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道下参考人 皆さん、おはようございます。
政策研究大学院大学の
道下でございます。
本日は、このような大変重要な場にお招きいただきまして、ありがとうございます。特に、今回の場合、
山口委員長が実は私の
アメリカの
ジョンズ・ホプキンス大学の先輩でいらっしゃいますので、
山口先生に頼まれると断れないということではせ参じて、喜んで参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
私の方から、きょうは三点、手短に
お話しします。まずは、
北朝鮮の核・
ミサイル能力がどのように向上してきているのかという点。
二つ目は、
日本がそれに対して、これは
安全保障面でですけれども、どう対応しているか。そして
最後に、今後どういうことをするべきかということを簡単に
お話しいたします。
まず、お手元にお配りした
資料をごらんください。
まず、
北朝鮮の
核実験でございますけれども、これは今まで五回行われております。二〇〇六年十月に第一回、そして、ことしの九月に一番最近の第五回を行っておりますが、ここの、下の推定される
出力というところに注目していただきますと、いかに
北朝鮮が着実に
能力を高めてきているかというのがわかります。
ここの二〇〇六年のところには約〇・五から一
kTと書いてありますが、
kTというのはキロトンの略でして、これは
爆発能力のことを指します。ちなみに、
広島に落とされた原爆が約十五キロトンぐらいでしたので、それを御
参考にして見ていただきますと、最初はそれよりもはるかに小さい〇・五から一キロトン、それが二回目は二から三キロトン、三回目は六から七、四回目も六から七、そして一番最近のは十一から十二ということで、かなり
広島のものに近い
能力を持つまでに、これは十年間、ちょうどほぼぴったり十年間かけて着実に
能力を向上させてきているということです。
次の
ページに行ってください。
これは、ごちゃごちゃ書いてありますが、
ポイントは黄色くハイライトしているところのみでございます。これは、プルトニウムとウラニウム、
北朝鮮は両方の
核プログラムを持っておりますけれども、では一体どのぐらいの
核兵器をつくれる状態にあるのかということで、この
アメリカ・
ワシントンDCにあるシンクタンクの見積もりでは、ことしの六月の
時点で十三から二十一個の
核兵器、その後、一回
核実験をいたしましたから、現在は十二個から二十個
程度の
核兵器を持つための
核物質を持っているという推定になっております。
次の
ページに行ってください。
次は、
ミサイルの絵が載っておりますが、きょうは、もう
伊豆見先生の方から、いろいろな
ミサイルをテストしているということの
お話がございましたけれども、私の方からは、この
ミサイル、
ノドンと言われる
ミサイルですが、これに絞って
お話しします。なぜかと申しますと、これはまさに対
日用の、
日本を
攻撃するためにつくられた
射程千三百キロの
ミサイルだからです。
北朝鮮はこの
ミサイルを二百発から三百発
程度持っていると言われておりまして、この
ミサイルは、この
写真でもわかりますように、
移動式発射台に載せて運用されます。この
移動式発射台を
北朝鮮は五十台
程度持っております。この
移動式発射台から
発射しますので、非常に見つけるのが難しいということで、見つけてやっつけるのが難しいというのがこの
ミサイルの特徴でございます。
次の
ページに行っていただきますと、これは
アメリカの国防省の
資料ですが、
射程の
範囲が
北朝鮮から千三百キロ、一番外の丸い点線の千三百キロメートルと書いてあるのが
ノドンの
射程でございますので、
日本の
本土はほぼすっぽり入るということになります。
それから、次の
ページに行っていただきますと、これが、先ほど
伊豆見先生の方から
お話ありました、最近、非常に活発に
ミサイル実験をしているということ、
核実験も含み、しているというものの
一覧表ですが、その中で、
ノドンに絞って見ますと、ことしの三月十八日、その次は七月十九日、その次は八月三日、そして一番最近が九月五日というふうに四回にわたって
実験しておりますので、対
日用ミサイルにも非常に重点を置いて
実験をしているということが言えます。
さらに、最も懸念されるのが九月五日の
実験でございまして、次の
ページに行っていただきますと、
二つ写真がありますけれども、左側の
写真を見ていただきますと、
三つ、先ほどの
移動式発射台に載せられた
ミサイル、これは
ノドンですけれども、並べられて、
ぼん、
ぼん、
ぼんと
発射される様子が出てきます。これは三発の
ノドンミサイルをほぼ同時に
発射するという
実験をやっております。
これがなぜ重要かといいますと、
日本は今
ミサイル防衛を持っていますけれども、一発ずつぽんと飛んでくると割合やっつけやすいわけですね。それが三発一緒にやってくると、
飽和攻撃という言い方を
専門用語で、サチュレーションアタックと、もう飽和されちゃってという
攻撃をする練習ではなかったかと思われるという意味で非常に懸念されます。
また、左の地図を見ていただきますと、黄州というところから
発射したということになっておりますが、では、ここから
主要都市の距離をはかりますとどうなるかといいますと、ちょっと英語で書いてあるんですが、
東京までが千二百五十キロメートル、
沖縄までが千三百五十キロメートル。ですから、
沖縄はぎりぎりセーフみたいな感じなんです。そして、御
参考までに、北京までが八百キロメートルです。ですから、こんな遠くから、
北朝鮮の深い西の
位置、
日本から遠い
位置、離れたところから撃っても
東京に届くんだということを示したという
実験であったとも言えるので、非常に懸念されるということです。
次に、
二つ目の
ポイントで、では、
日本はそれに対してどういう
措置をとっているかというのを、
日本はしばしば、最近は
皆さんの御尽力もあり本当に変わってきて、昔は
安全保障がだめな国という印象でしたが、
北朝鮮問題に関してはかなり、以前からしっかりと対応していて、この点は、
日本らしからぬと言ったらもう今の
日本には失礼ですが、すばらしい、きちっとした対応をしております。
三つぐらい柱がありますが、まず
一つ目の柱は
弾道ミサイル防衛システムの
配備でございます。
BMD整備構想という絵にありますように、
二つ重要な
システムがあるんですが、
一つは、
イージス艦という
海上自衛隊の船に載せられますSM3のブロック1Aという名前の
ミサイルです。これは、
ミサイルを大気圏の外で撃ち落とします。非常に高いところで撃ち落としますので、広い
範囲がカバーできて非常にいい
システムです。
もう
一つの
システムが、今度は
地上配備のペトリオット、PAC3というものですが、
防衛省の敷地内にも今
配備されていますけれども、これは上の方で撃ち漏らしたものを下で、最終的に、ゴールキーパー的にやるということで、撃ち落とせる
範囲は限られておりますけれども、重要な施設あるいはある
程度の
都市であれば守ることができるというものでございます。
次に、
二つ目ですが、これは
国民保護法に基づく、
日本は
国民保護法という名称を使っておりますが、多分、
日本のやっていることは、諸外国では
市民防衛、シビルディフェンス、あるいは
民間防衛と呼ばれるものに近い内容を持っております。
二〇〇四年に
国民保護法が成立しましたが、それに基づいて、二〇〇六年と二〇〇七年に
二つの
警報システムを導入いたしました。これはちょうど私が実はすぐ隣の
内閣官房で勤務していたころできて、
サイレンもそのときつくって、
サイレンを初めて聞く会というのをやったんです。
一つは、
テキストメッセージに基づく
エムネット。これは、
エムネットというから何で
エムなんだろうとよく思われるんですが、エマージェンシーの略で
エムです。ですから、
緊急警報システム、エマージェンシーネットワークです。
もう
一つが
Jアラートという、下のちょっとオレンジの、黄色っぽい箱に入っているものですが、これは自動化された、
サイレンと
ボイスによる
警報システムでございます。
ちょっと
最後の
ページに行っていただきますと、どういう
サイレンが鳴るか。いろいろな事態によって
メッセージは変わるんですが、
弾道ミサイルの場合は、まず、
ウーウーという
国民保護サイレンが鳴った後に、「
ミサイル発射情報。
ミサイル発射情報。当地域に着弾する
可能性があります。屋内に避難し、テレビ・ラジオをつけて下さい。」という
ボイスメッセージが流れるという
システムでございます。
そして、この
システムは、過去、
北朝鮮が何回か
ミサイル実験をしたときに
実験してみたことがあるんですけれども、そうしたら鳴らなかったことがあるんですね。
幾つかの自治体では、
システムがあるのに、スイッチオン、しいんということになっておりまして、困ったんですが、ただ、問題があるということがわかりましたので、すぐ修正いたしました。ということで、
北朝鮮が悪いことをするのも、多少
プラス面もあるということでございます。
最後は、
三つ目、これは
資料はないんですが、口だけで申しますと、
アメリカとの間で、
拡大抑止力、つまり、
日本が何か
攻撃を受けた場合に
アメリカがかわりに反撃してくれるという約束をすることによって
日本に対する
攻撃が
抑止されるというものですが、このための
協議を二〇一〇年から
日米間で定期的に行うようになっております。
ということで、
北朝鮮に対する
安全保障措置というのは極めて真面目にしっかりやっているというのが現状でございます。
ただ、
最後、
一つ課題がありまして、今の対
北朝鮮政策は
三つの柱があると思うんですが、
一つは有効な
制裁、
二つ目は強力な
防衛措置、そして
三つ目は
北朝鮮を正しい
方向に誘導するための
対話でございます。
制裁については、最近の
国連決議によって、新しい、ちゃんと
中国が実施してくれればかなり効果があるであろうと考えられる
制裁措置が導入されました。そして、
防衛措置も、今申し上げたとおりきちっとやっています。
ですから、今後は、どのようにこういう圧力をうまい、いい
方向に
北朝鮮を持っていくための力として使えるように
対話を進めていくかということが
課題になっていくと考えております。
以上でございます。(
拍手)