増える、GDPも増えるということなんですね。ところが、現代の貿易というのは必ず自由貿易投資というのが付いてくる。自由貿易雇用じゃないんですね、自由貿易投資。ですから、企業がいかに外に出ていくか、外に出ていく企業をいかにサポートするかというのが現代の貿易のシステムの基本的な問題点なんですよ。  ですから、TPPというのはそういう、中小企業にしてもそうですけれども、外に出ていくということをサポートするという考え方ですから、国内の人口減少に対応するというそういう協定になっていないんですね。ここがトランプ大統領離脱をすると言ったところの大きな要因でもあるんですよ。  例えば、日本企業アメリカで作らなくてメキシコで作る、メキシコで作ってそこからアメリカ輸出する。北米自由貿易協定というのがありますので、そこから輸出しても関税はゼロなんですよ。何でメキシコで作るかといったら賃金が安いからですよ。だから、トランプ大統領は、あそこに壁を築くと言ったのは、北米自由貿易協定というのを再協議して、それで企業が全部外に出ていってそこから輸入しているというシステムを変えたいということなんですね。ですから、北米自由貿易協定がもしやめられれば確かにトヨタ自動車とかそういうところは困ると思いますけれども、しかしそれがアメリカの国内の投資を積極的にさせるということで非常にいい意味を持っているんですよ。  だから、そういう点でいうと、我が国日本も自分の国内にどうやって産業を興すかということを考えることと、それから、やはり人口が少なくなってくるということは、技術革新、イノベーションを起こすということは教育ですよね、国内の教育に対して非常にお金を使って、そして人材を育てると。こういう作戦を取っていかないと日本の人口を減少させるというものに対する対策にはならない。私は是非そういう対策を取って、日本の人口が減るということを逆にイノベーションをつくり上げて解決していく。私は教育が非常に重要な鍵になっているというふうに思っております。
  26. 中西哲

    中西哲君 安倍内閣ももちろん教育、人、日本がこれだけ明治維新から短期間でばっと一流国になったのは、江戸時代の寺子屋から始まって教育に力を入れてきた結果だという思いで私もおります。どうもありがとうございました。  次に、住江公述人にお伺いします。もう余り時間ないんですが。  私自身も医者をやっている友人が何人かいて、最初はTPPに反対だというお話を聞いていたんですが、我が党の作ったQアンドA、自民党が作ったやつで、それで、公的医療保険制度の在り方の変更を求める内容は一切含まれていないというのを、こういうのを見て、それで委員会でのやり取りあるいは政府の話を聞いて、ああそうか、それだったら、医療制度が変わらないのであればという思いでおったんですが。今、住江公述人のお話聞くと、全くそんなものは信用できない、こういうおそれがあるといろいろ聞いたんですが、そこら辺りのギャップを我々自民党が埋めるために、ここをもうちょっとはっきりせいと、もしも次やるとしても。お話し願えませんか。
  27. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) そういうギャップを埋めるだけの情報開示されていないわけです。ですから、私ども質問しようもない、国民も是非の判断しようもないと、そういうところをまず指摘しておきたいと思います。  先ほど冒頭、陳述させていただきましたように、本当に単に公的医療保険制度などには手は付けないということであっても、やっぱりどういう切り口から、一番狙われているのはやっぱり薬価制度に介入、薬事行政に介入して高薬価、とにかくそこをターゲットにしてアメリカは製薬資本の暴利を貪ろうとする、やっぱりそういう危険。そして、やっぱり医療機関への民間営利資本の参入。やっぱりこれを手付けられると、本当に、先ほど来、人口減少を食い止めるためにもTPPというお話ございましたですけれども、反対にTPPで更に人口減少を加速するという、そういう危険は大であるということを改めて強く懸念します。
  28. 中西哲

    中西哲君 どうもありがとうございました。  我々のこのQアンドAでもこの委員会でも、政府は四千ページにわたる情報開示をしておるんだといっても、一般国民はこんなもの見ないですよ。我々国会議員、そして地方の議員が地元に帰っていろんな分野の方と話ししながら回答していくという努力が足りないんであろうと思います。  今後とも、我々、それに力を入れていきますし、まずはこのTPP批准を目指していきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  29. 舟山康江

    舟山康江君 舟山康江でございます。  今日は、四人の公述人の皆様、ありがとうございました。  今、参議院でこのようにTPP審議が行われておりますけれども、先ほど特に内田公述人からありましたように、今もう本当に審議意義がどこにあるのかなというのが私、率直な今の思いでありまして、まず一つは、やはりアメリカで動かなくなったと、これはすごく大きいことだと思いますし、また、この間の衆議院、参議院の審議の中で様々な問題点、かなり広い交渉範囲であり内容であり、議論すればするほどよく分からない、その結果が、世論調査を見ても随分と今急ぐべきではないという数が多くなってきたということの背景にもあるのかなと思っております。  そしてまた、ここから質問ですけれども、まず根本公述人に質問をさせていただきたいと思います。  先ほどのお話の中でも、イノベーション、グローバル化、それで雇用維持していくんだと、そういった話もございましたけれども、実はこれ、アメリカでの反対の一つの大きな理由が、このメガFTAのような、アメリカでいえば既に発効しておりますのが北米自由貿易協定と、こういった状況の中で雇用が相当大きく傷ついた、減った、そして賃金が下がってしまったということでありまして、これはアメリカ労働組合も明確にこの点からも反対しているという状況でありますけれども、先ほどのお話、また政府試算でも雇用が増えるという試算もありますけれども、このアメリカの声も踏まえまして、公述人から、雇用の面に関してこのTPP我が国雇用に与える影響をどのように捉えていらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
  30. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 委員、御質問ありがとうございます。  既に政府サイドからこの場において御説明あったとおり、八十万人という数字もマクロベースの試算として当然出されておろうかと思います。私ども独自の試算持ち合わせませんので、恐らくマクロ試算をする限りにおいて、現状の協定であれば日本国内において八十万人増えるということは正しいのだろうというふうに考えております。  なおかつ、先ほどの御質問にお答えいたしましたとおり、中小企業におきましても、日本にいながらにして自らの物品を輸出するかサプライチェーンに供給することができるということで、日本国内雇用維持が可能になるという側面がございます。例えばでございますが、NAFTAだけしかないというようなケースを考えますと、例えば組立てメーカーがメキシコに進出しました際、原産地条件を満たすためにはその部品供給者もメキシコに進出し、日本国内雇用を削らなければならないというような事態も想定されるわけでございますが、TPPが成立いたしますればそういったような事態はなくなるというふうに考えております。  こういう意味において日本国内雇用維持は図り得るというふうに考えますし、さらに、経済が二・五%から二・七%伸びるということでございますので、そういうパイの拡大という意味におきましても相当程度の雇用へのプラス効果があり得るのではないか、あるのではないかというふうに考えるところでございます。
  31. 舟山康江

    舟山康江君 またアメリカの例で恐縮ですけれどもアメリカ雇用の今の現状といいますのは、人の移動の自由によって外から安い労働力が入ってきて雇用が奪われた、そういう側面と、もう一つは、投資自由化によって企業そのものが海外に移転してしまったと、この二つの側面の中でやはり雇用の問題が生じているのかなと思うんですけれども、その後者の懸念というのはどうなんでしょうか。
  32. 根本勝則

    公述人根本勝則君) グローバル化についての御質問だというふうに理解をいたしましてお答えを申し上げますと、まず、グローバル化というものは不可逆的なものであり、とどめることができないという認識をしております。  投資自由化含め、マーケットの自由化グローバルマーケット自由化というものが進めば進むほど、グローバルな規模で考えれば経済的には活性化してまいります。そこはもちろん競争というものがございますので、プラスになる方もいらっしゃればマイナスになる方もいらっしゃるというのは当然考え得ることではございます。ただ、そのマイナスになる部分につきましては様々な手当て、これは職業訓練その他による雇用の移動といいますか、職業の移動その他において相当程度各国政府の責任において手当てをしている部分かと思います。  比較優位の原則というのがございます。相手国より劣っている部分であっても自分の国で一番比較優位にあるものを生産していけば、当然にそこの国の全体的な効用と申しますか、生産量は上がっていくという経済理論もございまして、そういう理論の中で、マーケットの中で活動していくということを我々は選択するしかない状況にあろうかと思っております。  その意味におきまして、投資自由化をもっと進めるのかどうかというお問合せだといたしますれば、そこはもうそういうふうにならざるを得ない時代に入り、我々がそれをとどめることはできないという認識でおります。  以上でございます。
  33. 舟山康江

    舟山康江君 ありがとうございました。  それでは、続きまして、内田公述人にお伺いしたいと思います。  私は、このTPPの中でISDS、投資に関する訴訟に関してかなり大きな危機感を持っております。現在のところ、政府の説明では、この投資章の、内田さんの資料にもありますけれども、九章の十六条、この中で、「この章のいかなる規定も、締約国が自国の領域内の投資活動が環境、健康その他の規制上の目的に配慮した方法で行われることを確保するために適当と認める措置を採用し、維持し、又は強制することを妨げるものと解してはならない。」と、この条文をもって、健康や環境に関するものであれば訴えられることはないんだということを政府は言っております。  ただ、私、非常に疑問なのは、そうだとすれば、例えばたばこ、たばこもやはり健康に影響があるということですから、あえて除外規定を設けなくてもこの一般規定の中で読めるわけですから、なぜたばこだけが特段の規定が置かれているのかなというのが非常に疑問なんですけれども、果たして政府の説明のように、この条文でその除外、大丈夫だということが言えるのかどうか、少し御見解をお聞かせください。
  34. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 御質問ありがとうございます。  私の資料でいうと、今御指摘のところが九ページ、十ページ辺りですね、直接的には十ページの⑥のところですね。おっしゃるように、このISDに関して、TPPでは一つ濫訴防止規定というのが置かれたということがあります。それから、この本文の中では十六条、今議員から読み上げられたような、環境や健康その他の規制で目的に配慮するという文言が入っています。  これの読み解きなんですけれども、近年の、ここ十年ぐらいの貿易協定の中でのISDの中にはこのような類いの文言が比較的入るようになっています。なぜかというと、これは皮肉なことに、これまでのISDSというものの事例がかなりの部分、環境や公共サービス、それから国が国民の健康を配慮して行ったその措置に対してまさに提訴がなされてきた。このことが、ISDをよしとする専門家からもここまでやっていいのだろうかというような懸念や疑問の声が上がり、議論をしているんですね。国際市民社会は、EUであれ米国であれ、今のISDで果たしていいのか、けんけんがくがくとずっとやっているんです。というようなことの議論の成果として、せめてものということで、一定程度条件で縛れるような項目が入っています。  ですから、今回のTPPにもこういう文言が入りました。最初、私たちは入らないかなと思っていたんですが、結果的に入りました。ですから、その意味では、こういった文言が一切ないよりはましだと言えます。ただし、これは結局、その投資章に適合する措置であればという条件が付いています。  投資章に適合する措置とは何かというと、下にも書きましたが、内国民待遇や収用や公正衡平待遇などに違反していないということです。つまり、投資章の範囲に限り認められるという文言ですし、結局これは非常に抽象的な文言です。何をもって環境、健康その他の規制というふうに解するか、これは最終的にはこの仲裁廷が判断するわけです。  ですから、これをもって提訴が防げるという保証はどこにもありません。結局、過去の事例を見れば、多国籍企業というのは利益が害されたということであれば提訴をしています。公衆衛生や環境や、いろんな私たちの暮らしに関わるものであっても、する自由はあるわけですね。ですから、その判断が仲裁廷であるということでは、実際に訴訟を回避する手だてにはなっていないというふうに思います。
  35. 舟山康江

    舟山康江君 ありがとうございました。  やはり多分抽象的で、解釈いかんでいかようにもなるということなので、最近明示的に話題になったたばこに関してはそこにあえて別枠で書き込んだということなのかなということで、逆に言えば、たばこが書き込まれたということは、ほかのものは健康、環境に影響するもので安心だということは決して言えないのかなということを改めて強く感じました。  続きまして、やはり最近の世論調査を見ますと反対の声が随分増えてきていると。やはりこの背景には、中身が分かれば分かるほど、ちょっと危ないんじゃないか、よく分からないという思いと、そもそもあの黒塗りペーパーで明らかになりましたとおり、この協定は四年間秘密保持義務が課せられているということで、交渉の経過、その様々なことが隠されたままで詳細がよく分からないというところにあるのではないのかなと思います。  内田公述人は、ほかの様々な多国間の協定等も今まで検討されてきたと聞いておりますけれども、このような、百歩譲って、入口の、交渉が入る前まではそこが表にできないとか批准するまでは表に出せないというのはあるのかなと思うんですけれども、四年間秘密のままだというような前例を持つ協定というのはあるのでしょうか。
  36. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 結論から申し上げると、ありません。これは、WTO交渉の頃、多くの労働組合農業団体、市民社会の方も現地に行ってウオッチをして、政府の方とも話していましたが、TPPと比べればと今になって思いますが、かなり情報開示はされていました。テキストですね、条文も我々もアクセスできましたし、場合によっては現地で政府の方と労働組合農業団体の方が相談して、じゃ、こうしようみたいなようなシーンもあったほどです。  しかし、TPP以降、日本が関わっている貿易協定では全く開示されないと、現地に行っても、説明会はあるんですが、中身は一切触れられないということになりました。政府の見解では外交上の理由だと言っておりますが、ここまでの秘密性というのはTPPが初めてですから、必ずしも外交上の理由で明かせないというのは普遍的な定義ではないんですね。交渉人の、協定によって変わっているという問題があると思います。  もっと問題は、日本交渉に入るときに、これは他の十一か国との間に契約書を交わさなければいけないんですね。これは秘密保秘契約といいます。この契約書自体が公開されていません。議員の皆様でもその契約書を見たという方は恐らくいらっしゃらないんじゃないかと。つまり、今四年間というふうにおっしゃったのも、これ、根拠がない推論なんですね、いろんなリーク文書とか、そうらしいと。ですから、私たちは何が秘密とされているかという秘密の定義も知らないままに議論をどんどん進めている、これは恐ろしい状態だというふうに思っております。
  37. 舟山康江

    舟山康江君 ありがとうございました。  この秘密の部分が最終的に仮に発効したときに全然我々に影響がなければいいですけれども、秘密で分からないところも、実はこういうことを約束していましたということで、後で国民全体が、法律を上回る拘束力を持って私たちの生活に関わってくるということを考えると、やっぱりこれ自体が本当におかしいなということを改めて感じます。  続きまして、萩原公述人にお聞きしたいんですけれども、今、政府も、この間のAPECでもそうだと言っていましたけれどもTPPがもしかしたら発効しないかもしれないということをもってして、保護貿易保護主義に戻るのかということをあらゆるところで耳にいたします。私は、今が保護主義的な政策であるならばその指摘も当たるのかなと思いますけれども、今の日本の現状は、やはり自由貿易圏内の一員として、私は、少なくとも一定程度の自由貿易の恩恵を受けて、そして自由貿易を一緒に推進している立場なんだと思います。  そういう中で、今のこの保護主義に戻るな、保護貿易に戻るなという指摘に対しまして、公述人、どのようにお考えでしょうか。
  38. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 保護主義自由貿易という形で今議論になっていますが、大変不思議な議論をされているんですね。どうしてかといいますと、一九四九年に日本貿易を規制する外国為替管理法というのを制定しました。一ドル三百六十円、それはまさに保護貿易なんですよ。管理貿易ということですね。それで、日本は高度成長して、一九六四年、昭和三十九年、東京オリンピックの年にIMF八条国、ガット十一条国になったわけです。これは、国際収支のいかんにかかわらず経常取引を規制してはならないという、これが自由貿易なんですよ。ですから、そういうシステムの中でも、その国の在り方ということを考えれば、関税というのはあり得るんですよ、非関税障壁も。それは国としての当然のやり方です。これを全部なくすのが自由貿易というのは、これは経済学的に見ておかしいんですよ。  ですから、当然、いかなる国であっても、それぞれ自分の国の成り立ち、こういうふうにしたいということを考えれば、そういう手段が取れる。だから、IMF八条国、ガット十一条国から抜け出すとか、これから管理貿易をしますとか、そういうことを言えば保護貿易ですよ。これはやっぱり私は阻止すべきだと思うんですよ。しかし、そうでない限りは、国の成り立ち、それを考えていろいろな措置で、関税掛けたり非関税障壁をつくったりするというのは、何ら自由貿易に反するということにはなりませんと私は思っております。
  39. 舟山康江

    舟山康江君 ありがとうございました。  そもそも、このTPP協定協定文書がこれだけ大部、八千ページとも言われていますけれども、かなり事細かく、今おっしゃったような、いろいろ、あれするな、これするな、こうしろということが書いてある。逆に、管理的な貿易だからこそこれだけ協定文が大部になるのかなというふうに思います。  最後に、住江公述人にお聞きしたいと思います。  この医療の問題、TPPの特別委員会の中でも衆参通じて何度も議論されておりますけれども、基本的には仕組みが変わらないとか大丈夫だという答弁が多いのかなと思っております。恐らく、私が考えましても、資料にありますとおり、いわゆる公的医療保険制度そのものの変更を頭から、正面から壊すような協定にはなっていないんだなというふうには思いますけれども、そういう中で、公述人が一番、実質的に、いわゆる国民皆保険制度が骨抜きになる、穴が空いてしまうんじゃないかという問題点をちょっともう一度お聞かせいただけますでしょうか。
  40. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) 最終的に医療を資本のもうけの対象にするという究極は、やはり日本の公的医療保険制度で掲げている公定価格。公定価格であるから自由な競争がないということで、そこを取っ払うというのが最終的な、ですから、もう本当に自由診療のようなそういう世界だと思うんですけれども、そんなことになって日本の医療が本当に医療たり得るのか、また、私ども自身、保険医という名に値するのかということを本当に危惧しております。  そういう事態になると、本当にそういう事態に向かっていくというそういうこと自体に一番危惧されているのは難病患者の団体の皆さんです。ただでさえ厳しい生活の中で高額な医療を受けざるを得ない、そこにさらにまた、高額過ぎてその高額な薬にさえ手が届かないという、そういう事態を生むこと自体が、本当にそんなことをする日本の医療にしていいのかどうか、やっぱりそこが問われていると思います。
  41. 舟山康江

    舟山康江君 今日はありがとうございました。大変参考になりました。  どうもありがとうございます。
  42. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は、四人の公述人の皆様、貴重な御意見いただきましてありがとうございます。  まず、順番にお聞きしたいと思いますが、根本公述人に二点お聞きしたいと思います。  先ほど意見の中で、TPPは二十一世紀型のルールであるという話がありました。中でも、いわゆる電子商取引のサーバーの現地への設置義務がなくなると、これ重要だという話もありましたが、日本は、このTPPだけじゃなくて、アジア太平洋見ていくと、RCEP、FTAAPという、こういう自由貿易圏のいろんなルールを検討していく必要があるわけでありますが、今回、TPPで三十章もあるわけですね。その中で、特にこれは、今後RCEP議論していくときに是非これはなるべく日本として主張してほしいと、モデルなんだから。特にRCEP、十六か国ですが、一応七か国がTPPで入っておりますので、ここは一旦合意している国もあるわけですので、確かに韓国や中国、インドという国もありますけど、そこは差異ある義務という条項もありますので、ここはひとつ最終的にこういう条項を入れてほしいというのがございましたら、これは一点目お聞きしたいと思います。  もう一点は、トランプアメリカ次期大統領離脱をすると発言されたときに、二国間協定を結んでいきたいと話がありました。これについてはまだ仮定の話なので何とも言えないかもしれませんが、日米のFTAというものについてはどういうお考えなのか。  私自身は、今回のTPPの特色というのは、まさにグローバルバリューチェーン実現できる。日本製品をメキシコで組み立ててアメリカ輸出をする、また、日本の糸をベトナムで織って縫製品にしてアメリカ輸出すると、こういう域内どこでもできたんですけど、どうしても二国間の場合は、いわゆるスパゲッティボウル現象というんですかね、いわゆる二国間ごとに原産地規則が違ったりしますから非常に煩雑になる。特に中小企業はもう手が出せないという状況になると思うんですが、この二国間協定、日米でも考えていくべきなのかどうなのか。  この二点についてお聞きしたいと思います。
  43. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  まず、一点目でございます。三十章に及ぶ部分のどこかという御指摘、御質問でございましたけれども、でき得れば全部入れていただきたいというのは本音ではございますが、このICTの時代にあって、先ほど先生から御指摘がございましたデータ系のお話につきましては、特に関心を持っているところでございます。  データローカライゼーション義務については是非避けていただきたいと思っておりますし、データの越境移動がなされないようでは今日ビジネスそのものが成立をいたしません。さらには、組み込まれるICT機器に対するセキュリティー要求でございますとか当局へのソースコードの開示等々、様々な懸念がございます。  現在は物品の移動その他を、サービスの移動ももちろんでございますけれども、そういうものを行う際にこのデータというものが死活的に重要になってございますので、この部分には特に御留意をいただきたいというふうに思っております。もちろん、参加する諸国が相当程度に発展段階の異なる国々が入る形になりますので、全てが同じようにいくというわけにはまいらないことは重々承知はしておりますけれども、でき得る限り高いスタンダードの協定にしていくということが私どもの望みでございます。  二点目でございます。日米FTAへの問いを頂戴をいたしました。  私どもTPPへの参加を求める考え方に傾く以前、日米FTAということを考えたこともございます。それは事実でございますが、繰り返し何度も申し上げておりますとおり、今日この時点において、日米FTAにかじを切るという段階ではないというふうに考えてございます。TPPをまだ追求すべき段階であるというふうに考えます。先生御指摘のとおり、二国間協定では累積原産地といったようなものはなかなか難しい面がございます。こういうものを獲得する上でも、是非マルチプルの形で協定を仕上げていっていただきたいというふうに考えるところでございます。  以上でございます。    〔委員長退席、理事福岡資麿君着席〕
  44. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございました。  現時点ではあくまでもTPPを追求すると、特に累積原産地規則を適用する上ではマルチの方が効果があるという御意見もいただきました。  続きまして、内田公述人に三点お聞きしたいと思っています。  御説明の中で、グローバル化の負の側面に着目してこられましたと、特に貿易の大転換が必要という御意見をいただきました。  そこで、今回は、ここで議論になっているのはTPPなんですが、TPP以外にもいろんな貿易協定があるわけですね。今議論のありましたRCEPみたいなものとかFTAAPみたいなもの、さらに二国間の貿易協定もあるんですが、どの貿易協定もやっぱりどれも反対だという御意見なのか、いや、こういう形のものであればというものがあるのかどうなのか。もしどれも反対となってきますと、先ほども少し議論がありましたように、日本自体は人口減少を迎えていくと、そういう中にあって内需がどうしても減ってしまう。内需は重要だと思っています、しかし、その減る内需をどこかで補っていくためにはアジア太平洋活力をという趣旨だと思うんですが、また資源自身も日本余りある国ではありませんので、そういう意味では一定の貿易を活性化していく点も重要と思うんですが、その貿易の基本的な大転換という意味を少し、一点目お聞きしたいと思っています。  二点目には、TPPの話に移るんですが、TPPには、先ほど二十一世紀型協定という話もあったんですが、その理由として、開発の章、二十三章とあるんですね。ここには、女性の進出、参画ということであったりとか貧困の削減であったりとか分配を重視する、つまりインクルーシブなエコノミックグロースという、包摂的な経済成長を目指そうというのが書いてあります。これは多分、今までの放任型の貿易、グローバリゼーションが負の側面を持ったのを反省している一つの証左だと思っています。また、ほかにも労働の章とまた環境の章とがあって、それぞれ、児童労働の禁止であったりとか、またいわゆる違法伐採みたいな、森林保護みたいなものも書いているわけでございますし、そもそも中小企業という章も起こしているわけですが、いわゆるこういう章、TPPについてはそういう包摂的な経済成長を目指しているという点をどう評価されるかというのが二点目でございます。  三点目は、今日いただいた資料、たくさんいただきましたが、後半、中小企業のいろんな施策はいっぱいいただきました。多分、今までの御意見を聞いていますと、この予算が無駄だというふうに言っておられるのかなと、おっしゃったんですが、私自身は、中小企業は、確かにおっしゃったように、今、直接輸出している中小企業は三%しかありません。しかし、これは欧米に比べてかなり低いんですね。その低い背景は何かというと、一つはやっぱり地理的要因というのがあって、地続きじゃないと、ヨーロッパとかアメリカはつながっているわけですけど。それともう一つは言葉の問題がある。  でも、これは、先ほど言った内需が下がる中で全員が輸出したなんて私はないと思っています。できるところはしながら、そこでまたバリューチェーンでつながっていくということのためには、こういう施策、今回TPP発効しないならこれをやめるべきという御意見のために付けられたのかもしれませんが、こういうものはいずれ、RCEPであったりとか日EUであったりとか、そういうものが幾たびごとに必要になってくる予算なので、こういうものも私は必要なんじゃないかと。  以上三点、済みません、長くなりましたが、お答えいただきたいと思います。
  45. 内田聖子

    公述人内田聖子君) ありがとうございます。  三点あるので、簡潔に答えます。  まず一点、ちょっと誤解があるようなんですが、私は貿易そのものを否定していません、当たり前ですが。ただ、今の世界の中のいわゆる自由貿易協定メガFTA、二国間等々ですね、この中には、実際に非常に人々の暮らしやいわゆる国民の利益にとってもはや害になっているというようなことは実態としてあります。ですから、これを変えていかない限り、やはり先ほどから何度も申し上げておりますように、一部の人のためだけのルールになっている、そこが問題になっていると思っております。    〔理事福岡資麿君退席、委員長着席〕  今、ほかのいろんな貿易協定ありますが、その中で共通して問題になっているのは大きく三つあると思います。一つはISDSです。これがやはり、元々は途上国先進国企業投資をする、そういうためにつくられたようなものでして、ただ、これが近年、先進国同士でも訴えがどんどんある。アメリカですら訴えられている。ドイツも脱原発政策を取った、そうしたらスウェーデンの投資会社から訴えられたというような事態にもなって、初期の頃とありようが違うわけですね。  ですから、このISDSの裁定の方法、メカニズム、例えば一審制しかないとか仲裁人が非常に私的な形で選ばれる等々、それから審理が非公開とかですね、今の時代に全く合っていない。その結果として一番痛い目遭っているのは途上国なんですね。例えば、エクアドルなどという国は二十回以上多国籍企業から訴えられ、国家予算の半分近くはそのような賠償金、金額がそこまでになっている。そういう一企業が一国家をのみ込んでいるという状況ですね。これはやはり放置してはいけないというのが国連や市民社会の共通の意見です。だから、EUなんかでは改革案が提案されたりしています。  我々は幸いにして、先進国同士のFTAの中でISDSがありませんから、幸いにして訴えられた経験がないんです。しかし、ほかの先進国は、一度でも訴えられればもう途端にISDに批判的に転換しています、アメリカにしろオーストラリアにしろドイツにしろ。というような議論があるわけですから、ここのISDというのは何とかいいものに、いいものというか、紛争を解決する正しいメカニズムをつくらなきゃいけない。  それから、環境の問題ですね。今、環境あるいは気候変動の一番大きな要因になっているのは経済活動です。例えば、世界中バリューチェーンをつくっていろんな物や人がどんどん今以上に移動すれば、環境負荷は掛かります。ですから、一方で、そういうもののある程度の必要性はありながら、しかしそれを無条件に拡大していっていいのかという、それはパリ協定ですね、つい先日発効した。そういう中にも企業の経済活動をいかにうまく規制していくか、そういう議論が入っています。  それから三点目は、やはり公衆衛生ですね。とりわけ医薬品のアクセス、これに関しての議論というのを貿易協定ルールの中でどう調和させていくかという議論。これは、多国籍企業、製薬会社の利潤とそれから多くの途上国を始めとする人々の命、これがどっちかという乱暴な議論ではなくて、調和させなきゃいけないんですねという議論。ですから、私は、そのような未来の大転換と言ったのは、こういうことをきちんと貿易ルールの中に埋め込んでいくこと、それこそが新しいルールだと思っております。TPPは残念ながらそのようなルールになっておりません。  二点目に関連しますが、確かに、開発や女性、中小企業、労働、環境、そういう章はあります。これも先ほど申し上げましたように、いろんな必要から何とか入ったという章だと思います。ただ、章があることは評価できますが、中身については大変抽象的な文言にとどまっています。踏み込んでおりません。投資章や金融章というのが事細かく投資家や企業のできること、自由についていろんなことを保障してあげているのと全く対照的です。非常に抽象的な文言しか書かれていないので、これもインプルーブが必要だと思っています。  それから、最後中小企業ですね。これは、ですから、私も、力のある中小企業海外展開すること自体は既に起こっておりますし、別に否定はしておりません。ただ、先ほど言ったのは、TPPにまつわる言説で、あたかも全ての中小企業TPPで恩恵を受ける、そういうミスリードが確かに行われていると、そういう御指摘をしました。  仮にTPPでなくても、今後のRCEP等々で中小企業にとっていいような支援をしているということであれば、それこそTPP予算ではなくて普通の経済政策、振興策としてやればいいことであります。逆に、TPPがなくても大丈夫ですというのだったら、これも変な話ですね、じゃTPP要らないじゃないですかという話になるわけですね。という意味で、今日、この膨大な、経済産業省やジェトロの皆さんがお作りになった膨大なものをカラーコピーで多部数刷っていただきました。  以上です。
  46. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございました。  次に、萩原公述人にお聞きしたいと思います。  先ほど、保護主義自由主義、非常に興味深い御意見いただきました。確かに、我々は二分論で議論しているわけじゃなくて、ただ、あくまでも、多国間貿易協定なり二国間協定WTOの例外という位置付けになっているわけですね。例外とするためにはかなり関税撤廃ということをしなきゃ例外にならないというWTO協定上の位置付けになっているので関税を撤廃すると。だから、いわゆるドーハ・ラウンドなりちゃんと進んでいればこんなことは必要ないんですが、それがいわゆるガットからWTOに変更する中で意見先進国だけでまとまらない、動かないという状況がもうあるわけですよ。その中にあって、お隣の韓国はうまく例外を使って六七%のEPA、FTA比率を達成している。日本は一方で二三%なんです。これは現実なわけですよ。その中で、そういう意味では、理想的には確かにドーハ・ラウンドへ行けばいいんだけれども、ならないという中で、次善策としてどうするかという中で日本はどうあるべきかという意見が聞きたいのが一点。  もう一点は、先ほど、NAFTAの評価がありました。NAFTAについては雇用が失われたという話があるんですけれども、これについては昨年の九月に米国議会予算局、CBOがレポートを出していまして、NAFTAについては貿易は活発になって経済成長はあった、雇用はなくなっていないという、CBOは割と中立的な機関なわけですね、と評価をした。NAFTAによる影響では減っていないと書いているんですよ。じゃ、何で減ったのかといろいろ調べてみますと、労働移動が起きているんですね、やっぱり。メキシコから単純労働者が行っています、カナダからは高度技能者が行ったりする、その結果としてアメリカ雇用が奪われたという私は結果だと思っているんですよ。  そういう意味では、雇用のところ、今回は基本的には日本の出入国関係、難民認定法は改正はありませんし、そこは触っていないわけでもありますし、とはいっても、この労働移動はとても重要と思っています。貿易によって非生産的部分から生産的部分に移るとなると、人が移るか移らないかによって国内益が違うわけですね。この労働の問題を貿易協定するときにどう取り組めばいいのかという点、二点目、お聞きしたいと思っています。  三点目は、中小企業の関係でローカルコンテントの話がありました。今回のTPPはローカルコンテントを要求してはいけないと書いてあるのが問題だと御説明もあったんですが、このローカルコンテントで困ったのは実は日本中小企業だったんですね。日本の自動車メーカーがアメリカに行ってこれ要求されて、泣く泣く進出させられた。それが要求されなくなると、一応いながらにして輸出できると。逆に言うと、もろ刃の剣だと思うんですよ。確かに、地域の自分の地場産品を提供もできないんだけれどもと。このローカルコンテントについてはどういう今後立場を取っていけばいいのか。  この三点についてお聞きしたいと思います。
  47. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 最初の御指摘は、今後の貿易をどういう仕組みで展開していくかということに関わることだと思います。  一つ確実に言えることは、この世界の中で経済成長をかなり展開している地域というのは東アジアということになります。つまり、経済成長しているところと貿易するというのは非常に日本にとっても重要なポイントになるわけです。  それで、このTPPに関して言いますと、その前、二〇〇九年の段階で、政権交代があったときの鳩山総理大臣が東アジア共同体路線というのを九月の国連総会で出して、それでアメリカのさる高官がそれに激怒したと。ここから東アジア共同体かTPPかという、そこに来ているわけであります。私は、つまり東アジア共同体、その東アジアを軸とする、言わばお互いが利益があるウイン・ウインの関係ですね、そういうような協定を地道に作っていくというのが僕は重要だと思うんですよ。それが要するにアメリカによって潰されたと。だから、鳩山さんの精神というのは私はなかなか立派だと思うんですよ。  それで、だからそういう東アジア軸にするところの、お互いが利益になる、しかも農業とか中小企業その他全て含めてですね、そういうことを言わば地道に考えてやっていくと。このTPPというのは極めて粗っぽいですよ、非常に粗っぽい。もうとにかく多国籍企業をいかにうまくビジネスさせるかという、それしかないというのが私は最大の欠点だと思っているところでございます。  それから、二番目の労働に関して申し上げますと、確かにNAFTAが本当に、おっしゃられたように、それを計測するのは難しいと思います。  ただ、一つメキシコの関係でいいますと、これは一般的に言われていることですけれども、NAFTAによってアメリカのアグリビジネスが急速にトウモロコシその他の農産物をメキシコに輸出して、そしてその農家を潰して、それでその辺の土地を集めて、それで効率的な要するに農業システムをつくった。効率的ということは人が要らないということですよ。ですから、そのことによってたくさんの人が要するに農業からはじき出されて、それが言わば不法移民となってアメリカに行くし、それから、そこで作った様々なトマトだとかピーマンだとか、いろいろな製品、またアメリカ輸出して、メキシコから、それでアメリカの零細農がそれで潰れていくというような形の言わばアグリビジネス、大企業を軸とするシステムになってしまったんですね。そこが今の労働問題、つまり壁を築けというような、こういう非常に極端な主張の一つの根拠になっていると。ここがやはり大変重要なポイントではないかというふうに思っております。  それから、ローカルコンテント。おっしゃるとおり、確かに御指摘の面があると思います。私が申し上げたのは、要するにバリューチェーンをつくっていくという中で、多国籍企業が、自分が不都合なものは全て排除して、それで自分一人がその中で利益を占めていくという、そういうシステムはいかがなものかと。企業を呼んで、それでもってその地域の経済を活性化していくということを考えれば、その地域企業をいかに育てていくかということだってやはり考えていくべきものだろうと私は思うんですよ。  ところが、TPPというのは、先ほど申し上げたとおり、非常に粗っぽい貿易自由化投資協定でありまして、そういう形では一部の企業の利益だけで、ほかの企業が、言わば非常に、あるいは人たちが、農民でも労働者でも不利益を被ると、そういうことを申し上げたということでございます。
  48. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 ありがとうございました。  済みません、住江公述人、聞けなくて申し訳ございません。不手際で申し訳ございませんでした。  終わります。     ─────────────
  49. 林芳正

    委員長林芳正君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、藤木眞也君委員辞任され、その補欠として宮島喜文君が選任されました。     ─────────────
  50. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門です。  本日は、本当にお忙しい中、ありがとうございます。  本当に、公述人方々から御指摘があったとおり、なぜまだTPPここで審議しているのかということだと思います。本当に、トランプさんが離脱を明言して、アメリカ抜きに現在審議しているTPP協定発効しないわけですから、それを承認しても意味がないわけですね。ところが、どうしても安倍さんとか与党の皆さんは承認してくれということで、私たちも困っているんですけれども。なぜやったのかと言われたら、本当にそういうことだと思います、国民感情から言ってですね。  とにかく、一旦離脱を決めた後のアメリカの対応はもう二つぐらいしか考えられなくて、一つは、元々日本は嫌がっていましたけれども、二国間FTAを求めてくると。もう一つは、すぐTPP枠から外れなくても、共和党の今の動きがありますので、再交渉して、より有利なTPPに再交渉するというようなことしかもうアメリカの対応はないというふうに思います。それを無理に安倍政権が応じようとすると、当然、こちらから要求をのみますよというようなことになっちゃって、何といいますか、日本の方から、日本に不利な不平等条約をこちらから求めるような、まさに国益と主権を侵害するような形になるのではないかと思うんですけど、突き進もうとしているわけでございます。  そういう下での今日の公聴会ですので、TPP協定案そのものがどうかという議論よりも、余り意味を成しませんので、今後のことも視野に入れますと、日米の経済関係、貿易関係が今までどうだったのかということも含めて、今後どうなるのかということも含めて、そういう点に絞って、力点を置いて公述人の皆さんの御意見を伺いたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、経団連根本さんに伺います。本当、よく今日はおいでいただきまして、ありがとうございます。もう反対の意見の方ばかりの中で、御苦労さまでございます。  先日、安倍総理と私、議論したときに、今日ありました、自由貿易グローバル化といってももう世界的に見れば富が一部に集中して貧困が広がっているじゃないかと。これ、安倍総理も認められて、それはそれぞれの国の再分配の問題ですというふうにおっしゃったんですね。それも一つあると思うんですけれども、せっかく経団連から来てもらいましたので、その再分配のことを一言聞きたいんですけれど、安倍総理は、そのときも私の答弁で申されたんですけど、今一生懸命財界に、経団連の皆さんに賃金を上げてほしいということを一生懸命求めているんだと。この間もずっと何年か求められて、ただ僅かな引上げですよね、上げられたのは確かですけど、一部ですけどね。  利益が上がっているときは先行きがまだ分からないからということで抑えぎみ、利益が下がるともう上げないと、これではもういつまでたっても上がらないわけなんですけれども。やっぱり内部留保もたっぷりあるわけですから、しかも総理大臣があれだけおっしゃっているわけですから、もう少し真剣に受け止めて、賃金引上げ、本格的に踏み出したらいかがでしょうか。
  51. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 一人で頑張っているとのお褒めをいただきまして、ありがとうございます。  賃上げについてでございますけれども、現在の会長を頂きまして後、過去三年間、大企業については二%を超える賃上げを行ってまいりまして、これ過去に例がない形で行ってきております。中小企業におきましても、一・八%程度の賃上げが過去三年間行われてきたという実績がございます。  残念ながら、非常に社会保障にお金も掛かるということで、賃上げの効果はその部分で多少薄れるところはございますけれども、今後とも賃上げのモーメンタムは維持したいということで、現状少し景気減速ぎみのような印象もございますので、そういう環境の中で、引上げができる企業については更に引き上げていっていただきたいというモーメンタムを維持しながら今後も取り組んでいきたいということで、来年の春季労使交渉におきます経営側の方針につきましては一月に出させていただく予定としてございますけれども、引上げのモーメンタムは、繰り返しになりますが、維持をしていきたいというふうに考えているところでございます。  なお、内部留保の御指摘を頂戴いたしました。こちら、ちょっと言葉が悪いような気はいたしますが、投資その他に相当程度回っている部分でございまして、手元に現金が残っているわけではございません。現預金につきましては、企業経営上必要な資金として、一・三か月分ぐらいの経営に必要な資金が手元に留保されているということであろうかというふうに理解をしてございます。決して多い金額ではないということでございます。
  52. 大門実紀史

    大門実紀史君 内部留保を全部崩せと言っているわけじゃありませんし、まだ賃上げ一部ですから、本当に努力してもらいたいと思います。  実は、再分配の問題以前に、この自由貿易というのは、もうけ方の問題、分配する前のもうけ方の問題なんですよね。つまり、多国籍企業が世界中動き回って、自分たちの利益を最大化するところで世界的な賃金の低下が起きて失業が起きるというような、まず、もうけ方の問題が問われているということでございます。  そういう点で、内田公述人に伺いたいのは、もう自由貿易保護主義かというレッテルを貼って、そんな議論ばかり、半世紀前の議論と答弁ばかりやっているんですよね。そうじゃないんですよね。我が党も貿易の発展とかグローバル化は何も否定しておりません。ただ、今の自由貿易は、内田公述人からもあったとおり、やっぱり多国籍企業の利益を最大化するためのルール作りと。これはTPPもそのうちの一つだと思うんですね。それが各国であれだけのTTIPもCETAも反対運動を起こしているんだということだと思います。  今求められているのは、逆に、これから更に、自由貿易といいますか、貿易関係を発展させようと思うと、今、一つの戦後の自由貿易は壁にぶつかっていると思うんですよね。余りにも利益が、多国籍企業だけもうかっていると。もう一つルールを作らないとこれ以上発展しないんじゃないかと。  つまり、国民のためのルールといいますか、雇用とか賃金とか社会保障とか、農業とか大事な食料自給率、人権とか環境とか、そういうルールをきちっと今こそ貿易ルールの中に作ってこそ次の貿易の発展があるというふうに考えるんですけれども内田公述人は世界の市民団体の方々と交流があると思いますので、ちょっと世界の動きといいますか、市民団体の方々動きを御紹介してもらえればと思います。
  53. 内田聖子

    公述人内田聖子君) ありがとうございます。  既にほかの方の御質問でも幾つか触れましたが、まさにおっしゃるとおりだと思います。  今、貿易の在り方自身が問われているということを申し上げました。これ、別の角度から見ると、企業と国家、この二つのアクターの関係の改善というか、これもやっぱり見直しを迫られていると思います。戦後の経済発展の時代は国家が企業を後押しして、もうどんどん外に出て、今は中小企業でやられていますが、そういう関係性だったんですが、今や、繰り返しになりますが、一企業一つの国家予算よりも財政規模が大きいとか、もう企業が国家をのみ込んでいくと。そして、国家の方が法人税どんどん下げて、どうぞうちに来てくださいというふうに呼び込まなければ国が立ち行かないということで、投資の呼び込みなどが行われている。つまり、関係性は完全に変わってきているんですね。ですから、古いモデルの貿易ルールではこれは対応できないということは明らかです。  TPPは、そういったことを受けて、企業の自由を更に拡大するようなルールになっているわけです。しかし、これも行き詰まっているという中で、先ほど申し上げたように、ISDをどうするのかとか、環境の規制や公衆衛生、これをどうハーモナイズさせるかということが主要な議論になっています。  TPPはとりわけ関税の問題よりもルールの話なんですね、圧倒的に大きいのは。このルールというところがやっぱりポイントなんだと思います。ルールというのは、各国の規制や法律を一元化していくという交渉をずっとしてきたわけですね。当然、各国の多様な文化や歴史や経済状況、これは、そこと矛盾してくれば社会的なきしみが起こったり貧困層が生まれたり失業が起こったりと、そういう矛盾が今出てきているという状況だと思います。  ですから、私は、やはり多様性を維持しつつ、その国の文化や価値観、経済規模を生かしながら、しかしグローバルなルール作りを進めるということです。  欧米ではこの議論はもう盛んに先ほども言ったように行われています。例えば、タックスヘイブンみたいなものをもう少し何とかならないかということで国際ネットワークもつくられていますし、アメリカでは、日本でも著名ですが、スティグリッツ教授やバーンスタインさんのような有名な経済学者が市民団体と一緒になって、このニュールール貿易のためのニュールール、今言ったような環境とかISDの改善策もたくさん盛り込まれている、こういったことを議論して、それを国会議員の皆さんにどんどんどんどん提案しているという状況です。  ですから、繰り返しになりますが、日本も、やはり多様性とか地方ですね、地方の主権とか文化を大切にしながら、しかしグローバルにもアダプトしていく、接合していくようなルールというのをとにかく急いで、市民社会議員や専門家の人がとにかく大急ぎで知恵を集めて議論していかなければいけないと思っております。
  54. 大門実紀史

    大門実紀史君 次に、萩原先生に伺います。  萩原先生、もうアメリカのこと御専門ですし、いっぱい聞きたいことがあるんですけど、せっかくですから、安倍政権がTPP成長戦略の要だと言っている意味なんですけれども、実はこの意味は、決して、日本企業海外に出ていく、これだけではなくて、日本の中の構造改革といいますか、これはアメリカの後押し、あるいはアメリカ企業も要求していると。アメリカ企業と一緒に日本企業は、例えば医療とか農業とか、こういう分野市場原理を組み込んで更にもうけの場にしようというかですね。  実はこの日米関係、アメリカの圧力とかアメリカの要求ということだけを捉えがちなんですけれど、根本さん来られていますけど、日本の財界、日本の多国籍企業も一緒になって、このTPPをきっかけに、あるいは自由貿易協定をきっかけに、日本の中の医療とか農業とかその他の分野をターゲットにしようということがあるような気がしてならないんですけれども、萩原先生の御意見を伺いたいと思います。
  55. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 今から五年前、二〇一一年二月でしょうか、予算委員会に呼ばれまして、TPPをどう考えるかという、その中で私は、これはもし実現していくということになれば第三の構造改革になるだろうというふうに言ったことがございます。橋本内閣が第一で、その次の小泉構造改革が第二だとしますと、その後の改革としてこれが出てくると。小泉さん、あるいは橋本さん、それなりの改革をやりましたが、残っている大きな部分は農業とそれと医療と、こういう関係にありますので、もしTPPということで日本が突き進むということになれば、そういうところを、財界を中心として農業、医療というのを成長戦略の中に入れているわけであります。これは中長期の日本のアベノミクスの重要な部面でありまして、そういう部面を要するに市場化していくというのが基本的なやり方なんですね。  ということは、アメリカが要求してきているものと現在日本の財界が要求している点がまさに一致しているということが非常に私懸念されたわけです。それでそういう第三の構造改革という言葉を使ったわけでありまして、まさにこのTPP、これはもう成立しませんので、ですけれども、またそれに代わるアメリカは恐らく二国間交渉を求めてくるでしょう。そういうようなプロセスの中で日本の財界と米国の財界が手に手を取り合って市場原理を全て貫かせていくという、そういう点に関して私は大変危惧を持っているということでございます。
  56. 大門実紀史

    大門実紀史君 住江公述人に伺います。  国民皆保険制度がこのTPPによって崩壊させられるんじゃないかという危惧がずっとあるわけですけれども、主な論点としては、薬価制度、もう一つは混合診療、この二つの、薬価制度が廃止されたり混合診療が解禁されることによって日本の皆保険制度が崩されていくんじゃないかという危惧がずっとあったわけですね。  先ほど大丈夫だ大丈夫だという答弁があったんですけど、昨日、我が党の田村智子議員が、薬価制度がいかに今までもアメリカの要求で変えられてきて、今度もしもTPPが、もうないですけど、TPPに入ったら、あるいは二国間協定の中で、必ず更にその仕組みの中で要望をのまされて日本の公定価格的な薬価制度が崩されると、アメリカは自由価格ですから、ということを取り上げたわけでありますけれど。  もう一つの混合診療なんですけれど、今回対象にしないということですが、実は、規制改革会議、規制改革推進会議にですね、外資のメンバーが加わって、物が言える仕組みを今回はめ込んだわけですね。これは恐らく内田公述人からあった並行協議の中でも、こういう何か片務的な、従属国家的な流れが続いたら必ず、更に続くと思うんですけれども、つまり、ISDSとか訴えなくても、日本の国の政策を決める会議にも直接アメリカ企業参加すると。そうしたら訴えなくたって政策作れるわけですね。その点でいきますと、混合診療も、実は規制改革会議が提案したり、産業競争会議というのがあるんですけれども、そういうところが国家戦略特区という形で、混合診療を解禁しろという圧力に対して、取りあえず設けるわけですね。なかなか抵抗して、取りあえず審査のスピードアップだけしますというふうになっているんですけれど、この規制改革会議とか産業競争会議に外資が入ってきて、特区という形で混合診療が解禁される方向にもう既に踏み出しているわけですよね。  そういう点でいきますと、混合診療も対象外になっているからといって安心だということではなくて、既にもう進んでいるわけですけれども、混合診療解禁が日本のこの皆保険制度を崩す危惧について、御見解があれば教えていただけますか。
  57. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) 特区から切り崩していくというところについては冒頭の意見陳述で述べさせていただきました。今また大門議員から、そんなことをやらぬでも、そんなまどろっこしいことよりも、そういう政策決定の段階でアメリカ資本ないしアメリカの代弁者がそういうところに入ってきて直接制度設計されるという危険、まさにそうだと思っております。  そういう中で、先ほども舟山議員の質問でもお答えさせていただきましたように、最終的にアメリカの製薬資本なりアメリカの野望というのは、やっぱり医療のところで最大限のもうけを獲得したい。そのためには、公定価格である診療報酬とかそういうところを切り崩していって、自由診療、自由競争、そういうところを狙われているんですけど、これについては我々医療者にとっては本当に大きな抵抗あります。  日本医師会の倫理綱領でも医療の営利については厳に規制も掛けておりますし、私ども医療関係者として、やはり目の前の患者さんに医療を提供する。これは、皆保険制度で本当にいつでもどこでも誰でも過重な経済的な負担なしに一定の医療を享受できるという、この皆保険制度があってこそ我々本当に余りそういう面で悩ましい思いをせずに医療を遂行できているわけです。ここが切り崩されますと、本当に、この薬をこの患者さんに提供できるんだろうかという、そういう思いでもって医療を一つ一つチェックしていかなければならないという、こういう悩ましい問題が、これは誰を不幸にするかということ、医者では決してないです、やっぱり患者、国民です。  やっぱりそういうところに大きな危惧を持っていますし、そして先ほど萩原先生への質問にもありましたけど、アメリカのそういう圧力も利用して本当に日本の社会を変えていく。究極的には新自由主義国家づくりだと思います。新自由主義国家づくりというのは、国の役割は、司法、外交、軍事、徴税、社会福祉、そして公共事業、もうここには完全に社会保障という概念は抜け切っているわけですね。社会保障を空洞化して、そこで浮いたそういう金額をどこに回そうとするか。結局、大資本の世界戦略のために成長戦略に回されるという、そういう国民、労働者の生きるその糧を、本当に命を懸けてそういうところに奉仕せざるを得ないという、そういうもうじくじたる思いが、やっぱり国民全てが持つべきだと思っております。  以上です。
  58. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。     ─────────────
  59. 林芳正

    委員長林芳正君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、高野光二郎君が委員辞任され、その補欠として石田昌宏君が選任されました。     ─────────────
  60. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。日本維新の会の石井苗子です。  公述人の皆様、先ほどから意味のある御説明、いろいろいただきましてありがとうございます。また、長丁場にわたりまして、私でちょうど中間地点でございますので、大分お疲れだと、皆さん、思いますが、付いてきていただきたいと思います。  私、この間、北海道で公聴会に出てまいりました。お一人お一人の公述人の方の御意見を聞いてまいりますと、やはり自分が関心のあるところだけは深く調べるんだけれどもTPP全体がどうなっているのかということを考えると、およそ情報が足りなくて、説明会も行ったことがないし、どうなるのか大変不安であると。だけど、何とかしていかなきゃならないと思っているのは畜産業も農業も同じ気持ちですと。つまり、少子化高齢化ということはもう長いこと言われてきた、その中で日本がどうやって生き残っていくのかということが経済なんじゃないかと。そこで日本がどういう立ち位置にあるのかというのは、今本当に国家の分岐点にあるのではないかと私個人も思っている次第です。  そこで、先ほどからお聞きしておりますと、アメリカの次期大統領トランプ氏が表明をする、TPP離脱と、こういうはっきりしたコメントを出した中において、今後の日本の経済についてどのような課題があり、そしてどのように認識しているかということにつきまして、今日は経団連の常務理事の方いらっしゃっているということで、お会いしたことないんですけど、私、何か先ほどから、よく出てきてくださいました、ほとんど反対なのにとか、いろいろ言われているみたいですけれども経団連というお立場があって反対できないのかもしれないなと思って聞いておりましたが。  こういう構造改革の分岐点にあるときに、やはり、なぜぶれずに、国民は、トランプ氏が離脱すると言ったのにどうして政府はまだ議論を積み重ねているんだろうかという、もう本当に単純な疑問があると思うんです。どうして無駄でないのかという、なぜ無駄でないのかというぶれない発言をしないと国民が理解を示さないと思うんですね。  私、日本維新の会を代表してここに立っていますけれども、やはりどの政治家であっても一度言ったことには責任を持たなきゃならない。そのときに、向かうところ敵がいっぱいあっても、自分はこう思うから無駄じゃないと思うんだという、その御意見をいただきたいと思います。超高齢社会の到来において、世界の経済とその戦略ということで、TPPに書かれてあることの意義と新しい自由貿易体制の重要性、これを考えること、これはなぜ、どうして無駄ではないのかということを根本公述人に御説明をお願いいたします。
  61. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  この段階においてなぜ必要かというところにつきまして、考え方を述べさせていただきたいと存じます。  冒頭の発言の中でも申し上げましたとおり、TPPそのものは検討過程におきまして非常に高いレベルのスタンダードを追い求めてきたと、それ自身がそれ以外のEPA協定交渉あるいはサービス交渉等に良い影響を与えてきたということがございます。まだ交渉途中でございます。これに対して、現時点で諦めたというようなメッセージを発出いたしますと、ほかの協定交渉にも影響が出てくるということがまず一つ挙げられようかと思います。  加えまして、更に重要なことは、トランプ次期大統領が就任初日にどういう言葉でどういう形の発言をされるのかということを私どもは現時点において承知をしておりません。TPPが完全に死んだ形になっているのかどうか、これは現時点では分からないということを申し上げた方がよろしいかと思っております。  ガラス細工のようなという表現が時になされた形もございますけれども、非常に高いレベルの協定が十二か国の英知によって一応協定案としてまとまっておりますので、米国がどのような形になるか、最終的に見極めが付くまでは各国は当然批准に向けた努力をなすべきであろうと。そうでなければ米国の翻意を促すこともできないであろうというふうに考えております。これまでの努力を無にするようなことは私どもはすべきではないというふうに考えますし、これまでの努力を形あるものに仕上げていくことこそ今なすべきことであろうというふうに思っています。  世界の今後のEPAのスタンダードにもなり得るようなTPPでございます。是非、国会の先生方におかれましても御理解を賜り、批准への努力をお願いできればというふうに考えるところでございます。
  62. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  自由貿易体制の中で掲げた理想をどう実現していくかということについて各国に協力を求めるということで、承認するということは日本が国家的な意思を示すということになると思います。発効はしないかもしれないが承認は進めていくのだということで、加わりますよという、こういう意思を示すということが、日本の影響力、とりわけ経済力ということで力を示すことになるのかどうかというのが今後の課題だと思うんですけれども、私は、TPPが例えば発効しなかった場合でも、投資や知的財産権の保護などで高度な水準のTPP協定を、今後の世界の自由貿易体制や広域のFTAやEPAルール作りの理想的なモデルになることを目指して、日本はこう考えているんだという、発信していく力を持つことが必要なのではないかと考えますけれども、その発信力を強化するという意味において、この承認に向けて議論を重ねていくというのはどのようにお考えでしょうか。
  63. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 発信力、発信の源となりますのは、まさに先生方におかれまして批准の手続をお取りいただく、採決をしていただくということこそが世界に向かっての一番強いメッセージになるものと考えてございます。私どもは、経済界なりに、各国経済団体その他に対しまして、日本は必ずやるので皆さんと共に歩みましょうというメッセージを発出しておりますが、国としての最大のメッセージは、現時点におきましては国会からのメッセージではないかというふうに考えるところでございます。
  64. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  アメリカの次期大統領トランプさんですが、アメリカ・イズ・ザ・ファーストという言葉を発しております。アメリカが一番なんだと、そういう気持ちを言葉にするトランプ候補が勝ったわけですけれども、今、皆さんの御発言聞いていますと、アメリカが抜けた後にそのほかのTPP参加国、希望している参加国が何を考えているか、中国のチの字も出てこないんですけれども。  根本公述人はこのバランスを、私は、アメリカはこれは、TPPアメリカにとって得になると思ったらああいう発言はしなかったと思うんですね、損になると思ったから離脱すると言ったんだと思うんですけれども、そういう全体の経済、世界経済とその戦略について根本公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  65. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  アメリカ・ファーストの中身については、今後個々に明らかになっていくものであろうというふうに思います。それから、TPPそのものについてトランプ次期大統領及び次期政権の枢要な地位を占められる皆様方が細部にわたりどこまでその影響度について御検討をなされているのか、残念ながら私は現時点において存じ上げません。必ずしもアメリカに不利になる協定というものではないと思います。最終段階におきまして、先ほどガラス細工という形をいたしましたが、参加各国がそれぞれの痛みを分かち合い、有利な点を、パイをシェアし合う形で、最大の経済的な効用を追い求め、それぞれが合意したものがTPP協定として仕上がっているのだと思います。  こういったWTOのドーハ・ラウンドが機能しなくなっているというお話を冒頭申し上げましたけれども、そういう中にあって、こういうEPA型のものを積み重ねていくことこそが世界全体の自由貿易の促進、グローバル化の新しい形を追い求めていく形になろうかと思っておりますので、今の流れを止めない、今後も自由化の流れを追い続けていく、日本としてはその先頭に立っていくんだというメッセージを是非頂戴できればというふうに思っております。
  66. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  中国に対するコメントがなかったんですけれども、時間の関係もありますので次に参ります。  TPP協定は、我が国の産業の発展、成長について大きな影響があると思いますが、どのようなメリットをもたらすのか、特に産業の空洞化について今までよりどう良くなるのか。  先ほど来、日本にいながらにしてという、現地調達、ローカルコンテントというのが話題になっておりますけれども、産業の空洞化ということが言われております我が国雇用の確保に今までとは違ったどのようなメリットをもたらすのかが企業海外展開に当たっての課題ですけれども、これまではこうした障害があったけれどもTPPだとそれがどのように解決できていくのだというような例を具体的に挙げて、根本公述人に御説明していただきたいと思います。
  67. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 中国の件、失礼をいたしました。  アメリカ抜きになると中国の影響度が強まるよと世上言われておりますが、今後の交渉次第の部分もございまして、日本としては当然日本がリーダーシップを取って高いスタンダードを追い求めていくべきだというふうに考えております。  今御質問いただきましたローカルコンテンツ、雇用の確保、海外展開等々につきましてでございますけれども、明らかに累積原産地の形になりますと日本国内にいながらにしてと、今先生御指摘のとおりの状況が生まれますので、日本国内雇用維持ができますし、二国間のEPAではこういった形のものは難しいというふうに思っておりますので、TPPこそがそういう問題を解決する一助になるというふうに考えてございます。  その他、中小企業につきましては、輸出に対する支援策等々も政府サイドにおいて相当程度取られつつあるということでもございますし、あと、協定の中で各国一つ市場になるような共通のルール化というのがなされますので、一か国ごとに対応を変える必要がなくなるという意味だけでも相当程度のコスト削減効果が見込めますし、一つのマーケットとして全体を見ることができるようになりますので、相当程度有利な市場を獲得できるという部分が一番大きいかなというふうに考えております。
  68. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございます。  ちょっと、TPPがどうなっていくのか、あるいは、ない方がいいと、反対派が多い中、日本がこれを掲げて突き進むというには少し力が足りないかなというふうに感じているんですが。  歴史を振り返りますと、貿易の形が昔と違ってきたんだとさんざん聞いてきているんですけれども、世界というのを見ますと、大変苦労してWTOの前身でありますGATT、ガットに参加するときに、日本に対して差別意識があって、経済を追い詰めていって、日本はいいものを安く作って諸外国で売るんだということで突き進んできた。どうも、経済というのはビジネスですので、もう日本が優秀だとなると追い詰めていってなかなかガットに入れてくれず、仮加盟国になってからWTOに入ったという歴史があるんですが、私は、今分岐点にあると思っているのは、日本が超高齢社会であるんだということは世界中が恐らく知っているんだろうと思うんです。  そこで、この世界において、TPPという一つの八億人の市場のリーダーシップを取っていくという意味で、今後日本は諸外国に対して何を言ったらリーダーシップを取って、アメリカに向けても理想を実現するような国として提言して、その発信力を持っていくことができるのか、こうしたらできるというのがあったら、根本公述人に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。最後の質問にいたします。
  69. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  現在、本日のTPPのお話と直接はリンクいたしませんが、海外向けに発信しておりますところに、日本としてはソサエティー五・〇として、日本の優れたIT技術を利活用しながら社会課題を解決をしていく力を日本国内で示し、それを世界に対して示すことこそが日本の、課題先進国たる日本のあるべき姿であるし、我々はそれを追い求めていこうということで活動をしております。  そういったICT系の技術、あるいはシステム技術になろうかと思いますけれども、そういうノウハウといったものはソリューションビジネスとして海外にそのまま御提供することができ、海外で今後高齢化あるいは少子化に苦しむであろう諸国に対して社会課題の解決策をセットで御提供できるという形になっていこうかと思います。それこそが日本の進むべき道ではないかというふうに考えるところでございます。
  70. 石井苗子

    石井苗子君 ありがとうございました。これで終了させていただきます。
  71. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 自由党の森ゆうこでございます。  本日は、公述人の先生方、大変有意義な公述、ありがとうございました。  でも、どうしても最初にこれを言わなきゃいけないのが大変残念なんですけれども、明らかにTPPはもう発効しない。客観的に見て分かる状況の中で、なぜこの参議院で公述人の先生方に来ていただかなければならないのか、更に進めなければならないのか、これが本当にどうしても私には納得できません。  日本の選挙の公約と違って、TPP反対、断固反対、うそつかないという、選挙が終わったらすぐひっくり返るような公約ではなくて、トランプさんのは、あれは契約なんですよね。  ちょっと最初に、萩原先生、アメリカのことをよく御存じだということですので、このTPPから離脱するというトランプのこの公約というのは、これ覆ることがあるんでしょうか。あっ、トランプさんです。
  72. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) いや、それはトランプ氏に聞いてもらうのが一番いいと思うんですが。選挙のときに公約をした、確かに事実そのとおりでありまして、私は、しかも、あのAPECが終わったときに、自由貿易から保護主義だ、保護主義はけしからぬと、こういうような形でトランプ氏を暗黙に批判するようなそういう論調に対して、彼の意向というのは、敢然と、TPPから離脱すると、こういうふうに言ったということは、これは本気であります。  これは、それじゃ、何を考えているのかということですが、決して私は全て、アメリカTPPから離脱するので日本がそれで、はい万歳と、こういうわけにはまいりませんで、二国間協議で進めると、こういうふうに彼は言っているわけであります。これはできるかどうか分かりませんが、トランプさんの頭の中には、アメリカの産業を再生するためには投資を呼び込むことが必要だというのがあります。つまり、法人税を一五%に引き下げるということを言ったのもまさにそのとおりでありますし、それから日本に対しては、牛肉が三八%の関税はけしからぬ、自動車は二・五%じゃないか、これを三八%に上げるぞと、こういうようなことを言っているわけであります。  ということは、何を言っているかといいますと、これは根本公述人に聞いた方が分かるかと思いますが、日本の自動車産業というのはかなりアメリカにあるいはメキシコに進出しているわけですけど、彼の心とすれば、そういう脅しをすることによって日本の自動車産業を更にアメリカに引き寄せる、あるいはNAFTAを再交渉して、その関税をですね、築くということによって、言わばメキシコに存在しているところの企業アメリカに引き寄せると。それが一五%のまさに法人税ですよと。こういう形で恐らく展開してくるというのが私の読みですね。それは、まあ間違っているかもしれません。  しかし、彼がやはり産業を再生したいというふうな気持ちを持って、そして、従来は民主党に投票していたあの中西部の寂れた地域の労働者諸君に檄を飛ばして、それで票を取って大統領になったということは彼自身が思っていることでありますので、やはり、できるかどうか分かりませんが、そういう方向で産業の再生を図りたいというふうに考えているんだと思います。  つまり、現在、このTPPという形で協定が進んでおりますけれども、もう三十年来進んでおりますまさに規制緩和と市場開放と、そして企業がグローバルに展開するというこの仕組みに対して多くの国で批判が出てきたと。これが今日、ヨーロッパもそうですし、あるいはアメリカもそうですし、いろいろなところでこの動きを何とか変えたいというその気持ちが恐らく表れているんだろうと思います。  私は、仮にTPP締結されなくても、今までの体制が壊れるわけではないんですよ。日本TPPから離脱すると世界の孤児になるとか何かをよく言われましたけれども、しかし現在、ガットそれからWTO、全て日本はそれに参加して、様々な二国間協定、こういう形で自由貿易が進んできているわけですから、仮にTPP締結しないとしても、根本公述人は、いや、それはあり得ないとおっしゃると思うんですけれども、私は決してそうではないというふうに考えております。  以上です。
  73. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 ありがとうございます。  私もおっしゃるとおりだと思いますし、むしろ、先ほどもお話がありましたけれども自由貿易保護主義ではなくて、そもそも自由なのかと。自由というのは、自らの自由を追い求めるだけではなく、もう全ての人々の自由というものを尊重し、本当にお互いにそういう自由なルールの中で公正に行われるべきだというふうに思いますが。  先般、本会議日本共産党の紙智子議員代表質問されたときに、議場は大変大きな拍手があったと思います。すばらしいTPPに関する質問だったと思いますけれども、みんなで、どこかで聞いたことあるね、この論点というふうに言っていたんですけれども、ああ、そうだ、自民党が反対していたときと同じこと言っているというふうに私もちょっと議場で言ってしまいました。  つまり、本来、今、日本がやるべきことは、行き過ぎた弱肉強食のカジノ資本主義といったものを正して、本当の意味でどの国も公正に発展していけるような本当の新しいルールを作るべきであって、TPPにいつまでもしがみついているのではなくて、この際、正しい新しい国際的なルールを作ろうと呼びかけるべきではないかと思いますが、内田公述人からは先ほど来そのような話がされていると思いますので、改めて、我が国がそういう新しいルールを提唱し、世界全体をリードしていくことが非常に重要だということについて、改めて少しまとめてお答えをいただきたいと思います。
  74. 内田聖子

    公述人内田聖子君) ありがとうございます。大変大きな御質問だというふうに理解しております。  一つは、先ほど申しているように、今どういう貿易ルールであれば全ての人が幸せになり、環境や人権などにも配慮しつつ、持続可能な発展ということを開発の用語では言いますが、それぞれができるのか、それが国際社会の大きな論点です。  ただ、悲しいかな、日本は、研究者や専門家、市民社会、NGOも含めてこの議論には追い付いておりません。ですから、今の御質問に即答して答えると、まずその議論のレベルに追い付くということが我々にとっては必要です。ですから、リードして何とかというところは、ちょっと私、率直な思いとしてはまだおこがましくてできないというか、まだまだ力不足と。つまり、保護主義自由貿易かみたいな議論を延々としているような社会においては、新しいルールといっても環境や人権というようなところがまだ見えていない、これは我々にとっての課題だと思います。  しかし、共通して言える問題は、このTPP議論を今日も含めてやってきた中で私たちの目にもかなりクリアになったと思います。何が問題なのかということ、そして、それに代わるものがやはり必要なのだということですね。  これは、じゃ、すぐ自由貿易の次の協定が来ればいいというそういう話ではなくて、パラダイム自体を変えなきゃいけない、レジーム自体を変えなきゃいけない。なぜかというと、もう今のルールでは多くの国、多くの地域で人が生きられなくなっていると。そこが根源的な問いなんですね。  貿易は単なるゲームではありません。経済活動というのは、株が上がった下がったとか為替でもうけている、そういう架空のゲームではありません。人が生きていくために必要な経済、これを、実体経済をきちんとどうつくるかということにどの国も今必死になっているわけです。  ですから、日本も同じ課題だと思っています。これはもう与野党とか関係ないと思います。国民の利益をどう守るかという真剣な議論を是非やっていきたいと思っています。
  75. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 ありがとうございます。  だからこそ、トランプさんが選挙の途中に言った、グローバル企業の利益の方が国民の幸せより優先するのはおかしい、この訴えは非常にクリアに米国民の心に届いたんだと思います。実は私、この間の参議院選挙でこれ引用させてもらいましたけれども、このことが極めて重要な問題だというふうに思っております。  そして、このTPP議論を聞いていますと、何か貿易貿易と言っていますけれども、やっぱり日本は内需の国であるということをもう一回認識すべきだと思いますし、もちろんこれから深刻な本格的な人口減少社会ですけれども、でも、しかしそうはいっても一億人以上の国民がいる、しっかりとした政策を行えば内需を拡大できるというふうに思います。そういうことをもう一度考えるべきだというふうに思っております。  それで、せっかくですので住江公述人になんですが、やっぱり安心して生きられるということを保障する、これが内需の拡大に重要なんですけれども、実は私もアメリカに、相当前ですけれども、医療、介護、福祉、障害者を支援する施設で二週間ぐらい研修してきたんですけれども、やっぱり、最近はオバマ・ケアがスタートして若干変わったとは思うんですが、アメリカの医療というのは、とにかく救急車で運ばれてきても、病状とともに、まず何の保険に入っているのか、その保険によってはお断りという、本当に命の沙汰も金次第という、そういうような医療にしてはいけないと。この日本国民皆保険をしっかり守らなきゃいけないというふうに思っておりますけれども。  改めて、今回のTPP、終わった話なんで余りしたくないんですけど、でも、TPPの中でこの医療の問題、更に問題点ありましたらお願いいたします。
  76. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) もう先生がおっしゃるとおりで、本当に内需のために何をすべきか。内需が拡大したらどういう効果がまず出るかというと、内需が拡大すると経済が大きくなります。そうすると雇用も増えます。そうしたら社会保険料収入も増えます。税金も増えます。そして財政の健全化、大きく寄与します。そして、次の社会保障の改善に予算が回っていく。そういう経済の好循環をつくる、これこそが、今そこをアクセレートすることこそが今一番大事なんです。  ですから、今こんなTPP議論している場合じゃないんです。今の貧困と格差拡大にあえぎまくっている国民の生活をどうするか。今、働く人々の二千万人が非正規、総務省発表では千九百万人の方が二百万以下、二百十六万人の生活保護受給者、これ一六%の捕捉率で、換算すると千四百万人の方が生活保護受給額以下で生活されている。そして、三・一一のあの悲惨な後、いまだに十四万一千人の方が避難所生活、八万六千人の方が福島では避難生活をされているんですよ。で、五万人の方があの過酷な仮設住宅で生活されている。沖縄には、もう戦後七十一年に至っても、あれだけの米軍基地がある、米軍の暴力下にさらされているという。そういう国民の生活困難をどう打開するか、そういうことなくしてやっぱり内需拡大はあり得ないと思っております。  ですから、TPPで、もう私冒頭に陳述しました、こういうことで今の日本の医療、公的医療保険制度を改悪されて瓦解していく、この一歩二歩がもう本当に危険なことで、断固反対するという立場で今日言わせていただきます。  ちょっと回答になっているかどうか分かりません。よろしくお願いします。
  77. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 ありがとうございます。いや、もうすごくありがとうございます。  何だか、このTPPを諦めることはもう何か全部日本を諦めることのようなことを言っているわけですけれども、完全に間違っていますからね。しかも、もう見通しが立たないものに対して、もちろん、その安倍さんの思いはいいですよ、アベノミクスの成長戦略の中核というふうに位置付けたから今ここで引くわけにいかないという気持ちは分かるんですが、でも、どうしてこんなにこだわるのって。もう失敗だって分かっているのにまだ突き進もうとする、それは信念を貫くことではなくて、敗戦濃厚で、もうこれ以上やったら国民の犠牲がもっとひどくなる、でも引き返せなかった、あのときと同じだというふうにしか見えないんですよ。だから、参議院を巻き込まないでいただきたいと。済みません、公述人の皆様の前で申し訳ないんですけど。  それで、ここまで言うと根本さんも答えにくいかもしれないんですが、ISDSについて、これ、ISDSがあるからかえっていいんだというような陳述をされたというふうに思うんですが、内田さんの方はISDSが極めて問題だというふうに言っていらっしゃるんですけれども根本さんは、いえ、ISDSがあるから大丈夫なんだと。大臣なんかは日本企業は訴えられないんだとまで、何を根拠に言っているのかよく分からないんですけど、言っていらっしゃるんですけれども、ちょっとこのISDSがあるから大丈夫なんだというのをもう少し分かりやすく説明いただきたいと思いますし、また、内田公述人からは、先ほどISDSの危険性はお聞きしましたけれども、もう一つ付け加えることがあれば、さらには、萩原先生、もしISDSに関して何かございますればお願いいたします。
  78. 根本勝則

    公述人根本勝則君) ISDSについての御質問を頂戴いたしました。  先生既に御承知のとおり、日本が既に締結しているEPA投資協定、多くにISDSが導入をされておりまして、経団連といたしましても、かねてISDSを含む投資協定締結推進を唱えてきたところでございます。  私どもの理解する今回のISDS制度でございますけれども投資家そのものが国の制度や政策の変更を求めることを認めるものではないという理解をしてございます。また、仲裁廷の判断で国に制度、政策の変更の義務が生じるものでもないというふうに理解をしているところでございまして、賠償が命じられた場合であっても、不適切な手続あるいは環境保護等を名目にした国内保護など内外差別的な事例が過去様々問題になったという理解をしてございまして、今回のTPPのISDS条項が問題になるようなことはないという理解をしてございます。  投資家にとりましては、こういう条項があること自体が一つの安心材料にもなりますので、維持をしていただければ有り難いというふうに考えているところでございます。
  79. 内田聖子

    公述人内田聖子君) ありがとうございます。  これは立場、さっきのローカルコンテンツの話じゃないですけれども投資する側なのか、受け入れる国の側なのか、これによってかなりISDの評価は変わると思います。  確かに、投資する側にとっては、TPP自体が投資家の保護を強力に書き込んだ協定ですので、当然ISDがあるのは前提と言ってもいいと思います。ただ、繰り返しになりますが、投資を受け入れる国、そして賠償金というのは国の、国民の税金から支払われるわけですから、そちら側の立場から見れば、やはり非常に問題が多い制度であると私からは言いたいと思います。  繰り返しその政府の方がおっしゃる、日本は訴えられることがないのだ、安心してくださいという言説に関してなんですが、これは見通しとしては甘いと思います。こういうことを日本政府が言っているとアメリカの友人、知人、ほかの国の方に言うと驚きます、なぜそんなことが言えるのか、根拠は何なのかと。はい、根拠レスです。確かに、これまで訴えられたことはありません。これは日本投資する側だったからですね。オーストラリアとのEPAにもISDは入っておりません。それから、EUとも今締結の途中です。つまり、訴えられるような企業の有する国とのFTAにはなく、つまりISDはなかった、ただそれだけの理由です。  そして、もう一つは、今、日本は積極的に投資海外から呼び寄せようとしていますね。これ自体はリスクを高める行為以外の何物でもありません。うまく投資がどんどん海外から呼び込めれば、それだけで投資家、企業、訴えられる可能性のある当事者というのは増えるわけですから。そして最終的には、アメリカですね、一番世界でISDを使って訴えているような国、アメリカとの初めてのISD入りの協定なわけです。つまり、もうこれだけでリスクというのは十分に高まっているということです。  そして最後に、済みません、長くなって、提訴されるような政策変更は行わないから大丈夫だという答弁がございます。しかし、これは、未来というのは予測できないです。これまで訴えられた先進国いずれも、最初何か政策をやるときに、絶対この政策は変更しないなんていう保証はありません。  例えば、気候変動対応のために巨大なパイプライン建設計画をアメリカが撤回しました、オバマ大統領が。これだって、作るときにいつか撤回するなんてことは想定されていません。しかし、アメリカはカナダの投資会社から今年一月、訴えられました。なぜなら、計画を撤回したからということ。  先ほどドイツの例も言いましたが、ドイツは三・一一の日本の原発事故を見て、脱原発政策に即座に切り替えました。すばらしい判断と思います。しかし、この政策変更がスウェーデンの投資会社からすれば利益を損ねるということで訴えられる。  つまり、今、政策変更しないから大丈夫などということはどの国の……
  80. 林芳正

    委員長林芳正君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
  81. 内田聖子

    公述人内田聖子君) どのような政府であっても確約できない、つまり訴えられることはないという主張はあり得ないという、甘過ぎるということです。
  82. 林芳正

    委員長林芳正君) 森君、時間が参っておりますので、終わってください。
  83. 森ゆうこ

    森ゆうこ君 済みません、時間ですので。萩原先生、済みませんでした。  ありがとうございました。
  84. 松沢成文

    ○松沢成文君 無所属クラブの松沢成文と申します。  これまで、今日は、四人の公述人の先生方、御苦労さまでございます。  四人のうちの三人が反対の立場ということで御意見もいただきましたし、また質問者の皆さんも、これまで同僚、先輩の議員方、大変鋭い、すばらしい質問をなされてこられましたが、方向としては反対の立場からの質問の方が多かったというふうに私思っております。  私はまだ中立なんです。TPPをやってきたこと自体、このチャレンジは評価している部分もあるんですが、最後アメリカトランプさんが大統領になったので、それでひっくり返されちゃったというか、こうなってしまったことは大変残念で、もうTPP実現するのは厳しいと思っています。  そういう状況の中で、参議院の採決が正常な形で行われるとしたらどうしようかなと迷いながら今日はちょっと質問をさせていただきますので、ちょっと逆説的な質問も多いかと思いますが、御無礼はお許しいただきたいと思います。  TPP交渉過程あるいは決まったことに対して、部分的に捉えれば、こんなもの日本にとって許せないとか、こんなもの市民社会にとっては許せないという部分は幾つでもあると思います。ただ、大局的に、国際政治の中で、これだけ十二か国の、経済の発展状況も全く違う十二か国の国が、それぞれの国内世論を抱えながら、妥協をしながら一つの方向性を目指すというチャレンジは私は良かったと思いますし、その中で、個別の分野でいったらみんな文句ありますよ。各国同士文句あるし、各団体がみんな文句ありますから。でも、何もなかった状況よりも、世界経済の発展に寄与する部分もあるし、あるいは国民生活に寄与する部分もある、一歩前進というふうに私は捉えているんですね。  さあ、ただここで、TPPアメリカ離脱ということでもう九九・九%厳しいでしょう。じゃ、その後どうするのかというのがもう委員の皆さんの疑問ですよね。アメリカを抜いてTPPの十一か国でこれを協定として作っちゃおうという意見もありますし、いや、アメリカ抜いたら価値ないでしょう、圧倒的に大きいのはアメリカですから、アメリカ貿易したいわけだし。ですから、それは無理だということで、じゃ、二国間でやりましょう、こういうこともあるでしょう。でも、私は、二国間で今日本アメリカがやったら、経済力も外交力も圧倒的に日本の方が弱いです、残念ながら。ますます厳しくなると思うんですね。そうすると、やっぱり多国間で違う形を目指すとしたら、一つRCEPありますよね。それから、もっと大きく、将来アメリカも入れてFTAAPというのもあるかもしれない。でも、今、トランプさんの姿勢からいうと、FTAAPといったって乗ってこないでしょう。じゃ、そうなるとRCEPか。  さあ、最初に根本公述人に伺いたいんですけれども、先ほど委員の質問で、TPPが駄目になってRCEPに行くとしたらどんな条項が残っていてほしいですかというのに対して、根本公述人は、もう全て残してほしいとおっしゃっていました。希望的観測だと思いますが、私は全く不可能だと思います。  中国主導のRCEPで、アメリカ・ファーストどころか中国は中国ファーストで来ますから、これ、もう圧倒的に中国の国内経済が有利になるような貿易交渉になっちゃいますよ。それで、中国というのは圧倒的に大きな人口と経済力と、それから政治力、外交力持っているんです。これがほかの国と全然違うんです。アンバランスは今のTPPの中のアメリカ以上だと思いますよ。そうなると、中国経済というのはどういうことかというと、今、中国というのは政府が為替も操作しちゃうんですね。自分たちの国内企業が有利になるように元を安くしたり高くしたり、政治がやっちゃうんです、市場じゃなくて。こういう国なんです。そして、中国というのは国営企業をたくさん持っていて、もうみんなゾンビ化しているんだけれども、改革ができないから、貿易を利用して、投資を利用して、このゾンビが生き延びるように国益守るために必死でやってくるでしょう。  ですから、TPPが駄目だったからといってRCEPに行きましょう、ますます日本は不平等な貿易交渉の中に入り込んじゃうんじゃないでしょうか。確かに日本企業は中国にたくさん出ています。でも、中国は法治国家じゃないですから、政治が後から法律作っちゃうんですから。日本企業がもうかったら、そこから税金取るために後から法律勝手に作っちゃう国ですから。それに対して世論の操作が利かないんです。共産党一党独裁で、日本のようにこれだけ意見のある議会ないんです。こっちに行っちゃったら、私は極めていびつな国際経済体系になっちゃうと心配しているんですけれども根本公述人はいかがお考えでしょうか。
  85. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 御質問ありがとうございます。  松沢先生御指摘のような懸念、当然にあり得る事態だと思っております。それゆえにTPPを今日この時点において諦めるというような対応は取るべきではないし、せっかく仕上がっている協定文書を何らかの形で発効の段階まで持っていくような御努力を続けていただきたいと、繰り返し申し上げている理由はそこにございます。  私どもは、最終形はFTAAPに行くことだろうというふうに、これも理想論という御指摘を受けるかもしれませんが、思っております。でき得れば、そのでき上がるFTAAPというのは極めて高いスタンダードに合致するような協定内容になっていることを望んでおります。もちろん、TPPが示すような全ての面での高いスタンダードというわけにはまいらないかと思いますけれども参加各国が妥協し得る最も高いレベルのものをFTAAPにおいて目指すべきだろうと。その意味において、TPPも今日仕上げていただきたいと思っておりますし、RCEP交渉も、でき上がったTPPのドキュメントを見ながら、高いレベルを目指しながら交渉をせざるを得ないんだというバックグラウンドでやっていただきたいというふうに考えているところでございます。
  86. 松沢成文

    ○松沢成文君 ありがとうございました。  次に、萩原公述人に伺いたいんですが、先ほど多国間の協定は難しいところがたくさんあるとおっしゃっていました。私もなるほどなと思ったところが多かったんですけれども、そうなると、じゃ、二国間で、韓国がFTAをたくさんやったように日本もやっていけるかと。これはこれでまた難しいところがありますよね。アメリカと二国間でやったらかなり厳しいと思います。そこで、先ほど萩原公述人が言っていたのは、東アジアのやっぱり近隣の諸国、韓国とか中国とか台湾とかでしょうか、ちょっと広げてアジアというんですかね、近隣の諸国で一つ貿易圏、経済協定を作ったらどうかという御意見でした。  ただ、ここでも私が非常に危惧するのは、やっぱり中国の存在なんですね。AIIBでしたっけ、もうとにかくアメリカ主導の開発銀行、嫌だと、とにかくお金持っているんだから、中国のお金欲しいだろうといって対抗してつくって。もうEUなんかは、経済的利益がありますから、余りアジアには国際政治上関係ないですから、すぐなびいて入っちゃうわけですね。ああやってお金に物を言わせて、がんがん周りを引き込んで、ASEANもそうです、それで安全保障も含めて、もう中国の帝国をつくりたいというふうに私は思えてならないんですね。  今その経済交渉に入っていったら、私は先ほど言ったように、中国と日本では今圧倒的に力が違います、残念ながら、腹立たしいですけど、私は。でも、その中で、中国ファーストの貿易というか経済体制にのみ込まれちゃうだけじゃないでしょうか。むしろ、FTAAPを目指すのは理想論かもしれませんけど、より価値観を同じくするアメリカやヨーロッパも含めた広い中で中国だけが得しないようにむしろ交渉をしていく、そういう政治術も日本はないといけないと思うんですね。  私は、中国、韓国、この近隣だけでつくっていくのはむしろ中国にのみ込まれて危険だと思うんですが、そこはいかがでしょうか。
  87. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) おっしゃる意味はよく分かります。しかし、現実を見てみますと、中国の経済成長というのは著しいものがありまして、現在アメリカGDP十六兆ドルぐらいですかね、中国はもう十兆ドル、日本が四・六ぐらいですか、もう完璧に中国に水を空けられているというそういう状況です。それで、貿易というのはやはり、経済成長をしている国、まさに外需ですよね、それを要するに取り込むというのが基本的なパターンということになると思うんです。それで、今やアメリカはそういう点でいえば期待はできないと自らオバマ大統領が言っておりまして、そうなりますと、やはり私ども日本も東アジアの中でどう生きていくかということを考えていかないと、将来的な道筋は極めて暗いのではないかと思うんです。  松沢先生の御懸念は非常によく分かります。しかし、そうしたことを心配してばかりいて、現実に経済成長をし、ASEAN諸国もそうですけれども、そういう諸国と友好関係を保ちつつ、そしてこちらの考えも示し、中国も、例のあのドーハ・ラウンドが駄目になったというのは、要するに、中国、インドが零細農を守りたいという、こういうことがありますよね。だから、そういう点でいうと、このTPPというのは、アメリカもカナダもその他の国も物すごい大規模農業という、そういうものを抱えている国との交渉で、日本と異質な面がある。そういう点でいえば、アジア・モンスーン地域、そういう地域の言わば農業形態であるとか企業の形態であるとか、そういうものの類似性といいますか、そういうものの中からどう折り合いを付けて東アジアの経済成長を取り込むかと、これが我が国の二十一世紀の私は課題だと思うんですね。それを無視していますと、まさに完璧に日本が取り残されると。  ですから、私は、AIIBの話がありました。このAIIBに日本はやはり参加して中国と言わばまともに交渉をしていくという路線を私は取るべきだと思います。これは恐れていたら何も物事は進みません。今や二十一世紀はもうそういう時代になっているわけでございますので、その点を私は強調したいというふうに思います。  以上です。
  88. 松沢成文

    ○松沢成文君 ありがとうございます。  日本企業も、中国市場、大きな市場です、目指して、どんどんどんどん投資で入っていきました。ただ、多くの中小企業がみんな大失敗して痛い目に遭っているんですね。もう途中でルール変えられちゃうわけです。民主主義的な法の支配がまだ確立されていないんですよね、やっぱり共産党一党支配ですし。こういうところに幾ら投資しても、後からルール変えられちゃって、もう挙げ句の果ては、日本嫌いだ、出ていけまでやられちゃう。これ、本当に危険なんですね。むしろ、私は、中国に自由や民主主義や法の支配を、これが国際的な普遍的な価値なんだということをきちっと分かっていただいてから中国と経済的に付き合わないと痛い目に遭ってしまうという心配があって、今の懸念の質問をしたわけです。  今度、住江先生にお聞きしたいんですけれども、先生おっしゃること、よく分かります。特に、保険医の立場で、薬価の問題とか、日本のすばらしい皆保険制度、これしっかり守っていくわけで、それを壊そうとしているアメリカの医療業界許せないと、そんなものはきちっと断っていいんだと。私も、そのお気持ちも分かるし、そういう部分あると思うんですが。  また、逆説的な質問で本当に失礼なんですけれども、それもアメリカが言っているわけですね。逆に言えば、アメリカの多国籍企業、医療団体が言っているわけです。中国を中心としたRCEP、これ、アメリカいませんよね。これも国際的な自由貿易協定を目指そうというものです。じゃ、こちらだったらいいというお立場ですか。非常に逆説的で申し訳ないのですが。
  89. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) いや、そんなことは一切私言っていません。言っていませんから答えようがないですけれども
  90. 松沢成文

    ○松沢成文君 分かりました。  それでは、もうちょっと聞きますけれども、じゃ、多国間の貿易協定推進していこうという自体、日本の国益に合わないというお考えでいいんですか。
  91. 住江憲勇

    公述人住江憲勇君) まず、このTPPの成り立ち、ちょっともう一回おさらいしてみていただきたいんです。  最初、P4協定というのがある。これ、お互い小国同士、やっぱり世界市場にプレゼンスつくるためにお互いちょっと融通しようと、世界の市場にやっぱり名をはせたいと、そういう純粋な思いで発足したと思うんですね。ところが、二〇〇八年九月十五日、リーマン・ショックでアメリカ雇用と富が一気に失われて、そこで、それを取り戻すのは何かということを考えられて、僅かリーマン・ショックの一週間後にアメリカTPP、これだと思って参加表明されたんですね。  ということは、そういう小国同士の、世界の市場でちょっとやっぱりプレゼンスをつくりたいという本当に純粋な、そういうところに大国が乗り込んでくるとどういうことになるか。やっぱり強者の論理、資本の論理入ってきますよ。ですから、冒頭で陳述しました、様々なことがやっぱり出てくるわけですね。  ですから、本当に貿易交渉の在り方というのは、そんなもう前世紀的な、植民地化的な経済覇権主義じゃなしに、やっぱりお互い対等、平等、互恵関係を結ぶような、そういうルールこそ二十一世紀が求められているんではないですかと思います。  ですから、このTPP、これだけのいろんな問題がある中で、相変わらず情報開示せよと要求しても、黒塗り、のり弁みたいな、そんなのでやったら、そんな交渉自体がもう今の時代にはないと。きっぱり国民は拒否する世論をやっぱりつくっていただくことが肝要かと思いますね。
  92. 松沢成文

    ○松沢成文君 最後に、内田公述人に伺いたいんですけれども、ちょっと話は飛びますが、TPP交渉の中で、国営企業、これが株を持っていて、その企業の運営も支配していると。これがはびこっていると、海外から企業が行っても同じ条件での競争ができない、政府に保護されていると。これはやっぱり、マレーシアとかベトナムとか発展途上国はまだ民間経済が育っていないですから、国がいろんな企業をつくってやっていっている途中ですよね、多いのは仕方ないので。でも、これは自由に投資をし合おうというわけですから、同じ競争条件にするためにできるだけ民営化してくださいよという方針になっていますよね。  ただ、日本もそういう企業はまだ結構残っているんです。もちろん、経済が発展していますから、ほとんど民間に、中曽根行革やいろんな行政改革をやって移譲していますけれども。それで、日本企業はどういうのが残っているかというと、政策投資銀行とか公的金融をやるところ、あるいは成田空港、羽田空港みたいな空港経営をやるところ、あるいはJRのまだ民営化されていない北海道とか四国ですよね。それからあと、郵政関係ですよ。でも、これはそれなりに今まで国営でやってきて、徐々に株を売って民営化しているプロセスに入っているんですね。やっぱりイコールフッティングの面とかね、郵政だったら、あるいは公的なサポートがないと民間じゃやっていけないという面があったと思うんですね。  唯一、全く半国営であることが理由のない企業一つ残っているんですよ。どこだか分かります、日本たばこというやつなんですね、JT。私、この問題をずうっとずうっと追及しているんですけれども、たばこという財は国が守らなきゃいけない公共性ないんです。むしろ、国民の健康を害して医療費の高騰にもつながっちゃっているんですね。それを日本は財務省が三四・五%の株を抱えて、たばこ事業法とJT法で国内市場を守っているんです。  JTは今何やっているかというと、これ本当に多国籍企業ですよね。もう世界中で商売して、世界中の小さいたばこ会社、MアンドAで買って、それでフィリップ・モリスとBATに負けない三大たばこ会社だって威張っているわけです。  国際市場ではこうやって荒稼ぎをしておいて、国内市場では財務省の下に株も持ってもらって法律で守られている。こんな矛盾ないですよね、健康も害している、財をつくっているのに。これを是非とも民営化しなきゃいけないと思っているんですけれども内田公述人の御意見をお聞かせいただきたいと思うんです。
  93. 内田聖子

    公述人内田聖子君) JT自体を民営化すべきかどうかは、私は意見を特に今持っておりません。いいとも悪いともお答えできないです、いろいろ勉強すれば何か答えが出てくると思いますが。  国営企業に関しては、一番の問題は、国有企業及び指定独占企業TPPの中でいいますが、これの定義が、実はこれ大変おかしな話で、発効して六か月後、発効しないと、どの国がどの企業を国営企業と定義したのかというリストが出てこないと。大変これは問題だと思います。  たしか衆議院の方で、質問主意書でやられたら十一社、これは今おっしゃったようなJRとか幾つかのものが日本政府から、日本としてはこの十一企業を国営企業とすると定義しましたが、それを本当にその六か月後の公表のときに、もっとあるんじゃないかとか、もっと少なくなっている、それはよく分かりません。  つまり、こういう非常におかしな定義付けがされていて、分かりませんが、もし、私は常々不思議なんですが、日本国会の中で賛否がTPP問われているんですが、ここの部分はおかしいからもう一回再交渉してこいとか、そういう再交渉を求める声というのが……
  94. 林芳正

    委員長林芳正君) 内田公述人、時間が参っておりますので、おまとめください。
  95. 内田聖子

    公述人内田聖子君) 実は議員のどなたからも今のところ出ていないんじゃないかと思います。  ですから、今の御懸念なんかも、いいか悪いかはおいておいて、もしJTを国営企業に指定して、TPPの中で外国企業と平等に扱えという御主張であれば、やっぱりこれは再交渉しろというふうに御主張されるのがいいのかなと思いますけれども
  96. 松沢成文

    ○松沢成文君 どうもありがとうございました。
  97. 中野正志

    ○中野正志君 日本のこころの中野正志でございます。  委員長、私たちは少数会派でありますから理事会に出席できません。委員長の仕切りでこの会があるわけでありますけれども、地方公聴会は賛成二人、反対二人、非常にいい運営だったと思いますが、今日は賛成一人、反対三人。反対党会派にちょっと御配慮をしたとしても、やっぱり二対三ぐらいでないと駄目だ、本当は同数でないと駄目だと、こう思うんですが、委員長、今日の仕切りはどういうお考えの下でなされておるんでしょうか。
  98. 林芳正

    委員長林芳正君) 委員会の運営についての事項でございますので、私からお答えをさせていただきます。  公述人の選定に当たりましては、与野党の協議を経て、理事会で全会一致で決定をさせていただいておりますので、委員におかれては御理解を賜ればというふうに思います。
  99. 中野正志

    ○中野正志君 さすがだというお声はありますけれども、私には全く理解できません。大体、自民党会派、公明党会派の皆さんだって怒らなくちゃならないんだ、こういうことは。黙ってちゃ駄目なんだよ。というわけで、あえて。  公述人の皆様、お忙しいところ、本日はありがとうございました。  根本公述人にお答えをいただきたいと思います。  今、松沢委員から中国問題についていろいろお話がございました。私も認識は同じであります。  やっぱりトランプさん、こういう形で離脱を表明をされた。一〇〇%決まったわけじゃありませんから、来年の一月二十日待ちということになるのでありましょうが、これから二か月であれ、あるいは正式に離脱表明された後であっても、一年、二年掛かろうともトランプさんをしっかり説得をするぐらいの覚悟がなければ、安倍さんが国家戦略としてこのTPPを何としてもこの国会で通すのだという意思は生きないと、こう考えております。  私は、オバマさんがこのTPPを進めようということで決断をされたというのは非常にいいことだと思いました。実は、アメリカは、この十二か国の中で既にFTAやEPAを結んでいる国、六か国あります。ですから、アメリカにとってはそう大きな利益ではないと言われております。ちなみに、アメリカの国家貿易調査委員会で、二〇三〇年段階でGDPアメリカ合衆国、どれぐらい押し上げるかといったら〇・一五%、日本円にして四・七兆円にすぎない。ですから、アメリカ合衆国からすれば大した利益ではない、そう思う。しかし、一部、航空機産業あるいは自動車産業、プラスになる。しかし、一部の製造業はマイナスになる。その製造業の方々から結果的には大きな不満が出て、トランプさんはその階層を吸収して今回当選をされたと、こう思うのでありますね。  私は、やっぱりオバマさん、もうアメリカ合衆国は世界の警察官たり得ない、こう表現したときから好きではなかったのでありますけれども、しかし、このTPPについての姿勢は最後まで崩さなかった。ですから、私は、松沢委員と同じように、中国が南シナ海や、これからは東シナ海でもやってくるでしょう、ああいうふうな軍事的な膨張政策、これは即そのままもう金融経済政策でも進んでくる。ですから、私は、アメリカ日本中心とする経済的な安全保障協定なんだ、これをずっと主張し続けてきたのでありますけれども、後ろの方々からやじられたこともたまさかにございます。  それはそれといたしまして、根本公述人、私のこの認識、改めてどうお感じをいただきますか、お答えをいただきたいと思います。
  100. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 大変大きな御質問をいただきましたが、冒頭の私の陳述におきまして、TPP協定につきましては経済的側面と戦略的な側面がございますということを申し上げたところでございます。  繰り返しになりますけれども、自由、民主主義、法の支配、あるいは市場経済という日米に共通する価値をこの地域に広める、それも非常に高いレベルで協定としてまとめ上げ、世界各国、あるいは関係する諸国に追従をしていただきたいという意思を表明する、そういったリーダーシップもまたこの協定意義一つであり、先生御指摘のところは正鵠を得たものではないかというふうに考えるところでございます。
  101. 中野正志

    ○中野正志君 ありがとうございます。  根本公述人は、今、アメリカとFTAに臨むべきではないという考え方をさっきお示しをいただきました。私もやっぱりそういうふうに思います。正直、交渉力の問題もありますし、経済的な軍事力のパワーの違いもあります。また、製造産業の、各種製造産業の圧倒的な力の差というのも現実ある。ですから、今回こういう形でアメリカ合衆国を各国がいろいろ説得しながら、やっと、日本が入って三年四か月でありますけれども、まとまったということについては評価はいたしておるのであります。  ただ、そんな中で、是非、根本公述人、私の地元にいろいろな農業人がおります。トランプさん離脱表明をして、すぐ電話いただいたのは、宮城県の農業人が、FTA、二国間協定などというのはやめてくれよと。そんなことやられたら、今、アメリカから十三年掛けて七万トンというやつ、三十万トンだ五十万トンだ、あるいは極端な話、百万トンと言われるかもしれない、そんなことやられたら大変だと、こういう実は懸念の電話をいただきました。私も、そうだよなと、そう感じておりますけれども、その感想をお聞かせをいただきたいと思いますし、もう一つは、私の地元に舞台ファームという農業人が株式会社をつくりまして、アイリスオーヤマという、経団連会員企業でありますけれども、両者タッグマッチで今たくさんの米を生産し、また、消費者の好みに合わせた形で容器を作りまして、そして全国各地、一部海外展開もやられております。もう工場も大規模に造りまして、それでもう十五度に気温を一定温度にして、それで出せばおいしく米が食べられる。何というんですか、製造販売方法までしっかりと科学的な分析に基づいてやられたということは大変幸いなんであります。  さっき根本公述人は、経団連として、これから中小企業ともよく連携をし合いながらこのTPPの良さを生かしていきたい。また、今の私の話を敷衍いたしますと、やっぱり農業、これも輸出と、結果的には、結局は海外展開でやるという意欲に燃えた若手何ぼでもいるんであります。被災したイチゴ農家も自分でまた、もちろん国の補助もありながらでありますけれども海外輸出を始めて大変に評判のいい、そういう農家もあります。会社経営にチェンジをいたしたグループもあります。  そんなことで、経団連として、こういった中小企業あるいはやる気のある農業経営者、こういう方々地域地域経団連会員企業にもっとお呼びかけをいただきながら、しっかりと連携を取ってTPPの良さを生かさしめください。むしろお願いなんでありますけれども、このことも感想をいただきたいと存じます。
  102. 根本勝則

    公述人根本勝則君) 中小企業及び農業法人でございましょうか、そちらとの関係ということの御質問を頂戴をいたしました。  まず、中小企業の関係でございますけれども経団連といたしましては、九月の時点で、私どもの姉妹団体でございます北陸経済連合会及び四国経済連合会と協定を結びまして、同地区におきます中小企業経団連の枢要な会員であるところのいわゆる大企業への販売を望んでいる方々とマッチングをする機能を両団体間で持ちましょうということで協定を結んでございます。こちら、まだ具体的な事例は出てきておりませんけれども、一、二、案件が生まれつつあるところでございます。  こういった形の全国の中小企業と言われる方々製品サービスを大手の企業とマッチングするようなものを全国展開をしていく方針でございまして、今後各地の経済連合会の方にお呼びかけをしていく、既に事務的にはお呼びかけをしてございますが、各地でそういう協定を結びながら実例を上げていきたいというふうに考えてございます。  農産物でございますが、経団連は、JAの方と三年、四年ほど前から、具体的な案件作りということでこれも企業と農家様とのマッチングを始めておりまして、その成果として近く五種類ほどの生産物あるいは農家向けの製品というものが出てまいります。加えまして、大規模農家様のお集まりであります農業法人協会様とも同様の活動を展開し始めておりまして、マッチングを今始めたところでございます。こちらもいずれマーケットに出せる製品が出てくるものと考えております。  海外への輸出につきましては、商社機能を持ちまして従来からやってきたところでございますが、例えば、沖縄にハブ機能を持たせまして、その日に御注文をいただいた農産物あるいは水産物につきましては、沖縄を経由いたしまして例えば香港に翌日配送ができるというシステムも経団連は関与してつくっていただいております。売上げは徐々に徐々に上がってきておりまして、現在、沖縄の那覇空港の中、その物流施設は結構な混み方になってきているというふうな理解をしてございます。  もちろん、コンテナでの輸送につきましても各社相当の技術開発をさせていただいておりますし、港周りの整備もさせていただいておりまして、今後、日本の農産物、非常に評判もよろしゅうございますので、そちらを海外展開するためのお手伝いを更にさせていただきたいと。さらに、加工して付加価値を高めたものを海外輸出するというようなことにも引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  103. 中野正志

    ○中野正志君 根本さん、ありがとうございます。  つらつら考えてみますと、日米間だけで今までいろいろな貿易摩擦ありました。しかし、それを見事に乗り越えて実質的に勝っているのは日本なんですね。ただ、私の心配はやっぱり米を始めとする農業関係なんであります。  そこで、萩原先生にお尋ねをさせていただくんでありますが、先生のコメントを見ますと、断定をされておりますが、日本農業に壊滅的な打撃を与えるでしょうと。壊滅と言われると、私も米どころでありまして、大変困るんでありましてですね。  あえて自らの反省を込めながら言いますと、私、ちゃっこい頃は、米は二俵半、百五十キロ食べていたんです、平均して、日本人。今、一俵足らず、五十八キログラムであります。これから少子化社会であります。おのずと米の消費量ますます下がる。そんな中で、米作り農業、恐らくこれからますます厳しくなるんでありますけれども、全体的な米作りということを考えたら、結果的には外に輸出してやる方法しかないと、こう思っておるんでありますね。  国会議論でも、SBS米というのがいろいろ出ました。しかし、これとて主食用の米、これは十万トンが上限なんですよ。去年落札されたの何ぼかというと、二・九万トンなんです。おととしは一・二万トンなんです。そんな量で七百五十万トンも米の収穫量がある私たち日本の米作り、米価格に影響を与えるわけがない。まして、十三年掛けて、アメリカ七万トン、オーストラリア八千四百トン。これだって一%ちょっとなんですよ。全部落札されるかどうか分からない。  ところが、農家の人たちから猛然と今反発を食らっている部分もあります、部分もあります。消費者の方も分からないものでありますから、これからどんどこアメリカやオーストラリアの米が入ってくるのと、こう言われますけれども、ほとんど家庭の皆さんの口に入るわけない。弁当屋さんかあるいはコンビニさん、コンビニはそういう安い米使いませんから、社員食堂だとかそういうところに回るに決まっている。これも失礼か、失礼しました。  それで、今回、私は、やっぱりやる気のある農家、まして米を輸出したい、あるいは果樹、いろいろありますけれども、果物とか、肉だってうまい肉を生産している農家たくさんありますよ。こういうところをできるだけ伸ばしていく。今、この方々TPPがどうのというより、自分たち農業の将来がどうなるんだということでむしろ心配だと思うんですよ。ですから、やる気のある農業はしっかり支えていく、手伝っていくと。  また、残念でありますけれども、今、サラリーマンを普通しながら、土日だけ一ヘクタール、二ヘクタールの田んぼを耕している人たちもいる。この人たちは結局、隣のうちも田植の機械買ったからおらも買わなくてはねと、そんなスタイルで結局、田植機械買ったり稲刈り機械買ったりして、年間何ぼ残るといったら二桁の何十万しか残らないと。  そういうことなら、思い切って、やる気のある人、やる気のある農業法人、あるいは株式会社かもしれない、そういう形でやるしかない。あるいは、小規模でもいいというんなら、いい意味で、やっぱり農家、元々はきずなを持った人たちでありますから、もう地域営農組織で、たとえ六十五であれ七十であれ七十五であれ、連帯しながらやっていく。そういうことでないと地域農業も残れないよなと、こんな実は個人的な考え方を持っておるんでありますが、萩原先生のお考えをお聞かせください。
  104. 萩原伸次郎

    公述人萩原伸次郎君) 中野先生の大変興味深いお話でございました。私も実は農協の会員でございまして、田舎の実家で日本農業が一体どうなるかということで心配している一人でございます。  あるところは、例えば牛肉でも、アメリカなんかが作れないような牛肉を作っているから、これをとにかく伸ばすんだというような形で頑張っている方もいらっしゃいます。それから、今、都会で若者が、非常に非正規雇用であるとかそういう形で低賃金になっております。そういうよりは、むしろ田舎に来て、畑をあるいは田んぼを耕して、それで頑張ろうという人たちも結構来ております。  ですから、私は、先生のおっしゃることはまさにそのとおりでありまして、そうした日本農業というのをまともにしていく。私は、経団連も一生懸命頑張ってやっていらっしゃると言っていますので、そういうようなものをいかにサポートするかということを考えると、やはりTPPじゃまずいんじゃないんですかね。これ、そういうサポートするのとTPPはやっぱり私矛盾すると思うんですよ。それは、五品目でもって一応関税、詳しくは私あれですが、枠をつくってという話、関税維持するという話ですけど、七年後に何かまた再交渉するというその再交渉相手というのはかなりの農業国ですよね。  だから、そういう形で、どんどんどんどん、最初は緩いかもしれないですけど、だんだんだんだんと真綿で首を絞められるような形になってくると、一生懸命牛を作ったりあるいは果樹を作って海外に展開しようという人たちもなかなか厳しい環境になってくるということを考えますと、TPPに加入する、入るということと、先ほどの農家を育てるという、どうも私は違和感をその点で感じて、TPP審議にふさわしくないんじゃないかという、そういう感じがするんですが。
  105. 中野正志

    ○中野正志君 萩原先生、ありがとうございました。前段は共有できましたけど、後段は全く正反対でございます。  時間でございます。ありがとうございました。
  106. 林芳正

    委員長林芳正君) 以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時四十五分散会