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参考人(
小河光治君)
子どもの
貧困対策センター公益財団法人あすの
ば代表理事の
小河でございます。このような
機会をいただきまして、心からお礼を申し上げます。
私の八歳の誕生日に父が交通事故に遭いました。あさってであの日から四十三年になります。私自身も
児童扶養手当を
子供の頃受けていた
当事者でした。八年間、父はその後、闘病の末、亡くなりまして、
お金がなくて、一家心中しようと母が言った日のあの夜のことを今も忘れません。私は交通遺児ということで奨学金をいただきまして、それ以外の多くの遺児たちも
支援を受けて今日まで来ておりまして、私もその一人であります。私自身は、大学を卒業しまして、あしなが育英会に就職をしまして、二十六年間勤めて、昨年三月退職をさせていただいて、
子供の
貧困に対して放っておけないという同志の方々とあすのばを昨年立ち上げさせていただきました。長くあしなが、あるいは今あすのばで出会ったたくさんの
子供たち、それから親御さん、そういった方々のことを思いながらお話をさせていただきたいというふうに思います。
お
手元の
資料に沿ってお話をさせてください。
まず最初に、あすのばのことを少し御説明させていただきたいと思います。
昨年の六月十九日、これは
子どもの
貧困対策法が成立して満二年、その日に私ども、あすのばという
団体を立ち上げさせていただきました。
資料の一番初めにございます、
子供の
貧困をなくなる社会にするためにということで三つの
事業をさせていただいています。
一つは、
子供の
貧困はまだ見えない
状況、これをいかに見えるようにして、
調査研究をして、それに基づいた
政策提言や法律
改正などを進めていくということ。それから二点目には、全国各地で様々なNPOなどが
子供を支える、そういった
事業をされております。そういった方々を支えるという中間
支援的な
事業。それから三点目では、
子供自身の
自立に向けて物心両面で
子供たちを支えていく
事業をしております。
もう
一つ、私どもの
団体の特徴がございまして、今六人理事がおりまして、私も含めて大人の理事は三人で、あと三人が学生であって、
当事者の学生たちも入っています。私たちの
団体のモットーは
子供がど真ん中、
センターということで、
子供たちの声を大切にしながらそれを進めていくというふうに
事業を進めさせていただいております。
三枚目のところに移りまして、本当に今、
皆様、
参考人の方々からもお話がありましたように、今回の
児童扶養手当の
改正など、これ特に去年からこの一年間目覚ましく一人親を含めた
子供の
貧困対策が進んでおりますことを本当に有り難く思っています。先ほど申しましたように、そもそもは親を亡くしたあしながの学生たちが、
子供の
貧困率が発表された
平成二十一年に
子どもの
貧困対策法を作ってくれという呼びかけの中から、この
子どもの
貧困対策法、議員立法で先生方、全ての国会議員の方に御賛同いただいてできたわけです。
それから、私も
内閣府の
子供の
貧困対策の大綱を作るための検討会のメンバーをさせていただきましたが、二十六年の八月にはその大綱ができまして、そして、去年の春には首相官邸で安倍総理を始め労働界それから財界、マスコミ、様々な方々がお集まりになって、
子供の未来応援国民運動がスタートをした。このときに安倍総理が一人親世帯に対する
政策パッケージをつくられるということを公言されて、そして去年の十二月には、ここにあります
ひとり親家庭等の
自立応援プロジェクトというのを発表していただいて、今回の
児童扶養手当の
改正につながっているということかと思います。
今も第二子以降のお話はございましたが、それだけではなくて、高校に通う、これは一人親だけではないですけれども、
子供たちの学力を問わない
給付金が第一子の方にも非常に今回大幅に
増額されたとか、保育料も大幅に減免された。それから、高等職業訓練促進
給付金というのも、例えば二年間が三年間に延びて、看護師の方が受けられるようになったりだとか、様々な面での今回充実をしているということを高く評価して、有り難く思っております。
しかしながら、更にもう一歩進めていただきたいということを今日述べさせていただきたいと思います。
既に今までお話がありましたように、一人親世帯に対してやはりこれ集中的に
支援の必要性があるというふうに感じています。今、百四十六万世帯の一人親世帯で
子供が二百三十万人ほどいるというふうに言われております。御存じのとおりに、一人
親家庭の
貧困率というのは五四・六%。OECD三十四か国の中で最悪の
状況で、先ほどからお話があっているように、八割以上の方が働いている、つまり、いかに
日本がワーキングプアであるかということはもうお分かりになっていらっしゃるかと思います。
今、
貧困状態の一人親世帯、このうち約八十万世帯、百二十六万人の
子供が
貧困状況というふうに思われます。
児童扶養手当は一人親の
母子家庭だと七割以上ですね、父子
家庭でも半分近くの方が受けていらっしゃるということから見ても、
児童扶養手当が一人親世帯の命綱であるということはお分かりになられるのではないかというふうに思います。
その中でも、次のページに移りますが、
母子世帯の経済的
支援ということがやはり急がれているんだろうと思います。
これは、私ども、今年の春、小学校、中学校、それから中学を卒業するあるいは高校を卒業する方に
入学・新
生活応援
給付金という
制度をつくりまして、街頭募金などで学生たちが募金を集めまして、一人三万円から五万円の
給付金を百九十七人の方にお渡しいたしました。こちらの応募には三百八十六人の方がありまして、一・九倍の倍率でした。本当にこの
審査をするのはもう断腸の思いで、もう本当ボーダーのところにひしめき合っているというような
状況だったんです。
そのある
お母さんの声を私も紹介したいと思います。母は、介護施設で調理を担当し、パート勤務をしています。パート収入と手当で三人の
子供を育てているため、経済的に厳しく、
教育費も食費も大変です。今回、二人の
子供が
入学するため、その
準備費用が出せない状態ですというふうにあります。
この方は、
お母さんの年収が七十五万円、税込みで七十五万円です。高二と高一と中一の三人の
子供さんをお抱えになっていらっしゃる。公営住宅に住んで、二万五千円払っていらっしゃるんですね。
この方から、実は私どもに電話が掛かってきたんです。今回、この
給付金を出すのに、住民票と非課税証明書を出してください、でもその
お金は後で立て替えますからということでお願いをしたんですが、三月二十二日までに出してくださいというふうにお願いをしたら、
お母さんが、この住民票、これが、非課税証明書の発行手数料の六百円が何ともならないんです、二十五日の給料日まで待ってくださいというふうに電話を掛けてきてくださいました。この六百円の
お金も何ともならないような大変な
状況にいらっしゃるということが実際あるわけです。
一方で、東京都の場合は、
児童扶養手当に上乗せして
児童育成手当というのが月に一万三千五百円、お一人当たりの
お子さんに出るわけですね。今回も、最終的に、ですから東京都の
お子さんを持っていらっしゃる方というのは、やはりこれで少しでも大きな力になって、今回この
給付金を受けられなかったというケースがあります。
あるいは、
生活保護を受けていらっしゃる方も、これは
生活保護は決して十分だということじゃないんですけど、いかに
生活保護を受けられていないか、あるいは受けていないかという方が多いかというふうに思います。
しかしながら、どこの県もこの東京都のような
施策をできるということはありませんので、どこに住んでいても同じような
支援が受けられるということが大切なのではないかなと思います。
今回、二人以上の
お子さんに対しては
加算があったということなんですが、次のページに伺いますが、一人っ子の一人親世帯にもやはり
支援が必要だということがこのグラフを見ていただければ分かるのではないかと思います。
今回、百六万人、二十六年度、
児童扶養手当を受けていらっしゃるんですが、そのうち一人の
お子さんというのが六割を占めているということです。そうしますと、百二十七万人の親子が今回の二人以上の
加算ということには当てはまらない、光が当たらないというような
状況になっていますので、こういった
お子さんたちにも是非とも見捨てられていないというような
支援が必要だろうというふうに思っています。
そういう中で、是非お願いしたいのが、結論から申しますと、この
児童扶養手当の支給年齢の、
子供の支給年齢の
引上げということになってくるかと思います。それは、一人っ子の
お子さんも含めた全ての
お子さんに恩恵が当たるということです。
先ほどのお話がありましたように、一人親の子の大学進学率は四分の一以下で、これ、一般世帯と比べてみるといかに開きがあるかということも分かるかと思います。
私が勤めておりましたあしなが育英会でおととし
調査した
調査で、高校生に
調査したんですが、就職を希望する
理由を尋ねたところ、進学したいが経済的に無理というのが約三割で、進学したいけど家計を支えなきゃいけないという子が七%もいて、合計三六%にもなるわけですね。
今、大学の学費、
生活費、国公立で年間百五十万、私立では二百万近く掛かるというふうに言われていますし、今、学生
支援機構の奨学金などを含めて奨学金を受けていらっしゃる、半数以上の方が奨学金を受けているということです。希望すれば大学や専門学校への進学のチャンスをつくるためにも、この
児童扶養手当の支給年齢を二十歳まで、せめて二十歳まで、できれば就学中全部していただけると有り難いんですが、上げていただくということは、進学を後押しするということにつながってくると思います。
続きまして、進学以外をする
子供たちにもやはり多様な
支援が必要だろうというふうに思っています。一人親世帯の就職率というのは三分の一になるわけですね。これも一般世帯の
お子さんに対すると倍ぐらい就職をするということですし、離職率については、
日本の今全ての方々を対象にしていますが、中卒の場合は三分の二、高卒の場合は四割が三年以内に離職をするという高い離職率です。
ですので、就職をする
お子さんに対してもちゃんと確実に手に職が付くような、例えば更なる就労
給付金などの
支援だとか、中卒や高卒者への学び直し、
就労支援、それから、フリーター、ニートの方々も含めた包括的な
支援が必要になってくると思います。
最後にお話をしたいことなんですが、今しんどい一人親世帯に希望のある明日を感じてもらうために是非お願いをしたいと思います。
また、ある御
家庭のお話を、最近聞いたお話をしたいと思います。幼い
子供二人を抱えている
シングルマザーの方のお話なんです。その方、がんを患っていらっしゃって、最近再発をしたということが分かりました、ステージ4なんですとおっしゃるんですね。この子たちを残して、もう本当に将来のことが
心配だと涙を流しながらお話をされました。
私、あしなが育英会でも奨学課長ということで奨学金の
審査をずっとしていたんですが、あしなが育英会って親を亡くした
子供たちを
支援しているんですけれども、最近増えているのが、元々離別の世帯の、
母子世帯の方が働きづめ、いろんな事情で精神的にしんどくなって、精神疾患を患って
障害認定を受けて働けないということで奨学金を受ける方が大変増えているんです。身も心もずたずたであるということが分かるかと思います。
子供も親もやっぱり大切にしているというメッセージを発信することというのはすごく大きなことがあると思います。今回のこの
児童扶養手当の
改正などで、私たちは見捨てられていないんだ、こんなに大切にされているんだということが届くだけで、
お母さん方がもうちょっと頑張ってみようとか、
自立の芽になっていくということはあるかと思います。
そういったことがとても重要であるということで、さらに、ワンストップサービス、本来のワンストップサービスだとか、こちらから出かけていくアウトリーチ型の訪問
支援も必要ですし、例えば
支援情報を確実に届けるという仕組みも必要かと思います。
また、
実態把握では、今
母子世帯等の
調査、五年に一度行われております。ただ、これ五年に一度でいいのか、これはやっぱり三年に一度ぐらいの間隔でより
実態をしっかり把握していくということもとても重要なことだというふうに思っています。
また、
子供、これ選別的に、一人親世帯の選別的な
施策というのももちろん大切なんですが、全ての
子供たちに行き渡る、そういう普遍的な
制度を充実させていくということが、
子供たち、そういう
子供たちの中にしっかり一人親世帯あるいは
貧困世帯の
子供たちも包含されていくというようなことにつながっていくというふうに思います。
私、ずっと長年
子供たちと接してきて常に感じていることなんですけれども、その子が肌で感じている痛みに寄り添って温かく接してあげて、ちゃんと
自立できるまで様々な
制度を
準備して、それを活用することで、将来大人になったときには、
子供のときの負の体験をばねにして人の痛みが分かる、社会で生き生きと生きていける頼もしい大人になっていくと思います。是非御一緒に、こういった
子供たち、しっかりと育んでいくことを御一緒させていただければと心から願っております。
今日はどうもありがとうございました。