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参考人(
内田千惠子君) ただいま御指名いただきました
公益社団法人日本介護福祉士会の副
会長をしております
内田千惠子と申します。
本日は、
参議院厚生労働委員会においてこのような
発言の
機会をいただきましたこと、誠に有り難く感謝申し上げます。
まず、
日本介護福祉士会の紹介をさせていただきたいと
思います。
日本介護福祉士会は、介護
福祉士の職能団体として
平成六年に
設立した団体で、四十七
都道府県に支部がございます。私
どもは、常に新たな
時代の介護
ニーズに
対応するため、介護
福祉士の職業倫理の
向上、介護に関する専門性の
向上、介護
福祉士の資質の
向上などに努め、
国民の介護
サービス向上と介護
福祉士の専門性や社会的評価の確立に取り組んでまいりました。
私
どもの生涯研修体系として、介護
福祉士初任者研修やファーストステップ研修があり、昨年機構を立ち上げました認定介護
福祉士の研修をその上の研修として位置付けております。専門分野の研修としては、認知症専門研修や
障害者支援のための研修を設けております。
各支部においては、
サービス提供責任者や実習
指導者研修、あるいは先ほど申し上げました介護
福祉士初任者研修、ファーストステップ研修など、様々な研修を実施しております。
また、当会には日本介護学会という学会がございまして、会員の研究の報告の場となっています。
先ほど触れました認定介護
福祉士ですが、
生活を支える専門職としての介護
福祉士の資質を高め、
利用者のQOLの
向上や介護と医療との連携
強化、
地域ケア推進など、介護
サービスの高度化に対しての社会的
要請に応えることや、介護
福祉士の資格取得後のキャリアパスの形成、また、勉強する意欲に応え長く働き続ける意欲を持たせるような研修の
仕組みとして、業界の他団体と一緒になって準備をしてまいりました。おかげさまで、昨年十二月、認証・認定機構を
設立いたしました。
認定介護
福祉士には、介護
事業所や
施設において、介護職チームへの
指導や介護
サービスマネジメントなどの
役割が
期待できます。
さて、
社会福祉士及び介護
福祉士法が制定されて二十五年以上が経過して、介護
福祉士の登録者数は、
平成二十八年一月には、累積ですが、百三十九万人を超えるような状況になりました。この間、
少子高齢化の進行あるいは
介護保険制度の創設、
自立支援法の施行など、
制度に伴う新たな介護
サービスの導入な
どもあり、介護を取り巻く状況は大きく変わってまいりました。
また、介護
福祉士
制度も、二〇〇七年に介護
福祉士の
定義規定や
義務規定、資格取得
方法の
見直しなど法律の一部
改正が行われ、二〇一一年には喀たんの吸引など一部の医療行為が可能になるなどの法律
改正が行われて、
時代の
ニーズとともに、介護予防から医療的なケアあるいはおみとりまで、介護
福祉士に求められる
役割は大変幅広くなり、介護
福祉士には、より高度な知識、技術と高い倫理観が求められるようになってまいりました。また、五年前の東日本大震災では被災地にボランティア派遣をいたしましたが、災害時の介護
福祉士の
役割、あるいは避難所での介護予防の大事さなどを痛感いたしたところです。
それで、次に、介護
福祉士の担う介護あるいは介護の専門性について
お話をさせていただきたいと
思います。
御存じのように、介護
福祉士は
利用者の日常
生活全般の
支援をするものです。そのために、
利用者の心身状態の適切なアセスメントを行い、それに基づいて心身の状態に合った
生活を再構築する
支援をしています。
利用者の中には意思表示が十分ではない方も多く、表情や言動から気持ちや
考えを推察し、尊厳や自尊心を大事にしながら
支援するのは当然のことです。また、介護
福祉士は、
利用者のできないところをただ補えばよいかというとそうではなく、自分でできるところを発見したり、あるいは自分でできるように側面から
支援することが求められております。そのため、
利用者の気持ちや感情、行動に働きかけて、心を動かすことが大事になってまいります。
介護
福祉士は、
利用者の命を守り健康を維持することだけでなく、安心や安全、自立にもつながるように
支援しております。介護を通して
利用者御本人だけではなくて家族をも
支援、支えています。これらのことは個別性も大変高いことで、やることややり方を一律に決めることはできないことです。介護は単なる肉体労働ではなく、
利用者の意思を尊重し、尊厳を守るという職業倫理を持って行う頭脳労働です。介護
福祉士には、高い倫理観と次のような能力が求められていると
考えています。
まずはアセスメント力、また、そのアセスメントから
ニーズを引き出し、根拠のある介護を
実践する能力、コミュニケーションの力や人間
関係を構築できる力、実際的な介護技術と介護の
実践能力、そして、いろいろな
関係する人々との連携する能力などがあります。介護
福祉士は、その職業倫理として、このような力を磨き続けるということが求められていると私は思っております。
さて、介護現場においての介護
福祉士の位置付けですが、昭和六十二年に
社会福祉士及び介護
福祉士法が制定されて二十五年以上、四半世紀が過ぎております。介護
福祉士は、介護の専門国家資格として介護の現場にとって欠かせない中核的な人材となっています。
地域包括ケアシステムの中で、一番身近で
利用者に接し、
生活全般を把握しているのが介護職です。医師や看護師など他職種と連携しながら、
生活を支える重要な
役割を担っています。
介護
ニーズはますます
多様化して、認知症の方や医療
ニーズの高い方などが増えています。認知症
高齢者に対しては非薬物療法による介護が求められておりまして、認知症になっても尊厳が守られ、その方らしい暮らしを継続できる
支援が必要です。
認知症や障害のある方が
地域で最後まで暮らし続けることができるためには、単純な、排せつ、食事介護、入浴だけではない介護が求められます。必要な医療的な知識や関連領域に関する知識を持って、応用力のある介護
実践ができる人材が必要になってまいります。
介護保険制度の安定的発展のためにも、漫然とした介護をするのではなく、効率的、効果的なケアが求められます。それを担える介護人材が必要です。
介護現場では介護
福祉士がおおむね四割を占めるようになって、その専門性も認められ、
介護保険制度では
体制強化加算の対象ともしていただいています。しかし、介護人材の不足が深刻化する中で、介護
ニーズの
多様化あるいは高度化に
対応した質の高いケアを担保していくためには、介護
福祉士の担う
役割というものも
考え直す時期に来ているのではないかというふうに思っております。
介護現場の今後についてですが、今後、中高年や主婦など介護の経験のない
方々が介護現場に来られると
思います。介護職の
機能分化を
考えることも重要なことです。富士山型の裾野の広い介護人材の中で中核的な存在としての人材がいなければ、介護現場は混乱して介護
サービスの質は低下してしまうと
考えられます。
しかし、近年、介護現場では、待遇面あるいは労働環境の悪化などを理由に、介護
福祉士の資格を持ちながら介護現場に入職しない、あるいは早期に退職する者が増えるなど、資格取得者数の四割が潜在介護
福祉士となっていると言われるような残念な状態になっております。
介護はきつい仕事、3Kあるいは低賃金などというマイナスイメージが先行して、本来はやりがいのある社会的にも意義の高い仕事なのに、それらが忘れられがちです。マスコミが言うように際立って悪い報酬ではないのに、そのイメージが定着しているというようなことも残念なことだと思っております。
日本介護福祉士会では、このマイナスイメージを払拭するために様々な
取組をして
情報を発信しておりますが、
国民には伝わり切れていない状態です。介護について正しいことが
国民に伝われば評価も変わるはずですし、また、変わらなければいけないというふうに思っております。
今回の
社会福祉士法の
改正案に対する
意見として、今まで述べましたことを踏まえて、会としては
社会福祉士法の一部を
改正する
法案に対して
意見を述べさせていただきたいと
思いますが、様々な事項が盛り込まれていることを承知した上で、会としては資格の一元化に絞って
発言させていただきたいと
思います。
資格の一元化ということでは、二十八年度から実務ルートでの受験者に実務者研修が付加されております。残っているのは、養成校卒業生に対しての試験
義務付けです。早く資格取得の一元化を進めていただきたいというふうに思っております。
過去三回延期されておりまして、これ以上の引き延ばしは、資格に対しての社会的評価を下げて、人材確保がますます困難になる原因になるというふうに
考えられます。人材確保は量の確保だけでなくて質的な確保も必要で、これらの好循環を生み出すための環境整備を進めていくということが重要なことだと思っておりますので、このことは
是非国を挙げて全力で取り組まれるように御要望いたします。
それで、養成
施設卒業生への国家試験
義務付けは、教育課程での知識や技術の修得状況を国が確認するということで、介護
福祉士の質の
向上とかあるいは社会的評価のためには必要なことです。試験も受けずに取得できるような資格に評価が高まるというふうには
考えられません。
確かに、国家試験
義務付けというのは養成校への入学者を減らすのではないかという懸念もあるとは
思います。しかし、目先のことではなくて、長い目で見れば、介護
福祉士という国家資格に対しての評価や
信頼性が高まることで希望者を増やすということは可能であるというふうに
考えております。
ここで、その教育の重要性について述べたいと
思いますが、
平成二十五年度
高齢者虐待の防止、
高齢者の養護者に対する
支援等に関する法律に基づく
対応状況等に関する調査結果というのを厚生労働省が報告しておりますが、その虐待の発生要因として全体の六割以上が教育や知識、介護技術等に関する問題だというふうに挙げています。このことから、介護の質の担保あるいは人権擁護といった観点からも、介護に関わる専門的な教育は介護
職員には欠かせない要素であるというふうに思われます。
そして、実務者ルートについては二十八年度から実施されるわけですけれ
ども、元々、実務経験者は即戦力にはなるが理論的には不足するところもあるというふうに言われております。単に介護をするのではなく、なぜその介護を選んでいるのか、なぜするのかというところが大事なことですので、実務者研修は非常に大事なことだというふうに
考えられます。
とにかく、介護の質の担保あるいは人権擁護といったようなことは非常に重要で、これらは介護職へのためばかりではなくて、
事業所の
提供する介護
サービスの質を上げる、あるいは、もっと大きく言えば
利用者の方の幸福にもつながると
考えております。
今後の
介護福祉士会としての
取組を最後に申し上げたいと
思います。
介護
福祉士資格取得後の教育や研修受講の状況から、介護
福祉士の成長も一律ではありません。専門職にとって、教育や訓練は生涯を通して重要なことです。資格取得後も継続的に教育を受ける
仕組みが大事で、これらのことが介護
福祉士に対しての社会的評価を更に上げて、介護
福祉士自身が自信や誇りを持って働けることにつながると
考えています。
日本介護福祉士会では、更に生涯研修
制度を充実させ、介護
福祉士の
資質向上に努めてまいります。また、国には、介護職の労働環境整備や処遇改善に引き続き御尽力いただけますよう
お願いするとともに、会としては、
国民の介護に対しての不安を払拭して、介護に対してのイメージの改善などを国とともに
努力し、より良い介護の実現に努めてまいりたいと
思います。