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平野達男君 自民党の
平野達男でございます。
締めくくり総括ということでございまして、時間も限られておりますので、早速
質疑に入りたいと思います。
TPPは全体としては
日本経済にプラス、これは間違いのないことだと思います。ただ、二十一
分野の中で
関税の
引下げの対象になるもの、特に
農産物につきましては、
生産者、
消費者の方々に不安があるのも事実です。ただ、今回の
TPPが
発効したといって急激に
食品の
輸入が増えるかというがごとき
議論をされているということについては、私はちょっと違うのではないかというふうに思っています。今日は、この一点に絞ってしばらく
議論をさせていただきたいと思います。
まず、米につきましては、御案内のとおり、
国家貿易維持、それから
枠外税率、これは三百四十一円ですね、これも
維持でありまして、
ミニマムアクセス米の
枠外として
最大で約八万トンの
SBS米を設定するということでありますが、これは
委員会でも何回でも
議論になりましたけれども、この
SBS米については不調になる
可能性もあると。不調になっても追加の
輸入はないということでありまして、米全体に対する、
生産に対する
影響というのは私もほとんどないと思っています。
それから、麦につきましては、これは
WTOの枠を上手に利用しましたね。これ、今の
WTOの枠というのは、
国内産の麦を優先させてその
残りの
部分を
カレントアクセスとして、五百四十万トンぐらいでしたか、その枠を設定して
輸入するという、そういう
仕組みなんです。今回はその
輸入の枠内で
TPP参加国にちょっと優位な場所を、位置を与えるということですから、
総量輸入の枠は変わりませんけれどもその構成が変わるということで、繰り返しになりますけど、この
考え方が守られている限りにおいては
国内産の麦に
影響は出ません。
ただ、問題は、問題といえば、麦に関して言えば、
マークアップは、これを九年ぐらい掛けて今の
マークアップ分を、事実上の
関税ですね、これ四五%まで削減しますから
価格は下落しますと思います。ただし、
価格下落は悪いことではありません。これは
消費者にとってはメリットですから、
消費者余剰としての、
消費者に還元されるということでありまして。繰り返しましたように、この
カレントアクセス、
WTOの枠内が守られている限りにおいては
国内産に対する
影響はないということです。
砂糖については、
糖価調整制度、これ守られていますから、基本的に麦と同じような
考え方であります。ただ、これも
価格に
影響が出ますから、この
価格影響対策はしなくちゃならないということだと思います。
あと、少量でありますけれども、大豆でありますとか小豆でありますとか、そういったものについても基本的には
国内産に
影響は、
国内産を先に優先してその
残りを
輸入するという
仕組みになりますから、
余り影響は出てこないということだと思います。
それから、果物については、リンゴ、ミカン、これは
国内下での
差別化ができていますから、これから
関税が下がったとしても
国内産が私は負けるということはまずないのではないかなと思っています。
で、
畜産です。
畜産は、
牛肉はかつて
関税が七〇%ぐらいありました。これが今三八・五%まで下がって、これを十六年間で九%まで下げるということになりましたけれども、この間、
国内産の七〇%から三八・五%になるときに、
国内産の
牛肉の
生産量というのは少なくとも過去十年間を見ますとほとんど変わっていません。BSEがありましたから
牛肉の
生産量がどんと落ちましたけれども、落ちた分は
外国産の
輸入量が減るということで調整されてきたんです。むしろ、二、三年前までは
国内産の
牛肉の
生産量は増えていました。ただ、ここに来てちょっと減っていますね。このことは後でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
それから、豚肉につきましては、
差額関税制度の骨格は守りまして、例の
分岐点価格維持、これも、五百二十四円でしたか、これも守りました。ですから、当面の間、これは
影響は出ないと思います。詳しい話はちょっとここ省きます。
それから、鶏に至っては
国内産の
生産数は増えています。
関税は元々高くないです。下げたとしても、
輸入国のブラジルが入っていませんから、これはほとんど
影響がないだろうということでありまして、
国内産全体に対しての
影響の、
輸入という枠については余り心配する必要が私はないんだろうと思っています。
ただ、
価格は下がります。下がった分だけ、特に麦なんかそうですし、
砂糖もそうなんですけれども、今の麦の
制度は、
生産価格の差、
生産価格と
販売価格の
差額を埋めるという
制度になっています。
販売価格が更に下がって、なお下がるということは、その埋めなくちゃならない
価格差が広がることになります。
それからもう
一つ、
マークアップが四五%減ってしまいますから、この
財源も減ってしまうという
意味において
財政負担はちょっと増えます。増えますが、
政府の試算によると、
TPPの効果は十七兆とか十六兆とか言っています。この数字が正しいかどうか、私はよく分かりませんが、仮にその一〇%が
国税に入るということであれば一・六兆ぐらいの税収が増えるということでありますから、優にその枠内に入る
財源にもなるということであります。
ちなみに、
一般論でありますけれども、
日本の
農産物、特に
土地利用型農業については
内外価格差があるということが大きな問題であって、これを
外国との
競争から守るためにはどうするかというと、二つの手段があると。
一つは高
関税を掛けるということですね。高
関税を掛けて、
一つが今、米がいい例ですが、高
関税を掛けてそれを壁にして
外国産のものが入ってこないようにすると。ただし、そうやりますと、
国内産の
農産物の
価格が高くなります。それは、
生産費の見合った
販売価格が設定されないと
生産は
維持されませんから、それを
消費者がお金を、
農産物を買うときにその
価格で買うことでその
農業を守っているということになります。
もう
一つは
関税を下げるということになります。
関税を下げる、あるいは撤廃するということになると、
国内の
販売価格は
国際価格に近づくはずです。そうしますと、
生産価格と
販売価格の中に
逆転現象が起きますから、その
差額を埋めるのが
不足払い若しくは直接支払ということで、
世界の
潮流というのはどちらかというと後半の
潮流で来ていて、これだと、
関税を下げますから若干
農産物は入ってきますけれども、
国内の
農業は守られるということでありまして、その流れの中で今回の
TPPも
交渉がされてきているということは御承知のとおりであります。
それでは、何でこんなに
TPPと
農産物というのが大きな騒ぎになったんだろうかなというふうに思うんですが、実は米については毎年毎年八万トンずつ
消費が減っています。かつて一千万トンあったのが今八百万トンで、
国内の
消費について言えば、
消費というか、
主食用については七百四十万トンぐらいになるんですかね。まだ減ります。これをどうするかということに対する不安があるかと思います。
それから、
牛肉に関しては、今度は全く別な問題が起きていまして、子
牛価格については物すごい今高いですね。一頭当たり百万の
価格も出てきてしまいました。さらに、
牛肉の
価格も最高値を更新しようとしています。これはなぜかといいますと、
生産者が減っているからです。先ほどちょっと言いましたけれども、
牛肉の
生産量はここ来てちょっと減り始めています。圧倒的にこんなに高くても
後継者が出ないという、
生産者不足なんですね。これは
TPPに
関係のない構造問題だと思います。
そして、
人口減少に伴う
マーケット縮小、それから担い手の
縮小。こういう
状況の中で、
TPPどうなるか分かりませんけれども、
国内の
農業構造改革、団体問題も含めてなんですけれども、これは待ったなしだと思いますけれども、
山本大臣の御
認識をちょっと伺っておきたいと思います。