○矢倉
参議院議員 ただいま議題となりました
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の
解消に向けた取組の
推進に関する
法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案の
趣旨及び主な内容を御
説明申し上げます。
近年、本邦の域外にある国または地域の出身であることを
理由として、適法に居住するその出身者またはその子孫を、我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な
差別的言動が行われ、その出身者またはその子孫が多大な苦痛を強いられる
事態が頻発化しております。かかる言動は、個人の
基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ、地域社会の基盤を揺るがすものであり、到底許されるものではありません。
もとより、表現の自由は民主主義の根幹をなす権利であり、表現内容に関する規制については極めて慎重に
検討されなければならず、何をもって違法となる言動とし、それを誰がどのように
判断するか等について難しい課題があります。
しかし、こうした
事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではありません。
本
法律案は、このような
認識に基づき、
憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の
解消に向けた
取り組みについて、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを
推進しようとするものであり、いわゆるヘイトスピーチを念頭に、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動は許されないとの理念を内外に示し、かかる言動がない社会の実現を国民みずからが宣言するものであります。
その主な内容は次のとおりであります。
第一に、前文を置き、我が国において、近年、不当な
差別的言動により、本邦の域外にある国もしくは地域の出身である者またはその子孫であって適法に居住するもの、すなわち
本邦外出身者が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせており、このような
事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしてもふさわしいものではないという本
法律案の提案の
趣旨について
規定するほか、このような不当な
差別的言動は許されないことを宣言することとしております。
第二に、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の定義を置き、専ら
本邦外出身者に対する差別的意識を助長しまたは誘発する
目的で公然とその生命、身体、自由、名誉もしくは財産に危害を加える旨を告知しまたは
本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本法の域外にある国または地域の出身であることを
理由として、
本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な
差別的言動をいうこととしております。
第三に、基本理念として、国民は、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の
解消の
必要性に対する
理解を深めるとともに、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。
第四に、
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の
解消に向けた
取り組みに関する施策の実施について国及び地方公共団体の責務を
規定することとしております。
第五に、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとしております。また、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の
実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしております。
第六に、附則において、この
法律は、公布の日から施行することを
規定するとともに、不当な
差別的言動に係る
取り組みについては、この
法律の施行後における
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、
検討が加えられるものとすることを
規定することとしております。
以上が、この
法律案の提案の
趣旨及び主な内容であります。
なお、定義の一部及び附則の
検討条項については、参議院において修正を加えたものであります。
本邦外出身者に対する不当な
差別的言動が許されず、その
解消に向けた
取り組みが必須であることについては、参議院
法務委員会において、実際にかかる言動が行われたとされる現地への視察や真摯な
議論を通じ、与野党の
委員の間で
認識が共有されたところであります。
何とぞ、御
審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。