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榑松参考人 おはようございます。
愛知県
労働組合総連合、愛労連という
労働組合で議長をやっています。
私が
外国人実習生問題にかかわるようになったのは、二〇〇七年の豊田
技術交流事業
協同組合、この不正で百人ものベトナム人
実習生が、当時は
帰国指導というふうに言っていましたが、
帰国させられることになった。以来、ベトナム人を
中心に二百件以上の相談を受けてきましたが、その多くは名古屋入管の協力で円満に解決をしてきました。
二〇一〇年の
制度改正以後、
愛知での相談は減っていますが、今は全国から労働相談が来るようになっています。近年の特徴は、建設業からの相談が多いことと
失踪者の増加です。また、送り出し国が多様化し、昨年は初めてネパール、ミャンマー、カンボジアからの相談がありました。ブローカーが巧妙化し、
受け入れ機関も不正に加担している場合は、
実習生は
強制帰国を恐れて逃げるしかありません。
今回の新
法案で、
受け入れ機関に対する監督が
制度化され、
実習生に申告権が与えられることはとても重要だと思います。しかし、既に申告権がある労働
基準法での申告件数は、全国で最も
実習生の多い
愛知県でも年間十件
程度にとどまっています。これは定期監督で違反があった事業所、約一割を定期監督していますが、その二百十六件に比べて、数%にしかなりません。
平日の日中に労基署に出頭したり、電話で相談することは、会社にばれるおそれがあります。私への相談も、大半が深夜か土日に、スマホにSNSで
資料が送られてきます。これには当局からも前向きな回答がありました。
きょうは
実習生の
皆さんが傍聴に来ていただいています。この
法案が本当に実際に役に立つのか、きょうは
事例を挙げてお話をしたいと思います。
資料を用意させていただきました。この一年間の相談では、十二件のうち八件が建設業でした。建設の中でも土木だと、雨が降ると休みになったり、年末年始で工事が少なくなると収入が半分になることもあります。
東京から来たフィリピン人
実習生の給与明細がついていますが、手取りは二万四千八百八円でした。東京から名古屋まで逃げてきました。余りに少ないので、作業服や道具代など、未回収になっています。会社のトラックに乗って工事現場まで行く時間や一斉休憩の時間が無給になっている場合もあります。土日に出勤することもありますが、建設
労働者というのは大体が日給制ですので、割り増しというのがありません。休憩時間が百二十分になっているので、聞きましたら、ペンキが乾くまでの時間は無給、こういうことになっていました。
そんな中で、逃げてくる
実習生もふえています。
愛知のベトナム人
実習生は、解体・産廃業で勤務態度が悪いと殴られて、茨城県にある講習施設に送られました。二カ月間たった今も
仕事を
紹介してもらえません。後でも
紹介しますが、実習計画書に就業場所を受託現場として入管に届ける、そうすると、全国で働かせることがあります。
先日深夜に、同じように、放射能が怖い、〇・七マイクロシーベルトあるのにと、どこにいるんだというふうに聞きましたら、彼は、千葉県の内装業者にもかかわらず、ネットで今、場所はチェックできますよね、福島県大熊町の電力会社の寮の建設現場、居住制限区域で
仕事をさせられておりました。放射能が怖くて逃げたら、これは本当に正当な
理由になるのか、問われていると思います。
法務省にはすぐに連絡をしました。その結果は、その訴えを取り下げる、ごめんなさい、会社に怒られましたと。入管に連絡したら、会社に怒られて、その訴えを取り下げると。しかし、居住制限区域に、拒否できない
実習生をそこで働かせるということが、
技能実習制度として、
国際貢献として本当に適切なのか、問われていると思います。これで、逃げたやつが悪い、本当にいいんでしょうか。
ことしになって、
対象職種に自動車座席シート縫製というのが追加されました。ここに入っています
日本ソーイング
技術研究協会が試験
機関に認定をされました。協会の筆頭
理事の名前を見て驚きました。私がこの
事件にかかわるようになった、不正を起こした豊田
技術交流事業
協同組合の
理事長Iさんが筆頭
理事になっておりました。
そこの系列
企業には、ソーイング研究会に加入するように通知がずっと出ています。下請
企業に対して出ています。そこには、ホームページにありますが、この試験は
技能実習の指導員資格の目安の
一つともなっておりますと。こうして、下請に対して試験を受けるようにされています。
厚生労働省に受検料は届け出されておりますが、一人六万円。これまでの試験に比べると三倍になっています。
私は愛労連で
労働組合をやっていますが、トヨタ紡織の末端下請は、今、下請単価の引き下げが相次いでいて残業代の割り増しが払えない、単価は一・〇、一〇〇%しか来ませんから、割り増し分が払えない、労基署からたくさん指導を受けています。その上この六万円が払えなくて、大変困っています。
果たして、このように下請
企業に対して影響力を持つところが試験
機関として適切なのか、このことが問われていると思います。
さきのペンキ屋の
実習生ですが、労基署に申告しました。組合にいたく叱られました。さらに、二号ロへの受検料は三万円、自己負担と言われて、結局、彼は
帰国することになりました。
また、最近は、一部屋に九人入れて四万円の寮費を取る、現在二十七人いますから、百万円以上の寮費を荒稼ぎしている
企業もあります。
このペンキ屋やこういう会社のように、さらに受検料を本人負担にさせた場合に、本当にこれは大丈夫なのかというふうに思います。
さて、今回、
一つ事件を
報告します。
昨年六月、宮城県気仙沼からベトナム人
実習生のタンさんという方が逃げてきました。詳細は、この東京新聞が詳しく報道をしてくれております。東京でもこういうふうに報道されました。福山市内で一カ月間の講習を受けた後、鳥取県米子市の建設会社N工業に入って、ここで一週間ほど鉄筋を縛りました。その後は、島根県で清掃員として一カ月、その後、東北を回って土木作業員として働きました。
彼は、ベトナムでは短大を卒業して学歴があります。エアコンの工場で働いていました。
日本に来るための試験は溶接でした。ところが、実際に働いているのは土木作業員でした。
彼は、担当と言われているTさんに電話をして、ベトナム大使館にもメールをしました。この行動が目をつけられて、
強制帰国されそうになったので、一月に寮を出ました。彼は、友人をたどって、やっと六月にベトナム人を支援している愛労連にたどり着きました。ベトナム人の支援
団体はそんなにたくさんありません。愛労連は直ちに名古屋入管に連れていって、
調査をお願いしました。
資料の三ページをごらんください。
彼が受け取っている雇用契約書には、もちろんサインがありますが、その職歴欄には鉄筋施工と
日本語のみで書かれていました。タンさんは、これを溶接というふうに聞いていました。履歴書の経歴欄は、エアコン工場ではなくて、
日本語のみで、建設有限会社で鉄筋施工三年半と書かれています。
受け入れ機関は、面接をした際に、B
協同組合と説明をしましたが、入管に来ましたら、いや、そこではない、Wという別の組合だというふうに言われました。私はタンさんに聞いたら、いや、その人とは
日本に来てから一度だけ食事をしたことがある、後は会ったことがないというふうに言っていました。
その後、ベトナム政府が
失踪通知書を発行しました。これはベトナム語で書いてありましたが、見ると、
受け入れ機関はB
協同組合と書いてありました。そして、職種は機械保全。彼はエアコンの溶接をしていたので、機械保全で、作業は溶接。彼の言うとおりでした。
彼は、
日本に入って一カ月間、福山市内のKという会社で講習を受けました。その本社の三階、四階が寮になっています。この
団体の代表は、初めての
受け入れだったので、これは全てこのK社に任せてあったんだ、こういうふうに言っておりました。
K社の社内には幾つもの会社があります。この
資料の
最後の七ページくらいに図がついていますが、五つ、六つ、このK社の中に
受け入れ企業が存在をしています。全て登記簿をとって、移転ぐあいをずっと見ました。K社の中をぐるぐる回っています。
理由はわかりません。
そして、驚くことに、送り出し
機関の広島支部というのもこのK学園の中にあったんです。しかも、そこには
日本人が代表を務めている送り出し
機関とちゃんとホームページに書いてあって、ホームページに全部出ているわけです。しかも、昨年の夏には、ホーチミンに新しい送り出し
機関をつくりました。これも
資料に入っております。求人票も入っております。そこの社長の名前を見せたところ、これはもとの、別の送り出し
機関の人だと。よく字を見ると、そこのメールアドレスに前の会社の名前が残っているんですね。メールアドレスを変更する時間がなかったんですね。
つまり、このように、
受け入れ機関と送り出し
機関を
一つの派遣会社の中に置くことによって、書類の偽造が可能になってくるんですね。これだけではないんです。送り出し管理費を水増し請求してもこれはわからない、こういうふうになるんだと思います。
帰国後に保証金を返さない、こういうことも可能になると思います。
実際に、非営利
団体であるはずのO
協同組合というのがこの社内にありましたが、昨年九月に役員三人が逮捕されました。NHKのニュースで出ております。そして、ことし、二千万円の横領、不正で起訴をされています。ですから、間違いないと思います。
どうして、非営利
団体である
受け入れ機関が短期間のうちに二千万円の利益を上げられたのか、このことを私は
調査する必要があると思うんです。少なくとも、今度の新
法案で、送り出し国との
取り決めをする際に、送り出し
機関に対する
規制をどういうふうにするのか、
取り決めではなくて、送り出し
機関をきちんと監督できる二国間協定は最低限必要だというふうに思います。
さて、前回の法
改正、私はそれにもかかわりましたが、名目のみ
監理団体は不適正というふうになりました。しかし、二〇一二年、参議院の方でこの
委員会にかけてもらいましたが、当
労働組合は派遣会社を告発しました。そのときには、派遣会社の社長が
受け入れ機関の非常勤専務となっていました。私が専務だと電話がかかってきました。彼が、入国から日常管理、不払い
賃金の清算、
強制帰国の切符の手配、全てこの会社の名前で行っていましたが、不正になりませんでした。
法務省は、「外部の
機関を指揮命令しながら
業務の一部を分担させていた場合は必ずしも不正行為に該当するものではありません。」と
国会で答弁をされています。つまり、派遣会社の社長が
受け入れ機関の専務ですから、おい、指示しろと言えば、いつでも、常時指示ができることだと思います。
ところが、今回の
事件では、タンさんはK社で講習を受けて、T氏がN社に連れていきました。困ったときはT氏に連絡するようにという携帯電話の番号をもらっているんです。ですから、私は、当然この方は組合の人だと思いました。ところが、広島入管から、
榑松さん、このTさんというのは誰ですかというふうに聞かれました。このTさんというのは、Bの
協同組合でもなければ、Wという
協同組合でもない、またK社の社員でもない、果たして一体何者なんだということですね。
これは、彼は、実は別の組合でN社を担当していたんですが、そこが
受け入れられなくなって、N社を持ってK社に来たという方です。
業務委託という形で実際には監理をしているということなんです。ところが、実際には、監理をされていたWという
協同組合、名目の組合も、そのTさんも気仙沼まで行っていないんですね。一度も行っていない。月に一回行かなければいけないところを一度も行っていないということで、不正認定を受けています。
問題は、監理を
業務委託するということが、この仕組みによって、さまざまな営利
団体が介入できるようになる。委託費用に不正な利益を上乗せしても、
受け入れ団体の決算書を見ただけでは、委託
企業になっているのでわからないと思います。
さて、一方で、この不正を告発したタンさん、去年の六月に告発をしました。ところが、いまだに
失踪の正当な
理由というのが明らかになっておりません。既に十カ月たっていますが、法務省は
調査中と言っています。
三月に法務省はこの
受け入れ機関を不正認定で措置した、このことによって、
失踪の
理由はもうこれでいいですというふうに私は聞きました。ところが、先日、五月二日に法務省から電話が入ってきました。いや、
失踪の
理由についてはまだ明らかでない、
受け入れ機関を不正行為認定したからといって、
失踪の正当な
理由に至るとは一概に言えないというふうにお答えされました。私は録音するけれどもいいかと言いましたが、いいですと言うから、こういうふうに言われました。現在は
失踪の正当な
理由も含めてこの間の在留状況を
調査しているということで、十カ月間たっています。
皆さん、
技能実習制度について、技能職種が違っていたら
技能実習になりません。給料がちょっと安いとかは、まだ是正すればいいんです。職種や経歴が違っていたら
技能実習にならない。
四月六日の
法務委員会で井上局長は、
技能実習を行おうとする職種と同種の経験があることが必要となっております、こう答弁しました。さらに、これからどういう
仕事で、どういうところで、どういう条件で働くんだというところは全く誤解がないように、今もしているんですが、二カ国語で併記した契約書とかそういうものを示すようになっていると。
この三ページにありますが、
日本語でしか書いてありません。溶接と書いてありません。鉄筋施工と
日本語で書いてあります。普通の契約書は、これはフィリピン人のものですが、塗装、建築塗装作業、コンストラクションペイントと書いてあります。これが普通の契約書です。今回職種を偽装したところでは
日本語しか書いていないんですね。入管局長がこういうふうに言っている、この答弁と全く反する事態があると思います。
この問題を昨年の六月に名古屋入管に告発して、今渡した
資料は全て法務省に届けてあります。どうして、いまだ、十カ月たっても、この職種違反が
失踪の正当な
理由にならないのでしょうか。
二月一日に新しい
受け入れ機関の在留申請を提出しました。課長から、新しい
受け入れ機関があれば特別に在留を認めることがあるというふうに聞きましたので、半年かかりましたが、新しい会社にお願いをして、うちで
受け入れてもいいということで、二月一日に申請をしました。
そのときに、一週間か二週間でおりるはずですと言われたのに、二週間たっても
許可がおりないので、法務省に確認をしました。メールには、通常どおり審査しており、遅くとも在留期限内には
判断する、こういう返事が来ました。ところが、さらに一カ月過ぎて、三月十六日にもう一カ月延長するというふうに言われました。そしてまた一カ月たって、四月十四日にもう一度申請をしています。
三月十六日に延長した直後に法務省から言われました。三月二十二日に、いわゆるガサ入れですね、友人のところに名古屋の入管が入りました、そして、三月二十四日に法務省から、彼の退去
理由が見つかりましたというふうに言われました。つまり、審査期間を延長していたのは、退去
理由を見つけるために期間をずっと延長しているということだと思います。
四月十四日の申請から、またさらに一カ月が
たちます。私
たちの支援も限度があります。本当に苦しくなっています。タンさんが苦しくなってみずから出国するのを法務省は待っているのではないかというふうに思います。
結論です。一度逃げたら、どんなに正当な
理由があっても、職種偽装という正当な
理由があっても、もう、一度逃げた
実習生の在留は認めない。
受け入れ企業が見つかっても、
許可も不
許可もせずに、本人が帰るまで待たせる。この
事件は、
実習生が正当な
理由を認めさせるのがいかに困難かを示しています。直ちに
在留資格を取り消すことができるという今度の
入管法改正案、不正をなくすのではなくて、逃がさないようにする、これが法務省の本音ではないでしょうか。
四月二十七日の
法務委員会で階先生が、
制度を運用する役所の側、法務省を含めてですけれども、そこがちゃんと
制度を運用する
人権感覚があるかどうか、こういうふうに
指摘をされました。そのとおりだと思います。
在留審査の標準期間は一週間から長くて一カ月とされており、このような法務省の引き延ばしは行政の不作為であり、
人権侵害のそしりを免れません。愛労連は、
愛知県弁護士会の前会長そして元会長の賛同を得て、法務省の不作為を、日弁連に
人権救済申し立てを行いました。
今、地方の入管担当者は、少ない体制の中で、実習
制度の適正な運用に懸命に努力をされています。しかし、法務省に
人権感覚がないようでは、新しい機構ができても、
外国人実習
制度はいつまでも
奴隷労働のそしりを免れないと思っています。問われているのは法務省の
人権感覚だと思います。
これで終わります。ありがとうございました。(拍手)