○
参考人(
河村小百合君)
日本総合研究所の
河村と申します。
本日は、このような場で
お話をさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、今、
小黒先生の方からもアカデミックなクリアな御説明してくださって、恐らく私の後の
佐藤先生もいろいろと
お話しくださると思うんですが、私は、より
政策運営の実務的な観点から
お話をさせていただきたいというふうに思います。
こちらの
調査会、
デフレ脱却と
財政再建ということでやっていらっしゃると伺っておりますけれども、私自身の認識としては、この国の
財政運営を安定的に継続できるかどうか、非常に
危険性が高まっているんじゃないかということを非常に感じておりまして、今日は、いただきました二十分ぐらいというふうに時間伺っておりますけれども、そのうちの半分強ぐらい、なぜこんなにせっぱ詰まっているのかといった辺り、これは
日本銀行の
金融政策との関係があると思いますけれども、そこを少し重点を置いて
お話をさせていただきたいと思います。そして、後段のところで、じゃ、
財政再建、喫緊の課題として取り組むためにどういったことが必要かといったところをポイントを絞って
お話をさせていただければというふうに思っております。(
資料映写)
じゃ、内容ですけど、今申し上げたとおりで、まず、今我が国の
政策運営の何が問題なのかといった辺りから
お話しさせていただきたいというふうに思います。
三ページのところを御覧いただければと思います。もうこちら、皆様よく御案内の
資料だと思います。後ろの棒グラフは
政府債務残高の
GDP比がどうなってきたか、そして
財政収支とプライマリーバランス、これ、
財政収支は赤い折れ線、プライマリーバランスは水色ですけれども、どう推移してきたかというものでございます。
我が国、これまでの経緯いろいろありましたけれども、二〇〇〇年代、一時期好転しかかったところが、不幸なことにというか、リーマン・ショックございまして、その後、我が国にとって不幸なことには震災もございまして、そして今の
安倍政権になってということで、この収支幅、改善少ししていますですね。これは、本当に素直にいいことだということで認めていいかと思いますが、ただ、何でこれ改善できたのかなということはよく立ち返って考えておいた方がいいと思います。
正直に申し上げて、一番大きかったのは
消費税率の引上げです、これだと思います。
あと、そのほかに
税収が伸びている、円安が進んだ、そして大企業を
中心に企業収益が好調だということがあろうかというふうに思います。
じゃ、歳出の方はどうなんでしょうか。
一般会計の規模は余り変わっていないんでございますね。そして、
国債費がこれだけ借金ある割には余り大きく増えずに済んでいるかな、それは何でなのか。そして、先行きのことを考えると、二〇二〇年のプライマリーバランスの
黒字化という
目標を掲げてやっていらっしゃると思うんですけれども、めどは立っていない状態ですよね。ですから、この借金、
金額はもとより、それから
名目GDP比で見たときの規模で見ても、増加傾向、いつ歯止めを掛けられるか、なかなかちょっと難しい状態なのではないかなというふうに思います。
次に、四ページのところ、もう
一つ、
安倍政権として掲げていらっしゃる目的、
デフレからの
脱却をしっかりとする、これはもちろん我が国がこれまで何で苦しんできたのかということを考えれば大事な目的だと思いますが、じゃ、どうなのかということなんですね。
こちら、日銀の
金融政策、今
マネタリーベースを年間八十兆円増やすということを目的にやっていらっしゃいますので、その
マネタリーベースと、それに対して
物価がどうか。これ、後ろに出ております紫の傍線がCPIの前年比、
消費税の
増税分も入っております。当初はぐっと上がったような感じがあったんですが、どうもこのところは駄目だと。
消費税の効果が剥落した後、そして原油安、いろいろあったと思うんですけれども、日銀としては量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮しているというふうに言っていらっしゃると思いますが、現実はどうかなというところがあろうかと思います。
そして、五ページ目、いよいよ
財政との関係に入っていきますけれども、日銀は、
国債をたくさん買うことによって八十兆円年間
マネタリーベース増やしていらっしゃる、そして、でも、これは決して
財政ファイナンスではない、
財政再建を求めるというお立場だと思います。しかし、実際に行われているところを見ると、これはもうよく皆様方御案内のとおりの日銀トレードなんですね。
やっていることは、民間銀行が、ワンタッチ、財務省の理財局の入札で
国債は落札する、でも、程なくそれは日銀のオペですぐ出してしまうと。ワンタッチすれば
国債引受けじゃないのか。
財政法に抵触しないのか。形式的には法律には引っかからないし、いいのかもしれないですし、やっていらっしゃる当事者にも、当局にもそういうお気持ちは更々もちろんないんだろうとは思いますが、やはりこれは、実態は事実上の
財政ファイナンス色が濃厚なのではないのかなというふうに思います。
我が国の
財政の実力、借金の山という現実、将来
世代の
負担、先ほど
小黒先生がもうクリアに恐ろしくなるような数字見せてくださいましたけれども、それを考えた
財政運営ができているのかと。はっきり申し上げると、私はちょっと
財政規律が完全に緩んじゃっているんじゃないかなというふうに思っております。
次、六ページのところですね。一番問題なのは、世の中で
議論にならないこと自体が問題だと私は思っていますが、今異常な低金利の状態にあるんですね。何かこの国、もう本当に、メディアの方も含めてですけど、これもうずっと
あと十年、二十年続くのが前提で何かやっている感じが私はするんですけど、そうは思われないですかね。こんな
場所でこんなことを申し上げるとお叱りを受けてしまうかもしれないんですけど、私はそう思います。でも、異常な低金利だからこそ、さっき、
財政収支それからプライマリーバランス、
赤字幅改善傾向にあるとは言いましたが、利払い費増えていないのが大きいんですよね。これは異常な低金利によるところが大きいと。
そして、
先生方を前にちょっと申し上げるのは恐縮ですが、
消費税率、二度目の引上げは
先送りされました。いろんな判断があったのは理解できるとは思います。でも、そういうことがあっても、そして軽減税率、今
議論されているところだと思いますけど、財源のめどが完全に立っていない状態でという話ですが、そういうとき、これだけの借金抱えている国だったら、普通、市場金利が上がってくるはずなんですね。上がって当然なんです。ところが、上がらない、ぴたりとも動かない。これが日本
経済の実力だから、私は違うと思います。
本当にこの国、今巨額の借金を抱えたままで走り続けることの痛みがないんですね。ですから、ああいう将来
世代の
負担が物すごいことになるよという数字がもう計算してくださればきれいに出てくるわけです。なのに、ほっぽらかされている。本当にこの国全体に油断がもう充満して、慢心が蓄積されているという、そういうふうに私は思います。
じゃ、これから先どうなるか。先行き非常に危機感持っているというふうに申し上げました。私が思いますのは、やはりこのような
財政運営を続けられてしまっているのは、日銀が
国債をたくさん買っていらっしゃるところがすごく大きく影響しているんじゃないのかと。逆に言うと、その量的・質的金融緩和を
政府としては続けてもらった方が楽なのかもしれませんけれども、そして、日銀としても
物価がなかなか好転しない以上は意地でもやらざるを得ないようなお立場なのかなという感じもしますけれども、それがやりたくてもやれなくなるようなことがあるんじゃないかと私は思うんですね。やりたければ幾らでも、五年、十年できるものではないと思います。
それは、じゃ、どういうことなのか、あるとすればいつ頃なのか、どういう事態に陥ることがあるのかという問題意識で残りの時間
お話しさせていただきたいというふうに思います。
近年中に予想される
状況の変化ということで、八ページのところを御覧いただければと思います。
じゃ、今まで、もう
安倍政権になられてからかれこれ、二〇一三、一四、一五、丸三年ぐらいになりつつありますね。これまでずっとこの量的・質的金融緩和で超低金利を
実現できたのは、ずっと維持できたのはなぜかということ。
二つ理由があると思います。
一つ目、この性質ですね。日銀に限った話じゃありません。似たようなことはアメリカやイギリスもやっております。政策の設計は相当違うところがありますけど、やっています。ただ、共通するのは、こういう大規模な資産買入れの政策というのは、各国の
経済が余りいい
状況になくて、欧米の場合にはリーマン・ショックの後、もう本当に大恐慌以来とかというような大不況の状態に陥ったわけですけれども、そういう状態にあるとき、
物価も上がらない、成長も上がらない、失業率も高止まりとかというときには、
マイナスの面というのは表面化しにくい。日本も
一緒です。ところが、正常化のプロセス、元に戻すプロセスに入れば話は全く別だと思います。これは今アメリカが取り組み始めたところで、この後
お話ししてまいります。
もう
一つは海外の金融環境。日本がすごい超低金利だ、これなぜできたかというのは、よその国の金利水準がどうだったかということも極めて私は大きいと思います。よその国も二〇〇八年以降、リーマン・ショックの後めためたになってしまったので、どちらも中央銀行は政策金利をもうほとんどゼロ近くまで下げてというようなことでやっていらっしゃるので、日本が超低金利にしたところで、よその国も超低金利に似たようなことをやっている。為替が急激に円安に振れることもないし、資本流出が起こることもないし、やりやすかった。ところが、これからどうかというと、この
状況はだんだん変わっていくと思います。これもアメリカの今後の
政策運営に関係していると思います。これも
お話しさせていただきます。
次の九ページのところに行かせていただきます。鍵は、もう皆様方よく御案内のとおり、アメリカの連邦準備制度の今後の
金融政策にあるというふうに思っております。こちらのバランスシートの見取図、危機の前と後でFEDのバランスシートが大まかに見てどう変わったかということをお示ししています。
こちらの
調査会、去年から
金融政策の問題についても随分審議されてきているというふうに伺っておりますので、詳しい御説明しなくても多分
先生方はもうよくお分かりかなというふうに思いますけれども、超過準備が異様に膨らんでいる。金融
機関がもう行き場がない余ったお金を中央銀行に豚積みを大量にしている状態というのは、日銀と全く共通の状態にあります。そういう中で、そのままでいいわけがない、いつどうやって正常化させるのかというのが今FEDが抱えている主な課題であります。
次の十ページのところですね。じゃ、どう考えているかということなんですけれども、先ほど申し上げたように、豚積みがたくさんある状態では、市場で金利が付くというのは、お金の足りている人と足りていない人がいるから金融取引があって金利が付くんですよね。昔でしたら、日本の金融市場だったら、地銀はたくさんお金が
手元に、預金をたくさん受け入れていますから持っているけど、都銀が資金不足だから都銀が地銀からお金を借りることで短期金融取引が成立する、そういう世界が今どこの国でもなくなってしまっている。
じゃ、そういう
状況で、金利付かないままずっとほっぽらかして十数年平気か。何か日本の場合、そこの
議論すらまだできていない気がするんですが、そんなことあり得ないよということをFEDははっきり言っています。
今までのようなやり方とは違うやり方で、これから金融引締めを徐々にやりながら元に戻していくということをFEDは言っていまして、実際にもうそれに着手しております。
先生方よく御案内のとおり、今までのような形で政策金利の引上げ誘導できません、市場金利の引上げ誘導できませんので、超過準備に利子を払う、それを引き上げていくような形で市場金利を引上げ誘導していく。もう
一つ、バランスシート大きいままではいつまでたっても超過準備解消しませんので、買い入れた
国債やMBSを売ることはまだしないとしても、満期が来たら、いずれその満期落ちを始めるということを言っています。
ただし、問題なのは、このやり方をすると中央銀行の財務運営上のコストがかさむということなんですね。前のページに戻りますと、こちらでお示ししているように、この預金
機関預金、緑のところ、ここに付ける付利の方が、FEDが持っているバランスシートの資産サイドで付いている利回りより上回るようなこととか、上回らなくてもそれに接近するようなことになると、中央銀行というのは普通、通貨発行益、もうかるはずですので、それを財務省に納付するというのがどこの国でもやっていることですが、それがもうゼロになっちゃう期間があるんじゃないかということをFEDはきちんと対外的に公表しています。それが十一ページのところにお載せしている
資料です。これ、FEDが量的緩和をやっている最中の二〇一三年に対外向けに公表した
資料から持ってまいりました。
ここで、御案内のとおり、金利シナリオにもよるんですけれども、FEDだって、日本よりはるかに
状況はましなはずなんですけれども、先行きの正常化の局面においてはこの納付金がゼロになってしまうことがあり得る。これ、上の
二つのグラフ、三年ないし五年ぐらいゼロになっちゃうことがあると。
じゃ、ゼロになって、くっついているけど、そのときどうするんだろう。連邦
政府から
財政補填するのかなと思っていらっしゃる
先生方もいらっしゃるかもしれませんが、FEDの場合には中央銀行ですので、会計処理上は繰延資産、ここにデファードアセットとありますけれども、これを資産の方に立てて、要するに、先々、中央銀行として自分のところで得られる利益を先食いするような形で連邦
政府には迷惑掛けないで処理しましょうということになっていますが、その正直な
試算結果もFEDは出していますけれども、こちらのグラフ、デファードアセットの左下のところ。三角のところ、ちょこんとなっていますけれども、この面積に相当する部分というのが
先送りしながら乗り切る部分。隣の
右側のところで見ると、高金利シナリオとかだと相当大きくなるということが分かると思います。
こういう期間があることを
承知の上でというか、
国民にも説明しながら、それでもちゃんとした、しっかりした決意で正常化を進めていくということをFEDは言っています。
じゃ、これからどういうことが起こるのか、それが日本にどう影響するかということなんですが、十二ページのところですね。FEDは今、FFレートの引上げ誘導をまだ始めたばかりです。ただ、彼らも、これを何回かこれから引き上げていって、FF何%に持っていったところでというところは、ちょっとそこはまだ定かじゃないところがありますが、
一定の水準に達すれば満期落ちを始めるということを言っています。満期落ちさせられる残高が
国債とMBSでどれだけあるかというのを見せたのがこちらのグラフでして、二〇一五年は満期落ちやっていませんけれども、今年度以降、満期落ちを始めれば、フィッシャー副総裁辺りは、二〇二〇年頃には超過準備は解消できるということを言っています。
ですから、十三ページのところ、これが始まったところがかなり怖いことになるんじゃないかなというふうに思っています。普通の金融引締めというのは、短期金利を引き上げて、それが長期金利に間接的にどう上乗せしてくるかということなんですが、今回のFEDの正常化のプロセスでは、それももちろんありますけれども、ある
一定の
時点から長期債をFEDが市場で放すということをやっていきます。ということは、その同額を、アメリカの
財政がよほど良くて、もう何か
国債残高をじゃんじゃん削減しているような状態で、FEDが手放したのは全部そのまま現金償還でいいですよというならいいですけれども、そこまでアメリカも
財政良くないですので、大体同額の借換債を発行するよなということを想定すると、FEDが放した分というのを民間が円滑に引き受けることができなければアメリカの長期金利には上昇圧力が掛かる。これ、日本にも影響すると思います。
FEDの方も、さっき申し上げた繰延資産、幾らでも計上できるかというと、そんなことはないということは、青天井じゃないということはFED自身も言っていまして、やはり常識的に言って数年間ぐらいですね。それを先取りぐらいは許されるかもしれないけれども、無限にということにはやっぱりならないとなれば、大変なんですけれども、次の十四ページのところ、満期落ち、特に始まった辺り、長期金利上がってくると思います。普通、上がるようなことしたくないんですけれども、限られた年数の中でやり切らないとFEDの財務運営がもたないということもありますので、やはり
一定の決意を持って進めてくるんじゃないかと思います。
ここに書いておりますように、大規模な資産買入れをやってしまった中央銀行が直面する困難、正常化の局面での困難というのは、
経済がつらかったらやらなくてもいい、やらないことにしてもいい困難じゃないということですね。つらければ幾らでも先延ばしをするとか、例えば五年で済ませなきゃならないところを十年掛けて、二十年掛けてやればいいという困難じゃないというのが、やはりその困難さの度合いを物語ると思います。
そして、十五ページのところ、それがどうこの国に影響するかということなんですけれども、やはり今FEDが短期金利を引上げ誘導しているぐらいだったらいいんですけれども、長期金利に上昇圧力が掛かる、先ほど申し上げた満期落ちをそのうち始めると思います。そこが日本にとっても正念場かなというふうに思います。よその国もそうなるとやはり追随してくる
可能性もあるだろうと。もちろん実体
経済との兼ね合いはあると思います。
ただ、そういうときに金利を引上げ誘導できるかといったことを考えると、こういう異様な
金融政策運営をやった国って実は日本とアメリカとイギリスだけなんですね。ほかの国の中央銀行って冷静なんですよ。そんなことをすると後々大変だ、政策金利を自由に動かせなくなるからやらないんだということをはっきり、十六ページのところに書いていますけれども、はっきり例えば月報とかに書いている中央銀行もいっぱいあるんですね。
ですから、そういう国は引上げ誘導、必要だったら必要な分だけいつでもやれるんです。ところが、日本はどうか。もうこちらの
調査会でさんざん
議論してくださっていると思いますけれども、日銀が今持っている
国債とか資産の加重平均利回りは、
決算で日銀自身が出していらっしゃいますけれども、〇・四〇九とかしかないんですよね。FED、今、FFレート〇・五に持っていきましたよね。それと並みに上げるだけで、もう逆ざやなんですよ。別にアメリカと同水準にしなくてもいいんですよ。いつもしなくてもいいんですけれども、世界的にそういう金融の局面が変わっていったときに、この国だけ上げられなくならないのか、大丈夫なのか、本当に超低金利を維持できるのかどうか。
十六ページの下のところに書いておりますように、私の今持っている危機的な問題意識というのはこの点なんですね。やはり海外の金融情勢、アメリカがきっかけになると思いますけれども、今後、今年とかいうことはないかもしれませんけれども、二〇一七から一八年頃になると大分長期金利のところに上昇圧力が掛かってくる
可能性がある。そのときに、日本としてはまだ
財政事情も心もとない、実体
経済も心もとない、
デフレ脱却も完全にできたかどうか自信がない、
財政運営上の準備ができているか分からないと言いながらも、じゃそのままの
政策運営を続けられるかというと、その超低金利状態は維持できなくなるんじゃないか。本当に結構近い将来じゃないかなというふうに私は思っています。
十七ページのところ、日銀、今回、
マイナス金利付きというのになりましたね、量的・質的金融緩和なんだそうなんですけれども。やはりこれは、これから先やっていらっしゃろうとすると、継続を阻む幾つもの要因があると思います。
一つ目は、日銀自身の財務運営の悪化ですね。もうこれはFEDどころの話ではないというふうに思います。これは国の
財政運営にも影響を及ぼしかねないぐらいの情勢だというふうに思います。そして二番目、買入れ可能な
国債が払底するんじゃないかということはマーケットでよく言われております。そして三番目は、先ほど
お話しした、よその国も超低金利の間はいいけれども、よその国が金利上昇局面に軒並み入ると大変なんじゃないんですかということですね。
次、十八ページのところ、日銀の財務運営の問題ですね。御案内のとおり、償却原価法ですので、
国債金利が上がっても売らなければ別に損失は計上しなくていいということになっていますが、あれだけたくさん持っていらっしゃいますから、長期金利が一%上昇したら、日銀自身の含み損が十七兆だということを日銀自身が何か
決算の発表の席で言っていらっしゃるそうですので、もう地銀がどうか心配する以上の話かなという気もしますけれども、これじゃ、持っているだけならいいけど、売れないのはもう当然だろうというふうに思います。
満期落ちをするぐらいの形でしかやれないんじゃないか。逆ざやになるだろう。満期落ちするとしても、日銀が持っていらっしゃる
国債の平均の残存年限というのはもう七年ぐらいになっていますので、これは勇気を持って全額満期落ちしたら市場金利は上がると思いますけど、勇気を持って全額満期落ちしても日銀の資産規模が半減するのに六・七年掛かる計算ですから、やっぱりちょっと気が遠くなる話かなというふうに思います。
十九ページは、先ほどのFEDに似ていますが、日銀のバランスシートの
状況ですね。
じゃ、これが先行き
財政運営にどういう影響が出るのかということなんですけれども、木内審議
委員が去年の十二月の講演会の席上で
お話しされているようですけれども、これは新聞の報道にも出ていましたけれども、仮にこのまま
物価がうまくいって一七年度に二%に上がったとき、そして、それまで今までどおり金融緩和、たくさんの
国債の買入れを続けていた場合、七兆円の損失を日銀が毎年被ることになる必要があるというふうにおっしゃったというふうに報道されています。
もうそのとおりだろうと思います。だからこそ、今年度の
決算から、この前の補正
予算で通ったようですけれども、引当金を日銀が計上することが認められたと。四千億円ぐらい納付金、今年度減額して、その分
一般会計の歳入減っちゃったと思うんですけれども、やっていくと。
でも、そういう取組はもちろん前向きだとは思いますが、それで足りる話なのかな、先行き。量的・質的金融緩和というのは、ただでこんなにいい話はない、
国債の金利は上がらないし株は上がるしという感じですけど、そんなにおいしい話で済むのかなと。
財政コストの一角が見えてきたんじゃないのかなという気がいたします。
ちなみに、二十一ページのところ、日銀の資本金、出資証券ですが、昔から一貫して一億円、準備金は三・一兆円しかないということですね。ですから、やはりこれはもう何年も持続可能なものではないんじゃないか。そして、今日の本題ですけれども、この日銀の事実上の
財政ファイナンスに支えられた
財政運営というのも近年中に持続不可能になるんじゃないのかというのが私の問題意識でございます。
最後に、じゃ
財政運営どうすべきかというところを簡単に
お話しして私の持ち時間を終わりたいと思いますが、
財政運営を安定的に続けられるかどうかというのは実務面ではどう決まるか。二十三ページのところですね。
要するに、
国債を発行してお金を調達して
財政運営を回している以上、その
国債の発行が円滑にできなくなると困るんですよね。ところが、この国が発行している
国債の規模、二十四ページのところですが、
名目GDP比で五〇%超。これ、一時期六割まで行ったのが少し減ってきましたけど、これだけなんですね。もうヨーロッパの各国、イタリアなんかよりずっと悪い。これは、じゃ金利情勢が変わってくると本当に恐ろしいことになるというふうに思います。
今まででしたら利払い費が、例えば二十七ページのところに、すごく少なく済んでいて、今度は、新年度の
予算下がっていますね、十兆切る形で
予算組まれていますけれども、
政府案の
段階ですけど、まあそのまま行くのかなということになると思います。
じゃ、どうすべきかというところで
意見を申し上げさせていただくと、二十八ページのところ。私の考えとして一番の大事なところは、
国債の金利形成ができるだけ早く市場メカニズムに基づくものに戻るような形で戻していくことが基本じゃないのかなというふうに思います。
このままの状態をどうしても続けたければ、やってやれないことはないかもしれませんね。ただ、そこに書きましたように、そうなると、多分海外の金利も上がってくる、それなのに日本だけどうしても低金利ということになったら、資本移動の自由を犠牲にするしかなくなると思います。自由貿易も犠牲にする。外国為替の変動相場制も犠牲にする。この国の企業活動にとっての重要な基盤、これまでどれだけその恩恵を享受して日本
経済が成長してきたか、そこを犠牲にする
可能性もあるんじゃないかというふうに思います。
逆に、市場メカニズムによるものにもちろん急にじゃなくて徐々に戻していくしか実際ないと思いますけれども、
一定期間金利は上がるでしょうね。でも、そこから逃げていたら、結局、最後はもう明るい道は私は見えてこないと思います。逆に言えば、もうそれに向き合った上でやっていって、きちんと必要な
改革をしていけば金利は下がることも出てきますし、一番大事なのはやっぱり非連続的な
債務調整は挟まないこと、持続可能な
財政運営を曲がりなりにも継続していくことじゃないのかなというふうに思っています。
ですから、そのためには、やはり何といっても、ちょっと中央銀行にもう少し
金融政策運営の
在り方を見直していただかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っておりますし、そして最後に、
財政運営の面では、きっちりとやはり先行きの
目標を決めてやっていただくのがいいんじゃないかなというふうに思っております。
個人的には、毎年の新発
国債の発行額を
目標にして、今三十兆円ぐらいまで減ってきたんですよね、とてもいいことだと思います、これを
あと何年でどれぐらい減らしていくということのきちんと
目標を立てて、これは
国民にもとても分かりやすいので、そういう形でやっていく、もうそこは死守するというような形でやっていくのが私は一番いいんではないのかなというふうに思っております。
やはり
国民として、私も母親の立場でもありますけれども、子供たちの
世代ですごく重い
負担が突然降ってくるような
財政運営、決して誰も望んでいないと思います。今よければいいということには決してならない。是非ともそういったところが確保されるような
財政運営ができるような
国会での御審議を是非とも
お願いできればと思っております。
済みません、じゃ、ちょっと時間オーバーしましたけれども、私からは以上でございます。
どうぞよろしく
お願いいたします。