○石上俊雄君
民主党・新緑風会の石上俊雄でございます。
私は、会派を代表して、ただいま
議題となりました
地方税法等の一部を改正する等の
法律案並びに
地方交付税法等の一部を改正する
法律案の二案に対して、
反対の立場から
討論を行います。
冒頭、まず申し上げたいのは、本
予算同様、
国民生活に直結する
地方財政の
審議に際し、
政府は、
法案を
提出したということでより良き答えの追求をやめるのではなく、常に真摯かつ柔軟な態度で臨むべきだということであります。いたずらに
国民の関心をそらすようなあおりの発言や、誤解や錯覚を招きかねない一面のみの情報伝達は厳に慎むべきではないでしょうか。
というのも、
安倍総理は、今般の
法案審議において、来
年度の
地方税収は、
アベノミクスのおかげで
政権交代前と比べて五兆円以上も
増加し過去最高だと何度も自画自賛し、高市総務大臣は、
地方交付税は前
年度同程度を確保、臨財債発行は大幅に抑制と、二人そろって自分の
成果はどうだと猛烈な自己PRになっておるのであります。テレビの世界では、数年前から、どうだ、すごいだろう、どうだ、格好いいだろうと言わんばかりの得意げな顔つきを一般にどや顔と言っているようですが、これではまさに
政治の世界におけるどや顔状態、言わばどや顔
政治と皮肉られても仕方がないのではないでしょうか。
このどや顔
政治の弊害の一つに、本来重要であるはずの
政策論争から
国民の注目がそらされてしまうこと、逆に言えば、非本質的な俗人的エピソードやその人の瑣末な立ち居振る舞いなどへ問題が矮小化される危険性を専門家も指摘しているようであります。また、その
影響を受けてか、官僚スタッフからも、
政策に関する客観的事実をより多面的に
国民に提供し、合理的な判断を促そうという真面目さが影を潜めてしまうのも大きな問題の一つになっております。
例えば、総務省の
平成二十八
年度地方財政対策のポイントであります。A4一枚紙に問題の本質を凝縮したはずの資料には、一般財源総額の確保と質の
改善とか
地方財政の健全化とか、良いことずくめが羅列されるだけとなっています。
細かく言えば、一般財源総額に関する記述、前
年度を〇・一兆円上回る六十一・七兆円を確保は確かに間違いではありません。しかし、ここで強調すべきは、この総額に既発の臨財債の元利償還という巨額の使途限定分三・三兆円が含まれていることで、
地方にとって全額が自由に使える財源ではないという事実でございます。それだけではなく、その元利償還額は今後
増加する見込みである一方、一般財源総額の方は骨太の方針二〇一五で事実上蓋がされており、結果として
地方の
財政運営は年々圧迫されてしまうという構造的な問題こそ、この
地方財政に潜む真のメーンテーマとなっているところにあるわけであります。
更にもう一例挙げれば、臨財債発行に関する前
年度比〇・七兆円減の大幅な抑制という記述も、それ自体に間違いはありませんが、やはり一番重要なのは、その累積残高が発行開始の
平成十三
年度から一度も減少することなく、
平成二十八
年度にはついに五十二兆円まで積み上がってしまうという途方もない全体像なのではないでしょうか。
私は、現
政権下で
実現する、前年より僅かでも前進した側面まで意味がないと切り捨てるわけではありません。良い一面もきっとあるのでしょう。しかし、問題は、そういう良い悪いの主観的な評価ではなく、仮に来
年度案の前進を何
年度繰り返してみたところで到底真の解決には至らないほど
地方財政問題の根が深くなっていることにあるのではないでしょうか。にもかかわらず、ある一面だけを針小棒大にあげつらい、どや顔が過ぎる余り、木を見て森を見ず、もっと真摯に対処すべき問題からは目を背けたまま。残念ながらこれが現在の
政府・与党の
政治姿勢と断ぜざるを得ません。
我々
民主党・新緑風会は決して逃げません。借金返済のために借金を重ねる臨財債膨張の構図に
全力で歯止めを掛けます。一般財源歳出と臨財債の双方を賄うための自立的かつ持続的な
地方税、
地方交付税の確立を何よりも重視してまいります。
実際、
地方財政計画に計上されている歳出の多くは、国が法令で実施を義務付けたり、基準を設定したりしているものです。それゆえ、必要な財源確保は本来国の責務であるはずです。交付税特別会計借入金残高三十二兆円や臨財債残高五十二兆円という膨大な借金を
地方に負わせること自体、そもそもおかしいのです。その場しのぎの臨財債に依存するという古い発想はもう終わりにして、
地方交付税の法定率
引上げや対象原資の再検討など、新しい時代にふさわしい真の改革を新しい
政治体制の下で大胆に始めようではありませんか。
以上が私の二
法案に対する主な
反対理由でありますが、その他各論における
問題点をあと三点ほど短く申し述べさせていただきます。
まず一点は、
地方交付税の算定に
導入されるトップランナー方式についてであります。
実際の現場において、
自治体が直営、
民間委託、指定管理者
制度のうちどの方法を選択するかについて制限されているわけではありませんが、新方式が
導入される業務は
民間委託が標準的な
在り方となるわけで、このことは交付税措置というお金の配分と引換えに
地方の行革を進めようとする方策にほかならず、
地方交付税法の本来の目的に照らし大いに疑問を感じるところでございます。
二点目は、
地方税法改正案における法人事業税の所得割の税率引下げと外形標準課税の拡大です。
外形標準課税で
負担増となる法人の数が増えることは紛れもない事実であり、そのこと自体が
成長戦略に反する形となることは間違いありません。また、外形標準にはそもそも報酬給与額が用いられることから、地域の
雇用や給与水準に
悪影響を与えるのではないかとの懸念も強く残ります。
三点目は、
消費税の
軽減税率の
導入の
影響です。
軽減税率の
導入で、
地方交付税に充てられる
消費税の法定率分が減収となることや、同様に
地方消費税にも穴が空くことは自明の理であります。にもかかわらず、
政府はいまだに代替財源の確保など具体的な措置を明示しておりません。これは、
地方税、
地方交付税の根幹に関わることであり、到底容認できず、断固
反対であります。
以上、
地方税法等改正案、
地方交付税法等改正案の二
法案について、どや顔
政治を決め込む現
政権が、深刻な
地方財政の現状を前に木を見て森を見ずの情けない態度を取り続ける問題や、
軽減税率導入について代替財源の明示など一切行わず放置したままの無
責任政治をひたすら貫く、あり得ない
政府・与党の
政治姿勢をいま一度強く批判する一方、我が
民主党・新緑風会は、借金返済のために借金を重ねる臨財債膨張の構図から逃げず、ひるまず、きっちりと、
地方の心に寄り添いながら、問題解決にしっかりと立ち向かう真の
国民政党たらんとの
決意を重ねて強調して、私の
反対討論とさせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(
拍手)