○宮崎(岳)
委員 ちょっと、今のは頑張れば何とかなるという話だと思うんですね。
国内においては、口に入れる人の数は決まっているわけですから、それは頑張れば効果は出ると思いますよ。しかし、全農がここまでシェアが高い
状況になっているわけです。これが小さなシェアであれば、どんどん伸ばすということはできると思いますけれども、ここまでシェアが高くて、これ以上、販売によって販売額を上げていくというのは相当大変じゃないか。もちろん、外国にこれを
輸出するということもありましょうけれども、これだって、
国内での
消費額に比べればわずかな額である。自給率もこれだけ低いという
状況。
そうすると、この買い取り販売への転換が
農家収入の下落につながるということは、十分問題意識を持ちながら
対応しなければならないというふうに思います。この点、ぜひ深刻に受けとめて考えていただきたいというふうに思います。
次に、無条件委託販売から買い取り販売に転換した際の
消費税のインボイス方式の適用
対象となる、このことについてお
伺いをしたいと思います。
私、この点については財務金融
委員会で実は
質問をさせていただいております。そのときの図をちょっと直したものがここについておりますが、成立している
消費税法に軽減税率
制度が盛り込まれていて、税率の一〇%
引き上げを受けて、インボイス
制度が導入されます。
インボイスを発行できるのは課税事業者のみです。免税事業者、これは売り上げ一千万円以下であれば免税でもいいということになっておりますが、こういった
方々は
消費税を自分では納めませんので、インボイスは発行できないということになります。インボイスを受け取らずに物を買った事業者というのは、前の人の分も余分に
消費税を納めなければならない、こういう
制度であります。そのため、インボイスを発行できない免税事業者が取引をしてもらえなくなる、これがいわゆる取引排除の問題です。
資料の六番目、最後のページをごらんいただきたいんですが、表があります。これがどういうことが起こるかということを示しております。ちょっと間違いというか正確でない
部分があるんですけれども、というのは、これは全て八%で計算してしまっています。本来であれば、
農業資材等は一〇%が適用されるでしょうから、一〇%という額が正しくなる。上の表の一番上の列が
消費税分四千円となっていますが、五千円ということが正しい、
総額は五万五千円ということが正しいということになるんですが、そこはちょっと八%として統一させてもらって説明したいと思います。
農家が、上の表でも下の表でも
農家は真ん中です、課税業者である場合、インボイスを発行しますので、仕入れを五万円分行って、そして付加価値を五万円分つけて十万円にして全農の方に売ります、そして全農はそれを十五万円にして小売業者等にさらに売る、こういうことがあった場合、
農家の側は、仕入れをするときに四千円分のインボイスを受け取るということですね。五万円に対して八%で四千円分のインボイスを受け取って、この四千円は既に納めていますよ、そして、全農に販売するときに、これが本体価格十万円で八千円分の
消費税がつきますので十万八千円で売る、しかし、既に四千円分のインボイスを受け取っているので、この分は納めなくてよろしい、残り四千円分について自分が納めて、インボイスを全農に渡す、こういうことになるわけです。
全農は、さらにそれを五万円の付加価値をつけて十五万円で転売するときに、一万二千円の
消費税分を乗せて十六万二千円の
総額で販売をいたしますが、そのときに、一万二千円が
消費税なんですけれども、既に八千円分のインボイスが手元にありますので、残り四千円を納めればいい、五万円が利益になる、こういうことです。
もし、
農家が免税事業者だった場合はどうか。先ほどと同じようになりますが、まず、仕入れのときにインボイスを受け取りません。受け取っても使わないんですけれども、いずれにせよ、受け取りません。そして自分も、売るときには当然
消費税分を乗せて、十万円に八%分、十万八千円で全農に販売することになると思います。そうすると、
消費税を自分では納めませんので、
消費税分四千円分が、付加価値に対する
消費税分が自分の利益になる、こういうことです。ですから、自分としての利益が上がる。
しかし、それを買った方は、全農側はインボイスを受け取れません。インボイスを受け取れないと、本来であればそこまでに既に納められている分の
消費税を自分で負担しなければならない。つまり、本来であれば、自分がつけた付加価値の五万円に対して
消費税四千円を納めればいいところが、本体価格の
総額である十五万円に対して
消費税一万二千円を納めなければならない。そうすると、利益が、こちらの図にあるように、本来五万円
確保されるべきところが四万二千円しか
確保できない。ですから、免税事業者と取引しない。これが取引排除の仕組みであります。これについては、ちょっと迂遠になりましたけれども、こういうことが起こるということですね。
この表の五枚目をごらんいただきたいんです。図があると思います。これも、財務金融
委員会で提出したものをちょっと修正したものなんですが、では免税業者が取引できるのはどういうところなのか、こういう表です。これは麻生財務
大臣も、非常によくできた図だということでお褒めをいただいたんですけれども。
まず、
農家が
消費者に売る場合は、これはインボイスあるなし
関係ありませんのでオーケー、
消費者に直売する場合。
それから、直売所を通す場合、これは複雑でありまして、直売所で買う人が
消費者だったら、別にインボイスは必要ありませんからいいんですが、例えば近所の食堂のおやっさんとか居酒屋のオーナーとかラーメン屋のマスターとか、そういう方が自分の店で提供するために買いに来るときは、やはりインボイスがないと
消費税をその分納めなきゃなりませんので、インボイスをくれということになりますので、基本的に事業者には売れないんです。
そして、もちろん、例えば
地元のスーパーやレストランに
農家が、免税事業者が商品を出したい、あるいは商社や問屋に卸したい、そういうことになっても、これはインボイスが必要になりますので、免税事業者は買ってもらえないんですね。
唯一例外、
消費者を除けば唯一の例外というのは、
市場における競り売り、それからJAを通じての無条件委託販売、こういうことになります。
何でこの二つが例外となっているかというと、自分で値決めをしないからだと思うんですね。値決めをする権限が自分たちにないので税金のごまかしとかそういうこともできないということで、例外的にオーケーにされている。これは諸外国でもそのような措置をとっていると思うんです。
そうすると、もしこの無条件委託販売を買い取り販売に移行した場合、免税事業者はインボイスを発行しなければならなくなります。つまり、全農に買ってもらえなくなるか、あるいは課税登録をしてちゃんと
消費税を納める、自分がつけた付加価値分の
消費税を納める、そしてきちんとインボイスを手元に集めて経理をする、こういうことが必要になるわけですね。
二〇一〇年の
農業センサスによると、全国の
農家の八三%が売り上げ一千万円未満です。これは百三十七万戸に当たります。従事者でいうと恐らく四百万前後ということになるんだと思います。これらの大半が当然免税事業者です。
私の
地元群馬県でありますが、売り上げ一千万円以上の
農家は一三%です。自家
消費だけで販売していないというところも一四%ありますので、残り七三%が売り上げ一千万未満。この大半は免税事業者です。そうすると、群馬だけで二万三千戸になるんですね。
もちろん、これらの
農家が全部、課税登録をして、きちんとインボイスを集めて
消費税を自分で納付して、きちんと帳簿をつけてということが全てできれば問題ない。
財務省はこれをやれという話なんですよ。複数税率を導入する以上はインボイスを使うのが当たり前だから、全ての事業者に実質これをやれというのが財務省の立場で、麻生財務
大臣の答弁もそういうものです。
しかし、これは大変困難である。もちろん、やる気のある
農家、若い
農家、担い手、そういう方はできると思うんですが、高齢者だけで、おじいちゃん、おばあちゃんだけでやっているようなところが本当にこれに
対応できるのか。これは大変困難であると思います。
このような
状況について、
政府としてどう
対応していくんでしょうか。