運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
2016-11-22 第192回国会 衆議院 法務委員会 第10号
公式Web版
会議録情報
0
平成二十八年十一月二十二日(火曜日) 午前九時
開議
出席委員
委員長
鈴木
淳司君
理事
今野 智博君
理事
土屋 正忠君
理事
平口 洋君
理事
古川
禎久
君
理事
宮崎 政久君
理事
井出
庸生
君
理事
逢坂 誠二君
理事
國重
徹君
青山
周平
君
赤澤
亮正
君 安藤 裕君
井野
俊郎
君 奥野
信亮
君 門 博文君 菅家 一郎君 城内 実君
鈴木
貴子君 辻 清人君 野中 厚君 藤原 崇君 古田 圭一君 宮川 典子君 宮路 拓馬君 山田 賢司君 若狭 勝君 階 猛君
山尾志桜里
君 吉田
宣弘
君 畑野 君枝君 藤野
保史
君 木下 智彦君
上西小百合
君 …………………………………
法務大臣政務官
井野
俊郎
君
参考人
(
弁護士
) 岡 正晶君
参考人
(
名古屋学院大学法学部教授
) (
弁護士
)
加藤
雅信
君
参考人
(
弁護士
)
黒木
和彰
君
法務委員会専門員
矢部 明宏君
—————————————
委員
の異動 十一月二十二日
辞任
補欠選任
吉野
正芳
君
青山
周平
君 同日
辞任
補欠選任
青山
周平
君
吉野
正芳
君
—————————————
本日の
会議
に付した案件
民法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
、第百八十九回
国会閣法第
六三号)
民法
の一部を
改正
する
法律
の
施行
に伴う
関係法律
の
整備等
に関する
法律案
(
内閣提出
、第百八十九回
国会閣法第
六四号) ————◇—————
鈴木淳司
1
○
鈴木委員長
これより
会議
を開きます。 第百八十九回
国会
、
内閣提出
、
民法
の一部を
改正
する
法律案
及び
民法
の一部を
改正
する
法律
の
施行
に伴う
関係法律
の
整備等
に関する
法律案
の両案を一括して議題といたします。 本日は、両
案審査
のため、
参考人
として、
弁護士岡正晶
君、
名古屋学院大学法学部教授
・
弁護士加藤雅信
君及び
弁護士黒木和彰
君、以上三名の
方々
に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人各位
に
委員会
を代表しまして一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙の中、御
出席
賜りまして、まことにありがとうございました。それぞれのお
立場
から忌憚のない御
意見
を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 次に、
議事
の順序について申し上げます。 まず、
岡参考人
、
加藤参考人
、
黒木参考人
の順に、それぞれ二十分
程度
御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
の
質疑
に対してお答えをいただきたいと存じます。 なお、御
発言
の際はその都度
委員長
の許可を得て
発言
していただくようお願いいたします。また、
参考人
から
委員
に対して
質疑
をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。 それでは、まず
岡参考人
にお願いいたします。
岡正晶
2
○
岡参考人
本日は、
発言
の
機会
を与えていただきまして、本当にありがとうございました。 私は、
日弁連
からの推薦で本件の
法制審部会
の
委員
となり、五年四カ月間、
最初
から
最後
までフルで
審議
に
参加
をさせていただきました。その
立場
と経験を踏まえた本
改正法案
に対する私の
意見
は、
日弁連
の
意見
と同じであります。 本日は、まず冒頭にその
意見
を述べさせていただきます。次に、その
意見
を持つに至った
経緯
、
理由
として、本
改正審議
に取り組んだ
日弁連
の
基本姿勢
及びどういう
陣容
でどのように取り組んだかについて
説明
をさせていただきます。そして
最後
に、
まとめ
としての私の所感を述べさせていただきます。 ではまず、
意見
でございます。 私の配付させていただきました
資料
五、
通しページ
十四分の六をごらんください。
真ん中あたり
、「第一
意見
の趣旨」第一項でございます。「本
改正法案
は、
保証人保護
の拡充や
約款ルール
の新設を見ても明らかなように、利害の対立する複数の
契約当事者
間の適正な
利益調整
を図り、かつ、健全な
取引社会
を実現するために、必要かつ合理的な
改正提案
であると評価でき、当
連合会
は本
改正法案
に
賛成
する。」、これが結論でございます。 我々
弁護士
は、
民法
を
市民
の最も身近な
立場
で活用し、それを通じて
市民
の
権利
を実現する
職責
も負っております、
民法
のヘビーかつ最大のユーザーであります。その
立場
と
責任
を踏まえて、
日弁連
も私も本
法案
に
賛成
をいたします。 二項、三項については、後で触れさせていただきます。 次に、
資料
六、
通しページ
の十四分の十三をごらんください。
日弁連
は、昨年の
通常国会
の
法案提出
時にこの
会長声明
を出させていただきました。下から二行目をごらんください。「時を移さず、これらの
検討内容
を活かして、今
国会
で」、昨年の
通常国会
でございますが、昨年の
通常国会
で「
充実
した十分な
審議
を行い、
重要法案
である本
改正法案
の
成立
を求めるものである。」という
声明
を出させていただきました。 次に、次の
ページ
、十四分の十四をごらんください。 これは、本年九月三十日に
会長声明
を出したものでございます。ここでも下二行に御注目ください。
法案提出
から一年半も経過したことを踏まえ、「今
国会
で
充実
した迅速な
審議
を行い、」今
臨時国会
での「
早期成立
を求める」というものでございます。時ここに至って、
日弁連
も私も、
充実
だけではなく迅速な
審議
、すなわち丁寧で速やかな
審議
をお願いしたいと思っております。 それでは次に、このような
意見形成
に至った
経緯
、
理由
の
一つ目
として、
日弁連
及び私
ども
が本
改正審議
に取り組んだ
基本姿勢
を御
説明
いたします。
資料
三、
通しページ
の十四分の四をごらんください。 これは、
日弁連
の
理事会
で機関決定していただいたものでございます。
法制審
の
部会
には、私を含めて四名が推薦されてメンバーになりましたが、私
ども
四名は、この
基本姿勢
に基づいて懸命に
発言
をし、本
法案
にこれを反映させたつもりでございます。少し早口になりますが、読ませていただきます。 一
改正
を所与の
前提
として拙速な取り纏めをすることなく、各
検討事項
につき、
改正
の
必要性
、
方向性
、
改正
の
具体的内容
および
改正
した場合の影響の
内容
や
程度
を慎重に
検討
する。
理念ファースト
ではなく、個別的、具体的に
検討
していくという宣言でございます。 二
改正
にあたっては、
法定債権
や
担保物権
に関する規律などを含む
民法
全体の
整合性
、
消費者契約関連法
、
商行為関連法
、
労働契約関連法
などの
民事特別法
との
相互関係
や
役割分担
などについて適切に配慮し、
民事法体系
全体として
整合性
・
統一性
をもった
民法
とすることをめざす。 三 確立した
判例法理
や定説のうち法文化すべきものは
民法典
への適切な取り入れを
検討
し、
市民
にとって真に「分かりやすく使いやすい
民法
」をめざす。 四
専門的知識
や情報の量と質または
交渉力
に大きな格差のある
消費者
・
労働者
・
中小事業者
などが、
理由
のない不利益を蒙ることがなく、公正で正義にかなう
債権法秩序
を構築できる
民法
となるように積極的に提言する。 五
社会経済
の
現代化
、
市場
の
国際化
、
外国
の
法制度
との
比較
などの
考慮
に基づく
改正
に関しては、
我が国
における
民法規範
としての
継続性
や
市民法秩序
の
法的安定性
に十分配慮して
検討
する。
外国
の先進的な取り組みは、研究、
検討
するけれ
ども
、追随はせず、批判的に受け入れる、こういうものでございます。 先ほ
ども
申し上げましたが、 六
民法
を
市民
の最も身近な
立場
で活用し、
市民
の
権利
を実現する
職責
を負う
実務法曹
の団体として、多面的な
議論
を尽くし、
利用者
である
市民
の視点にたった
改正意見
を積極的に表明し、活動する。 なお、これに加えて、私
個人
は、
民法
は
日本国民
全てに
適用
される
法律
ですので、私のふるさと、
四国うどん
県、香川県で農村に住む私の両親、親戚にも
理解
できるもの、納得できるもの、そういうものを目指そうと思いました。 次に、私
ども
及び
日弁連
が本
改正審議
にどういう
陣容
で取り組んだかを御
説明
いたします。
資料
二、
通しページ
十四分の三をごらんください。 先ほどの
基本姿勢
の六項で述べましたように、多面的な
議論
を尽くすためには、いろいろな
立場
のできるだけ大勢の
弁護士
で
議論
することが重要と考えました。そこで、
全国
の
各層
から約六十名弱の
バックアップチーム
をつくっていただき、
部会
の前日等に、合計すると、ここにありますとおり百二十四回の
議論
をしていただきました。また、この
チーム会議
の前に、多くの地方の
単位会
、
委員会
でも
事前議論
をしていただき、それを
書面等
で
チーム会議
に提出してもらいました。 本当にさまざまな
弁護士
、具体的には、
消費者
、大
企業
、
中小企業
、
労働者等
の代理を多く務める
弁護士
、
企業内弁護士
、親族、相続の事件を多く扱う
弁護士
など、大勢集まって、本当に多面的な
議論
を尽くすことができたと考えております。 そのほか、この表の
右側
に記載してありますとおり、
全国八つ
の
高裁所在地
で、各二回、シンポ、
研修会
を行ったり、
日弁連
の重要な
意思決定機関
である
理事会
でも何度も
意見交換
、
審議
をさせていただきました。 次に、
意見形成
に至った
経緯
、
理由
の
最後
に、私
ども日弁連
が本
改正審議
にどのように取り組んだかを御
説明
いたします。
資料
一、
通しページ
十四分の一をごらんください。
最初
の第一
ステージ
の当初、我々は、強い
警戒心
を持って臨みました。きついことも
発言
をいたしました。また、当初は、
日弁連
内にも、壊れていないものを直す必要なし、
学者主導
の
改正
につき合う必要はない等の批判的な
意見
が多くございました。しかし、先ほどの
基本姿勢
に基づいて
議論
を重ねる中で、批判だけにとどまっているのではなく、前向きで建設的な
議論
が多くなってきました。 また、
部会
におきましても、この次の九
ページ
の
五行目
以下にありますとおり、別の
学者有志
、具体的には
加藤先生グループ
の
改正提案
でございますが、そのような
資料
も数多く引用されるとともに、
比較法資料
も豊富に提供されまして、実に多くの
議論
が滑らかに進んでいくようになったと
理解
をしております。 一回目の
パブリックコメント
の後が第二
ステージ
でございます。 この第二
ステージ
におきましては、三つの
分科会
が
部会
と
部会
の間に開かれ、本当に
中身
の濃い
審議
をいたしました。
日弁連
も
意見書
を五本提出いたしました。この九
ページ
の左側の下から十行目にありますとおり、このほかにも
弁護士会
、
弁護士有志等
による
意見書
が何本も
部会
に提出され、
法制審
の
部会
としては異例のことですが、これらも全て
机上配付
を許され、
審議
に供されました。 そして、いよいよ、二回目の
パブコメ
が終わった後、第三
ステージ
を迎えました。
資料
一、九
ページ
の
右側
をごらんください。 これは選択と集中の
審議
であったと認識をしております。まず、全員の
コンセンサス
が得られたもの、積極的な
反対者
がいない、そういう
論点
を
要綱案
とする
方針
に従って仕分けが進められました。早々にまとまったもの、詐害行為
取消権
など、早々に断念されたもの、
信義則等
の
適用
に当たっての
考慮要素
な
ども
ございましたが、
熟議
の上、
少数意見者
が多数
意見
を尊重するということで
コンセンサス
が
成立
したものも出てまいりました。 その例が
消滅時効
でございますが、
消滅時効
については、
主観的起算点導入
に対する不安や
時効完成
までの期間が短くなる
権利
がややあるということで、
反対
が小さくはありませんでした。しかし、
熟議
を重ねる中で、
主観的起算点
というのは既に
不法行為
において
民法
に
導入済み
であること、それについて説得的な
下級審判決例
も出ていて
予見可能性
があること、
生命身体
に関する
権利
の
特則
を
一般債権
、
不法行為
の両方に設けることなどで
コンセンサス
が得られるに至ったものでございます。 その後、
意見
が大きく分かれた
論点
について、
事務当局
から、この案でどうかという
提案
が二次案、三次案、四次案を含め出されまして、この結果まとまったもの、動機の錯誤でありますとか
個人保証
でございます、そういうものもありましたが、
日弁連
にとっては遺憾ながら断念されたもの、
暴利行為
の
明文化等
も少なからず生じました。 この間、
日弁連
では、
最終局面
に入ったことを受け、ここにあるような
組織変更
を行ったり、
日弁連
の
理事会等
で
議論
をさせていただきまして、
最後
まで積極的に
発言
を続けたものでございます。 若干時間がございますので、
法定利率
についても若干御
説明
をいたしたいと思いますが、
法定利率
についても、
適用法域
が異なるごとに
利率
を設ける方が合理的ではないか、三%では
債務不履行
のペナルティーとしては低過ぎるので五%のままでいい、逆に、現在の
マイナス金利
、まあ、その当時は
マイナス金利
じゃございませんでしたので、当時の低
金利
を考えると二%がいいなど、さまざまな
意見
が出ておりました。しかし、これも
熟議
を重ねる中で、激変は
相当
ではないのではないか、現在の仕組みに対する適度な
変更
が今回は
相当
ではないかということで、四割減の三%とし、加えて穏やかな
変動制
を採用するという
方向
に収れんをしていきました。 私
個人
は、こういう
方程式
ではなく、その都度
国会
が決めればいいという
意見
でございました。
少数意見
で採用されませんでしたが、最終的には、こういう
方程式
があろうとも、
国会
がその時点で議決をすれば、
法定利率
を
変更
することは可能ではないかと考えております。 以上の
経緯
、
理由
を踏まえて、私及び
日弁連
は、本
改正案
に
賛成
をし、
早期成立
をお願いするものでございます。
最後
に、
まとめ
としての所見を三点述べさせていただきます。 第一に、今回の
法案
は、我々から見ればなお不十分な点もありますし、
法案
とならなかったものについても残念なものがございます。しかし、これらも、そのような案が公平妥当という
方々
が
社会
の中にいらっしゃり、また、それらはまだ時期尚早であるという
方々
がいらっしゃることから、こうなったものと
理解
をしております。そして、本
法案
には我々として評価できるものが数多くございますし、理論よりも
実務
を優先して採用していただいた
条文
もございます。 こういう
意味
で、本
法律案
は、
各界各層
の
参加者
が
民法
をよりよいものにしようという思いで長年にわたって
検討
、
議論
を行い、その英知を結集したものと
理解
をしております。そういう
意味
で、絶妙なバランスのとれた
法律案
と私は考えております。 第二に、私
ども
から見れば不十分な点についても、
制度
としては
一つ
の大きな前進であると考えております。よい
方向
での
アナウンスメント効果
もあると考えております。
国会
における
審議
、金曜日の
審議
を拝見させていただきましたけれ
ども
、それを通じて
行政指導等
も
充実
されるのではないかと考えております。我々
弁護士会
としては、今後は、不十分と考えられる点から問題が生じないよう、
法教育
の
充実等
も含め、
実務
において力を尽くしていきたいと考えております。 第三に、
最後
ですが、今回は
法案
とならなかったものについても、
法制審部会
における
中身
の濃い
議論
が
議事録
という形で残り、今後に向けての大きな貯金ができたと考えております。これで
相当
な進展があったと考えています。これをばねにして、さらに一層、
全国
の
弁護士
で
実務
、
判例
を積み重ね、多数
意見
の
形成
に向けて精進していきたいと思っております。 私の
意見
は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
鈴木淳司
3
○
鈴木委員長
ありがとうございました。 次に、
加藤参考人
にお願いいたします。
加藤雅信
4
○
加藤参考人
本日は、
社会
の
基本法
である
民法
の大
改正
に際しまして、
国会
の
先生方
にお話をさせていただける貴重な
機会
をいただきましたこと、心から御礼申し上げます。
現行民法
が明治三十一年に
施行
されてから百二十年の歳月がたっております。その間、
社会
は大きく変化いたしましたので、その変化に合わせて
民法
を
改正
しようとするのは極めて自然なことであります。したがって、本来でしたら、この時期に
民法
の
抜本的改正
をすることは歓迎されてしかるべきでございます。しかしながら、現在
国会
に上程されている
改正案
を見ますと、首をかしげたくなる点も多々ございます。 なぜこのような首をかしげざるを得ないような案が出てきたのか、それをお話しする必要があるかと思うのですが、その前に、どの点で今回の
改正案
がすぐれており、どの点で首をかしげざるを得ないのかを、時間の制約もありますので何点かに絞りますが、お話しさせていただきたいと思います。 まず、
賛成
する点ですが、先ほど
岡参考人
の方から話がありましたが、
法定利率
を
固定利率
から
変動利率
にして、
市場利率
を反映させるというようにした点は、もろ手を挙げて
賛成
したいと思います。 現在は、
民法
の
法定利率
が五%、
商法
のそれは六%で、
市場利率
よりも高い
状況
です。そうしますと、
利息狙い
で
訴訟遅延
を図ったり、あるいは、高い
利息
を払うのは嫌なので争わずに和解に応じたりする
動き
が出て、
訴訟
の健全な姿がゆがめられております。この点を是正する
改正案
には心から
賛成
いたします。 しかし、
反対
すべき点も多々ございます。 まず、今回の
債権法改正
の
動き
が始まった段階で大問題となったのは、当時
法務省参与
と呼ばれていました
内田貴
さんを中心になされた、
債務不履行
による
損害賠償
を
過失責任
から
無過失責任
に転換しようとする
提案
でした。これは、ドイツ、フランス、
日本等
の
大陸法諸国
ではずっと
過失責任
とされていた
法制度
を
英米流
の
無過失責任
にするもので、
民法
のこの部分を
大陸法
型から
英米法
型に転換しようとするものです。
我が国
では、
債権法改正作業
が始まる前まで、
債務不履行
を
無過失責任
にすべきであるという
主張
があったわけではありませんし、
内田
さん御
自身
も、御
自身
の教科書では
債務不履行
が
過失責任
であると
説明
し、それに別段異議を唱えていませんでした。
社会
に
無過失責任
の要請がないのにこのような
改正
をいたしますと、
取引社会
も
法曹実務
も混乱するだけですので、
東大民法
の
河上正二
さんは、この
改正
をナンセンスという強い言葉で批判され、
東大ローマ法
の木庭さんは、前代未聞の
厳格責任
と、
厳格責任
というのは
無過失責任
のことですが、批判しましたし、
会社法制定
の立て役者の
江頭憲治郎
さんは、
民法
の
債務不履行
が仮に
厳格責任
になっても、
商法
の方は
商法
の
条文
が残っている限り
過失責任
のままでいくと言明しました。また、各地の
弁護士会
も
反対意見
を述べましたし、
全国
二千人の
弁護士
を対象とした
アンケート調査
でも、
無過失責任
に
賛成
するのはわずか百八十八名だけで、
反対
が千五百五十九名と圧倒的でした。 そこで、
内田
さん
たち
は、
自分たち
の
改正方向
を示した「
債権法改正
の
基本方針
」の中では、
債務不履行
の
規定
から
帰責事由
を
意味
する
文言
を除き、
無過失責任
を一旦明示したわけですが、今回
国会
に提示された
改正案
では、
帰責事由
を
意味
する
文言
を復活させました。しかし、現在でも、
法制審議会民法部会
の
委員
であった
潮見佳男
さんは、この
文言
に「
取引
上の
社会通念
に照らして」という
修飾語
がついているので、今回の
改正条文
は
過失責任原則
の否定であるということを著書で明言していらっしゃいますし、
法務省民事局参事官室
の公表した
資料
でも似たようなことが述べられております。 つまり、一旦公表した
無過失責任化案
は
反対
が強いので、
文言
を
玉虫色
にしておいて、後から
立法者意思
に基づく解釈として
無過失責任
であることを
主張
し、巻き返しを図ろうとしているとしか思えないというのが、
法務省民事局参事官室
の
解説
を見たときの私の印象でございます。 実は、
債務不履行
の無
過失化
は、今回の
債権法改正
の天王山とも言えるものでした。ところが、
法務省
が
国会
に提出した
改正
の
理由
からは、この点がすっぽり抜け落ちております。恐らく
法務省
は、この点が
国会
で
議論
され、
一つ
の
争点
となるのを避けたいと考えたのだろうと思います。 私は、本日の
委員会配付資料
として、「
債権法改正法案
の
総合的検討
に向けて
債権法改正
の実相を探る」という小さな冊子を配付いたしました。その百二十一
ページ
には、今回の
債権法改正
をめぐる
法務省
のやり方につき、裁判所の中枢におられた元裁判官が、今回はこそこそ
改正作業
を行ったので、
不信感
が出ているのが実情なのではないかと評している旨を紹介いたしました。また、私
自身
も、
債権法改正
の一番の目玉とされてきた問題を
国会提出
の
改正
の
理由
から外す一方、
法務省民事局参事官室
の
解説
では
無過失責任化
を説く
法務省
の今回の
手法
につき、「
国会審議
を
裏口
ですり抜けるような
手法
は、
民主主義国家
においてはとってはならない」とその
ページ
に記しました。 この問題に関しまして、ここにいらっしゃる
法務委員会
の
先生方
にお願いしたいことがございます。
国会
で、
改正法案
の第四百十五条一項が
無過失責任
か
過失責任
なのかをぜひ
法務省
に質問していただければと願っております。
法務省
は
玉虫色
の
官僚答弁
をするかもしれませんが、突き詰めた質問をすれば、回答は
無過失責任
か
過失責任
のいずれかにならざるを得ないと思います。
無過失責任
と答えたら、なぜこれまでの
改正作業
で最もヒートした
争点
を
法務省
が
国会提出
の
改正
の
理由
に挙げなかったのか、あたかも
裏口
入学ならぬ
裏口立法
を狙っているかのごとき
法務省
の
姿勢
につき、
国会
で問いただしていただきたいと私は願っております。 また、
過失責任
と答えたら、このままでは、
民法
の最も重要な
規定
の
一つ
である
債務不履行
につき、
過失責任
と
無過失責任
の双方の
主張
がなされるような
状況
は望ましくなく、また、このままでは
民法
と
商法
という私法の二大法典の分裂を招く
可能性
もあるとして、
改正法案
の第四百十五条一項から「
契約
その他の
債務
の
発生原因
及び
取引
上の
社会通念
に照らして」という
文言
を削除する修正をしていただけませんでしょうか。そうすれば、今後、
法務省民事局参事官室等
が今回の
改正
による
債務不履行
は
無過失責任
であると
主張
する根拠がなくなりますので、混乱の芽が摘まれます。 次に、
保証
に移りたいと思います。
法務省
が
国会
に提出した
参考資料
の概要には、
取締役等
以外の
個人
が
事業債務
について
保証人
となるためには、
公証人
が
保証意思
を確認しなければ効力を生じないものとすると書かれており、
改正法案
の第四百六十五条の六にもそのための
規定
が置かれております。 ただ、
国会
におられる
先生方
は、一九九九年に、当時の
商工ファンド
の社長の
大島健伸
氏が
国会
で
証人喚問
を受けたことを御記憶かと思います。
商工ファンド
は、お金に困った
中小企業
とその
保証人
をしゃぶり尽くし、次々と
自殺者
を出しました。その
手法
は
公証人
を使ったものでした。具体的には、
公証人役場
に行って
執行証書
と呼ばれている
執行受諾文言つき
の
公正証書
をつくってもらえば、
判決
をもらわなくても
強制執行
が可能になります。
商工ローン
は、この
手法
を使って次々と
強制執行
をかけ、相手を破綻させていったのです。 今回の
債権法改正
によって、
保証人
が
公証人
のところに行くことが
保証
することの
前提
となれば、ついでに
執行証書
にしてもらうことは簡単になります。要するに、今回の
債権法改正
の
規定
は、
商工ローン
の再現に道を開くものとしか私には思われません。このような
改正
がなされてよいものなのでしょうか。 ある方から、
法務省民事局幹部
が、
公証人
に対する
教育
を行うので問題は起こらないと言っている旨を伺いました。しかし、
公証人
に対する
教育
では問題は片づきません。ある
公証人
から伺ったところでは、問題がある
公正証書
の
作成
の依頼も中にはあるのですが、その
作成
を断っても、結局ほかの
公証人役場
でつくってもらうことになるので、
意味
がないのですとのことでした。
公証人
は基本的に
手数料仕事
なので、
意味
がない
断り方
も仕方がないと考えることになりがちなのです。
公証人役場
は
法務省
の法務局の所管ですので、このような
公証
の実態は
法務省民事局
は熟知しているはずです。まさか、まだ、
商工ローン
で
公証
制度
が悪用されたことを忘れてはいないと思います。それなのに、今回のような
改正
をし、一見すると見ばえがする、口当たりのいい
改正
をしようとする。この
改正
によって、
商工ローン
と同じような
保証人
の自殺が出てくるようになったら、
法務省
はどのように
責任
をとるのでしょうか。今回の
保証
法の
改正案
を見ると、
法務省民事局
は、行政庁としての
責任
感を忘れ、
法案
を通すための体裁だけを整えようとする無
責任
体制に陥っているようにしか私には思えません。
法務委員会
の
先生方
の手で、ぜひ、
改正法案
の第四百六十五条の五から第四百六十五条の九までの
改正条文
を削除し、別の形での
保証人保護
を考えていただければと願っている次第です。 次に、先ほ
ども
お話が出ました
消滅時効
に移りたいと思います。
改正条文
案では、第百六十六条一項で、債権等の
消滅時効
は、「債権者が
権利
を行使することができることを知った時から五年間」、「
権利
を行使することができる時から十年間」行使しないと、債権は時効消滅するとされています。前者が
主観的起算点
、後者は客観的起算点と呼ばれます。今回の
改正
は、これまでの一元的起算点という考えをとっていた
消滅時効
を二元的起算点の
制度
に
変更
しようとするものです。先ほど、
不法行為
の
消滅時効
が二元的だとおっしゃいましたが、
不法行為
のあれが二元的なのは、時効
制度
全体の中では極めて例外的な現象です。 そして、時効は、
民法
ばかりではなく、
商法
や数多くの行政法規等、さまざまな
法律
にも
規定
されています。これらの数多い
法律
の時効
制度
は、これまで客観的起算点だけで、一元的起算点
制度
で運営されてきました。それらの法規についての
改正
がない以上、今後も一元的起算点の
制度
が維持されていくことになるだろうと思います。 そうしますと、多数の
法律
にまたがる時効
制度
の中で、唯一
民法
だけが突出した二元的起算点
制度
を導入することになります。これでは、
民法
の一般法としての性格が、事時効に関しては放棄されることになります。これまで、環境法の分野では、国の
法律
よりも地方の条例の方が規制基準が強い、いわゆる横出し条例、上乗せ条例が見られることがありました。ところが、今回の
改正
では
民法典
が横出し法規になるという、一般法としての
民法
の自殺現象が見られるのです。 なぜ、このような奇妙な
改正
がなされるのでしょうか。それは、一般的に二元的起算点
制度
が欧米で行われているからです。今回の
債権法改正
では、欧米の物まね
改正
という
提案
が数多く行われました。
最初
にお話しした
債務不履行
の
無過失責任化
もその一例です。時効についても、日本の法体系全体を考えずに物まね
改正
をしようとしているのが今回の時効法の
改正提案
だと思います。 もっとも、時効法の
改正
でも、
意味
があるものもあります。それは、債権の
消滅時効
期間は一般には十年なのに、
現行民法
が例外として認めている五年、三年、二年、一年の短期
消滅時効
の多くの
規定
を廃止したことです。この多数に上る短期
消滅時効
の
規定
の廃止自体は望ましいものです。 ただ、気をつけなければいけないことは、短期
消滅時効
の対象となるのは、商品代金とか運賃とか飲食料金等の少額債権となるものが多いということです。元来、
消滅時効
制度
は、二重請求された場合に、領収書をなくしていても、時効ですと言えば二重請求による被害を免れられることに
意味
があります。だから、
現行民法
は、商品代金、運賃、飲食料金等について短期
消滅時効
を用意したわけです。これらの
現行民法
の
規定
を廃止しただけでは、これらについての領収書を十年間とっておかないと、二重請求の危険にさらされます。 そうであるとしたら、短期
消滅時効
規定
を廃止する際に少額債権一般についての短期
消滅時効
を用意しておかないと、国民は十年の長きにわたってこれらの領収書をとっておく必要に迫られます。これらの少額債権の領収書を長期間とっておくことは期待しにくいところです。 本当に国民の生活を考えるのであれば、錯綜している
現行民法
の短期
消滅時効
の廃止をすること自体はいいのですが、それと同時に少額債権一般についての短期
消滅時効
の導入を考えるべきなのに、
改正法案
はそのための手当てを置いていません。失礼な言い方ではありますが、こののうてんきな
改正案
を見ると、
法務省民事局
が果たして国民の生活を守ろうとしているのかどうか疑わしいという気さえ起こってしまうのです。 次に、
民法
の取り消し関連の
規定
に移りたいと思います。 今回の
改正法案
は、
現行民法
百二十一条本文の取り消しの効果の
規定
を基本的には維持しながら、その次に第百二十一条の二「原状回復の義務」という
規定
を挿入しました。これは、
法律
行為が無効な場合に限定した不当利得絡みの
規定
です。
改正
法では、
契約
が無効な場合にはこの
改正
規定
による原状回復が認められることになります。しかし、
契約
が不存在なのに誤って履行してしまった場合にも不当利得が問題になるはずです。しかし、
改正
民法
では、それは
民法
七百三条の
規定
によって不当利得の返還がなされることになります。 今挙げた二つの事例は、これまではどちらも給付利得と呼ばれ、
民法
七百三条が規律するとされていました。
現行民法
七百三条は不当利得の
条文
ですが、不当利得については類型論という
議論
があり、給付利得はその一類型とされてきましたが、給付利得分断論などは、日本でも世界でもこれまで聞いたこともありません。一体、
法務省民事局
は、ローマ法以来の
民法
の歴史、不当利得の歴史を踏まえてこのようなへんぱな
改正案
を
提案
したのでしょうか。 その上、原状回復については、不当利得のほかに物権的返還請求権も問題になるところです。ところが、
改正案
はこの点にも触れていません。二重三重におかしな、ある
意味
で、
現行民法
の精緻な法体系を破壊するだけの思いつき
提案
としか私には評価することはできません。
民法典
をまともなものにするために、
先生方
には、ぜひ第百二十一条の二の
改正提案
の削除を考えていただければと願っております。 これ以外にも、約款、債権者代位権、詐害行為
取消権
等、おかしな
提案
はたくさんあります。ただ、二十分という時間がありますので、全てを語ることはできません。
改正提案
の問題点は、やはり配付
資料
の、大分分厚くはありますが、「
債権法改正
法務省
案の問題点の
総合的検討
」に今言った三点を含め
検討
しておきましたので、御一読いただけることを願っております。 ただ、今までの私の話を聞いて、一体なぜ
法務省
がこのように問題が多い
改正法案
を
国会
に提出したのか、不思議に思われる
先生方
も多いことと思います。そこで、今回の
改正
の背景事情をお話ししたいと思います。
法制審
議会に
民法
部会
が立ち上げられる三年前、
民法
(債権法)
改正
検討
委員会
が立ち上げられました。その
民法
(債権法)
改正
検討
委員会
の規程を見ますと、
改正
試案の原案
作成
は準備会の任務とされていましたが、設立された五つの準備会の全てに、
法務省参与
の
内田
さんと、参事官の、現在では民事法制管理官ですが、筒井さんが
委員
として入っていました。また、この規程によりますと、幹事として
法務省民事局
の局付が準備会に
参加
することも認められていました。学者で複数の準備会の
委員
になった人は一人もおりません。この
民法
改正
検討
委員会
は、全体
会議
こそ学者が多数でしたが、原案
作成
は
法務省
の影響下にあるように組織が組み立てられておりました。 この
委員会
が立ち上げられると、学界から
法務省
に移籍した
内田
さんが
委員会
の事務局長に就任しました。そして、
法務省
に移籍した翌年に、論文で、「伝統的な
民法
が想定していた「人」の概念が
消費者
を上手く包摂できないことを正面から認め、
民法
の中にも
消費者
という概念を使って
消費者
のための
規定
を置こう、という
立場
」があると
主張
しました。
内田
さんは、
法務省
に移籍する以前にはこのような
主張
をしていたわけではないと私は
理解
しております。 そして、この論文を発表した翌年、みずからが事務局長を務める
民法
(債権法)
検討
委員会
が「
債権法改正
の
基本方針
」を発表する中で、
改正法案
の中に、「
消費者
・事業者の定義
規定
を一対をなすものとして置くものとする。」、「
消費者
契約
法から私法実体
規定
を削除」した上で
民法典
に取り込み、「
消費者
契約
法を
消費者
団体
訴訟
を中心とする
法律
として再編する」という
方向
をうたい上げました。そして、その翌年の
法制審議会民法部会
に、次のような
内容
の
資料
を提出したのです。 総論(
消費者
・事業者に関する
規定
の可否等) 従来は、
民法
には全ての人に区別なく
適用
されるルールのみを
規定
すべきであるとの
理解
もあったが、
民法
の在り方についてこのような考え方を採る必然性はなく、むしろ、
市民
社会
の構成員が多様化し、「人」という単一の概念で把握することが困難になった今日の
社会
において、
民法
が私法の一般法として
社会
を支える役割を適切に果たすためには、「人」概念を分節化し、
消費者
や事業者に関する
規定
を
民法
に設けるべきではないかという指摘がある。 これが
法制審
の
資料
です。 このような
資料
を見た
法制審
議会の
民法
部会
の
委員
の
方々
は、第三者の指摘に
民法
部会
が耳を傾けようとしていると御
理解
なさったと思います。しかし、この指摘をあらかじめしたのは
内田
参与です。これは、同一人物が法務官僚でもあり、かつ研究者であるという一人二役であることを利用しつつ、かつ、
審議
会の場では同一人物のものであることを秘匿し、みずからが書いた論文をあたかも第三者の執筆であるかのごとき印象を与えるような
資料
の提出をしたことになります。 このことを正当化するために、別の論文で
内田
さんは次のように書いております。私は現在、
法務省
に所属していますが、参与という身分で、担当者の求めに応じて学問的見地から自由に
意見
を述べる
立場
にあります。本書も、長年大学教授として
民法
を研究してきた私
個人
の考え方を自由に述べたものであり、
法務省
の見解とはかかわりがないことをお断りしておきたいと思いますと。 私は、
民法
(債権法)
改正
検討
委員会
が立ち上げられた段階では、その
委員会
に入らないかと誘われ、別段、当時は
法務省
の意図も
理解
しておりませんでしたので、そこに
参加
させていただきました。ただ、この
民法
(債権法)
改正
検討
委員会
で
提案
される事務局原案は、余りにも跳びはねた
内容
のものが多く、
日本国民
、日本
社会
にとって無
意味
どころか有害であることも多かったので、
反対意見
を述べることも多々ありました。 また、そのような
反対
により事務局原案が否決されるようなこともありまして、そのような
経緯
がありましたので、私も含め、事務局原案に
反対
したことがある者は、
法制審
民法
部会
には誰も
参加
しませんでした。先ほどの参考
意見
で、
法制審
民法
部会
全会一致ということを言われましたけれ
ども
、それは、あらかじめ
反対意見
をした人は全て排除してからの全会一致であることは御記憶していただきたいと思います。 ただ、
民法
部会
が発足してから半年ほど、私は、政府の公式の
審議
会であれば、もう跳びはねた
議論
はしないだろう、まともな
議論
がされるだろうということを期待いたしまして、沈黙を守りました。しかしながら、
議事録
を見ると、跳びはねた
議論
が続くもので、覚悟を決めました。そこで、沈黙を破りました。 そのときに考えたことは、今回の
債権法改正
の本来の、ただ、秘められている目的は、
消費者
法制定の段階で
法務省
が、形式的にはともかく実質的に失った
消費者
契約
についての権限を
消費者
庁から奪還することにある。そこで、
自分たち
が
改正
原案をつくった
民法
(債権法)
改正
委員会
を学者の団体であると言い立てて、
消費者
契約
についての
規定
を
民法
に移すという
改正案
を学者
提案
としようとしたのだ。そして、この問題が
議論
の焦点になることを防ぐために、木は森に隠せの格言よろしく、数多くの
改正提案
の中に
消費者
契約
の問題を紛れ込ませた。そして、
債務不履行
の
無過失責任
とか、多くの明らかに
反対
を呼びそうな
改正案
を提示し、
消費者
契約
の問題以外に
改正案
の
議論
の焦点を誘導した。 このように考えた私は、「
民法
(債権法)
改正
民法典
はどこにいくのか」という本等を著し、以上に述べたような構造を世の中に明らかにしました。その結果かどうかはわかりませんが、
法務省
は、
最初
の段階では
法制審
議会に
提案
していた
消費者
契約
に関する
規定
を
民法
に置くことは諦めたようで、この
法案
には
消費者
契約
の問題は残っておりません。残ったのは、当初は
消費者
契約
についての権限奪還の弾よけのために提起された跳びはねた
改正提案
だけだったのです。 もちろん、このような
改正提案
には、当然のことながら、学者、裁判官、
弁護士
等の多くの
反対
があります。裁判所の中枢におられた元裁判官の中には、今回の
改正
は、その
改正
の
内容
も
改正
の進め方も、どちらも公益という
姿勢
に反しているのではないかとおっしゃっている方もいますし、別の裁判官は、本当に国民のための
改正
ですかと問い直したいとおっしゃっています。 このような
反対
がありましたので、当初
提案
よりは、現在の
改正法案
は大分穏やかになっております。それでも、今回
最初
に述べましたような
債務不履行
、
保証
、時効、原状回復の
改正
点にあらわれているように、極めて深刻な問題が多々残されております。私
個人
は、
法務省
の
改正
原案のまま
民法
改正
がなされることがあってはならないと考えております。制定後百二十年たった
民法
に
改正
の必要があることは事実ですから、
国会
の手により、よりよい
改正案
にしていただくことを願っておりますが、政府原案のまま
改正
されることには強く
反対
したいと思っております。 官僚主導のもとでロースクールは大失敗いたしましたが、その愚を
債権法改正
で繰り返すことがないよう、よりよい
審議
をしていただくように心からお願いしたいと思います。
最後
に、冒頭で申し上げました「
取引
上の
社会通念
」という、今回の
改正
で
債務不履行
以外でも極めて多く用いられている
文言
には、非常に深刻な問題がございます。この点を時間の制約で申し上げられないことは痛恨のきわみですが、時間ですので、これで私の話を終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。(拍手)
鈴木淳司
5
○
鈴木委員長
ありがとうございました。 次に、
黒木参考人
にお願いをいたします。
黒木和彰
6
○
黒木参考人
おはようございます。 本日は、このような
発言
の
機会
を与えていただきまして、まことにありがとうございます。 私は、
日弁連
の
消費者
問題対策
委員会
の
委員
として、先ほど
岡参考人
がお話しになりましたけれ
ども
、多面的な
議論
を尽くすためにはいろいろな
立場
からできるだけ大勢の
弁護士
で
議論
することが重要であるとして、
全国
各層
から約六十人弱の
バックアップチーム
をつくって、
部会
の前日などに、合計すると百二十四回
議論
したという中にずっと加わっておりました。 私は、事業者と比べまして情報力でも
交渉力
でも圧倒的に劣位の
立場
にいる
消費者
の
立場
から、今回の債権法の
改正
に関与してきました。
消費者
問題対策
委員会
では、事務方から配られる
資料
が来ますと、火曜日にありますので、それを金曜日までにみんなで読み込んで、金曜日に集まることができませんので電話
会議
で
議論
をし、その
議論
の結果を日曜日までに
まとめ
て、バックアップに書面で出すということを百二十四回続けてきたということになります。 なぜ、この
消費者
問題対策
委員会
がこのような情熱を持って今回の
債権法改正
に加わったのかということを申しますと、それは、今回の
債権法改正
ではまさに一種の通奏低音として
契約
格差の問題が意識され、
議論
されていたからだと思っております。 本日、私の名前で配らせていただきました
資料
の一
ページ
目を見ていただくといいと思いますけれ
ども
、私的自治を実現するためには
契約
は自由に締結できなければなりません。また、その
契約
に拘束力がなければなりません。 しかし、現代
社会
では、圧倒的な事業規模を持つ事業者がその事業規模を背景にして、情報力と
交渉力
を持たない者との間で
契約
を締結しているということが多数ございます。この
契約
条項の中には、一方当事者に過度に有利であったり、あるいは詳細な
契約
条項を
理解
していない者からすると不意打ちになってしまっているというような条項が散見されることは間違いありません。 同時に、
日弁連
の
消費者
問題対策
委員会
では、過度の
債務
に苦しむ人
たち
の救済活動を続けております。その大きな原因が
保証
制度
の問題である、
保証人保護
は重要な問題であると意識されておりました。そこで、
日弁連
として、債権法を
改正
するのであれば、
保証人
の保護のための
改正
を強く望んでおりました。 今回の
民法
の
改正
は、
消費者
問題対策
委員会
といたしましては、以上のように深く
審議
過程にコミットした中での成案となっておりますので、この
法案
の成案を強く期待しております。 同時に、本日
資料
として配付させていただきました「Q&A
消費者
からみた
民法
改正
」という冊子がございます。これにつきましては、
議論
した中で見送りになった七項目について言及しております。また、その他の
論点
につきましても、各項目ごとに「残された課題」というものを設けておりまして、今後の
実務
上あるいは立法上の課題について指摘させていただいております。 これは去年の四月に上梓させていただきました。まさに
法案
ができた直後に、上程された直後に
作成
させていただいたものでありまして、このような形で
議論
をしていただくことについては本当にうれしい
機会
であります。ですから、もしもお時間がありましたら御一読いただければありがたいと思っております。 また、今後、成年年齢の引き下げも
検討
されているということでございますが、十八歳になりますと、この十八歳以降の人
たち
というのはやはり類型的な
契約
弱者となりますので、今後も、
消費者
保護の観点からは、
消費者
契約
法などの関連法も含めて
検討
していく課題が出てくるんだろうなと思っているところであります。 ではまず、具体的な例としての
保証人保護
について御
説明
申し上げたいと思います。
日弁連
は、今回の
債権法改正
に当たりまして、二回にわたって
保証人保護
制度
についての
意見書
を発表しております。その
意見書
のうち、二〇一二年のものは私の
資料
の七
ページ
以下、二〇一四年のものは十九
ページ
以下にあります。 今回の
改正
内容
は、第三者
保証人
についてはかなり厳格な手続要件を課しているという点で、評価できると考えております。事業に係る
債務
についての
保証
契約
は、今まで多くの
保証人
の悲劇を生んできたものであります。 私の地元で親しくさせていただいて、今回の
民法
改正
について一緒にシンポジウムをさせていただきました
中小企業
の経営者の方がいらっしゃいます。その方は、事業を営む第三者が事業性の
保証人
になるということは、一度お願いしてほかの会社の社長さんに
保証人
になってもらうということを
意味
するんだ、そうすると、今度はその方からその会社の
保証人
に自分がなってくれと言われたら断れない、これは、銀行主導で、融通手形をお互い書き合っているのと何も変わらないんだ、こういうふうにおっしゃっていました。まさに第三者
保証
の問題点を鋭く言い当てた至言であると私は思っております。 その観点から今回の
改正
を考えてみたいと思います。今回の
改正法案
と金融庁の監督指針を対比させた表を私のレジュメの二
ページ
以下でつくっておりますので、ごらんください。個々の点については、詳細な点は割愛させていただきます。 第三者
保証
については、原則として
公証人
による意思確認、口授を求めている点では、ガイドラインでは意思確認の方法は単なる無方式、無様式の方法でも構いませんので、その点では評価できると思っております。 また、主たる
債務
者から
保証人
に対する虚偽の事実の
説明
があり、それを債権者が知り、または知り得べき場合には取り消すことができるという
規定
、これも非常に重要な
改正
であろうと思っております。 他方、
公証人
による
公正証書
による事実確認と同日に
執行証書
をつくるということが懸念されているということは御指摘のとおりであります。この点は、よく考えてみますと、本当に
保証
をするのかということについて
保証人
が
公証人
から確認された後、一日ぐらいもう一度考える
機会
を
保証人
に与えるということをすればよいのではないかと思いまして、例えば、これを、先立つ日という修正をすることで、この点の疑問が払拭されて懸念が払拭できるのではないかなと私
自身
は思っております。
最後
に、監督指針との関係で、ぜひとも今後も御
検討
いただきたい点が、
保証
履行時における
保証人
の履行能力を踏まえた対応でございます。これにつきましては、三十四分の三の一番
最後
のところですけれ
ども
、今回の
法案
にはありません。この点は、
日弁連
も、繰り返し、比例原則といったような形で何とか
改正
の中に入れてくれということで立法化を期待した考え方でありますけれ
ども
、今回の
改正
では見送られております。今後は、
実務
における経営者
保証
のガイドラインの運用などの実績を踏まえまして、何らかの形で立法化されていくことを強く期待しているところでございます。 また次に、具体的な例としての定型約款について私の
意見
を申し述べておきます。 定型約款の
規定
も大変重要な
改正
だと私
ども
は考えております。
現行民法
には、現代
社会
において重要な役割を果たしている約款について
規定
が一切ありません。 この約款のうち、今回は、かなり限定された約款類型である定型約款について規律を設けることとなりました。この定型約款の規律を手がかりといたしまして、当事者の合意が希薄である約款について、どのような要件で拘束力が認められるのか、一方当事者に有利な
内容
が含まれている場合、合意の効力がどこまで認められるのか、また、約款提供者が約款を
変更
しようとしている場合、どのような場合にどこまで
変更
が可能なのかといった
論点
について、今後、裁判
実務
も含めて解釈が行われていくことは有意義だと思っております。 この定型約款につきましては、実は、
法制審
議会で平成二十六年八月二十六日に決定された要綱仮案では、「第二十八 定型
契約
」と書いてあって、「(P)」、日本語がないという状態でありました。そこで、
日弁連
は、二〇一四年、平成二十六年十一月に
会長声明
を発表いたしまして、
民法
の
改正案
には約款に関する法規範を
規定
すべきであるということを申し述べました。このような
経緯
を経まして、今回、定型約款の
規定
を含む
民法
改正案
が
審議
されているということは、私
ども
にとっては大変喜ばしいことであります。 同時に、定型約款の条項の
適用
範囲がどうなっているのか、これは単に
消費者
なのか、
消費者
と事業者だけなのか、あるいは、
交渉力
が劣位にある
中小事業者
との関係でもその
適用
があるのかないのかといったような点につきまして
審議
をしていただくことが必要だと思っております。 それから、事業者には、定型約款の重要部分に関する信義則上の
説明
義務があります。このような
説明
義務の存在につきましては、
改正
民法
の
施行
までの間に周知徹底されていくことが必要であろうと考えております。 約款使用者に一方的に有利な
契約
条項、不当条項の押しつけに対しては、みなし合意の除外
規定
で対応できるということは大きな
改正
であると考えています。同時に、通常想定しがたいような
契約
条項の不意打ちに関しましてもみなし合意除外
規定
で対応できると考えています。この周知徹底も重要な
論点
であると考えています。 さらに、定型約款の
変更
につきましては、
変更
の
可能性
の判断基準が抽象的なものとなっております。この
変更
要件が緩やかに運用されてしまいますと、
消費者
は
契約
締結時には同意していない約款条項に広く拘束されることになりますので、約款
変更
の要件は厳格な運用が必要であるということについても周知徹底される必要がある重要なポイントであると考えております。 あと、個別的な
論点
といたしましては、時効、
法定利率
といった大きな
改正
がなされております。これにつきましては、私
ども
も
議論
の中に加わっておりまして、
消費者
の観点からいろいろな
意見
を申しましたが、最終的にこの
改正
の
必要性
それ自体は是認できるものです。ただ、
社会
生活に大きな影響を与えることは間違いありません。そのため、
法律
成立
後、
施行
までの周知期間において、いろいろな広報などにより国民一般に広く周知していただきたいと期待しております。
最後
に、残された課題につきましてお話をさせていただければと思います。 この「Q&A
消費者
からみた
民法
改正
」では七項目の見送りの
論点
があるとしておりますけれ
ども
、その重要な
論点
の
一つ
としまして、
暴利行為
と取り消し権の原状回復といった点についてお話しさせていただきます。 まず、
暴利行為
ですけれ
ども
、中間試案から最終的な要綱の取り
まとめ
まで、何度か
議論
が続けられた重要な
論点
であります。 今後
我が国
が高齢化
社会
を迎えていく中で、典型的な
契約
弱者であります高齢者に対して、高齢者などの
状況
につけ込んで暴利をむさぼるような事案がふえてくることは間違いないのではないかと懸念しております。そのような場合、民事ルールの基本である
民法
にこの問題を指摘する条項があってもよかったのではないかというのが偽らざる感想であります。今回の
改正
では、条項の決め方とかさまざまな問題によりまして見送りとなりました。 ただ、
民法
の特別法であります
消費者
契約
法の改定作業の中でもこの問題は意識されておりまして、過量取り消し
規定
が
規定
されました。ただ、
暴利行為
はこの類型だけではありません。高齢者の加齢による判断能力の低下につけ込んで高額な商品を買わせる悪徳事業者など、
消費者
が合理的な判断ができないなと、その
状況
につけ込む形での不当勧誘についての立法的手当てはやはり必要だと考えております。 また、取り消し権の原状回復につきましても、基本的なルールが明らかになったということについては前進であると思います。 ただ、詐欺取り消しの場合、常に原状回復義務を負担するということでは、取り消し権の実効性が担保されません。その
意味
で、
改正
消費者
契約
法で返還義務の
特則
が
規定
されたことは前進だと考えています。ただ、同時に、今後、
民法
の詐欺取り消しや強迫による取り消しについても同様の
規定
が用意されるべきではないかと考えております。
最後
に、私の今回の
民法
改正
についての
意見
を申しますけれ
ども
、今回の
民法
改正
は、百点かと言われたら、まだそうではありませんが、しかし、重要な
改正
であると同時に、我々から見ても大きな前進でございます。したがいまして、
充実
した
審議
をしていただきますのと同時に、早く国民のために新しいルールを
社会
に定着させていただきたい、そのように考えております。 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
鈴木淳司
7
○
鈴木委員長
ありがとうございました。 以上で
参考人
の
方々
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
鈴木淳司
8
○
鈴木委員長
これより
参考人
に対する
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。
山田賢司
9
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。私は、自由民主党の山田賢司でございます。 明治二十九年に制定され、百二十年を迎えるこの根本的な
法律
の
改正
の
審議
に
参加
できること、大変光栄に存じます。本日は、質問の
機会
をいただきまして、まことにありがとうございます。 そして、本日は、三人の
参考人
の皆様方、それぞれの専門の
立場
から大変貴重な御
意見
を賜りまして、本当にありがとうございます。改めまして御礼を申し上げます。 さてそこで、早速御質問に入らせていただきたいんですが、まず総論的なことをお聞かせいただきたいと思います。 今回の
改正
に当たっては、これまでの
民法
の
条文
に
規定
されていたんだけれ
ども
、考え方をいろいろ
変更
しないといけない部分、こういったものもあるんですが、中には、明文の
規定
にはなかったんだけれ
ども
、ある
程度
判例
の理論というものが確立している、こういったものをあえて法文の中に書き込むことによって、明記した、わかりやすくした、こういった
改正
の部分なんかもあろうかと思います。 こういったものを、先ほど
岡参考人
からはお話があったように、壊れていないものを直す必要はなしみたいな
議論
も一部にあったというふうに聞いております。そういった考え方は
一つ
あるんですが、
民法
という、
消費者
あるいは国民生活にとって大変身近な
法律
ですから、きちんと法文に書いて周知し、わかるようにするということは非常に大事かと思っております。 ただ、これは専門家の皆さん方では、あえて
条文
に明記する
意味
はないという
議論
もあったということなので、その辺の、あえて
条文
に明記する意義について、各
先生方
の御
意見
をお聞かせいただきたいと思います。お三方からお願いいたします。
岡正晶
10
○
岡参考人
先ほどの
基本姿勢
の一で述べましたように、我々
実務
家は、この
条文
がいいか悪いかというふうに考えておりますので、全体的に、抽象的な考え方は余りなれておりません。今回の
条文
一つ
一つ
を見ていきまして、これはあった方がいいというものについて
条文
に残していただいた、こういう
理解
をしております。 どうも、
実務
家らしい答えで申しわけございません。
加藤雅信
11
○
加藤参考人
御質問ありがとうございました。 一般論として、
判例法理
を
民法典
に取り込むということは、いい側面と悪い側面がございます。 それは、いい側面というのは、本当に
判例
法として確立している、抽象的理論を取り込むことはいいことです。しかし、
判例
というのは具体的な事案に即しているものでございますので、そこでたまたま抽象論として述べた片言隻句を入れると、その事案にはいいけれ
ども
、一般論として不適切なものがございますので、
一つ
一つ
吟味しなければいけないと思います。 それから、今回の
民法
改正
に関しまして、
法務省
は、
判例
理論を一般に取り込むということを終始一貫言っておりました。しかし、そういう
方向
で
改正
がなされたのかというと、私はそうは思いません。もしそうだったら、今回やっているところで、非常に重要な問題として、例えば
民法
九十四条の外観法理、こういうものを入れなければおかしいのに、そういうものは一切入れていない。そして、例えば、
判例
法では否定されていて、そして学界でも通説は
反対
している履行期前の履行拒絶を入れる。 基本的に、今回の
民法
改正
は、日本
社会
をにらんだものというよりも欧米の
改正
をにらんだもの、ただ、そういうことを言うと語弊があるので、
判例法理
を入れている。
判例法理
を入れているならなぜ外観法理という一番重要なものを入れないのか。言っていることとやっていることの間に食い違いがあるというのが私の評価でございます。
黒木和彰
12
○
黒木参考人
私も
実務
家でございますので、余り、そういう
判例
が云々という大きなことは申しませんが、ただ、一定の、
社会
的に明確になっているルールのかなりの部分が今回の
条文
の中に取り込まれたのではないかと考えておりまして、その
意味
では、今まで読んでもわけがわからなかったものが、少しは国民にとってわかるようになりつつあるのではないかということでは評価できるものだと思っています。 以上です。
山田賢司
13
○山田(賢)
委員
どうもありがとうございます。 私の質問が抽象的だったもので、かえって
実務
家の方にはお答えにくかったかと思って、大変恐れ入ります。 それでは、次の質問に。 まず、個別の
条文
についてお尋ねしたいと思います。 今回、三条の二ということで、意思無能力者の無効という
規定
が設けられました。これは、
法制審
の
民法
部会
にも
参加
していただいております
岡参考人
にお聞きしたいと思うんですが、意思無能力者の行為は無効、意思能力を有しなかったときは無効という
規定
になっております。 他方で、既に現行の七条では、事理を弁識する能力を欠く者については、家裁で後見人ですとか保佐人ですとか補助人といった者をつけて、それがなければ、要件を満たさない場合は取り消しという形になっております。 この辺の整理、要するに、事理を弁識する能力のない方、後見人が必要な方、こういった方は意思能力を有しなかったというふうには解せないのか、この辺の重複関係というのはあるのかないのかを含めて教えていただければと思います。
岡正晶
14
○
岡参考人
そういう難しい話は後でじっくり
法務省
に聞いていただければと思いますが、この三条の二の
条文
につきましては、意思能力を有しないというのはどういうことなのか、そこをもう少し定義づけしようじゃないかという
議論
を一生懸命した記憶がございます。ただ、六歳だとか十歳だとかいう説だとか、いろいろございまして、定義化は最終的には断念をしたところでございます。 それから、先ほどの行為無能力者につきましては、行為無能力者よりは、意思能力がないときは、その行為のときは絶対的に無効にする。最も保護に厚くするときの
条文
がこれだと
理解
をしております。
山田賢司
15
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 もちろんこれは
法務省
の方に聞かないといけないんですが、
審議
の過程で、
実務
家のお
立場
からどういった
議論
があったのかなということで御質問させていただきました。 続きまして、そういう
意味
ではまたこれも、ほとんど
法案
の
中身
というのは提出者である
法務省
に聞かないといけないんですが、今回はやはり
参考人
の皆様方のお
立場
からの御
意見
をいただければと思っております。 九十五条で、錯誤、これが、従来の無効から取り消しというふうになりました。今まで無効としてきて、これは逆に、
実務
上不都合というものがあったのかなかったのか。あるいは、無効という言葉を使っているんですが、錯誤の場合の無効というのは、本人が
反対
しない限り有効にしていたというふうに思うんですね。無効なものというのは本来
最初
から無効なはずなんですが、この辺、今まで無効としてきて不都合があったのかなかったのか。あるいは、今回、無効を取り消しに変えることによって何らかの
実務
上の
変更
があるかどうか。 これまた
岡参考人
、お願いいたします。
岡正晶
16
○
岡参考人
ここも随分
議論
したところでございます。
判例
等も踏まえて、無効にするというのは本人を保護するためのテクニックである、本人を保護するためのテクニックであれば取り消しでもいいのではないか、そういう学説もあったと聞いております。しかも、
判例
では、その無効は保護されるべき本人しか
主張
できないというような考え方もあったと思っております。 そういう
意味
では、今回、最終的には、無効から取り消しに変えたことで、そう大きな
変更
はないと
理解
をしております。そういうことで、大きな変化はないと
理解
をしております。
山田賢司
17
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 恐らく大きな変化はないのかなと思って、これは多分、こういうことを詰めるのは
法務省
に聞かないといけないとは思うんですが、
実務
上どういう不都合が生じて、何が変わるのかなというのがちょっとわからなかったもので、お聞きさせていただきました。 これは、
加藤参考人
には無効の
議論
についてはかなりお聞きをしましたので、
黒木参考人
、この点について同じような点から御
意見
をいただければと思います。
黒木和彰
18
○
黒木参考人
ありがとうございます。 私
ども
の
立場
からしますと、無効でも取り消しでも余り変わらないねということでありまして、結局、錯誤無効で相対無効だというような話がありましたものですから、そこの点は結局は余り変わらないんじゃないか。だから、
最後
のところの原状回復の範囲がどうなるのかということだけが問題だなというところでありまして、余り熱く
消費者
側として
議論
した
論点
ではないというふうに考えております。 ありがとうございます。
山田賢司
19
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。ここが余り
論点
でないということがよくわかりました。 続きまして、同じく錯誤無効のところ、九十五条。これまでは何か、講学上、要素の錯誤というものが無効だということだったんですけれ
ども
、今回、動機の錯誤で取り消せるようになったということなんです。これは、考え方によっては、勘違いしたという方にとっては取り消せていいなという反面、あんた、そう言ったじゃないか、あなたの返事を、約束を信頼して私は
取引
関係に入ったんだという人にとっては、大変
取引
関係が不安定に置かれる
状況
になると思うんです。 この辺、要素の錯誤だけではなくて、動機の錯誤まで入れてしまった、これによって何か不都合が生じるのか。先ほど、
加藤参考人
のあれは
意見
陳述の中でお聞きをしましたので、何度も恐縮ですが、
岡参考人
、御
意見
をお聞かせいただければと思います。
岡正晶
20
○
岡参考人
何か司法試験を受けているような気になってまいりましたが。 従前から、要素の錯誤で、重要な場合で一定の場合は取り消せる、無効になるという
判例法理
がございました。その法理を明文化すべきだということで、どのように
条文
化すれば、従来の
判例法理
と
整合性
があり、安定的な
実務
が実現できるか、そういうことで随分ここは
議論
をいたしました。 最終的には、この九十五条の一項の本文にありますように、「その錯誤が
法律
行為の目的及び
取引
上の
社会通念
に照らして重要なものであるとき」、こういう大きな縛りを入れました。その上で、この二号で、動機の錯誤の表現として、「表意者が
法律
行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する」場合、そして二項で、「その事情が
法律
行為の基礎とされていることが表示されていたとき」、この「表示」があるので、相手方の保護とのバランスで取り消せる場合を限定する、こういうバランスのとれた
条文
に最終的になったと
理解
をしております。
山田賢司
21
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 そういう
意味
では、これも抽象的にやっているとイメージが湧きにくいんですが、ただ、これをあえてお聞きするのは、役所に聞くと、個別具体の事案についてはお答えできないということが多いもので、
実務
家の方にぜひ御質問したいんです。 例えば、今おっしゃった「
法律
行為の目的及び
取引
上の
社会通念
に照らして重要なもの」ということで、認識が真実に反する場合とか、例えば閉店セールとやって、もう今だけですと言われて、これはえらいこっちゃ、買わないとと思って買いに行ったら、次の日もやはりやっていたとか、そういうケースというのは間々あることなんですね。よそよりも安いです、ここが一番安いんですと言われて、そうか、ここが一番安いんだと思って、本人にとっては、だから買うんだという、物すごく重要なことなんだけれ
ども
、実はよそにいっぱい安いところがあった。 こういう場合、今までは、買うという行為についての意思ははっきりしているのでこれは錯誤ではなかったんだけれ
ども
、動機の錯誤まで取り消せるということになると、そのとき得だと思って買ったけれ
ども
、全然得じゃなかったということが後でわかったときに、これは取り消せることになるんでしょうか、どうでしょうか。これはまた教えていただければ。
岡正晶
22
○
岡参考人
試験の解答ですので、間違っていたらまた後で訂正させていただくということで。 今の場合ですと、直観的には、詐欺があったということで詐欺取り消しに行くのではないかというふうに思います。 それで、詐欺までいかないで、相手方が惹起した不実行為に基づいて誤った意思表示をした場合、これがこの動機の錯誤に当たるか否か、動機の錯誤の一形態なので、相手方が惹起した不実表示の場合の取り消しの
規定
を置こうかという
議論
を随分いたしました。しかし、最終的に、相手方惹起による不実表示による取り消しは実現はせず、現在の動機錯誤のところの運用でしばらくはやっていこうというふうになったと
理解
をしております。 そういう変な事例があった場合、
実務
家はどの
条文
でいくか、知恵を駆使して対処してまいりますので、今のお話ですと、現在は詐欺か動機の錯誤で対処していくことになると思います。
山田賢司
23
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 私も、余りひどいものというのは詐欺なのかなと思うんですけれ
ども
、詐欺というのはかなり認定が難しくて、欺罔されてそれでもってということなんですけれ
ども
、単に表示されていて、ああそうか、それなら買おうかということだったら、欺罔されたというところまでいかないのかなとは思うんです。 また、もう
一つ
の考え方を見ると、
債務不履行
というか、こういうものだと言って売ったのに、その
債務
に合っていないんだという考え方もあろうかと思うんですが、今回の動機の錯誤、これを取り消せるようにしたことによって、実際の
実務
の場では、
消費者
ないしは買った人とか、こういう方の救済にはつながるのかどうか、また
岡参考人
、教えていただければと思います。
岡正晶
24
○
岡参考人
消費者
は
黒木
先生が専門家ですので、そちらにもお願いしたいと思いますが、十分武器にしていけると
理解
をしております。
黒木和彰
25
○
黒木参考人
黒木
でございます。 本日お手元に配っておりますこの本の十四
ページ
と十五
ページ
に、その問題につきましては我々の考え方は
まとめ
ておりまして、十五
ページ
に表がございます。 そこで、つまり、今回の
改正
法につきましては、動機の錯誤は
改正案
で二重丸になりました。 それから、今おっしゃったような閉店セール、いつまでも続く閉店セールみたいなものを御質問いただきましたが、そういうような、相手方の惹起により意思にミスが起こった場合どうなるのかということにつきましては三角とさせていただきまして、これは今後の解釈に委ねられている、排除されたものではないというふうに考えております。 私
ども
としましては、今回の
国会審議
の中でこれは排除されていないよねということを確認していただくことが、今後、
立法者意思
という形で裁判
実務
に大変大きな影響を与えていくと考えておりますので、ぜひとも、私
ども
はこれは三角だというふうに考えておりますけれ
ども
、これは三角なんだ、むしろ丸に近い三角だというふうに
議論
が進んでいくと、我々とすると大変ありがたいと思っております。 以上でございます。
山田賢司
26
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 それでは次に、時効についてちょっとお尋ねしたいと思います。 今回、ばらばらだった短期の債権の
消滅時効
というのが五年ということでそろえられたんですが、もちろん、請求する側からすれば、一年、二年だったものが五年ということでは保護にはなるんですけれ
ども
、例えば飲み屋さんのツケとか、そういったものを一年から五年にして、長過ぎないかなという気も逆にして、これは先ほど
加藤参考人
も御指摘になられたんですけれ
ども
。 ただ、これは決めの問題ですから、わかりにくいというものをきれいにするというのは
一つ
の意義はあろうかと思うんです。例えば、
不法行為
の
損害賠償
請求権の
消滅時効
、これは知ったときから三年で、行為のときから二十年になっている。他方、債権の
消滅時効
は全部延びて、知ったときから五年、そして行為のときから十年ということになりました。
不法行為
の
損害賠償
請求権の方が逆に手厚くしてあげないといけないんではないかというような気もするんですけれ
ども
、知ったときからの期間は
不法行為
の方が短くて、行為のときからというのは債権時効の方が、起算点からの十年ということで、こちらの方が短くなっている。 この辺について、
消費者
の保護というのか、被害者の保護といった観点から矛盾はないか、これは
黒木参考人
、御
意見
をいただければと思います。
黒木和彰
27
○
黒木参考人
ありがとうございます。 御指摘の点ですけれ
ども
、これは
現行民法
の
不法行為
が既に三年ということになっておりまして、先ほど
岡参考人
の方も申し上げていらっしゃいましたけれ
ども
、起算点、
主観的起算点
については、被害者保護の考え方から何をもって起算点と考えるかということについては
判例
実務
がかなり精緻なものがございます。それを考えますと、基本的に、客観的
消滅時効
が延びるということの方が被害者、弱者にとっては保護ではないかと私
ども
は考えておりまして、この点につきましては
賛成
ということで考えております。 以上でございます。
山田賢司
28
○山田(賢)
委員
同じく、
岡参考人
、御
意見
いただければと思います。
岡正晶
29
○
岡参考人
もう来ないかと、ちょっと油断をしておりましたが。 まず、
不法行為
の時効と
一般債権
の時効を全部そろえた方が簡明ではないかという
意見
もございました。 ただ、
黒木
さんがおっしゃったように、
不法行為
の三年、二十年が現にあるので、
一般債権
をすぐそこまで持っていくのは
相当
ではないだろうと。
一般債権
につきましては、商事時効が五年というのがかなり一般的でございましたので、基本的には、そこでまずは統一をするということで、
一般債権
の短期の方が五年になったと
理解
をしております。 ただ、さっきも申し上げましたが、基本的には同じ性質ですので、
生命身体
に係るものについては、
一般債権
も五年、二十年、
不法行為
も五年、二十年にそろえたということで、
整合性
が全体としてとれたと
理解
をしております。
山田賢司
30
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 それでは、
加藤参考人
に全然質問しなくて済みません、せっかくですから、ぜひお聞かせいただきたいんですけれ
ども
。 今回の
改正案
が大変不十分だというお考えというのは私も
理解
をしたんですけれ
ども
、不十分な点、不満足な点というのはあるんですけれ
ども
、それでもさまざまなところで
消費者
の保護であるとかそういった
規定
が設けられていて、これをまず一旦速やかに
成立
させて、課題は課題としてさらにもう一度
議論
をしていくというお考え方というのはどのように考えられるか、お聞かせいただけますか。
加藤雅信
31
○
加藤参考人
先ほ
ども
申し上げたんですけれ
ども
、当初の
提案
よりは大分穏やかになってきたことは事実です。 現在の民事局長じゃなくて前の民事局長と、何人かの方と御一緒したときに、
法務省
の方が、先生、ずっと
反対
なさっていましたけれ
ども
、ここまで来たら
賛成
していただけませんかということを言い、ただ、それは局長がおっしゃったんじゃないですけれ
ども
、そのときに私がにやっと笑ったら、隣にいた
法制審
の
委員
の方が、
加藤
先生は大きなマイナスがある
改正
が小さなマイナスになったと考えていらっしゃるんですよとその
法務省
の方には
説明
しました。 そういう
意味
で、
法定利率
とか若干、やっていいというのはあるんですよ。ただ、全体としてはマイナスだ。それはなぜかというと、日本
社会
のために
民法
を変えようというのではなくて、要するに、ある
意味
で
法務省
の権限争いとかなんかで跳びはねた
改正
であったものの残滓で、前よりはよくなったけれ
ども
依然としてあれなので、これをやることには私は依然として
反対
でございます。
山田賢司
32
○山田(賢)
委員
ありがとうございます。 時間が参りましたので、終わらせていただきます。三人の
参考人
の皆様方、本当にきょうは貴重な御
意見
をいただきまして、ありがとうございました。失礼いたします。
鈴木淳司
33
○
鈴木委員長
次に、
國重
徹君。
國重徹
34
○
國重
委員
おはようございます。公明党の
國重
徹でございます。 きょうは、
参考人
の三名の
先生方
に当
委員会
までお越しいただきまして、貴重な御
意見
を賜りましたこと、心より感謝と御礼申し上げます。 今回、
民法
の債権法の大
改正
ということで、
論点
も多岐にわたっておりますし、時間も二十分ということで限られております。また、政府に対する
質疑
ではなくて、きょうは
参考人
の
先生方
に対する
質疑
ということですので、私の方から、余り細かい
条文
の解釈論というよりは、例えば、岡先生、
法制審
議会に
参加
されて感じたこととか、また今後の
実務
の運用、こういったことについてお伺いしていきたいと思います。 そういった観点から、きょうは、長年
実務
に携わってきた
岡参考人
、
黒木参考人
中心になるかと思いますけれ
ども
、
加藤参考人
の御
意見
も先ほどるるお伺いさせていただきましたので、また御容赦のほどよろしくお願いいたします。 まず第一点目に、
岡参考人
にお伺いしたいと思います。
岡参考人
、先ほどお話の中で、六十名弱の
弁護士
から構成される司
法制度
調査会
民法
部会
バックアップチーム
というもので、百二十四回
会議
がされた。こういうバックアップを受けて、
岡参考人
が
法制審
議会の
民法
部会
の
委員
として
最初
から
最後
まで、五年四カ月も
参加
されてさまざまな
意見
を言ってきたということですけれ
ども
、この間、これは先ほど
加藤
先生からもお話もありましたけれ
ども
、いろいろ悩むこともあったかと思います。
最後
、絶妙なバランスでこれはできたと思っているということでしたけれ
ども
、それは最終結論であって、五年四カ月やっている間にはさまざまな悩み等もあったかと思います。 こういったところで、
岡参考人
が今回の
法制審
議会の中で一番悩まれた点はどのような点だったのか、また、今回
法制審
議会に
参加
されて、このやり方はちょっとこういうふうに変えた方がいいんじゃないかとか、もし思う点があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
岡正晶
35
○
岡参考人
事前に通告があれば、もっといい答えをしたと思いますが。 率直に言って、やはり
社会
的合意というのがこんなに難しいのか、それを一番感じました。 まず、
日弁連
の中でもいろいろな
意見
がございました。それぞれもっともな
意見
、それをどのように
まとめ
て
法制審
でしゃべればいいか、これがまず
最初
に悩んだ点でございます。ただ、それは、
日弁連
は四人の
委員
、幹事を出していただいておりましたので、では、この点は君ね、この点は僕ねという
役割分担
をして出したこともございました。 それから、やはり
部会
の中で、さまざまな研究者がおり、経団連さんがおり、
中小企業
さんがおり、
消費者
さんがおり、裁判官がおり、そういう中でそれぞれもっともな
意見
が出てきて、その中でどれを
条文
にしたら本当に日本にとっていいんだろう、そこが自分の
個人
の考えではないところでも、そっちの方がやはり
社会
にいいのかなと。
社会
にとっての判断、私にとっての判断ではなく、
社会
にとって、多数派にとって何がいいのか、それを考え抜いた四年九カ月だったと思います。
実務
家ではない視点、むしろ、やはり政治家さんはそういうことに日々悩んでいるんだろうなという思いをして、やはり私は政治家にはなれないな、そういう思いをしたところでございます。
國重徹
36
○
國重
委員
岡参考人
、率直な御
意見
をありがとうございました。 まさに、やはり合意
形成
というのは、
国会
においても極めてこれが難しく、重要なものでありまして、ただ、この
法務委員会
は、与野党ともに、非常に野党の皆さんの
意見
もしっかりと取り入れながら
審議
をされている
委員会
であると思いますので、またしっかりと
法務委員会
で
充実
した
審議
をしてまいりたいと思います。 続きまして、第三者
保証
の制限に関してお伺いしたいと思います。 先ほど
加藤参考人
の方から、これは
商工ローン
の再現に道を開くものじゃないかというような厳しい御指摘もございました。 この
改正法案
では、
先生方
はもう十分御存じのとおり、事業用融資の
保証
契約
は、一定の例外を除いて、
公証人
がその
保証意思
を確認しなければ効力を生じない、要は無効であると、非常に強い効力を生じさせることにして、事業用融資の第三者
保証
における
保証人
の保護を図ることにしております。 先ほど
加藤
先生の御
意見
は伺ったとして、
岡参考人
、
黒木参考人
、長年
実務
家をされてきて、これが仮に
改正
法として
成立
した場合、今後、運用としてこういうところには留意してほしいという点があれば、ぜひ御教示いただきたいと思います。
岡正晶
37
○
岡参考人
まず、
公証人
のところの手続について、過去、
加藤
先生がおっしゃるような不祥事といいますか、余りよくない事例があったのは承知しておりますので、まず、
公証人
さんのところの研修といいますか
法務省
による監督といいますか、
公証人
さん
自身
の自覚的な運用、そこがかなり大きいことだろうと思っております。そういう指導等をぜひ
国会
等からしていただければと思っております。
実務
家としましては、やはり情義性の問題も含めて
法教育
が大事なのではないか。頼まれたら断れない、そういうところに根差しているものがございますので、
法教育
が随分重要になり、
弁護士
も努力しなければいけないというふうに思っております。
最後
に、やはり
弁護士
としましては、万が一トラブルといいますか事件化した場合には、今回できましたいろいろな
条文
を駆使して救うべきものは救う、そこで
最後
は
弁護士
が頑張らなければいけない、こういうふうに考えております。
黒木和彰
38
○
黒木参考人
この
商工ローン
の問題は、実は私も
債務
者側でやりましたけれ
ども
、あれは、金銭消費貸借
契約
と複写式で委任状までつくられてしまうという、初めからもう事業者がそういう意図を持ってやっていて、しかも、その立ち会いというか、証人というのも事業者が連れてくるという中で
執行証書
ができていたという問題であります。 今回の場合は、
条文
上は口授が条件になっておりますので、面談の上、口頭でのやりとりということが手続として必要になります。 そうなりますと、普通の人であれば、
公証人役場
に行くというだけでもえらいこっちゃと思うだろうと思いますし、そこで、あなた、
保証
というのはこんなものだよという話をして、それについて、わかりました、私はこうですということについて口頭でのやりとりをするということになりますと、かなり心理的な負担は上がる。あるいは、後で知った、それは知らなかったということは言いにくくなるということはよくわかっていただけるのではないかと思います。 ただ、これは、私
ども
も同じように
消費者
問題対策
委員会
の中から言われていることですけれ
ども
、同日、
執行証書
がつくられてしまったらどうするんだという話はあります。ですから、私としましては、先立つ日という形で、一般の私文書である
契約
証書も含めて一回
公証人
から話を聞いて、もう一度よく考えてみるという
機会
を、一晩寝ようというか、寝て考えるという
機会
を一回与えるというのも
一つ
の
保証人保護
の関係では必要なのではないかと考えています。 そうすると、緊急の資金融資がだめなんじゃないかという話があるかもしれませんが、
保証人
がいないと貸せないような緊急の資金融資というのはかなり主たる
債務
者が怪しいわけですので、そうなってくると、今度は、主たる
債務
者が正しいことを伝えていたのか、そして、それについて
保証人
に正しく伝えて、債権者もそれを知っていたのか知っていなかったのかという取り消し権の問題が、同時にそういうことが出てくるわけですから、正常な
保証
を守る、そして正常な
保証
が予想外の形で事業展開をしてだめになったときにも
保証人
がそれを
理解
するという点では、一晩寝るというために、先立つ日にという形で修正すると、今のような問題はかなり軽減されるのではないかと私は考えております。 以上であります。
國重徹
39
○
國重
委員
貴重な御
意見
、ありがとうございました。 私もここは結構重要であると思っておりまして、例えば
公正証書
遺言、私も
弁護士
時代、
相当
数、かなりの数つくりましたけれ
ども
、遺言者と一緒に
公証
役場に行って、証人が二人必要なので、私と
弁護士
事務所の事務員が一緒に行って証人になるということでつくりました。
公正証書
の
民法
上の
条文
というのは、「遺言者が遺言の趣旨を
公証人
に口授すること。」ということで、これも口授ということが書いてあるんですけれ
ども
、実際に
実務
上どうやってできているかというと、
先生方
も御存じのとおり、私が遺言者から話を聞いて、遺言者ないしその親族とかいろいろ話し合いをして、事前に下書きをほぼ完璧な形でつくって、それで必要書類等も、
公証
役場に通帳とかいろいろな必要書類は先にファクス等で送って、事前に下書きを送っていますので、
公証人
としてはそれをただ、仮にちょっとした言い回しのミス等があればそこは若干直してもらうところがあるにしても、ほぼそのままそれを書いている。 遺言者は、行った場合に、それを自分で読むのではなくて、
公証人
がそのままずらっと読み上げたものを、これでいいですかと言って、はい、結構ですというようなことが
実務
上
公証
役場でも行われていますし、場合によっては、余命幾ばくもないような、少しふらふらで、病院ではなくて家で最期の瞬間をまさに迎えようとされている方というか、そういう方の場合は、家にまで出張で、出張費を払って
公証人
に来ていただいて、その場合はあらかじめほぼできたもの、こう言うとあれですけれ
ども
、どこまで判断能力があるかどうか若干懸念があるような場合も、今までの
公証人
というのは、私の経験では、少し緩やかに、柔軟に認めてくださっていたような気がするんです。当然、それが、後で意思能力がなかったとかということで無効の裁判等を起こされる場合もあるかもしれませんけれ
ども
、
実務
上かなり柔軟な運用がされてきたんじゃないかというのが私の実感でございます。 そうすると、そういった運用と今回の
保証意思
の確認というのは同じであってはならない、これは当然のことでございまして、こういった観点から、さまざま、今後政府に対する
質疑
でもここは確認していきたいと思っております。 続きまして、今回、
民法
の債権法の大
改正
というのは、
市民
生活に大きくかかわることでございます。当然、
弁護士会
等でも今研修等をされていることと思います。これで、例えば高齢の
弁護士
の先生がもう俺はやらなくていいんだということで、しなくて、弁護過誤が起きるようなことがあってはならぬということですので、しっかりと
弁護士会
でもしていただいていることと思います。 また、先ほど
岡参考人
の方から、
法教育
が重要だというようなお話もいただきました。その上で、現場の第一線で奮闘されている
先生方
からした場合に、この
民法
というのがいろいろな、まさに
市民
の生活の基本にかかわるということで、政府に対して、この周知が極めて重要だと。では、政府に対してどのような周知をすることを求められるか、できるだけ具体的に、こういうことを政府に望みたいということがあればぜひ言っていただいて、私もそれをもとにまた政府に対して
質疑
をしてまいりたいと思いますので、ぜひ御教示のほどよろしくお願いします。 これは、一応、
加藤参考人
も、この
法案
には
反対
ですけれ
ども
、仮にできた場合にということを
前提
で、できるだけ簡潔に三名の
参考人
にお話しいただければと思います。
岡正晶
40
○
岡参考人
私の
資料
の十四分の十二をごらんいただきたいと思います。 上から七行目ぐらいに、
民法
の所管官庁である
法務省
において、
市民
に対する広報、
説明
会、講演会の実施、関係団体への個別通知などを徹底していただきたい。当然、当
連合会
もやりますが。 第二に、
法務省民事局参事官室
の
責任
において、わかりやすい
解説
書を、従来の一問一答の倍ぐらいしっかり書いて、しかも早急に書いていただきたい。この書物は非常に重要であると思っております。 第三に、
施行
までの十分な期間が必要であろうというふうに思っております。ただ、提出から一年半もたっておりますので勉強は進んでおりますが、
施行
までの期間は十分にとっていただきたいと思います。 それから第四に、経過
規定
、これも重要だろうと思っております。案が出ておりますが、それをきちんと見て、それの実施に努めたいというふうに考えております。
加藤雅信
41
○
加藤参考人
別に、どの
条文
について啓蒙活動が必要かという形で
条文
を見ていたわけではありませんので、見落としもあるかもしれませんけれ
ども
、私が見るところ、年金等とは違いまして、この
条文
を知らないと
市民
が、わあ、こういう損をするよというのは、ぱっとは思いつきません。 そういう
意味
では、一般的な
法教育
といいますか啓蒙活動は必要だと思いますけれ
ども
、この点についてやらないと
市民
が困るよというのは、後でやって思いつくかもしれませんけれ
ども
、今の段階では思いつきません。 そういう
意味
では、一般的な啓蒙活動の一環として、これは
基本法
でございますから当然知っていただく必要がありますし、特に法曹関係者、準
法律
家も含めて、そういう人
たち
はこれを知らないと非常に問題ですから、そういう人
たち
の
教育
が非常に重要だろうと思います。
黒木和彰
42
○
黒木参考人
私の
立場
から申しますと、国民の皆様方がこの
民法
について知識を、詳しく知る必要があるということはフィクションだと思います。ただ、消費生活センターの相談員の
方々
とかが最も
市民
にとって身近なトラブルの相談の窓口ですので、そういったような
方々
に対して、やはり何らかの形で政府としてはこの新しい
民法
のルールを伝える。 それから、地域包括支援センターとか、そういう高齢者の
方々
と日常的に接する
立場
の
方々
もいらっしゃいます。こういう
方々
にとりましても、やはり
民法
のいろいろな問題点を知っておくということは、高齢者がいろいろ今後の問題点にぶつかったときにまず相談を受ける方ですので、そういった
方々
を
一つ
のターゲットとしてやっていただければと思います。
企業
法務の人は、ほっておいても
自分たち
で勉強するのでいいんです。そういう人
たち
はもう置いておいてもいいと言ったら語弊がありますけれ
ども
、やはり、そうじゃなくて、普通の
市民
生活を営んでいる人
たち
にとって、
民法
が変わるか変わらないかというのは、身近な問題ではありますけれ
ども
、トラブルにぶつからぬ限りはほとんど気がつかない問題ですので、今のような
方々
に周知徹底を、これはある
程度
政府として命令、命令と言ったら変かもしれません、何かのそういう
機会
を与えてやることができるのではないかと思いますし、そういう
方々
がこのセクターとなって周知徹底していただければ余り混乱が起こらないのではないかと思っています。 以上です。
國重徹
43
○
國重
委員
貴重な御
意見
、ありがとうございました。 しっかりと今の御
意見
を踏まえてやっていきたいと思いますし、また、一問一答形式の
解説
書等も、やはり当
委員会
の
審議
の
充実
ぐあいによってより
充実
したものになると思いますので、しっかり頑張ってまいりたいと思います。
最後
の質問をさせていただきたいと思います。 先ほど
加藤参考人
は、四百十五条、
債務不履行
責任
に関して、
無過失責任
なのか
過失責任
なのか、ぜひこれを今後の
審議
で問うてほしいというようなことでおっしゃいましたけれ
ども
、今後の
法務委員会
の
審議
というのは極めて重要になってまいります。 こういった観点、先ほど
加藤参考人
は今のところでおっしゃいましたけれ
ども
、
岡参考人
、
黒木参考人
に
最後
に簡潔に教えていただきたいのは、今後、我々、政府に対する
質疑
、また
参考人
の方も来られるかもしれませんけれ
ども
、そのときどういうような
質疑
を望まれるか、これに関して
最後
にお伺いしたいと思います。
岡正晶
44
○
岡参考人
それは四百十五条に関してということではなくてですね。(
國重
委員
「違います。今後の
審議
全般です」と呼ぶ)はい。 私
ども
としては、この
法案
については迅速に
成立
をさせていただきたいと思っておりますが、冒頭に述べましたように不十分な点もありますので、その点について、先ほどのような金融庁に対する指導でありますとか
法教育
でありますとか、
国会
でなければできない仕事があると思いますので、
国会
が何をするのか、何をしたらもっとよい
施行
になるのか、そういう観点で
議論
していただければとてもありがたいと思います。
黒木和彰
45
○
黒木参考人
ありがとうございます。 私の
立場
からいたしますと、実はよくわからない、まだ最終的によくわかっていないところは、定型約款が、本当はB—Cといいますか
消費者
にかなり近い事業者みたいな人
たち
が、フランチャイズの加盟をしている人とか、事業者なのか
消費者
なのかよくわからない人
たち
がいまして、そういうような人
たち
についてのこの定型約款の
適用
はどうなのかといった点については、ちょっと私、
個人
的にはぜひ
議論
をしていただきたいと思っております。 ただ、先ほど申しましたとおり、この
法律
ができることによってその
議論
の場が、今まで全く手がかりがないのが、今後、国民のみんなの前に定型約款という考え方が示され、そして、それによっていろいろな考え方がまたこの解釈をめぐって国民
各層
から出てくるということになっていくことは非常に重要なことでございますので、その手がかりになるのはここの
審議
でしていただければありがたいと思いますけれ
ども
、本当に、まずそういう形のルールをいただきたいというのが偽らざる気持ちです。よろしくお願いします。
國重徹
46
○
國重
委員
以上で質問を終わりたいと思いますけれ
ども
、きょうは、三名の
参考人
の
先生方
、率直で貴重な御
意見
を賜りましたこと、心より感謝と御礼申し上げます。 ありがとうございました。
鈴木淳司
47
○
鈴木委員長
次に、井出
庸生
君。
井出庸生
48
○井出
委員
民進党、信州長野の井出
庸生
でございます。 きょうは、三人の
先生方
、急なお願いにもかかわらずお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。私は終わらない閉店セールでスーツを買っている口ですので、きょうは優しくいろいろ教えていただければな、そんなふうに思います。 早速質問に入ってまいりたいのですが、まず、これは
弁護士会
の
黒木
先生に伺いたいのですが、
消費者
のお
立場
ということを専門にやってきたということで伺いたいのです。 地裁の民事の第一審
訴訟
事件数というものを、私、ちょっとこの
法案
審議
に当たって調べたのですが、戦後は三万七千七百六十三件、昭和二十四年という数字がありまして、平成二十一年がピークで二十三万五千五百八件、民事第一審
訴訟
事件の新たに受けた件数ということでございます。それがどういうわけか、偶然にもこの
民法
改正
の
法制審
の時期と重なるんですが、だんだん
訴訟
事件の数が減っていきまして、平成二十六年には十四万二千四百八十七件となっているんです。
民法
の法
改正
がされたときに、裁判になったときが一番の
民法
の出番なのかなと思うんですが、
訴訟
全体の、これも債権法に係る件数ではないので私もこの判断が難しいんですが、債権法に係るところの
訴訟
ですとかADRですとか、そういうものが一体ふえるのか、また、その質がどのように変化すると予想されていらっしゃるか、忌憚のないところを教えていただければと思います。
黒木和彰
49
○
黒木参考人
ありがとうございます。 非常に難しい質問でありまして、私
個人
もわかりませんが、かつて、二十一年ごろのは、過払い金の事件が非常に多かったために一時的に起きた現象だと考えています。 それで、今回の
民法
が
改正
になったときに、裁判
実務
の中でこの
民法
が問われることは間違いないんですけれ
ども
、それが事件数とどうなるのかということについては、私は、さほど、余り変わらないんじゃないかなとは思っています。結局、
社会
のベースとなる紛争がどれくらいあるかということが裁判件数の増減に物すごく影響、過払い金の場合は過払い債権者がいっぱい、今まで
債務
者だと思っていた人が債権者になっちゃったという事実があったからどっとふえたわけでありまして、
民法
が変わったからということで
社会
の紛争形態が大きく変わるのかと言われると、余り変わらないんじゃないか。 むしろ、特に
企業
法務の人
たち
を中心に、いろいろなことを考えて、トラブルにならないように一生懸命やり始める
可能性
があって、
弁護士
からするとむしろ紛争は減るんじゃないかなという気もしますけれ
ども
、こればかりは、ほかの経済
状況
とかも影響しますので、私は何とも言えません。 これが直ちに、
民法
が変わったから、みんなして
施行
日の次の日に訴状をいっぱい持って
弁護士
がいっぱい行って、どっと裁判所に訴状を出すなんということはちょっと考えにくいので、やはりそこまではないんじゃないかなという気がしております。 以上です。
井出庸生
50
○井出
委員
ありがとうございます。 これまでの
民法
がシンプルで
条文
も抽象的であった。それが、前回、
法務委員会
の中で私が質問したときに、
条文
の量は減ったところもあるのでそんなにはふえないんだけれ
ども
、具体化はしたというようなことを民事局長がおっしゃっていたんですが、要は、抽象的な
民法
ですと、抽象的だからゆえに話し合いがつくということもあれば泣き寝入りもある、抽象的だからこそ
訴訟
ということもあるんじゃないかと思うんです。 先ほど先生も関心があると言われていた定型約款のことについて、これは、二〇一五年七月の法学セミナーという
資料
の中で
河上正二
さんという方が論文を書かれているんですが、今回、定型約款が、定型
取引
を合意した者にあっては、
一つ
には、
契約
の
内容
とする旨の合意をした、または二つ目に、定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を
契約
の
内容
とする旨を相手方に表示していたときには、定型約款の個別の条項についても同意したものとみなされるものとしていると。 この河上さんは、特に後者のケース、定型
取引
に同意したというだけでは、相手方、顧客の約款
内容
に対する同意の要素が完全に否定されており、
民法
の根幹にかかわる私的自治、意思自治の観点から問題が極めて深刻だと。 少し中略をするんですが、今回の
民法
の
改正
、新たな約款の
規定
ですと、その約款の受領者は、採用合意のレベルではなかなか争うことが、する余地が少なくなって、断念をしてこれに従うか、または裁判所に出向いて条項
内容
の不当性をこのみなし
規定
を打破するというレベルの問題として争うほかないことになると。 そういうようなことを論文に書かれているんです。 ある
程度
ルールが具体化されると、
社会
一般上の
契約
の世界にあっては、こういうルールです、そうなんですかということになって、それがどうしてもおかしいということになれば裁判になると思うんです。 ですから、裁判の質の変化というところは少し、今までの、よくわからないから裁判をしてみようから、より先鋭化するのではないかというような懸念を持っておるんですが、その点については、先生、いかがでしょうか。
黒木和彰
51
○
黒木参考人
今の御質問は、まさに定型約款の拘束力の範囲が、どういう約款が定型約款としてこの規制に
適用
されるのかということがまずわからないとよくわからない話ではありますけれ
ども
、御懸念の点は確かにあるかもしれません。 そこは私にも何とも言えませんが、ただ、今、消契法、
消費者
契約
法十条とかでもこういう問題がありまして、それについては適格
消費者
団体が裁判を起こすことができているのですが、では、適格
消費者
団体が消契法十条に基づいて、私も福岡の適格
消費者
団体の
理事
をしておりますけれ
ども
、いっぱい裁判をやっているのかというとそんなこともないわけでして、これが
個人
の問題になったからといって、直ちに裁判がふえるのか、裁判が混乱するのかというと、余りないんじゃないかなと思います。 今は何が何だかわからないわけです。今、よくわからない条項に基づいて拘束されているか拘束されていないかもわからないという
状況
が、ここは確実に拘束されるねとわかるということは、むしろ紛争が減る
方向
に行くかもしれないなと思っていますけれ
ども
、これはもうまさに
適用
されてみないとわからないので、私としては感想めいたことのコメントになります。済みません。
井出庸生
52
○井出
委員
ありがとうございます。 次に、岡先生に伺いたいのですが、先ほど
加藤
先生の二十分のお話の中で少しお話があったんですが、これは二〇一三年ごろになるのですか、
法律
時報の八十五巻三号から少し引いてきたんですが、
民法
改正
、
全国
弁護士
千九百人の声ということで、
弁護士
の声を
民法
改正
に反映させる会事務局がアンケートをされている。 この文面を見ますと、当時、中部
弁護士会
連合会
司
法制度
調査
委員会
は、会として正式に会員の意向調査をする、山梨県
弁護士会
も同様のことを考えられていたということで、そのアンケートの結果を見ますと、
賛成
意見
百七十六、
反対意見
千三百七十八、各設問も五段階の評価をして、五が一番大
賛成
、一は大
反対
、その平均値をとると一・九で、極めて慎重な
弁護士
さんが多いということをこの論文は言われているわけなんです。 先生が冒頭おっしゃられた、
弁護士会
の中でさまざまな体制を組んで
賛成
に至ったというところも十分
理解
はできるんですけれ
ども
、例えばこういった声というものは具体的に
弁護士会
の中でどういう位置づけ、取り上げ方、
議論
があったのかをちょっと教えてください。
岡正晶
53
○
岡参考人
今でも一部の方に
反対
の
弁護士
がいらっしゃるのは事実でございます。 過程の中で段階がそれぞれございまして、当初の中間
論点
整理のあたりでは、
論点
数も
相当
多うございましたし、やや過激な
論点
もありましたので、それを対象にすると
反対
という
意見
も多かったように思いますし、バックアップ
会議
あるいはその前の
単位会
の
会議
でも、そういう
意見
のある方で
会議
に出てきていただいた方とはしっかり
議論
をしていきました。その上で、最終的にはどんどん煮詰まって、
最後
のこの
法律案
になったもの、そこについては大多数の
賛成
が得られているというふうに
理解
をしております。 ただ、
反対
の方が今でもいらっしゃるのは事実でございます。
井出庸生
54
○井出
委員
ありがとうございます。 次に、
加藤
先生に伺いたいんですが、
加藤
先生には、私の方からちょっときょうは個別にお願いをした
経緯
もございまして、特に、三人の
先生方
の中で、
法案
に対する慎重な
意見
を述べていただきました。
民法
改正
について本当に長い間かかわられてこられたというところは、きょうの二十分のお話で大変
理解
をしたんですが、
一つ
、先生の御経歴の中で、国際ファイナンスリースに関するUNIDROIT条約、この日本政府の代表代理をされたり、UNIDROITリース条約草案・ファクタリング条約草案起草
委員
というのを先生はされていたと伺っているんですが、ちょっとこれについて簡単な
説明
と、また、このお
立場
が先生の
民法
改正案
に対するお考えに何か影響があれば教えていただきたいと思います。
加藤雅信
55
○
加藤参考人
確かに、
民法
改正
で、初め、
民法
(債権法)
改正
検討
委員会
というのは、
法務省
は学者の団体だとは言っていますけれ
ども
法務省
の方がすごくかかわったあれで、それに誘われたということを申し上げましたけれ
ども
、私、
民法
改正
でここまで
発言
しますと何か反体制派のように思われがちなんですけれ
ども
、私は別に全然反体制派でも何でもなくて、ごく普通に行動していましたので、政府の
委員
や何かもたくさんやっております。 今おっしゃった国際リース条約やファクタリング条約をつくるときにも、これは外交
会議
というのでつくりました。私は当時国立大学におりまして、外務省に出向していきました。外務省に出向したときに、外務省が私をピックアップしたという形式にはなっていますけれ
ども
、これは
法務省
の推薦だと思います。
法務省
とも別に全然険悪な関係ではなく、
法務省
の仕事を今までも手伝っていましたし、
法制審
の
民法
部会
の
委員
を、この
債権法改正
ではなくて、やっておりましたし、司法試験
委員
もやっている、ごくごく普通の関係。 ただ、今回の
民法
改正
も、そういう
意味
で、
最初
に誘われたとき、ごく普通の官庁の仕事で、また、私は
民法
を
改正
すべきだという
立場
でしたから、ごく素直な気持ちで行ったんですけれ
ども
、余りにも
改正案
の原案が跳びはねているので、
一つ
一つ
に
反対
せざるを得なくて
反対
していった。そして、三年ぐらいしてやっと、
民法
改正
の
基本方針
が出た段階で、ああ、ここまでやってきたものの背後には
消費者
契約
法の問題があったとやってきたのが三年たった段階で、そういう
状況
でございましたので、リース条約とか何かつくったときにはごく普通の、よくある学者。私はいわゆる、お役所の言うとおりに動く
立場
でもありませんので、すさまじく重用されたというわけでもないんですけれ
ども
、ごく普通に官庁とつき合っておりました。
井出庸生
56
○井出
委員
国際的なお仕事もされたというところを伺いたかったんですが、ざっくばらんにいろいろとお話をいただきまして、ありがとうございます。 先生の御本の中から一点伺いたいのですが、今回、約款というものが全然
民法
にないじゃないかということで定型約款を設ける。先生の御著書「迫りつつある
債権法改正
」の中で、実は約款の適正化というものは長らく論じられてきている問題だと。 昭和五十九年の第九次国民生活
審議
会の
消費者
政策
部会
の中で、「解釈に疑義がある場合は
作成
者である事業者に不利に解釈すること。」と。このもととなっている、昭和五十六年十一月に出された第八次国民生活
審議
会
消費者
政策
部会
報告においては、「事業者からの
変更
及び解消
消費者
は、
契約
内容
に将来
変更
がないものと考えて
契約
を締結するのが通常であり、また、事業者は、将来起こり得る危険の負担を織り込んだ上で
契約
内容
を定めることができる。したがって、事業者から
理由
なく
契約
内容
の
変更
又は解消を一方的に行うことは許されない。これを行うことができるのは、合理的な事由のある場合のみに限定し、また、その事由を明確に示す必要がある。」と。 これが第八次の報告の中で言われていることなのですが、この約款
作成
者不利の原則ということが、今回の
民法
の定型約款の新たな
規定
の中で何か、これまでどおりなのか、それが大きく変わってしまうのか、先生の御
意見
をいただきたいと思います。
加藤雅信
57
○
加藤参考人
ありがとうございました。 約款につきまして、
現行民法
に
規定
がないので約款を
規定
すべきだということ自体は、私はあるべき
方向
だと思います。ただ、当たり前ですけれ
ども
、
規定
するというときは、
規定
の
内容
がよくなければいけないわけですね。 ごくフラットに考えまして、
契約
をつくった人と、ああそうと言ってサインする人だったら、つくった人の方が有利なのに決まっているんです。ですから、約款というのは常に
作成
者の方に有利で約款
適用
者に不利になる
可能性
があるので、世界的に、いわゆる約款
作成
者不利の原則という、解釈に疑義があるときは約款
作成
者の不利に解釈しようとか、そういう
議論
がなされています。 それがここのところに反映しているかというと、反映はしておりません。ただ、反映していないのが大問題かというと、ほかの国の事情を見ても、約款
作成
者不利の原則で決定的なことがあったと私は思っておりませんので、それがないことが大問題だとは私は特に思っておりません。 ただ、今回の約款法の
改正
で大問題なのは、約款
作成
者に事後改定の自由を認めたんですね。 これは、今までの、
法制審
ができる前に、まだ経済企画庁の国民生活
審議
会が
議論
したときに、そういうことがあってはいけないということは何回も何回も
議論
されていましたし、ドイツ
民法
が
改正
されましたけれ
ども
、ドイツ
民法
では、約款の中に約款
作成
者の改定権を入れた場合にはそれを無効とするとなっているんです。 それを、今度の
民法
の
改正
は、何も書いていなくても、
作成
者の自由を
法律
で認めちゃったんですね。世界的にちょっと考えられないので、さっき先生がおっしゃった
河上正二
さんというのは約款の専門家なんですけれ
ども
、この
河上正二
さんも含めて、この約款の
規定
は何だろうと言っている
民法
学者が極めて多い。恐らく、つくる方には有利ですから、これを推進する
方々
がいることも事実ですけれ
ども
、これは世界的にはかなり異様な約款の
規定
だと私は思っていますし、これは私
個人
じゃなくて、学者の
方々
、もしほかに今後聞いていただいたら、約款の普通の研究者はそう思うと思います。
井出庸生
58
○井出
委員
どうもありがとうございます。
最後
、
保証
の関係を
黒木
さんに伺いたいのですが。 民進党は、
個人
の
保証
について、これまでも厳しくすべきだという
法律
を出してまいりまして、
保証人
が法人である場合や
保証人
が主たる
債務
者である法人の代表者である場合、それ以外は原則として認めない。 そしてまた、今回の
法案
については、それもさることながら、その前段の
公証人
というものについても、果たして本当に機能をするのか、また、これまでの
議論
で、今回、
公証人
にも行かなくていい例外で配偶者というところが残っていて、これは極めて前近代的ではないか、そういう指摘があると思うんです。 先生のお
立場
、先生のお考えで、ここを、さらなる
改正
、もっと
改正
を踏み込んだ方がいいとお考えなのか、そのあたりを少し教えていただきたいと思います。
黒木和彰
59
○
黒木参考人
ありがとうございます。 まず第一点の
公証人
に対する口授の問題でございますが、先ほ
ども
いただいておりましたけれ
ども
、遺言の場合は、口授をする側の利益があって、自分の遺言意思を
公証人
によって確定させていただくことによって自分の意思に基づく遺言の効力が発生するという
意味
で、
発言
者に利益があるわけです。ところが、今回の場合は
保証
債務
を負担するということでありますので、本人にはほとんど利益がない。こういう、利益
状況
が違います。 そのような場合に、
公証人
が、あらかじめ金融機関がつくってきた文書みたいなものをばっと持たされて、それで、あなた、こういうことだけれ
ども
保証人
いいのというような形の、そういう形式的な口授と意思確認をするのか、それともより踏み込むのかというのは、やはり
実務
の問題ではあると思いますが、これは利益
状況
が百八十度遺言とかと違うわけです。 そのあたりはぜひとも、
法務省
等々のお力もあって、やはり
保証人
に対する口授の仕方というのは、不利益、
公証人
によって口授することが本人にとっては死活問題になる、しかも、人の
債務
によって自分が死活問題になるというものですので、自分の財産を自分の死後どうするかという遺言とは全く違うわけですから、そこについての
公証人
の
説明
義務の
程度
、
内容
の深化というのは違うということをぜひお願いしたいと私は
個人
的に思います。 そういうことを
公証人
から言われると、
公証人
の方というのは結構年ですので、なかなか、聞いている方も、結構大変なことが起こるんじゃないかなというふうに思うんじゃないかなと思いたいと思っていますので、そういう点でまず
一つ
。 それから第二点、配偶者の問題は非常に重要な問題であると思っております。 これは結局、旦那が失敗したら奥さんも一緒に
まとめ
て
保証
して、二人して破産しろみたいな、そういう思想が背景にあると思っていますけれ
ども
、やはりそれは、現在の
社会
的な中ではそういう見解、そういうような事実が全くないわけではない。結局、いろいろ
議論
をした結果、やはり必要だということで押し切られてしまいましたが、この結果として、例えば、離婚してももとの旦那の
保証
債務
だけが乗っかってくるといったような事例もあります。そうなってくると、今度は奥様の再建というようなこととか、旦那が離婚した後何しているかわからないのにいきなり
保証
債務
だけ飛んでくるとか、そういうような事例がいっぱいありますから、今後そういうことについてもいろいろな
審議
を深めていただいて、これは最終的にはいろいろな形になるかもしれませんけれ
ども
、例えば、いわゆる事情
変更
みたいなもので、旦那と当時は現に事業に従事していたかもしれないけれ
ども
、そのままけんかしちゃって別れちゃったから、これは
保証
債務
の効力というのはどうなんだみたいな
論点
というのも今後何らかの形で裁判
実務
では考えていきたいと思いますし、この中でも、そういう点についてもどうなのかと。 事業に現に従事するときが
成立
要件ですけれ
ども
、存続要件は何なのかみたいな話をしていただくこととかも含めて、やはり配偶者の問題というのは重要な問題だと私は思っておりますので、ぜひ、できたらそこは修正していただきたいんですけれ
ども
、なかなか、いろいろな形の中でこうなってしまっておりますので、そのあたり、今後、特に離婚した後とか、本当に、相談を受けていてかわいそうだなと思います、もう養育費ももらっていないのに突然連帯
保証
債務
だけやってくるみたいな形が現場でありますので、そういうことも考えていただければと思っております。 以上です。
井出庸生
60
○井出
委員
三人の
先生方
、貴重な御
意見
ありがとうございました。 どうもありがとうございました。
鈴木淳司
61
○
鈴木委員長
次に、藤野
保史
君。
藤野保史
62
○藤野
委員
日本共産党の藤野
保史
です。 きょうは、
参考人
の
先生方
、御多忙の中、大変貴重な御
意見
を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。 三人のお話をお聞きして、この
民法典
の
改正
、四年九カ月間の
審議
にさまざまな形で主体的にかかわってこられた、その思いといいますか熱意というものを本当に強く感じました。私
自身
も、そうした大変重要な
法案
審議
だということを、改めて、決意といいますか覚悟といいますか、それを今固めているところであります。本当にありがとうございます。 その上で、
論点
としては大変多岐にわたるというふうに思います。その大
前提
としまして、
岡参考人
がきょう御提出いただいた
基本姿勢
、
岡参考人
の
資料
の十四分の四に当たるところなんですけれ
ども
、この
基本姿勢
がやはり大事かなと思っております。 とりわけ、私も先日の
質疑
で聞いたんですけれ
ども
、四番目の「
専門的知識
や情報の量と質または
交渉力
に大きな格差のある
消費者
・
労働者
・
中小事業者
などが、
理由
のない不利益を蒙ることがなく、公正で正義にかなう
債権法秩序
を構築できる
民法
となるように積極的に提言する。」ということでありました。この視点というのを私は大事にしたいなと
個人
的には思っておりまして、この点で、今回いろいろ
審議
があってというお話もありましたが、この角度から見て、
参考人
の皆さんは、この
法案
、どうなっているというふうにお感じなのか、お聞かせいただければと思います。
岡正晶
63
○
岡参考人
この点はなかなかハードルの高い点だったと
理解
をしております。明確に弱者保護ということを打ち出しますと、やはり経済界等から
反対
が多かったということで、
論点
から落ちたのも多々あるように
理解
をしております。 ただ、その次の五
ページ
を見ていただきますと、やはり、
保証人保護
の拡充につきましても、弱者になり得る
個人
の保護に役立つと思いますし、定型約款の明文化につきましても、若干狭い要件立てではありますが、弱者の保護につながるものだと思っております。重要ルールの明文化のところでも、意思能力の無効の明文化というのは、やはり高齢者の
方々
に対する前進だと思っております。その下の、賃貸借
契約
終了時の原状回復義務で通常損耗を除いた、
判例法理
の明文化ではございますが、そういうところで一歩進展はあったと思っております。 ただ、これは、
暴利行為
の明文化でありますとか信義則の
考慮要素
の明文化でありますとか、そういうところでは今回一歩及ばなかったところでございますので、次に向けて
社会
的合意の
形成
に努めていきたい、こういうふうに考えております。
加藤雅信
64
○
加藤参考人
ありがとうございました。 なかなか、法というのは、いろいろな法があって、
役割分担
をしていると思うんですね。ですから、
取引
でも、大
企業
同士の
取引
もあれば
市民
間の
取引
もあれば大
企業
と
消費者
との
取引
もある。それのときに、基本的に、
民法
というのはフラットな関係を規律する、そして
消費者
法とか労働法とかそういったもので弱者を保護する、そういうふうな
役割分担
ができている法体系になっております。 そういう
意味
で、今回の
民法
改正
が、では弱者保護にすごく資するかというと、特に資するとは私
個人
は思っておりませんが、そのことは、
改正方向
としてけしからぬというよりは、もともと
役割分担
として
民法
がそういうものなんだから、
民法
の
改正
ではそういう形、これは、今でも
消費者
契約
法の
改正
が進んでおりますけれ
ども
、そういったところでやる。 要するに、
民法
というのは全てに
適用
されますから、弱者保護の
規定
があると大
企業
同士の
取引
も規制されてしまうんですね。ですから、それは法の
役割分担
ということで仕方がないことかなと思っておりまして、その点では、私、今回の
改正
について問題があるとは思っておりません。もともと
民法
はそういうものだと。
黒木和彰
65
○
黒木参考人
私
ども
としましては、一番
最初
の
意見
のときに申しましたけれ
ども
、
民法
改正
の
議論
の中の通奏低音として
契約
格差の問題はずっと意識されていたと思っています。この事実認識が正しいかどうかというのはまたあれでしょうけれ
ども
、そう思っていましたし、その
立場
で関与していました。 その中で、いろいろな、例えば
暴利行為
の
議論
とかも、
最後
の
最後
まで、要綱仮案がまとまる直前ぐらいまで
議論
をされていました。
議事録
の中でも、貴重な、いろいろな
判例
の読み方といったようなことも含めた熱い
議論
がされていたというところから考えますと、
民法
の中に、今の
社会
は、やはり、巨大な事業者と、そうじゃない事業者と、それから本当の、そんなところと無関係にただ単に生きているというか、普通の
消費者
として消費生活をしている人
たち
、いっぱいいろいろな多様な層があって、そういうような中のルールのある
程度
一般化できるものは
民法
の中に取り込もうという
意見
があったということも承知していますし、それは
一つ
の考え方であると思っていましたし、私
ども
消費者
問題対策
委員会
では、
民法
の中に、何かの
規定
で、事業者と
消費者
の定義
規定
ぐらい置いてくれという
議論
も
最後
までしていました。 だから、そういう
意味
においては、トライしたということは間違いないし、その中で、トライした結果として、もちろんそれが入ることによっては解釈の幅が広がり過ぎちゃって、先ほど
加藤
先生がおっしゃったみたいに、巨大
企業
同士のMアンドAみたいなところにそんな
議論
が入ってきたら困るじゃないかとか言われてしまうこともあることも十分承知しておりますので、一定
程度
、そこはできなかったものもあります。 ただ、先ほど
岡参考人
もおっしゃっていましたけれ
ども
、我々とすると、この
日弁連
の評価はそのとおりだと思っていまして、
個人保証
とか定型約款といったようなところでは、かなり前進した、新しいルールができようとしていると思っています。 以上です。
藤野保史
66
○藤野
委員
ありがとうございます。 そこで、今お話も出ました
個人保証
と約款につきましてもお聞きをしたいと思うんです。それぞれ、前進面というところと、やはり懸念もあるということでお話しいただいたと思うんです。 とりわけ、
個人保証
でいいますと、第三者の場合は、いわゆる
公証人
による手続ということが今回加わったわけですけれ
ども
、先ほど来、
法教育
の話もありまして、なるほどなというふうにも思いました。 改めて、情義性という部分がどうしても、
最後
、どうクリアできるのか、手続的にこれを担保できるのかというのがあると思うんですが、この情義性ということに関して、今回の
法案
はどういう
議論
を経てこういうことになったのか、あるいは
参考人
はどうお感じなのか、ちょっと改めて三人にお聞きしたいと思っております。
岡正晶
67
○
岡参考人
最終的には、情義性は
民法
では対応し切れないのではないかというふうに考えました。軽率性については、
公証人
手続等で自立支援の
方向
で対処はできますが、情義性の点でいくとすれば、実態判断をして、一定の場合無効にするという
手法
しかないように思われまして、それは、今の
民法
としては
相当
ではないのではないかというふうに思います。 まあ、時代はだんだん変わってきておりまして、亭主あるいは妻の
保証
なんかやらない、そんなのは当然だというムードも、私の子供を見ている限り、ふえてきておるように感じますし、
保証
被害がこれだけ報道される中で、やはり国民の意識を変える、政府あるいは
弁護士
等がそちらで頑張るしかないのではないか、
個人
的には私はそう思っております。
加藤雅信
68
○
加藤参考人
民法
は
個人
の意思に基づくものでございますから、情義で、気持ちからそういう形に来ることについて手当ては非常にしにくいんですね。 ただ、
保証
に関しましては、実はこの
民法
改正
に先行しまして、経産省の
中小企業
庁とかそれから金融庁がかなり強い規制をしております。そういう
意味
で、そちらの方で、情義そのものを全て、情義に焦点を当てたことは不可能ですけれ
ども
、かなり法整備がされてきていますので、前よりは
状況
がよくなったと思っています。 それから、そういう情義とは関係なく、
公証人
をスクリーニングに使うということは危険性が伴うということをさっき私申しましたけれ
ども
、また別の話がありまして、
公証人役場
に行くのは嫌だという人はたくさんいるわけですね。それのときに、そうおっしゃるならば、では連帯
債務
にしてくださいとか重畳的
債務
引き受けにしてくださいといったら、連帯
債務
でも重畳的
債務
引き受けでも全部同じ機能を持てるんですね。ですから、
保証
だけこういう危険回避をやっても全く
意味
がない。私は、この
提案
があったときから、
保証
をやるならば、
保証
と連帯
債務
とそれから重畳的
債務
引き受けを三位一体でやらなきゃ
意味
がないですよということをずっと論文とか何かで言っていたんです。
保証
だけやっても、
保証
にするための
公証
が嫌だったら、それじゃ連帯
債務
にしてくださいと言ったらおしまいなので、余り
意味
がないと私は思っています。
黒木和彰
69
○
黒木参考人
ありがとうございます。 なぜ第三者が
保証
するのか、まさに情義だと思います。私も言いましたけれ
ども
、
中小企業
の社長さんのお話で、自分で
保証
をお願いした、そしてなってもらったら、その人から頼まれたら俺はならないとは言えない、これが情義性の中心を占める感覚で、それは彼の言葉によると、融通手形の書き合いだ、まさにそのとおりだと思います。この点は非常に重要な、
保証
の悲劇を生む根拠でもあると思っております。 それにつきまして、先ほど申しましたけれ
ども
、今の金融庁のガイドラインでは、これについて、合理的な判断をしているということを確認できればいいということだけなんですね。 それについて手続要件を課す、
公証人
のところにわざわざ行くというようなことで、そこでやはり、頼む方も、
公証人
のところまで行ってください、それだけお願いします、では、わかった、そこまで行こうというところで、その情義性というものが手続的にもスクリーニングされるということを期待したいと思っています。 そこまでしても、書き合い手形になるということをわかってもやらなくちゃいけないという
中小企業
の経営者の人
たち
の実態というのが否定されているわけではないと思いますから、そういうものはあるんだ。しかし、それはもう本人がそこまでやった。 前は、当然のように、行きもせずに、銀行員も、署名させて印鑑を押して、印鑑証明書があれば二段の推定で連帯
保証
だみたいな
実務
があったわけです。今だとそれが少しずつ変わってきてはいますけれ
ども
、これが大きく変わるということで、やはりお互いに、大体、銀行が
保証人
を連れてこいと言わない限りは
保証人
を頼みに行かないわけですから、そういうことも含めて金融
実務
が変わっていくことを期待したいと思います。 情義性の問題は本当におっしゃるとおりで、これはなかなか今の日本の
社会
からこの問題を消すことはできないから、こういう形で考えさせていただいたということが私なりの
理解
でございます。
藤野保史
70
○藤野
委員
ありがとうございます。 本当にこの
中身
について少しでもよいものになるように、これからの
審議
でいろいろと詰めていきたいと思っております。 次は
黒木参考人
にお聞きしたいんですが、約款についてなんですけれ
ども
、今回、組み入れ要件が結構緩やかだというお話もありました。
消費者
にとっては、これがやはり不意打ちや不当な形でかぶさってくるということがあってはならないというふうに私は考えております。 その点で、どういった点をこれからの
審議
で確認していくべきなのか。例えば、みなし合意除外
規定
というのが五百四十八条の二第二項にあるわけですけれ
ども
、この役割がかなり重要だというふうに認識をしているわけですが、具体的に、例えば不当条項や不意打ち条項への
適用
を含め、こういうことが必要じゃないかというのを
実務
家の観点で
黒木参考人
に教えていただければと思います。
黒木和彰
71
○
黒木参考人
ありがとうございます。 非常に難しい質問であると思います。今までは除外
規定
なんかないんです。初めて除外
規定
というものの概念ができました。だから、これがどういうことになるのか、この除外
規定
の実体的な要件は何なのかということで、書かれている
内容
をむしろこれから
先生方
も含めて
議論
をしていただきたいと思っております。 ただ、私
ども
といたしましては、信義則制限としては、相手方の
権利
を制限したり義務を加重する条項であって、
社会通念
に照らして信義則に反して一方的に害するという、立法過程の
議論
からすると非常に抽象的な言葉であります。これによって
適用
が除外される、合意の対象から外れていくという新しい法効果を生む
規定
なんですけれ
ども
、この内実は何ですかというのは、この
条文
にこれから具体的な現場で当たってみないとわかりません。 しかし、今よりは、ないのですから、消契法の十条で任意
規定
その他の云々というのはありますけれ
ども
、それに比べても広いのではないかと思うんですけれ
ども
、そういうことも含めて非常に重要な
規定
が入った。 もちろん、それに対しては事業者の
方々
は、これは狭く解するべきだとおっしゃるに決まっていますので、そのせめぎ合いというようなこともあると思いますので、そのあたりも含めて
議論
、どういう場合がそうなのかということについて、
実務
家は依頼者がいないと考えないという変なところもありまして、まだですけれ
ども
、ただ、いずれにしましても、大変重要な
条文
であることは間違いないので、内実について立法
提案
者である
法務省
も含めて
議論
をしていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
藤野保史
72
○藤野
委員
まさにそうした形で立法
提案
者にしっかりと確認していきたいと思っております。
条文
のたてつけでいえば、不当条項にこの除外
規定
が
適用
されるということは確認できると思うんですが、不意打ち条項、これについてもやはりこうした除外
規定
でしっかりと対応できるようにしていくというようなことも必要であるというふうに思っております。 先ほ
ども
話が出ましたけれ
ども
、
変更
ができるという、世界でも珍しいというお話がありましたが、こういう、つくった人が勝手に
変更
できるというふうなことがフリーハンドでやられると、これはやはり
消費者
にとっては大変影響が大きいわけですから、この点についてもそうではないということを
質疑
等で確認していきたいというふうに思っています。 そして、もう一点、
黒木参考人
にお聞きしたいんですが、今
法案
では実現できなかったけれ
ども
、やはり今後こういうことが必要ではないかというようなことを冒頭おっしゃっていただきましたが、もう少し詳しく教えていただければと思います。
黒木和彰
73
○
黒木参考人
ありがとうございます。 この「Q&A」の中の六
ページ
以下に書いている
暴利行為
の問題でございます。これがやはり私
ども
としては非常に重要なものでありまして、既に
判例
がある、
判例
として昭和九年とかあるわけですけれ
ども
、それを立法化していこうという
議論
をずっと続けていただいておりました。 ただ、この
暴利行為
につきましては、やはり、どういう形でこれが裁判規範として機能するのかというようなこととか、
民法
ですから
適用
範囲が広過ぎるんじゃないかというような
議論
があって、最終的に、進めるべき
意見
と、それから
反対
するべき
意見
とがあって、結局立法化できなかったということであります。 それにつきまして、私
ども
の方では、この本の中の九
ページ
のところで、「残された課題」という形でこれを
まとめ
させていただいております。 私
ども
としましては、
暴利行為
とは、MアンドAで
暴利行為
があったかなかったかということについて一切興味がありません。巨大な
企業
同士が何か買収して、そこにのれんをつけるのが高かったか安かったか、
暴利行為
かということで後でひっくり返るかどうかというような話をする気は一切ないんです、
暴利行為
の中では。 そうじゃなくて、
契約当事者
が弱っている、考え方が弱いというようなところにつけ込む、そういうようなものがやはり
暴利行為
じゃないかということになるわけですので、そういうところでまず
消費者
契約
法、それから、できたらこの
民法
の中でもその
議論
を
国会
でもしていただいて、やはりこれはいつかは必要だよねという附帯決議とかそういうようなことも含めて、これから超高齢
社会
に日本はなるわけでして、そうすると、どうしたって、細かな字は読めないとか、いいことしかわからないとか、そういうふうに人間はなっていきますから、そういう
状況
につけ込む事業者というのは必ず出てきます。そこに対する手当てとして、こういう問題について国権の最高府として
議論
をしていただいて、やはり対応が必要なんだ、今後も必要だということを言っていただきたいと思っております。 以上です。
藤野保史
74
○藤野
委員
大変貴重な御指摘だと思います。 冒頭、皆さんの熱意を感じたという感想を述べさせていただきましたけれ
ども
、今回の
法案
はそうした到達点はあるんだけれ
ども
、やはりさらに前向きな形でこれをどう変えていくのかという点を視野に入れながら
法案
の
質疑
をやっていきたいというふうに思っております。
最後
になりますけれ
ども
、冒頭、
岡参考人
のお示しいただいた
資料
の中にも、荒れた
審議
で始まったということや、
ステージ
が三つほどあって、それぞれ局面が変わっていったというお話、あるいは、
加藤参考人
からはもともとの狙いも含めてお話がありましたけれ
ども
、いわゆる
過失責任
主義の問題等で一点だけお聞きしたいのは、
過失責任
主義のお話がありましたけれ
ども
、四百十五条の
規定
ぶりも含めて、結局、結論としてどういう到達になったのかというのを、改めて
加藤参考人
と
岡参考人
の御認識をお伺いしたいと思います。
加藤雅信
75
○
加藤参考人
結論として申しますと、
帰責事由
相当
の
文言
が入り、それに一定の
修飾語
がついたということでございます。 普通、
帰責事由
、
過失責任
か
無過失責任
かというのは、こういった
債権法改正
の
議論
が始まる前に私は教科書で書いておりまして、
帰責事由
という言葉、故意、過失という言葉があれば基本的に
過失責任
、なければ
無過失責任
ということを書いておりまして、それが普通のクライテリアです。ですから、素直に読めば、これは
過失責任
の
規定
と読むのが普通だろうと思います。 ところが、
法務省
の民事局の参事官室とかあるいは
民法
部会
の
委員
が、こういう一定の
修飾語
がついたからこれは
過失責任原則
の否定だということを言っている。これは、全然立法と関係ない人が言っているなら、そんな説があるんだで通ると思うんですけれ
ども
、やはり立法関係者が言っていると、彼らが立法者というわけではないんですけれ
ども
、でも、
立法者意思
ではそうなんだという
議論
が出てくるので、恐らく
実務
は混乱するだろうと思います。混乱しても、恐らく裁判官は、普通は
条文
を読むことになれている人
たち
ですから、マジョリティーは
過失責任
と読んでくれると私は思っているんですけれ
ども
、しかし、必ずそう読まない一部の人も出てきて、混乱するだろうと思います。 そういう
意味
で、混乱
状況
になってしまったなというのが私の印象でございます。
岡正晶
76
○
岡参考人
実務
家としては、混乱は生じないと思っております。従来に比べて、この
修飾語
が入ったことによりまして、
契約
を中心に考えるけれ
ども
、
契約
だけではなく、
取引
上の
社会通念
というのも判断要素に入るということで、プラスになったのではないかと思っております。 従来から、
弁護士会
としては、
契約
に決めたら
契約
が全てだ、そうなると
契約
強者が強くなってしまう、こういう問題意識を持っておりましたので、
契約
が中心だけれ
ども
取引
上の
社会通念
も配慮はする、こういう
条文
になったことで、従来の
実務
がより明確になって、また明確にして
充実
したものに
実務
として対応していけるのではないか、このように思っております。
藤野保史
77
○藤野
委員
質問を終わりますが、三人の
参考人
の皆様、本当にありがとうございました。
鈴木淳司
78
○
鈴木委員長
次に、木下智彦君。
木下智彦
79
○木下
委員
日本維新の会、木下智彦です。 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。もうあと二十分少々ですので、おつき合いいただきたいと思います。 今回のお話なんですけれ
ども
、百二十年ぶり、
相当
多岐にわたる部分、それから今まで
改正
されてこなかった部分、そういった部分にメスを入れていこうということで、きょうもお話を三人の
方々
から聞かせていただいていたら、さまざまな御
意見
、それから、同じような視点であったとしても、ベクトルは同じ
方向
なのかなと思いながらも、感覚的には少し違う御
意見
があったかな、そういう感覚があります。 そこで、きょうは皆さん、割と細かく
法案
の
中身
について聞かれていたんですけれ
ども
、ちょっとその前にお話を聞かせていただきたいことがあります。 というのは、まず
最初
に、岡先生の方からこの
資料
をいただきました。
資料
の中にいろいろとたくさん読むべき部分があって、私も、
法制審
議会の
内容
とかも、全部見るのは
相当
厳しいんですけれ
ども
、見せていただいて、今まで変えているべきであったところを変えられなかった、変えてこなかったといった部分で、ぜひともこれは早期にやはり解決していくべきだという
立場
ではいるんです。 その中で、この
資料
の十四の四のところで、「
民法
改正
問題に取り組む
基本姿勢
日本
弁護士
連合会
」という形で、こういうお話が書かれていたり、それから、その次、十四の六のところで、これは
意見書
、これも
弁護士
連合会
から来ている。
最後
の部分では、
日弁連
会長から
会長声明
、そういう感じで
資料
立てされておりました。 そこで、ちょっと考えたんですけれ
ども
、そうはいいながら、やはりさまざまな
意見
それから
主張
があった。
岡参考人
の方からも、
日弁連
の中でもいろいろな
意見
があったんだというふうな話がありましたけれ
ども
、こういった
声明
が出たり
意見
が出たりといったものを、どういった形で
日弁連
の中で
意見
集約をされて機関決定されているのかといったところをちょっと
岡参考人
の方からお話しいただければと思います。
岡正晶
80
○
岡参考人
資料
十四分の三をごらんいただきたいと思います。この
右側
に
意見形成
に向けた
動き
も書いてございます。 一番
最初
は、
最初
に申し上げましたように、
バックアップチーム
を
全国
でつくる。
法務省
からいただいた
部会
資料
を各
弁護士会
、
委員会
に流して
意見形成
をしていただく。ただ、それでは意識のある方が中心になりますので、上から三つ目ぐらいの枠にありますとおり、「会員への
状況
周知・
検討
のため各地でシンポジウム開催」、これを、下の方にありますが、研究財団でも行いました。そういうことで、刻々と
状況
が変わっておりましたので、そういう現状をお知らせして、お考えいただくという対応をとりました。 それに加えまして、グレーで囲ってありますところが「
理事会
での
意見書
審議
・
意見交換
等」というところでございます。この
理事会
といいますのは、
全国
の
単位会
の会長さんが全員東京に集まりまして、一カ月に一回、丸二日間
議論
をするところでございまして、重要な意思決定はそこで行っております。全部で七十一人だったと思いますが、そういうところで代表の、
責任
のある会長さんと、こんな
方向
で進んでいて、このような
意見
が今多数になっていますよ、こういう御
説明
をしてまいりました。 その上で、十四分の六という
意見書
は、
理事会
で多数決で決定するものでございます。その
理事会
で決定されたものがこの十四分の六でございます。
会長声明
、十四分の十三、十四といいますのは、
意見書
の範囲内であれば、正副会長
会議
というのがございます、会長一人と副会長十三人が、これは毎週一回、丸一日
会議
をしておりますが、そこの機関決定を経て、この
会長声明
を出しているものであります。 そういう
意見形成
と手続を経て、このような書面を出しております。 以上でございます。
木下智彦
81
○木下
委員
ありがとうございます。 非常に民主的なというのか、しっかりとしたやり方で
意見
を
まとめ
られているんだなというふうに思いました。 とはいえ、きょうのお話を聞いていると、
加藤
先生であるとか
黒木
先生、いろいろと御
意見
があるかと思うんですね。こういったプロセスで実質的に
意見
集約がされてそれなりの
内容
がまとまったというふうにお考えになられているかどうかといったところを、
加藤
先生それから
黒木
先生、いろいろ御
意見
あるかと思うので、ちょっとまずお聞かせいただきたいんです。 なぜこんな話をするかというと、
参考人
で、きょう、たまたまと言ったらあれですけれ
ども
、やはり
弁護士
の
方々
が三人来られております。この
委員会
の中でも、
法制審
議会の中はやはりどうしても専門家に任されてしまう部分が多くて、もっと国民一般の
意見
が取り入れられやすい、そういった
審議
がやはり必要なんじゃないかというふうな話があったんですね。にもかかわらず、
参考人
となると、どうしてもやはり
弁護士
、専門の
方々
に御
意見
を聞くことになってしまう。そこで、ちょっとこのプロセスについても少し掘り下げたいなと思う、そういう次第で、お二人から御
意見
をいただければと思います。
加藤雅信
82
○
加藤参考人
私も
弁護士
ではございますけれ
ども
、
弁護士会
の流れをずっと言いますと、中坊会長が来るまで、
日弁連
というのはかなり野党色が強い組織だったと思っています。中坊会長が来た後、
日弁連
の執行部は
法務省
とかなり融和的になって、私、場合によっては除名されるかもしれませんけれ
ども
。そういう形で、特に、
日弁連
の執行部になるのは東京三会と大阪が中心で、そういうところの、
弁護士
の中枢で会務をとっていらっしゃる
方々
は結構
法務省
の意向と合う。 ただ、私は
法務省
の、
法務省
ではあれは学者の会だと言うかもしれませんけれ
ども
、
民法
(債権法)
検討
委員会
に入っていて、
法務省
と
立場
を異にしましたので、半年ほど沈黙を守っていたんですけれ
ども
、
反対
の
方々
が
相当
私のところに連絡をとってきました。その中には
弁護士
の方が非常に多いんですね。 さっき、この
質疑
でも
弁護士
千九百人の声というのがありましたけれ
ども
、あの後ふえていて、二千人の声となっているんですけれ
ども
、あれを見ても
反対
が圧倒的なんです。その声は
弁護士会
には反映されておりません。それは要するに、
弁護士会
の執行部にいる人と一般の
弁護士
との間の乖離だと思います。 今は、
反対
の方がいらっしゃるというのが岡先生の認識ですけれ
ども
、私は、いらっしゃるんじゃなくて、ここまで来たからもういいやという諦めの声はあると思いますけれ
ども
、これを積極的に推している人はほとんど少数で、
日弁連
の執行部の
方々
は推していらっしゃるかもしれない、あるいは東京三会、大阪とか、他の大都市の執行部の方は推していらっしゃるかもしれないけれ
ども
、ほとんど一般の
弁護士
の方は余りそうではないと思っています。 私は
弁護士
と同時に学者というあれで多少特殊かもしれませんけれ
ども
、この
法案
が通って、わあ、こういうぐあいによくなるなと思うところがあるのなら
賛成
したいと思いますし、
法定利率
等
賛成
するところはあるんですし、若干ですけれ
ども
、ほかにも
賛成
するところはありますけれ
ども
、マジョリティーとして、わあ、これで
現行民法
がよくなったというよりは、端的に言ってしまえば、もともとの狙いは
法務省
は達成することができなかったけれ
ども
、全部失敗したらメンツ丸潰れですから、そこのところでやっているので、非常に
民法
はよくなったというような
改正
とはほど遠いと私は思っていますし、それは多くの
弁護士
の
方々
の感覚ではないかと思っております。 それから、
弁護士
ばかりじゃなくて一般の国民の声を聞くということは絶対必要なことですし、それは本当にあれで、
先生方
は国民から選出されているんですから、そういう形の国民の声をすくい上げていただけるように、ぜひお願いしたいと思います。 ありがとうございます。
黒木和彰
83
○
黒木参考人
黒木
でございます。 私は福岡県
弁護士会
でございますので、東京三会でも大阪でもありません。その福岡県
弁護士会
の
審議
の過程についてはある
程度
わかっていますので、そのことを申し上げたいと思います。 先ほどの、お示しいただきました
岡参考人
の十四分の三を見ていただきますと、二〇一一年の四月に
パブコメ
がありました。これは三・一一の東日本大震災を受けて直後だったので、それについて東北三会が出せないんじゃないかというような話もあって延ばしてもらったというようなこともあって、それでも東北三会は
パブリックコメント
を出されています。福岡も出しました。これは五百項目もありまして、大激論をやはりしなくてはいけなかったのであります。しかし、
弁護士会
としては、この中間
論点
整理という形には多分ほとんど全部の
単位会
は
意見
を出したんだと思います。そうだったと思います、出していないところはないんじゃないかと思います。 それから、その後も、先ほど申しましたが、私は
消費者
問題対策
委員会
で、これは
全国
のさまざまな
単位会
から来ていまして、
法務省
の事務方から、本当は水曜日にもらえるとかいう話だったのが、遅くなって木曜日になりますとか、そんなのはいっぱいあって木曜日にもらって、それを、金曜日にみんなで
会議
をすることであらかじめ決めていますから、一日で読んで、それで
意見
を
まとめ
て、日曜日までに出さないといけない。
岡参考人
が当時、俺は「龍馬伝」を見てからみんなの
意見
を見るから、それまでに出していないと俺は見ないとか何か、そういうことを言っていましたけれ
ども
、とにかく、それまでには出さないといけないということでやっていました。 もう一回申しますと、中間試案に対する
パブコメ
も実施されましたけれ
ども
、
単位会
も、それぞれ全部の
単位会
は、恐らく中間試案についても、ここはいい、ここは悪いといった
意見
を出したはずであります。それを踏まえて、その
単位会
の会長というのは
日弁連
の
理事会
を構成しますし、
日弁連
の
意見書
は
理事会
の承認を得なければなりませんので、ある
意味
では、
全国
の、この
民法
の
改正
についてある
程度
継続的に勉強している、
法制審
議会の
議論
がどうなっているのかということを継続的に
検討
している
弁護士
はかなり
理解
していると僕は思っています。 他方、
加藤
先生がおっしゃった、
反対
している
先生方
もいらっしゃいます。この
方々
というのは、こう言っちゃなんですけれ
ども
、余りこの
改正
の過程に深くコミットはされていないと思います。やはりこれはすごく労力がかかることでありまして、僕
たち
の仕事は、
法制審
議会に出てくる
資料
を読むことじゃなくて、やはり準備書面を書いたりすることがメーンの仕事ですので、それをすっ飛ばしてそれをやるということに大変なエネルギーが要るわけですけれ
ども
、メンバーを見ていても、余りそれはされていなかったのではないかなと思う
方々
が言われています。 当初
反対
だった人
たち
も、この
議論
をずっとしていく中で、
自分たち
の必要な部分、それから、どうしてそれが今回立法化されなかったのかということについてもいろいろな
意味
で
議論
を深めていますので、私としましては、今のような地方
単位会
から見ていても、これはかなり
日弁連
全体の
意見
としてはかたいものであって、内部でちょっとひっくり返すと、また
反対
派がわっと出てくるというようなものではないんじゃないかと思っています。 以上です。
木下智彦
84
○木下
委員
ありがとうございます。 自分で思いながら、いい質問したなというふうに思いました。もうここでずっと聞いていたいなというようなお話だったんですけれ
ども
。 ちょっと、今の話も聞いていて思ったんですけれ
ども
、私がいつもここで疑問に思うところもあるんですね。それは何かというと、やはり今も言われていたとおり、
弁護士会
、地方の
弁護士会
、それぞれあります。皆さんが
日弁連
に加盟している。これは
弁護士
法の四十七条でしたか、
規定
されていて、ちょっと
条文
があれですけれ
ども
、何か、
弁護士
それから
弁護士
法人などなどは当然
日弁連
に加盟すると。私も、当然とは、何で当然なんだろうというふうに思ったんですけれ
ども
。 それで、そういうところで
意見
集約がされて
一つ
のものになっている。いろいろプロセスについては御
意見
があるかと思うんですけれ
ども
、これ自体が本当にいいのかどうかという問題にもかかわってくるのかなと私は思っているんです。というのは、
弁護士
の先生が一々その
一つ
の団体に加盟していなきゃいけないのかどうか。 これ以外にも、ほかにもいろいろなことがあります。私、何でこんな話をしたかというと、先ごろ、
日弁連
でも、今大変言われている、死刑
制度
についてなんかはそういうふうな話をされていますよね。そういった中で、
一つ
の団体しか認められない、こういうことの中でこういう
意見
集約をしていかなければいけないというのは、
相当
僕は限界があるのかなというふうに思っております。 ちょっとその辺についても、もう時間で、せっかくなので、もうきょうはそういう話にしようかなと今切りかえましたけれ
ども
、逆に今度は、
黒木参考人
から、
加藤参考人
、
岡参考人
という順番で、その方が多分公平かなと思いますので、御
意見
をいただければと思います。
黒木和彰
85
○
黒木参考人
ありがとうございます。 全く想定していない質問なので、どう答えていいかわかりませんが、強制加入は、
弁護士
自治と裏腹の関係だと僕は思っています。 したがって、私
ども
がいろいろなこういう問題について、あるいは死刑についても、福井の人権大会も私も
参加
いたしましたが、いろいろな
議論
を規制官庁なしに激論を交わせるというのは、強制加入の
反対
側である自治権があるからであると考えています。これはもう完全に私
個人
の考えですけれ
ども
、これ自体は一種のやむを得ないものであるし、したがって、会内的には民主的な手続というか、できるだけ多くの人
たち
に
参加
する
機会
は、お忙しい方もいらっしゃるので、
参加
する
機会
だけで、実質
参加
できるかどうかはまたそれぞれの
弁護士
の仕事の
状況
その他によりますけれ
ども
、与え続けていくということによって、いろいろな
意見
集約をするということではないかと思っています。 以上です。
加藤雅信
86
○
加藤参考人
強制加入団体としては、
弁護士会
もそうですし日本司法書士会もそうです。 今御質問をいただいてふっと思ったんですけれ
ども
、
弁護士会
でも司法書士会でも、一定の決まったことに対して従わなくて、それで、それについて、何の問題でだったか、とにかく
弁護士会
とか司法書士会とその会員とが
訴訟
を起こしている例というのは若干ございます。 確かに強制加入団体として、今、
黒木
先生がおっしゃったように、
弁護士
自治という形からするならば強制加入をしなければいけないということもわかりますけれ
ども
、恐らく、今御質問いただいて思ったことですけれ
ども
、強制加入団体ということは、
意見
が多様な問題についてどこまで
発言
していいかという問題はあり得ると思うんですね。ここの
民法
改正
ですとちょっとあれですから、関係ない死刑の問題でも、
弁護士会
の中にも、死刑に
反対
派もいれば
賛成
派もいるに決まっているわけで、それについて
一つ
の
方向
を打ち出すということが、いわば思想信条の自由を強制加入団体であれば侵すことになりますから、当然、強制加入団体の行動の限界というのは考えられてしかるべきだろうと思います。 私
自身
、もともときっすいの学者をやっていまして、年をとってから
弁護士
登録したものですから、余り
弁護士会
のことについて言うだけの資格があるかどうか問題なんですけれ
ども
、恐らく強制加入という
制度
をもらうことの代価はあるだろうと思うので、多様な問題についての
意見
表明については慎重にしなければいけない。 ただ、それは、
民法
改正
について
日弁連
がやったことはけしからぬとかそういう趣旨ではなくて、一般論としてお聞きいただければと思います。
岡正晶
87
○
岡参考人
強制加入団体である以上、
発言
あるいは
意見
集約にのりがあるべきだ、これはそう思っております。私も昨年度、
日弁連
の副会長をやりましたけれ
ども
、そののりを踏まえなければならないという意思が執行部にもずっと存在をしております。 ただ、
弁護士
法一条二項に、「
弁護士
は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、
社会
秩序の維持及び
法律
制度
の改善に努力しなければならない。」と書いてございます。
民法
改正
については、この観点からやはり
弁護士
それぞれが考えなければいけませんし、
反対意見
があるからといって、
日弁連
が
意見
表明しないのは
相当
ではなかろう、こういう考え方をしておりました。 もう
一つ
、だからこそ、
日弁連
が、さっき申し上げたような丁寧な
意見形成
に努めておるということはまず
前提
としまして、その上でも、
日弁連
の
声明
あるいは
意見
が会員の
意見
を拘束するとか、全会員の
意見
であるという表明ではない、こういうことは
判例
等でも明らかにされておりますので、会員
個人
を拘束するものではない、会員の
意見形成
に極めて慎重に対処しなければならないのりがある、こういう原則のもとに
日弁連
は動いております。
木下智彦
88
○木下
委員
ありがとうございます。 もう時間が来てしまいまして。非常に聞き応えのある話だなと。 おもしろいなと思ったんですけれ
ども
、きょう、
弁護士
の
先生方
なんですけれ
ども
、バッジをつけていらっしゃる方はいらっしゃらないんですよね。
国会
議員は当然のように、まあ今は議会ですからつけております。それ以外も、外に行っていても外さない人というのは多いんですよね。その中で、皆さん、ちょっとすばらしいな、逆にすばらしいなというふうに思って聞いていたんですけれ
ども
。 本当は、用意していたところ、先ほどの一般の
意見
というところで、
法制審
議会なんかに、これはちょっと立法と行政というふうな分かれはありますけれ
ども
、
国会
議員がもう少し入っていってそれで
議論
をしていけば、こういった議会の中での
議論
ももう少し活発化する、もしくは短い
審議
の中でも
充実
したものができるというような感じのことをどうでしょうかというお話もちょっと聞かせていただきたかったんですけれ
ども
、もう時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきます。 きょうはどうもありがとうございました。
鈴木淳司
89
○
鈴木委員長
これにて
参考人
に対する
質疑
は終了いたしました。 一言申し上げます。
参考人
の
方々
には、貴重な御
意見
をそれぞれ賜りまして、まことにありがとうございました。
委員会
を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手) 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時四十五分散会