○稲津久君 公明党の稲津久です。
私は、公明党を代表し、ただいま
議題となりました
環太平洋パートナーシップ協定の
締結について
承認を求めるの件及び
環太平洋パートナーシップ協定の
締結に伴う
関係法律の
整備に関する
法律案について
質問をいたします。(
拍手)
本題に入ります前に、
総理にお伺いいたします。
先般、ワシントンにおいて核セキュリティーサミットが開催され、核テロ防止へ向けた国際
連携が確認されたものと
認識していますが、
総理も出席された中でどのような成果があったものと評価をするか、あわせて、
我が国が八年ぶりに
議長国を務めることになった本年五月開催のG7伊勢志摩サミットについて、サミット開催に向けた意気込みをお伺いいたします。
さて、
我が国が少子高齢社会から
人口減少社会に突入し、右肩上がりの
経済成長が望めない状況にある中、
世界経済の約四割、
人口八億人を占める巨大な
経済圏の
成長を取り込むことによってこのような状況に歯どめをかけること、ここに
TPPの
意義があると考えます。
国内の八倍もある
巨大市場の出現と、域内の
貿易、サービス、
投資の高水準の
自由化、さらに包括的な
ルール形成の実現は、産業界全体にとって大きく
市場が広がり、商機が到来していることを示しております。
TPPを生かすには、グローバルに展開する
世界市場の変化を見きわめ、それに見合った輸出体制や産業構造をつくり上げる必要があると考えますが、
TPPによって
国益をいかに高めようとしているのか、
総理の所見を伺います。
昨年十月五日の
大筋合意を受けて、
政府は十一月二十五日、総合的な
TPP関連政策大綱を取りまとめました。それに先駆け、公明党も十一月十九日に、
TPPに関する総合
対策に向けた提言を
政府に提出、牛・豚マルキンの法制化と八割から九割への補填割合の引き上げなど、再
生産を確実なものとする農業
政策、先進的な
分野の
イノベーションの促進や
地域産品、サービス産業など、
TPPを最大限に生かす輸出促進、産業活性化など提言をさせていただきました。この提言が、
政府の
政策大綱及び
平成二十七年度
補正予算や二十八年度本予算にどのように反映されているのか、
TPP担当大臣の
答弁を求めます。
次に、
中小企業の輸出、
海外展開支援について伺います。
我が国には、技術力を生かした高
品質、高付加
価値の
工業製品や
農産物をつくりながらも、
関税や
投資、サービスに関する
ルールが
整備されていないことが障壁となり、
海外展開や輸出に踏み切れなかった
中小企業や
農林水産業者が数多くいます。
TPPによる
市場アクセスに係る諸条件の改善、通関
手続の迅速化など、
TPPによる各種
手続の簡素化、標準化、
投資ルールの明確化、
知的財産の
保護等により、
海外展開しやすくなります。
政府として、事業者の
理解を深める相談窓口の
整備などの総合的支援など、
中小企業の
海外展開を促す環境
整備について、具体的にどのように取り組もうとしているのか、
TPP担当大臣の
答弁を求めます。
TPP交渉における
市場アクセス交渉の結果、重要五
品目については
関税撤廃の
例外を
確保し、調製品を含め
品目ごとの
交渉で、
関税割り当て、
セーフガード等の
措置を獲得。水産
分野でも、漁業補助金に対する国の
政策決定権は維持されました。
そこで、重要五
品目について、
国会決議に沿うものであるのかどうかとの
認識を伺うとともに、一部の調製品の
関税撤廃について、どのような基準で選び
関税撤廃としたのか、またその
影響はどの程度であると考えるのか、
TPP担当大臣の
答弁を求めます。
我が国の農業の現状、すなわち就業
人口の大幅な減少と就業平均年齢六十六歳という現状を考えたとき、農政新時代を目指す上で基盤となる担い手不足が深刻であることは間違いありません。
TPPのあるなしにかかわらず、農業を
成長産業としてよみがえらせなければならないと考えます。
新規就農支援の安定的実施や、すぐれた経営知識、技術の習得支援、ICTの活用での革新的技術の開発や、水田、畑地の高機能化などによる産地
イノベーション、畜産クラスター事業の拡充などによる畜産、酪農の収益力強化など、体質強化策や経営安定策の実効性を高め、農業の
成長産業化につなげるための具体的な取り組みが必要であると考えますが、
総理の見解を伺います。
次に、中山間
地域対策について伺います。
効率化や規模拡大が難しい中
山間地域では、特に
TPPによって受ける
影響は大きいと思われます。二〇一五年度の中
山間地域等直接支払交付金の交付面積の減少率は、
制度が始まって以来最大となる見通しです。このままでは荒廃農地が増加し、将来的に
地域農業の維持が困難となる危機的な状況です。
複数集落が
連携して相互に協力を行ったり、小規模で高齢化が進む集落を近隣集落が支えるといった活動への支援や、中
山間地域等直接支払い
制度の拡充など、具体的な
対策が必要であると考えますが、農林水産
大臣の
答弁を求めます。
次に、
農林水産物・食品の輸出促進に向けた
戦略と取り組みについて伺います。
TPP交渉において、
我が国の
農林水産物・食品の輸出拡大の重点
品目の全てで
関税撤廃ができたことは評価したいと思います。
世界的な
日本食ブームの広がりや、伸び行く
海外の有望なマーケットに打って出ていく好機となります。
そのためには、輸出のための検疫体制や物流インフラの
整備、
生産コスト低減による国産木材のシェア拡大、水産業の体質強化策、六次産業化のさらなる推進など、
戦略的に施策を講じる必要があると考えます。
農林水産物及び食品の輸出促進に向けた
戦略や取り組みの方向性について、農林水産
大臣の見解をお伺いします。
農林水産物の輸出促進に向けて特に重要になってくるのが、
地域における
特産品の
ブランド化を加速させる
地理的表示保護制度、いわゆるGI
制度です。昨年六月に申請受け付けが始まり、既に、夕張メロンや兵庫県の但馬牛、神戸ビーフ、福岡県の八女伝統本玉露など十二産品が登録されています。
TPP参加国は、
他国のGIを
保護する場合の基本的な
ルールについて
規定しており、GIに関する相互
保護を通じて、ジャパン・ブランドとなる登録産品の輸出促進が期待されます。
一方で、
地域ブランドの品種が
外国で出願、登録を済ませていないため、国際条約が機能せず、無断で
生産、販売される実例もあります。
そこで、GI
制度の目的と
生産者、
消費者の
メリットについて、また、今後さらに登録数をふやしていくべきと考えますが、登録数の目標についての考え方、さらに、
政府としてのブランド
戦略の必要性について、
総理の
答弁を求めます。
TPPによって
我が国の食品安全に関する基準が緩和されるのではないかとの
懸念に対して、
政府は、
TPPの
大筋合意を受けて、食品の安全に関する
制度について、また、遺伝子組み換え食品表示を含めた食品の表示要件に関する
制度について、変更を求めるものではないとしています。
しかし、一方、
日本の食品安全に関する基準や遺伝子組み換え作物の表示
義務等が変更を求められる
可能性はないのか、また、通関
手続の迅速化や
TPPの
影響による輸入食品の増加によって、
我が国の食品輸入の検査体制が追いつかなくなるのではないかといった
懸念や指摘がなされたことに対して、どう答え、また
対策を講じようとしているのか、
総理の
答弁を求めます。
TPPの
大筋合意前は、
TPPによって、特に
地方公共団体の公共工事に
外国企業が参入し、
国内の建設業や関連産業に
影響が出るのではないかとの
懸念の声がありました。
しかし、実際の
TPP協定の
約束内容は、現行の
国内調達
制度を変更するものではなく、また、新たな
市場を
外国企業に開放することを
約束するものでもないことが判明。逆に、アジア
地域では、今後、多くのインフラ需要が見込まれており、
TPPによりインフラ関連産業に大きな
利益をもたらす
可能性があります。
そこで、
政府が掲げる
平成三十二年に約三十兆円のインフラシステム受注実現の目標に向け、どのように取り組んでいくつもりなのか、
総理の
答弁を求めます。
金融
分野においても、
大筋合意前、
我が国の公的年金
制度や
国民皆
保険制度に
影響が出るのではないかとの
懸念の声もありましたが、これも、金融サービス章の
規定で、公的年金や公的医療保険といったいわゆる国が提供する社会保障には適用されないと明記され、守られた形になりました。
一方、原則
自由化によって、
我が国の金融機関の
海外進出が容易になると考えられており、
中小企業が
海外展開する際、各地で地場産業を支えている
地方銀行も
海外進出することによって、確実なサポートができるものと期待できますが、こういった金融
分野における
メリットをどう生かしていくべきと考えるのか、
TPP担当大臣の
答弁を求めます。
TPPにおける著作権侵害罪の一部非親告罪化の
規定について、アニメや漫画の二次創作物への
影響が
懸念されておりましたが、これも権利者の
利益に有害な
影響を及ぼすケースのみ告発するとの条件が加わったことにより、二次創作物等への萎縮効果が生じないように配慮されています。
一方、対象範囲を適切に限定しつつ、悪質な海賊行為については非親告罪の対象とすることで、海賊版
対策の実効性
確保が図られることになりましたが、今後、具体的にどのような
制度や仕組みで海賊版
対策の実効性を
確保するのか、文部科学
大臣の見解を伺います。
投資家と国との間の紛争の解決のための
手続規定、いわゆるISDS条項についてお聞きします。
ISDSによって国が
外国投資家から巨額の賠償を請求されるといった
懸念や批判がありましたが、ISDSは
投資分野を対象とする損害賠償請求であり、
投資受け入れ国に
制度変更を求めるものではなく、濫訴を防止する
措置も多く盛り込むなど、
企業の
保護と
各国の
政策のバランスが図られており、また、環境
対策や保健
政策など正当な規制については、
企業は提訴できないこととしています。
そこで、濫訴防止
規定の実効性についての
認識を伺うとともに、
TPPを含めた国際的紛争解決への支援を強化する必要があると考えますが、
TPP担当大臣の見解を伺います。
最後に、
TPP委員会の位置づけと
TPP運用へのかかわり方について伺います。
TPPは生きている
協定とも言われ、締約国の
代表者で構成される
TPP委員会が、
TPPの実施、運用に関する問題の検討に加え、発効後三年以内及び定期的な
見直しや、
TPPの改正や
修正の提案を検討すること等を
規定しております。
TPPが発効に至った場合、
我が国として、この
TPP委員会における運用のあり方に対しどのようにかかわっていくのかは、極めて重要な
課題であると
認識していますが、
TPP委員会の位置づけと
TPP発効後の運用へのかかわり方について、
TPP担当大臣の
答弁を求め、私の
質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕