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山本太郎君 ありがとうございました。
日本語の正文、
TPPには存在しません。
正文とは何ですか。
協定の公式言語です。そうとも言えるのが正文です。条約や
協定を作る際、基本となる解釈を他国と共有できるように、後から解釈でもめないように、それぞれの言語で準備するのが正文。先々解釈でもめた場合でも、
日本語の正文ではこうなっていますよという共通の認識を基に闘えるんですけれども、今回のようにただ英文を翻訳しただけのものではそれができません。
TPPには、
日本語の正文はありませんが、英語、スペイン語、フランス語による正文は存在します。フランス語の正文は、
TPP参加国カナダのある地域のために作られました。カナダ
国内でフランス語が話されているのは、ケベック州とニューブランズウイック州などの地域。GDPで見てみると約三千六百億米ドルぐらい、
日本のGDPと比べると約十三分の一。
日本の
経済規模の十三分の一の地域のためにフランス語での正文が準備される一方、
TPP参加国の中でGDP第二位の
日本のために
日本語での正文は用意されていない。おかしな話ですね。
シンガポール、メキシコ、ペルー、オーストラリア、モンゴルなどなど、今までもそのような
協定、二国間とかでいろんな
協定を結んできましたが、
日本語の正文が存在するものはあります。ほかの
多国間協定でも
日本語正文がないものがあるじゃないかとおっしゃりたい方いらっしゃるかもしれない。けれども、あれもこれも秘密の
TPPで
協定文だけを頼りに
審議するんだから、誤解が生じないように
日本語の正文、用意するぐらいは最低
条件じゃないでしょうか。
日本語の正文がないと、どんな問題が生じるでしょうか。具体的な例で聞いていきたいと思います。(資料提示)
環境や健康などに
影響を及ぼす企業活動の歯止めになる条文ありますかと以前
質問いたしました。その際、
投資の章九・一六条と附属文書九のBについてお答えをいただきました。九・一六条については、
投資の章に違反しないという
条件付、限定付きで健康、環境に関する規制を掛けることを許してあげましょうという代物だった。つまり、論理的には何の歯止めにもならないことが明らかになりました。
今日は、以前の答弁でおっしゃったもう
一つの方、附属文書九のBについてお聞きします。
附属文書九のBって何ですか。
投資の章に
規定された
投資財産の収用の原則禁止に関連し、締約国の行為が間接収用に該当するかどうかについての条文。要はどういうことでしょうか。何が収用、間接収用に当たるか書かれたものです。
収用、間接収用、ざっくり説明します。収用。かつてイランやベネズエラのような産油国で、外資系企業が開発した油田を突然国有化する、財産を完全に取り上げてしまうといったことが起こりました。こうした行為が
投資の章が禁止する収用の典型例。直接財産を取り上げてしまうような収用だけではなく、規制の
強化や新たな規制を設けた結果、財産を制限したり使えなくしたりすることも収用の一部だよ。これを間接収用という。
例えばメキシコ
政府が、メキシコ
国内でスペイン企業が運営する廃棄物処理施設が環境及び公衆衛生に対する脅威になっていると施設の許可の更新を拒否した事例、この許可の更新拒否が間接収用に当たるとされた。
政府が人々の健康や環境を守るための判断や規制を行えば間接収用としてISDSで訴えられる
状況って、これ異常ですよね。しかし、仲裁に関わり巨額の報酬を得る弁護士や
投資家はこれまで間接収用という魔法のつえで数々の訴えを実際に起こしてきた。多くの
投資仲裁事例でもそれははっきりしています。それに対する歯止めはどうなんでしょうか。簡単に間接収用じゃないかと言えない作りに
TPPはなっているんでしょうか。
附属文書九のB第三項(b)を見てみます。これは、原則として公共の福祉を目的とする規制措置は間接収用に該当しないと言っています。前回の答弁で附属書九Bを挙げたのはそういう理由からだったと思うんですよね、そちら側が。しかし、条文の下の方、黄色いライン部分をちょっと拡大してみますね。
条件限定、これやっぱり付いていることが分かるんですね。どういうことなのか。「極めて限られた場合を除く」と。どういうことか。つまり、公共の福祉を目的とする規制措置でも間接収用に該当する場合があると認めているわけですよね。じゃ、どんな場合に間接収用なんですか、極めて限られた場合ですと。極めてですから、単なる限られた場合よりも限定された、本当にレアなケースを指していると考えるのが普通ですよね。
該当部分、英文でも確認いたしました。同じく黄色い部分ですね、ライン引いてあるところ。すると、エクセプト・イン・レア・サーカムスタンシーズ、「except in rare circumstances」と書いてある。辞書で確認しました。エクセプトは除いて、レアはまれな、サーカムスタンシーズは
状況という
意味らしいです。つまり、まれな
状況を除いてという
意味の英文。
日本語訳のうち、限られた場合を除くという部分は何となく英語に対応していると言えると思います。間違ってないよねって。でも、極めてと強調するニュアンス、英文のどこにもないんですが。(発言する者あり)レアに入ってんじゃんじゃないです、まだ続きがあるんです。聞いてくださいね、自民党の皆さん。極めて限られた場合を除くと強調するならば、クワイト又はイクシーディングリー。だって、レアだけだったら、まれという
意味ですから、普通はそのような言葉が付け加える必要があると。
なぜ、限られた場合を除くという
日本語訳ではなく、極めてという原文には見られない修飾語を入れて強調するような翻訳を行ったのか、簡単に教えていただいていいですか。短めにお願いします。
審議官の方でいいですよ。