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参考人(
木ノ内博道君)
公益財団法人全国里親会で副
会長をしております
木ノ内博道と申します。私自身も
里親をしております。
全
国里親会は、各地で活動する
地域里親会の
全国組織になっております。
里親制度の進展のために、国に要望を行ったり、実態を
調査したり、
里親の養育スキルを高めるための研修を行ったりしております。
本日、
参考人として私から、
家庭養護の重要性、それから特別養子縁組について、また
里親支援の在り方について、もう
一つ、
子供たちの自立
支援について述べたいと思います。
まず、
家庭養護の重要性についてお話をさせていただきます。
里親は、様々な理由から
家庭で養育をできない
子供たち、あるいは
虐待など
家庭で養育することがふさわしくない
子供たち、こうした
子供たちを
家庭に迎え入れて養育を行うものです。一見何の変哲もない普通の暮らしの中に
子供を迎え入れて行うわけですから、特別なことをしているわけではありません。しかし、
保護を必要とする
子供にとっては、
家庭環境で養育されることはとても重要なことであります。
欧米では
里親や養子縁組が普及しております。施設養護はその必要がある
子供についてのみ行われております。国連の子どもの
権利条約については、代替的養護は
家庭で行うということが
原則になっております。特に乳幼児は
家庭養護ということで、ガイドラインでも強調されております。乳幼児の施設養護の弊害については近年の脳生理学や心理学の発達が明らかにしており、欧米では乳児院の存在は療育、治療の療育などに姿を変えて僅かに存在するだけです。
乳児が特定の養育者に継続的に養育される、愛着を形成することによって、人を信頼し、社会を信頼し、ひいては自分を信頼する、そういうことにつながります。言い換えれば、乳児のときにうまく愛着を形成する
経験がない
子供たち、一生の生きづらさにつながっていくというようなことであります。
こうした国際的な動きの中で、日本は要
保護児童の八五%が施設養護であります。
家庭養護は一五%程度でございます。また、乳児院では約三千人の赤ちゃんが暮らしております。しかも、施設養護では長期入所が一般化しております。施設の入所期間を調べてみましたら、イギリスでは五年以上の入所期間を持つ
子供は一%でした。日本では約四〇%に当たります。乳児院から
児童養護施設へ
措置変更になって、満年齢で施設から
措置解除になるといった
子供たちも少なくありません。
施設養護と
家庭養護の違い、なかなか分かっていただけないかと思いますので、その辺を少し具体的に御説明したいと思います。
最近は居心地の良い立派な施設も多いのですが、快適かどうかということではありません。具体的にお話ししますと、施設から
里親家庭に来た
子供たちの反応、例えばお風呂に入る時間はどうして決まっていないのかというふうに聞きます。そのためにずっと悩んでいたんだというようなことでした。それから、今夜何を食べようかと言うとけげんな顔をする。特に自分の食べたいものを食べるという
経験がないんですね。それから、夕飯で食べた残りを翌日出すと、なぜ捨てないんだというようなことがあったりします。それから、みんなと一緒に御飯を食べると、おかずをどうやって食べたらいいんだか分からない、団らんというものをなかなか知らない、そういう
子供もいました。
いわゆる集団生活にはルールがありますけれども、そのために自分で選んでいくという能力が育っていない、そういうふうな気がします。いわゆる自己選択の能力が育まれていないというふうに思っております。社会に出れば自分で物事を決めていく、そういったことの連続です。とても重要な能力だろうと思うんですが、なかなかそれが難しいだろうというふうに思っております。
一方、
里親家庭、いわゆる
家庭生活には様々な人間
関係があります。仕事で来るわけではありませんので、
里親の親戚であるとかあるいは友人であるとか、そういった様々な人間
関係を学びます。それからもう
一つは、
家庭の中にあるライフサイクルというんでしょうか、人が生まれたり、死んだり、介護されたり、そういうときにどうするのか、そういったことも学ぶ必要があります。何より、将来独立したときの生活や生き方のモデルとして
子供たちに
家庭のイメージが必要だと思っております。成人して
子供が生まれても、施設に入れればいいんだというような考えを持っている社会的養護の出身者についても聞いたことがあります。
今回の
児童福祉法の
改正では、
理念として子どもの
権利条約を基本とする一条がありますし、三条では
家庭養護を
原則とするということがうたわれております。
是非、
家庭養護の推進をお願いしたいところであります。
次に、養子縁組について述べさせていただきます。
家庭養護は必ずしも
里親やファミリーホームに限ってはおりません。国際的にはむしろ養子縁組が推奨されております。パーマネンシーという考え方でございます。長期安定的な養育環境を
提供する、そのために養子縁組が
里親以上に望ましいとされております。国によっては、実親の方に
課題の解決を迫り、それが解決しないようであれば、短期間のうちに
子供の処遇を
里親から養子縁組に切り替えるというようなところもあります。
今回の
児童福祉法改正案でも、特別養子縁組に関する
業務を
児童相談所の
役割として明確に位置付け、これまで六歳までであった特別養子縁組の年齢制限を十八歳までとしております。さらに、これまで私的養護として、養子縁組の場合、
支援の対象にもなっておりませんでしたけれども、
里親同様
支援対象というふうになっております。養親、いわゆる養子を受け入れる候補者の欠格事項、ふさわしくないと思われることであるとか、あるいは研修の義務化であるとか、そういったことにも踏み込んでおります。
次に、
里親支援の在り方についてお話をさせていただきます。
これまで
家庭養護のいい面のみをお話ししてきましたけれども、しかし弱点も多いのでございます。
地域の中で孤立しがちなことであるとか、あるいは
専門的な養育スキルを必要とする
子供たちが近年は増えてきております。そういう中で
支援が様々な形で必要になります。
里親家庭では、
子供も
里親も多くの出会いや別れを
経験しております。非常に全体としては喪失感にあふれているといいましょうか、そういう中でこれらのケアが十分になされているとは思えません。
今回、
里親家庭への
支援が、力を入れていくというようなことですが、なかなかこれまでは実感がなかった、
里親の
家庭側に実感がなかったのですが、今回の
児童福祉法の
改正では、もっと一体型の
支援、総合的な
支援の在り方が提案されています。日本にも一部
事例はあるんですけれども、先進国で行われているいわゆるフォスタリングエージェンシー、丸ごと、
里親の開拓から研修、マッチング、養育
支援、実親の
支援までを含む一括した
業務を
児童相談所から民間に外部化できる
仕組みというようなことで提案されております。
また、
里親が
子供の再
統合のお手伝いをできるようにということにもなっております。これまで
子供に関する情報は余り知らされずに、
子供の今の養育に携わるだけということでしたけれども、
子供の養育には連続性が重要です。そういう意味で、実親の
支援をしながら、
里親がそこに
関わりながら、本来であれば一人の
子供を中心にしたチーム養育の形が望ましく、そういった形になるようにというふうに思っております。
次に、自立に向けた
支援をお話しさせていただきます。
要
保護児童が十八歳になったら機械的に
措置解除というのがこれまででしたけれども、実際にはホームレスや犯罪者をつくり出している。事実、そうした社会的養護出身者が多いという声を聞いております。ある年齢が来れば自立の能力がなくても
役割は終わったということがこれまでの社会的養護の
仕組みだったということだと思います。大人の方の考え方であって、きちんと自立をしてもらうことが社会的養護の目的であるはずです。次代を担う、税金を納める若者になっていただきたいというふうに思います。それにはもう一押しの
支援が必要かと思っております。
里親家庭では、
子供たちの進学を
支援している
家庭も少なくありませんけれども、経済的にも限界があります。二十歳までの
措置延長、また進学したとしても卒業ができる二十二歳まで、二十二歳でも誕生日ではなくて年度末まで
支援を続ける
仕組みが必要です。今回の
改正でその部分にも配慮をいただいております。
こうしたことを述べさせていただき、終わりに一言述べさせていただきますけれども、国連の子どもの
権利条約、日本が批准して二十数年がたっております。やっとそれが国内法に取り入れられまして、
子供が
権利の主体者であるということがうたわれました。要
保護児童の処遇についても
家庭養護を優先すべきであるという
段階が来ております。
子供の声を代弁する形でお願いをしますけれども、
是非今国会で成立をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
以上です。