○津田弥太郎君 民進党の津田弥太郎です。
十二年前、機械・金属産業で働く中堅・中小企業の物づくり労働者の代表として本院に議席を得て以来、これまで数多くの
登壇の機会をいただきました。今期限りで引退を決めている私にとって、この場に立つのは恐らくこれが最後となるでしょう。どうか、私に対する好き嫌いは別にして、最後まで御清聴賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
それでは、所属会派を代表し、補正予算に関する財務大臣の財政演説について、総理及び
関係大臣に質問を行います。
まず初めに、今回の熊本地震によってお亡くなりになった方々に哀悼の誠をささげますとともに、被災された皆様に対し、心からお見舞いを申し上げます。
私たち民進党は、地震発生直後から
平成二十八年熊本地震災害対策本部を立ち上げ、
関係府省からのヒアリングや、地元県連からの
報告による被害
状況の把握と被災者の方々の緊急要望の集約を行ってまいりました。また、被災地の
状況を見据えつつ、岡田代表を始め我が党の国
会議員などが被災地を視察し、現場の声を吸い上げてまいりました。
こうした
経過の中で、四月二十日には対策本部長でもある岡田代表らが首相官邸を訪れ、安倍総理に熊本地震災害に関する緊急申入れを行いました。さらに、同月二十六日にも、岡田代表が安倍自由民主党総裁、山口公明党代表と官邸で会談をし、補正予算の編成について
意見を交わしております。また、様々な現地視察等も踏まえ、民進党として補正予算についての要求項目の取りまとめを行い、四月二十八日、民進党政務調査会から自由民主党政務調査会に対し、補正予算に対する申入れを行ったところであります。
このように、民進党は、補正予算の早期成立について政府・与党に全面的な協力をする立場であります。これは、私の初当選直後、新潟県中越地震を受けて
提出された
平成十六年度第一次補正予算に当時野党であった私たち民主党が
賛成票を投じ、一方、東
日本大震災後に
提出された四次にわたる
平成二十三年度補正予算に当時野党であった自民、公明両党がいずれも
賛成票を投じた流れに沿うものであります。被災者支援と復興に関しては与党も野党もない。国権の最高機関である
国会がその意思を明確に示すことが何よりも大切と考えます。
そこで、安倍総理にお尋ねをいたします。
この度の補正予算については、政府・与党だけの議論ではなく、我が党を始めとする野党の
意見も十分反映して編成されたものと受け止めておりますが、この点について総理の明快な答弁を求めます。また、具体的に我が党の要望の中で今回の補正予算に盛り込まれたものは何であるのか、明確にお示しをいただきたい。
関連してお尋ねをいたします。
補正予算には、住宅の確保や生活再建支援金の
支給など被災者支援に要する経費が計上され、熊本地震復旧等予備費を創設し、被災者の方々の事業再建、道路、施設等のインフラ復旧や瓦れき処理等を迅速に進めていくための環境が
整備されたと伺っております。さらに、
平成二十八年度当初予算に計上している予備費等と合わせ、政府は当面の復旧対策に取り組むものと承知をいたしております。
時間的制約もある中で政府が補正予算を編成したことは評価できますし、熊本地震復旧等予備費を活用するスキームそのものにも理解を示します。ただし、補正予算の総額と熊本地震復旧等予備費について、果たしてその金額が妥当なのかどうか、私どもは十分に理解をできておりません。この点、麻生財務大臣から丁寧に御説明をいただきたい。
また、熊本地震災害の補正は今回で終わりではなく、第二弾の補正も視野に入れているのかに関し、安倍総理の御所見を求めます。
さて、今回の地震は、その規模、被害が大きかったことに加え、被災された方の生活不安や避難所生活によって心身の疲労やストレスが高まっていることに特に配慮すべきであります。公共事業等のハード面のみならずソフト面も含め、きめ細かな対策を打つことが求められます。高齢者、障害者、病気やけがに苦しむ方、乳幼児や子供たちなどに対する心と体のケア対策も含めて、万全の
措置を講ずるべきであります。
また、多くのボランティアが熊本を中心に現地入りをしておりますが、当初段階では支援先を上回る数の希望者が殺到する一方、大型連休の後半からは一転して希望者が減少しているとも聞いております。国内外のボランティア希望者に対し適切な情報を伝えるとともに、自治体にボランティア、NPOとの連携窓口が設置されるよう、政府が音頭を取って支援
促進のためのスキームを確立すべきであります。
また、一昨日までに、今回の地震で被災した全ての公立学校の休校が
解消されました。今後は、避難生活と学業の両立支援や、休校で遅れた分を取り戻すための対策にもしっかりと取り組んでいただきたい。
以上の我々の提言に政府はどのように応え、それぞれの被災者に対してきめ細かな対策を講じるのか、安倍総理の答弁を求めます。
さて、いまだ多くの方々が避難生活を送っている現状に鑑み、生活の本拠となる住宅、居住地の確保は、政治が取り組むべき最優先の
課題です。用地確保の迅速化、適正化も含めた仮設住宅等の早急な建設はもとより、広域での空き家住宅、賃貸住宅の借り上げ等による住宅確保、旅館、ホテルなどの借り上げによる避難先等の確保、避難期間等の弾力的運用など、あらゆる手段を講じるべきであります。
以上の提言にどう取り組むのか、避難生活が終わるのはいつになるのか、見通しも含めて、安倍総理から答弁をいただきたい。
また、住宅再建に向けても、被災者生活再建支援
制度の拡充
措置が必要です。まず、最高額を三百万円から五百万円に引き上げるべきであり、東
日本大震災以後の災害に適用すべきと考えます。さらに、
支給対象に係る範囲を大規模半壊から、今回の地震でも目立った半壊にまで拡大するなどの
措置も求められます。また、二重ローン発生時における返済猶予についても別途対策が必要であります。
なお、
平成二十三年三月、自由民主党は「東
日本巨大地震・津波災害及び原発事故対策に関する緊急提言(第一次)」を発表されており、この中で、新たな住宅の取得のために五百万円程度まで支援金を給付すべきと提言をされています。自民党の皆さん、覚えていますね。少なくともこの点は
賛成だと受け止めておりますが、いかがでしょうか。
以上の提言に政府はどう取り組むのか、安倍総理の見解を求めます。
住民のライフラインである水道、下水道等の早急な復旧のための支援にも万全を期すべきです。
九州新幹線は全線再開をしていますが、高速道路や幹線道路、鉄道等の早期完全復旧のための支援を加速するよう求めるものであります。
東
日本大震災において民主党政権が講じた政策ですが、避難者などの移動への支援、物流コスト削減にもつながる被災地の高速道路について、無料化を実施すべきであります。
産業復興への支援も本腰を入れて取り組まなくてはなりません。
観光、雇用、農業、私の出身の物づくり産業など、幅広い業種で甚大な影響が生じております。特に、経営基盤の弱い中小企業などへの支援は最重点で行うべきです。事業の早期復旧と事業継続のため、政府系金融機関、信用保証協会等による金融支援、仮設店舗や仮設工場の建設など、総合的支援を実施することを求めます。あわせて、雇用維持のため、雇用調整助成金等の更なる拡充、雇用保険の給付日数延長及び緊急雇用対策の実施も必要です。
特産の農産物や畜産業が痛手を受けたほか、ため池や漁港が損壊するなど、農林水産業においても幅広い分野で被害が見られます。これらの施設などに対する災害復旧事業の早期実施、経営困難な従事者に対する特別支援の実施等を急ぐべきと考えます。
九州の経済においては観光も大きな比重を占めますが、風評被害対策も含め、観光客の減少に歯止めを掛けることが不可欠であります。復興の象徴として、熊本城の修復にも必要な
措置を怠るべきではありません。
以上の提言に応え、政府は産業、観光の復旧復興にどう取り組むのか、安倍総理の答弁を求めます。
また、関連して、すごく気になることがございます。
自由民主党の労働力確保に関する特命
委員会において、外国人労働者政策の抜本的な転換を求める提言を今月中にも総理に
提出するとの動きであります。総理、間違っても、今回の震災復旧復興にかこつけ、単純労働者の受入れを容認することはありませんね。そのことを改めて確認いたします。
また、そもそも労働力確保を目的として外国人労働者を受け入れ、成功した例は諸外国で本当にあるのでしょうか。塩崎厚生労働大臣、具体的な国名をお答えください。
さて、財政法二十九条は、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出などの場合に限って、補正予算を作成し、これを
国会に
提出することができると
規定しています。今回の補正はまさにこれに合致するものであり、民進党としても、補正予算の早期編成、成立を求めてまいりました。
極めて残念なのは、
平成二十七年度補正予算において、低年金の高齢者一千百万人に一回限りで三万円ずつ配ること、発効するかどうか誠に不透明なTPPの対策費が計上されたことなど、補正予算にあるまじき
措置が盛り込まれていたことであります。本来なら、こうした
措置は緊急に停止してでも今回の財源に回すべきではありませんか。
民主党政権は、子ども手当、高速道路無料化など看板政策を圧縮してまでも東
日本大震災対策の財源を捻出いたしました。今回の補正予算においても、さらには第二弾の補正予算も視野に入れ、政府自らが汗をかき、不要不急経費などによって財源を調達すべきではありませんか。
また、熊本地震復旧等予備費については、自由度が高い反面、政府が恣意的な支出を行い、無駄な支出につながるおそれがあります。今回の補正予算では、使い道の限定されないこの予備費が実に何と九割という高い比率を占めていることに鑑み、その使用については、定期的に
国会に
報告を行うなどの仕組みを創設するよう強く求めます。
以上の諸点について、安倍総理の御所見を賜りたい。
さて、今回の熊本地震の復旧復興に全力で取り組むことは当然として、東
日本大震災についても、これを風化させることは許されません。発生から五年が
経過した現在においても、なお避難生活を強いられている人たちは十七万人を超えております。岩手、宮城両県では、災害公営住宅や高台移転事業が本格化していますが、いまだ完成数は少ない
状況です。加えて、倒れた家に住み続ける在宅被災者やみなし仮設住宅に住む被災者については、仮設住宅入居者等と比べて所在が把握しづらく、公的支援の枠組みから置き去りにされているとの指摘もございます。また、東京電力福島第一原発の廃炉工程の遅れ、止まらない汚染水流出、風評被害、県外で避難生活を続ける住民の帰還問題など、福島の再生には今なお困難な
課題があります。
民進党は、今後も、党の東
日本大震災復旧・復興
推進本部と東京電力福島第一原子力発電所事故対策・福島復興
推進本部を中心に全力で復興に取り組んでまいります。
東
日本大震災の復旧復興対策に関し、安倍総理の答弁を求めます。
今回の熊本地震は、
地域的な問題もさることながら、これまでの余震と本震の
基本認識さえ覆す、まさに想定外のものでした。中学校理科の教科書には、世界で起こる地震の約一〇%が
日本付近で発生しており、
日本は地震大国との記述がございます。この国土とともに今後も暮らし続ける以上、私たちは地震と正面から向き合わなければなりません。
日本全国いつでも、どこでも、どのような大地震も起こり得る、そのような姿勢で政府は防災対策に臨む必要があります。
大規模災害が発生した際には、迅速に激甚災害指定をするとともに、
災害対応のノウハウを持つ府省庁のふさわしい職員を速やかに災害地に派遣するなど、国が責任を持って
対応に当たる仕組みを
整備をしておくべきであります。東海・東南海・南海地震や首都直下地震を具体的に想定した避難路や避難場所の緊急
整備、首都機能のバックアップ体制の
整備、南海トラフ巨大地震対策、首都直下地震対策に対処するための必要な法律の
整備、制定を急ぐよう提案をいたします。
今後の防災対策に関する政府の
基本姿勢について、安倍総理の答弁を求めます。
被災地を含め、
国民生活の根幹に関わる厚生労働分野の重要
課題についても確認をさせていただきます。
まず、同一労働同一賃金についてです。
私たちの提案を受け、安倍総理もようやく同一労働同一賃金に言及し始めたことは率直に喜ぶべきかもしれません。しかし、昨年の
国会で与党が野党
提出の同一労働同一賃金
推進法案を骨抜きにしたことを考えれば、実効性のある法案や指針が作られるのか甚だ疑問であります。
具体的な内容については、今後の検討ということで逃げられてしまうのでしょうから、入口段階の
基本的な方針をお尋ねします。仮に同じ仕事をしていても賃金に差異が生じていた場合の説明責任は、使用者と労働者のどちらに負わせるつもりですか。ここがポイントなんです。ごくごく簡単なこの質問、塩崎大臣、明確にお答えください。
また、派遣労働者の声を処遇に反映するために、改正労働者派遣法の
附帯決議を踏まえ、派遣先の会社に派遣社員が加入をする労働組合との団体交渉に応じる義務を課すことを検討すべきと考えますが、見解を伺います。ここもポイントです。
次に、待機児童対策についてです。
報道によれば、安倍政権は一億総活躍プランに保育士の給与の二%引上げを盛り込むとのことです。私たち民進党は五万円の処遇改善を提案していますが、僅か二%の小幅な処遇改善で、一体いつまでに何万人の保育士不足を
解消しようとしているのですか。これでは待機児童
解消の目標も絵に描いた餅になってしまうものと考えますが、塩崎厚労大臣の明確な答弁を求めます。
介護職員の処遇改善についてもお尋ねをいたします。
安倍政権は一億総活躍プランに介護職員の賃金の一万円程度の引上げを盛り込むとの報道も見受けられます。一方で、与党は三月、民進党が
提出した介護職員等の賃金を一万円引き上げる法案に
反対し、これを否決してしまいました。余りに度量が小さ過ぎる。同じ金額を引き上げるというなら、なぜ民進党の法案に
反対したのでしょうか。自由民主党総裁である安倍総理に、民進党の法案に
反対した
理由を伺います。
最後に、安倍総理に言っておきたいことがあります。私のこの世界における遺言だと思って聞いてください。
私は、これまで様々な機会を捉え、産業競争力
会議に巣くう政商について問題点を指摘してまいりました。ちなみに、政商とは、三省堂の新明解国語辞典によりますと、「政治家と結託して大もうけをたくらむ商人。」、このことを指します。
新興ビジネスの経営者として、政府が大所高所から竹中平蔵、三木谷浩史両氏のアドバイスを受けること自体、私は否定はいたしません。しかし、人材ビジネス大手の会長が労働市場の流動化に関与すること、医薬品のネット通販会社を傘下に持つ経営者が薬のインターネット販売解禁に関与することなどは、絶対に認めるわけにはいかないのです。西田昌司さん、そうでしょう。これがもたらす害悪は、労働移動支援助成金をめぐるてん末が如実に物語っているではありませんか。
この機会に産業競争力
会議のメンバーを見直す、あるいは百歩譲って、自らの企業に直接関わる分野については議論に参加させない。総理、そのことをこの場で約束してください。
今回の地震はまさに天災でありますが、国の中枢に位置する組織の人事の過ちは、間違いなく人災として社会をむしばむことになります。そのことに対し、少し時間が余っておりますが、強く強く警鐘を打ち鳴らし、私、津田弥太郎の質問を終わります。
御清聴、誠にありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕